自然科学

「ほんまにできるバイオ実験」ってほんまにできるんか? 置床の結果は?

 8月10日に日本生物教育会全国大会大阪大会がありました。高校生ポスター発表で「ほんまにできるバイオ実験」のテーマでクリーンベンチやオートクレーブをつかわない実験方法について発表を行い、会場でキクの組織培養に20名の先生や生徒のみなさんに挑戦していただきました。

 実験日から6日たちました。気温が十分に高いので、キク花弁を培地に植え付けるときに微生物が混入していたら微生物の集団(コロニー)が形成されます。

 結果は20個の培養容器(ポリ袋)のうち2個にコロニーが確認されました。成功率90%でした。

 今後、コンタミがなければ花弁の表面にニキビのようなカルスが形成される予定です。ただし、気温が高いときなので容器内が高温にならないように注意が必要です。

このように、100円均一で購入したワイヤーネットで管理しています。

1人2回実験していただき、はじめに実験したもの(奇数番号)を龍野高校で管理しています。

微生物による汚染(コンタミ)がおこった培養容器

 

日本生物教育会全国大会大阪大会 で研究発表 【自然科学部】

8月10日 近畿大学東大阪キャンパスで開催された、日本生物教育会全国大会大阪大会で自然科学部生物班がポスター発表を行いました。テーマは「ほんまにできる バイオ実験」です。昨年開発した微酸性電解水添加培地をもちいたキク花弁の組織培養を生徒実験でも可能なように小型チャック付きポリ袋をつかった方法を紹介しました。この方法によるキク花弁の組織培養(カルス)やサギソウの無菌は種の成果を展示するだけでなく、希望者には実際にその場で、キク花弁を無菌培地に置床していただきました。

 実は先日の高校生バイオサミット1回戦において、同じ実験内容について口頭発表を行いました。そのときに、「実験が成功しているのは、何度も実験をして技術が向上した君たちだからではないか?はじめてこの方法で実験する生徒には無理なのでは?」と質問をされました。

 そこで、今回は研究発表とともにこの実験に興味を持って頂いた、高校の先生や高校生、出版社社員の方々に実際にやって頂きました。2回キクの花弁を無菌培地に置床していただき1回目のビニル袋を龍野高校で、2回目の袋を実験者で管理して頂くことにしました。

 いったいどのような結果が出るのか楽しみです。クリーンベンチ無し、人の出入り(空気のうごき)ありの環境でもはたして無菌操作は可能なのでしょうか。無菌操作の環境としては劣悪なので50%の成功率で合格としたいと思います。

 協力して頂いたみなさんありがとうございました。

「ほんまにできるバイオ実験」 

 じっさいに、実験していただきました

 

チャック付きミニポリ袋でサギソウの無菌播種

 

 

 

 

 

 

バイオサミット決勝進出 【自然科学部】

8月9日、バイオサミット1回戦の結果発表があった。バイオサミットとは慶應義塾大学先端生命科学研究所が主催する生物系の高校生科学コンテストである。1次審査(論文)を通過し、8月4日にオンラインによる1回戦(口頭発表)が行われた。昨年は1年生のみで挑戦し、僅差で決勝戦進出を逃した。今年こそは決勝戦に進出するつもりで昨年の研究内容をさらに進化させて1回戦に備えた。成果発表部門は上位20チームが決勝に出場できる。

結果、9番目に龍野高校自然科学部の決勝進出が決定した。

決勝戦は8月21日。あまり時間もないが十分な準備をしたい。

成果発表部門 上位20チームが決勝戦進出

決勝戦の日程

決勝戦会場 慶應義塾大学先端生命科学研究所 鶴岡市

1回戦 オンラインによる口頭発表と質疑応答

食虫植物国際会議で発表【自然科学部】

 第13回食虫植物国際会議が姫路市民会館において2023年5月26日~28日にかけて開催されました。

 コロナ禍のため、予定よりも3年遅れで日本での開催となりました。日本では2度目で、姫路市での開催となりました。これは播磨地方のため池の周辺に食虫植物の自生地が多いことや、ウツボカズラの栽培品で最長記録でギネスブックにも登録された県立フラワーセンターや手柄山温室植物園などがあり、自生地見学や植物園見学が可能であることなどが要因だったそうです。

