自然科学

【自然科学部】 アメリカオニアザミの駆除

 太子町総合公園で要注意外来植物のアメリカオニアザミの駆除を行いました。

 アメリカオニアザミはヨーロッパ原産の外来植物でアメリカから輸入された飼料に混入し帰化したそうです。

 花は大変美しく鑑賞価値があるのですが、全草に鋭いトゲがありシカも食害することがありません。

 多くの花を咲かせ、長い冠毛を持つ種子は遠くまで飛散します。昨年の課題研究生物多様性班の植物相の調査で太子町総合公園柳池に、アメリカオニアザミが造成につかわれた用土とともにもちこまれ生育地が拡大していることが分かりました。このまま放置しておくと、公園で遊ぶ幼児・児童がけがをする危険性があるので、対策を太子町まちづくり課担当者と協議しました。草刈り機では根を枯らすことが困難で再生しやすいことから、農地用の除草剤を葉面散布し駆除することにしました。

 今回の駆除では、アメリカオニアザミに除草剤を散布した後、効果不足の場合でも種子の形成と飛散を防止するために花茎を切除しました。すでに園路にも分布を拡大しており、今後も継続的な観察と駆除を行う予定です。

 アメリカオニアザミの除草剤の散布後、龍野高校生物多様性実験場にノジギクとフジバカマの苗を移植しました。

 

柳池の最大の群落 除草剤散布後、花茎を切除

 園路沿いに生育するアメリカオニアザミ

通路に生育するアメリカオニアザミ

チョウやハチなど訪花昆虫は多い(写真 モンキアゲハ)

ノジギクの苗の移植

 

 

【自然科学部】 姫路市の福泊海岸で海浜植生調査

5月29日、西播磨地区の自然科学系クラブが姫路市の福泊海岸に集合し、海浜植物の植生調査をおこなった。

福泊海岸は,姫路市的形町にあり播磨灘に面した人工海浜である。1989年に造成され,2002年に海浜植物の生育が確認された。

遷移の経過を記録すること、さらに西播磨地区自然科学系クラブの活性化などを目的として2005年に高校生が主体となって植生調査を実施した。以降は毎年、西播地区の自然科学系クラブの高校生があつまり、兵庫県生物学会と兵庫県教育研究会生物部会西播磨支部が共同で植生調査を継続してきた。2020年と2021年はコロナ過のため高校生による調査は3年ぶりに実施することができた。

 開会式の後、本校自然科学部顧問の田村教諭より簡単に植生調査方法など説明があり、各校・各班に分かれて調査をおこなった。

広い海浜の植物を調べるために、海岸沿いの北側歩道から海岸に下るコンクリート階段を起点として、砂浜を横断して波打ち際近く植生がなくなるところを終点に、西から東へ10m間隔でライントランセクトを19本設置した。トランセクト起点から終点まで1m×1mの方形区を連続的に設けて,方形区内の全ての植物名と被度を記録した。

 調査の結果、コウボウムギやコウボウシバの定着。ハマゴウやハマボウフウの大株の出現や、オカヒジキやツルナの分布の拡大などが確認できた。近年砂浜を攪乱するような大型台風がなかったことがこのような結果につながっていると考えられる。

 開会式 生物部会西播支部長からの挨拶

 調査前に、写真と標本を使って事前学習

 陸から海へ設置されたライントランセクト

 各校・各班に分かれての植生調査

海岸を華やかに彩る、ハマヒルガオ

潮風に耐えるためクチクラの発達するハマボウフウ

長い地下茎で分布を拡大するコウボウシバ

コウボウシバに似たコウボウムギ

オカヒジキは蒸散量を減らすため松葉状の葉をもつ

貯水組織が発達した多肉植物のツルナ

   

校内の里山で、生息域外野外実験 【自然科学部】

 5月27日、校内の里山でムラサキとフウランの生息域外保全に取り組みました。

 ムラサキはたつの市新宮町産で、すでに現地では野生絶滅しています。しかし実生による累代栽培でたつの市産ムラサキの系統保全を行っています。今回は、簡易防獣柵による効果と、無潅水栽培による個体の維持が可能か調べたいと思います。

 野外実験が成功すれば、野生絶滅した現地の復元などに一歩前進できるのではないかと思います。

 フウランはたつの市内の神社から提供された株です。落雷により着生していた木が枯死し、倒木の危険性があったため枝の伐採時に着生していた株を提供していただき、校内の中庭で栽培していました。しかし、シカの食害にあうなどしたため、シカに食害されにくい高さのアラカシの樹幹に麻縄でしばりつけ、着生させることにしました。現在、根が成長をはじめていますが、うまくいけば今年中には着生するのではないかと思います。