 本来であれば「モウセンゴケは菜食家だった?」のテーマで発表予定でしたが、研究を行っていた生徒も卒業し、今回新たにテーマを「兵庫県南部の食虫植物と生物多様性を守る高校生の活動」として、兵庫県下の食虫植物を自生地の写真とともに紹介し、食虫植物が減少する原因について野生動物の増加や、阪神淡路大震災以降のため池改修工事、ブラックバスの駆除とアメリカザリガニの影響について説明しました。さらに私たちの生物多様性保全活動「生物多様性龍高プラン」について発表しました。

 発表は、同時通訳による日本語での発表もできましたが、せっかくの機会なので質疑応答のみ通訳をお願いし、日本語と英語で発表しました。発表後は海外からの聴衆からも質問が数多くあり、発表間の休憩時間が無くなるほどでした。

 国際食虫植物協会(ICPN)の自生地保全担当役員のCarsonTrexler氏からも私たちの保全方法について質問がありました。また、二人の海外からの聴講者からは、高校生が英語で発表を行ったことに対して大変感激したとほめていただきました。

 発表を行った2年生の2人も大変楽しかったようです。その一方で多くの日本人参加者が英語で直接発表者と質疑応答する様子をみて、英語によるコミュニケーション力の必要性について実感していました。 

 各国の研究所や大学の研究者や植物園の職員にまざり、高校生に発表する機会を与えてくれた日本の主催者のみなさん、そして本校英語科のみなさんには、5月考査で忙しい中、英語の発表原稿の修正や発音指導など献身的に協力していただきました。ありがとうございました。

 また、高校生の発表をうなづきながら聞いていただいた国内外の聴衆のみなさんに厚く感謝いたします。

【参考】第13回食虫植物国際会議HP プログラム

 

 発表テーマ 地域の生物を守る高校生の活動

日本語に続き、英語でも発表

課題研究でみつかった太子町産タヌキモ不明種を展示。

微酸性電解水添加培地をつかった食虫植物の無菌培養

海外からの参加者もペットボトルの無菌培養に関心を持っていました。

発表者 川島(2年) 壷阪(2年)

 

 

食虫植物の野外調査 【自然科学部】

4月22日たつの市内で昨年末に見つけたコモウセンゴケ類の自生地の調査に行きました。常緑性のコモウセンゴケ類は冬季も地表部に葉があります。しかし休眠するイシモチソウなどは冬季には発見困難です。

調査の結果、コモウセンゴケ類の自生地周辺でイシモチソウを発見できました。さらに3株だけでしたがモウセンゴケもみつけることができました。生育の良いコモウセンゴケはすでに開花がはじまっていました。トウカイコモウセンゴケとイシモチソウも来月中には開花すると思われました。

環境的にはミミカキグサ類3種の自生も予想されましたが、まだ種子が発芽したばかりで小さく見つけることはできませんでした。開花期に再度調査する必要があります。

 また、相生市の休耕田脇で絶滅危惧種のハンゲショウをみつけましたが、こちらは地域住民により移入された株でした。

コモウセンゴケの生育環境 水路脇の斜面に自生

開花がはじまったコモウセンゴケ

トウカイコモウセンゴケ 

コモウセンゴケとモウセンゴケの雑種由来の種類

モウセンゴケ 

今回の調査で自生が確認。個体数は少ない。

イシモチソウ

 今回の調査で新たな生育地を確認した。

岩場の小さな湿地にイシモチソウやトウカイコモウセンゴケなどが自生。

太子町総合公園柳池での生物調査 【自然科学部】

 3月25日、太子町総合公園柳池で太子町まちづくり課が主催する生物調査に参加しました。

 柳池は、もともと水田に必要な灌漑用のため池でしたが、水田が公園となりため池の水利権も消失しました。その後、公園の一部として整備され、さまざまな活用が試みられています。龍野高校でも、生物多様性の保全に活用できないか自然科学部や課題研究生物多様性班が、「野外実験場」として利用させていただいています。

 生物調査に先立って「汐入川を守る会」より活動報告がありました。河川を清掃管理するだけでなく、子どもたちの自然観察の場となるようにフジバカマを植栽し、旅をする蝶として知られるアサギマダラの飛来させるなどの取り組みが行われています。

 その後、水の抜かれた柳池に入り、生きものを採集し兵庫県立大学の学生による解説がありました。ウシガエルやアカミミガメ、アメリカザリガニなど外来種が多く見られる中、コオイムシやミズカマキリなどの水生昆虫も見つかりました。

 午後からは、「龍野高校柳池野外実験場」でサギソウ共生菌の発芽実験を行いました。この場所はもともとコナラやアベマキ、モウソウチクなど放置林のあった場所です。伐採されて公園整備後に、湧水を利用して人工湿地をつくりました。もともとサギソウの自生していない場所ですが、人工湿地内にサギソウの発芽を促す共生菌がいないか探すことが目的です。もし共生菌があれが、人工湿地内でのサギソウ観察園がつくれるのではないかと考えています。

「汐入川を守る会」からの活動報告

アサギマダラは、旅の途中にフジバカマなどに飛来

柳池で生物調査

 コイを捕る

アカミミガメも捕る

兵庫県立大学の学生による生きものの解説

 

コイ 体型から在来種のコイではない

ウシガエルは食用として国内にもちこまれた

「龍野高校生物多様性野外実験場」

キシュウスズメノヒエの枯草を利用して共生菌を培養

サギソウ群落の保全活動【自然科学部】

3月21日たつの市内のサギソウ群落の保全活動を行いました。この場所は地元の自治会によって管理されており、木道が設置されるなど、湿地を傷めるめることなく湿生植物の観察ができます。

 今回の作業は湿地内の大型草本カモノハシを除去することで地表に光が届くようにします。陽生植物のサギソウは光量不足になると開花しにくく、個体数が減少します。そこで例年サギソウが発芽成長する前にカモノハシを刈り取り湿地外に除去しています。

 カモノハシの植生被度の低下した除草処理区では、サギソウだけでなく食虫植物のモウセンゴケやミミカキグサの仲間も個体数を増やしています。

 除草作業後には、サギソウの共生発芽実験の準備をしました。これまでの保全活動で、刈り取りをすることで数年で個体数が急増することがわかりました。しかし日当たりが良くなるだけでは開花率は高くなっても、個体数はあまり増えません。増加するためには分球だけでなく実生による増殖が促進される必要があります。しかし、サギソウの種子は胚乳がないため自然界での発芽率はあまり高くないと言われています。そのため刈り取り作業は光条件の回復だけでなく、発芽率の上昇に効果があることが予測されました。

 そこで2021年度に室内実験で、サギソウの種子は枯れ草を分解するカビの仲間により発芽が促進されていることを確認しました。今回は野外でも同様に腐朽する枯れ草周辺部で発芽しやすいことを確認するための実験観察を実施することにしました。

 この実験結果が予想通りであれば個体数の減少した自生地でも効率よく、遺伝子多様性をたもちながら実生によるサギソウ群落を復元させる技術が確立できます。播種時期などの問題もありますが、夏休み頃にはある程度結果がでるのではないかと思います。

 その後、他のため池に移動してトウカイコモウセンゴケ群落の保全作業を行いました。トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケ同様陽生植物ですが、モウセンゴケのような越冬芽をつくりません。そのため春先は凍結や霜により葉は痛んでいます。

 自生地では、トウカイコモウセンゴケを霜から守っていた、コナラ等の落ち葉を取り除き日当たりを回復するとともに、種子が発芽成長しやすいようにしています。

 生徒の一人が湿地内に油膜を発見し、油による湿地の汚染を心配していました。しかし、今回の油膜は環境汚染には影響のない、鉄バクテリアの繁殖によるものです。鉄バクテリアは化学合成細菌の仲間で、水中の鉄イオンを酸化により生じる化学エネルギーを利用して糖を合成し生活しています。そのため、水中には酸化鉄の沈殿が確認できます。もし酸化鉄の沈殿がないようであれが、オイルなどの流失を疑う必要があります。

 

 地元自治会の尽力により観察道が設置されている

 

 大型草本カモノハシを除去

 処理区では食虫植物モウセンゴケの実生苗も増加

   共生菌発芽法の野外実験の準備

サギソウの播種

左:対照区 右:共生菌培養区(イヌノハナヒゲ類の枯草入)      

落ち葉を掻き出す

   トウカイコモウセンゴケ群落

越冬芽をつくらないため、寒さで葉が損傷

  鉄バクテリアの繁殖 鉄イオンの多い水質とわかる

 