 ムラサキもフウランも兵庫県レッドデータAランクの植物です。もし野外で見かける機会がありましたら、継続的な観察を行い、写真撮影など記録を残してください。そして、減少が著しいと判断されたら保全のため人と自然の博物館など専門家に相談してください。

径1mmの針金ネットで、簡易防獣柵を製作

2年前に、校内花壇に植えたムラサキの開花

校内の里山に、ムラサキを移植

簡易防獣柵で保護したムラサキの苗

フウランの移植 麻縄でアラカシに縛り付ける

 

白い根は今年発根した部分。樹皮に接触すると着生する

 

「全国花のまちづくり姫路大会」に姫路市花サギソウの研究成果を展示 【自然科学部】

花を生かした地域の街づくりに取り組む「全国花のまちづくり姫路大会」が21日、アクリエひめじで開催された。

姫路市内の高校生も、華道部や園芸部が生け花や立体花壇などの作品を展示した。

龍野高校からは自然科学部で取り組んでいるサギソウ関係の研究について展示した。内容は姫路市花である絶滅危惧植物のサギソウの「微酸性電解水添加培地」を活用した無菌培養技術をポスターと無菌培養中の培養器の展示。またサギソウ自生地における保全活動として、人工交配や大型草本の刈り取りの効果などもポスター展示を行った。

 今回は、定期考査中のために部員の参加ができず残念であった。

 なお、姫路市以外の高校からは龍野高校のみの参加であったが、以前から調査研究活動などでお世話になっている姫路市立手柄山温室植物園から展示スペースを提供していただき参加することができた。ご協力ありがとうございました。

   
   

ササユリ・ギンランの生息域内保全

4月30日、兵庫県立大学理学部構内のササユリ・ギンランの生息地での保全活動を行いました。

理学部に行く前に、兵庫県RD Aランクのヤマブキソウの自生地での現状調査を行いました。

例年よりもシカによる食害が目立ちました。今後個体数が急激に減少することが予想されます。現在の群落の分布を、レーザー距離計を使用し記録しました。

理学部では、大学から許可をとりササユリとギンランの保全活動を行っています。全国的にいえることですがシカの増殖により、林床の植物は食害され激減しています。ササユリやギンランも30年前は、それほど珍しい植物ではなかったのですが、近年は開花株に成長する前にシカに食べられているようです。針金のネットをチューブ状に加工して株を囲みました。

午後からは、「ひょうご環境体験館」の見学に行きました。以前龍野高校でも勤務されていた芦谷館長はから館内の展示物の解説などをしていただき、その後屋外でジャコウアゲハの産卵などを観察しました。

 

ヤマブキソウ

群落を記録

簡易防獣柵を製作

 

ギンラン(クゲヌマラン?)

ササユリの幼株

 

保護柵の設置状況

ひょうご環境体験館の見学

ジャコウアゲハの産卵

絶滅危惧種オチフジの移植

 オチフジは、フジの花の咲くころに、渓流に面する落葉樹林の林床に生育するシソ科の植物です。日本の固有種で、地球上では現在西播磨地方の数カ所にしか生育していません。初めて発見されたのは和歌山県高野山(真言宗本山)奥の院です。西播磨の生育地の一つが船越山で、船越山には真言宗別格本山瑠璃寺があり、たびたび本山へ僧侶を派遣していました。和歌山では高野山の1か所にしかないオチフジは、もともと船越山から僧侶が移植した株ではないかといわれています。

 播磨高原を開発する時に環境アセスメント調査が行われ、多くの貴重な植物が見つかりました。オチフジもそのような植物の一種です。上郡町金出地ダム建設にともない水没するオチフジの自生地から、SPring-8や県立大理学部、近隣の小・中・高等学校に移植されました。

 龍野高校にあるオチフジは、県立大附属高校に移植され繁殖した株から、挿し木により増やした金出地系統の株です。生息域外保全のため、4月22日ポット苗を校内に地植えを行いました。環境に適応できれば、ポットで栽培するよりも生育は安定すると思います。

 

絶滅危惧種オキナグサの開花

   

 オキナグサは草原に生育する絶滅危惧植物です。スキー場や河川の草地などにわずかに生育地が残されているようですが、野生株をみることは極めて稀です。

 龍野高校で栽培している系統は、上郡町の植物愛好家により千種川(赤穂市坂越)で数十年前に採集され栽培により維持されていた株の子孫です。

 河川改修工事などにより、現地ではすでに絶滅しており、貴重な系統といえます。2020年の初夏に種子を分けてもらい、2年目の今年いくつか開花しました。将来、野生復帰を考えて校内の空き地に100粒以上の種を播き、無潅水・無肥料で育てた株も1株だけですが、開花しました。また、昨年7月に太子町内の野外実験場に播種1年後の苗を移植しました。地温が低いためかまだ開花はしていませんが、花芽を確認できました。