希少植物ムラサキの発芽 【自然科学部】

 ムラサキは古来より染色や薬用植物として利用されてきました。しかし、生活の変化により草原や里山の放置による遷移の進行、シカなど野生動物の増加にともなう食害などにより兵庫県では阪神地区の1か所にしか自生地が残されていません。

 龍野高校では、地域の希少植物の生息域外保全を行っています。栽培されているムラサキはたつの市新宮町産ですが、シカの食害のためか自生地では生育が確認できなくなりました。栽培品は絶滅の前に採種した新宮系統株の子孫になります。長年にわたり栽培することでムラサキの特徴がいろいろと知ることができました。

 ムラサキは多年草ですが、2年目以降は根腐れしやすくなること。種子は発芽抑制物質をもち、播種後2年目の春に多く発芽することなどです。文献によれば流水中に浸すことで発芽抑制物質を除去できるようです。今年は、校内の湧水を利用して、発芽物質を除去できるのか試しています。

 

校内の地植え2年目のムラサキ

 

2回目の春を迎え、発芽が始まった実生株

 

湧水を利用した発芽抑制物質除去実験

 

 

西播磨地域づくり活動実践交流会(西播磨地域ビジョンフォーラム)に参加 【自然科学部】

 3月5日(日)、光都の先端科学技術支援センターで「令和4年度西播磨地域づくり活動実践交流会(西播磨地域ビジョンフォーラム)」が開催されました。西播磨地域から高校13校、一般団体22団体が参加して、活動事例を発表しました。

 龍野高校からは自然科学部が参加しました。自然科学部では地域の生きものや自然環境の保全活動「生物多様性龍高プラン」を実施しています。今年は、兵庫県花ノジギクが県鳥コウノトリに比較して県民の認知度が低いことを解決するために、「ノジギクを理科教育の教材として活用」が有効と考えて、このテーマについて自然科学部と課題研究Ⅱのノジギク班が取り組みました。その研究ポスターなど展示解説しました。

 ポスターセッションのあと、ステージ発表として佐用高校の地元でつくられる皆田和紙などを活用した自作衣装でのファッションショーや太子高校のコーラスの披露がありました。

 さらに一般の7団体による口頭発表のあと各団体代表者とコメンテーターによるパネルディスカッションが行われました。

 高校生だけの交流にとどまらず、街づくりに取り組むいろいろな団体との交流ができました。ポスターセッションの時間が1時間と短く、対面で十分に話をする時間が取れなかったのが残念です。

 【参考】兵庫県HP https://web.pref.hyogo.lg.jp/whk01/press/0228visionforum.html

 県花ノジギクについて解説

龍野高校学校評議委員様にも取り組みを説明

 

 

龍野高校 展示ブース

 

ポスターセッションの会場風景

パネルディスカッション

 一般団体による口頭発表

 

第20回高校生・高専生科学技術チャレンジ(JSEC2022)で入賞 【自然科学部】

「第20回高校生・高専生科学技術チャレンジ(JSEC2022)」は科学コンテストの世界大会(ISEF)日本代表を決める大会です。参加資格は高校生だけでなく高等専門学校生も参加できます。対象となる研究分野は物理・化学・生物・地学分野以外にもロボット工学・数学・社会科学など多岐にわたります。日本代表を決めるコンテストなので、SSH指定校だけでなく、高専、大学の附属高校など有力校が出場しています。

自然科学部生物班では「植物科学部門」に微酸性電解水を活用した「ペットボトルで簡単組織培養」の研究テーマで予選にエントリーしました。結果は佳作(植物科学部門11~13位相当)で最終審査会には出場できませんでしたが、1年生3名のチームでの受賞となりました。

今回の研究のポイントは高価な設備であるオートクレーブやクリーンベンチを使用しないで、花弁の脱分化からカルスを誘導する実験方法の開発です。微酸性電解水により、容器内・培地・植物体・器具を滅菌するため、高温・高圧での滅菌できないペットボトルのような非耐熱性容器を活用できます。

この手法で、市販のスプレーギクや兵庫県花ノジギクの花弁からカルスの誘導に成功しました。

今後は、来年度姫路市で開催予定の「食虫植物国際会議」で発表できるように、「微酸性電解水添加培地を用いた食虫植物の無菌培養」に取り組む予定です。

兵庫の県花 ノジギクのカルス

 脱分化中に枯死したスプレーギクのカルス

食虫植物 ハエトリソウの無菌播種   

食虫植物 ビブリスの無菌播種