 今後シカの食害に注意し、採種し実生により千種川系統オキナグサの維持に努めたいと思います。

 将来的に、赤穂市立高雄小学校のハマウツボの保全活動のように、千種川流域の小学校の環境教育に活用してもらえるように、千種川系統オキナグサの生息域外保全を続けたいと思います。

 

プランター栽培

直播き栽培

絶滅危惧種オオツルコウジの保全活動

 オオツルコウジは照葉樹林の林床に生育する常緑低木です。普通種のヤブコウジに似ていますが2回りほど大型です。

 兵庫県南部のオオツルコウジ群落に、要注意外来植物のトキワツユクサが侵入し、オオツルコウジの生育に悪影響を与えています。そのため、自然科学部ではオオツルコウジ群落の保全のために、昨年に続き3月27日にトキワツユクサの除草作業を行いました。

 トキワツユクサは、除草をしても茎の一節からも発芽再生するので、どのようにしたら生育を抑制できるのか、除草場所のモニタリングについても今後行う予定です。

 

絶滅危惧種 オオツルコウジ

 除草作業

 

トキワツユクサの除草前

 

トキワツユクサの除草後 

 

絶滅危惧種ムラサキの移植

 

 ムラサキは、古来より染色や医薬品の原料として利用されてきた有用植物です。

 しかし、牛馬の飼育や、かやぶき屋根の減少に伴い、飼料や資材の供給の場となっていたススキ草原は放置され、遷移の進行に伴いなくなりました。その結果ムラサキだけでなくキキョウやオミナエシなどの草原生植物の多くが絶滅危惧種になっています。

 龍野高校で栽培してているムラサキはたつの市新宮町で発見されたムラサキの種子からの増殖品ですが、野生株はシカの食害のためか消滅しました。

 たつの市新宮町産ムラサキの絶滅を防止するために、龍野高校だけでなく姫路市立手柄山温室植物園などでも生息域外保全を行っています。

 長年の栽培からムラサキの特性もわかってきました。発芽率が低いといわれるムラサキですが、翌春に発芽しなくても、あきらめず管理すると一年後に発芽することもわかりました。

 今回の移植苗も昨年秋に播種したものではなく昨年春に発芽しなかったものが今春発芽した実生苗です。

写真左上 ポットに用土を入れて1本ずつ移植

 

写真右上 5つタネをまき、翌々春に5粒とも発芽。     中列 左2本は雑草の発芽苗

 

写真左下 ムラサキの花 5月~10月に開花

     今年の発芽苗も生育の早い株は6月から開花 

     予定。

 

 

 

 

太子町総合公園柳池で生物調査に参加

 3月19日、太子町総合公園柳池の清掃活動・生物調査に自然科学部5名と課題研究生物多様性班2名が参加しました。

 清掃活動・生物調査に先立って、前姫路市立手柄山温室植物園園長の松本修二氏による講演会がありました。「植物を守るには」というテーマで話していただきました。手柄山温室植物園の地域の希少植物の保全活動の様子や、生物多様性、絶滅危惧植物、特定外来種・要注意外来種についての解説や、生息域内保全・生息域外保全を行う場合の注意点についても説明がありました。

 龍野高校での地域の生物多様性の保全活動「生物多様性龍高プラン」に関連した、大変参考になる内容でした。

 講演会の後、まずは柳池周辺や池の中のごみを集めました。自然科学部の生徒も胸の高さまである長靴(胴長)を着用して、ため池内のビニール袋などのゴミを回収しました。

 清掃活動のあと、たも網を使って生き物調査をしました。前日までの雨のため、昨年よりも水位が高くコイなど魚は見えてはいるのですが捕獲できませんでした。しかし、メダカやアメリカザリガニ、ミナミヌマエビなどを採集し、みんなの採集品を持ちよって、松本さんたちに解説をしていただきました。

 新入生の皆さんも、生き物や野外活動に関心のある人は、一緒に活動しませんか。

講演会「植物を守る」

講演会 「植物を守るには」

      松本修二氏(手柄山温室植物園) 

清掃活動

生物調査 (後方は龍野高校生物多様性野外実験場)

採集品の解説

 

講演会のグラフィックレコード 

制作 NPO法人アンビシャスコーポレーション

講演会のグラフィックレコード 

 制作 NPO法人アンビシャスコーポレーション