自然科学
【生物班】ホソバナコバイモの保全
ホソバナコバイモは西日本の限られた場所に生育する多年生草本です。早春に開花、落葉樹が展葉することには結実し、長い休眠期にはいります。カタクリのような早春植物(スプリングエフェメラル)の一種です。生育期間が短く、未開花株は1枚葉で開花まで5年以上かかります。
兵庫県の生育地は分布の東限で国内で重要な自生地といえます。生育地内にササやモウソウチクが侵入しており早春の日光が必要なコバイモの生育環境を守るために伐採します。生育地内のササは休眠期に伐採除去していたので今回は周辺部のモウソウチクを伐採し、枝を落とし柵の修理をする竹杭などをつくりました。
イノシシやシカの侵入を少しでも防止できるように4月には柵を修繕し、自生地内の個体数増加をめざして、日当たりのよい場所に播種を試みたいと思います。
なお、私有地のため立ち入りや作業については土地所有者の許可のもと活動しています。
ホソバナコバイモ(開花株)草丈10㎝ |
一枚葉の未開花株 |
進入するモウソウチク |
竹杭の製作 |
ユキワリイチゲ |
オオマルバコンロンソウ Bランク |
【生物班】サギソウ自生地での枯葉の除去
サギソウの発芽期を前に、自生地で事前に草刈り機で刈り取っておいた枯葉を除去しました。
サギソウの葉は高さが10㎝程度と低く、近くに大型草本のカモノハシなどが生育していると個体数が減少し、開花数も少なくなります。地表に日光があたるようにすることで、サギソウだけでなく地表植物のモウセンゴケやミミカキグサなどの食虫植物も生育が良くなります。
その後、トウカイコモウセンゴケ群落で、被う落ち葉を取り除きました。落ち葉は冬季には霜から植物を守ってくれますが、生育期に入ると日光をさえぎり生育が悪化したり、発芽・成長が悪くなります。
余った時間は周辺の自然観察を行いました。イノシシの個体密度が高いのか、体表につくダニを駆除するための「ぬたば」が多くみられました。湿生植物群落にとっては過度な攪乱がおこると植生が破壊されます。しかしアカガエル類にとってはよい産卵場となっていいるようで、孵化直前の尾芽胚期の卵塊も観察できました。
ため池の堤体やその付近は野焼きがされており枯葉がきれいになくなっていました。このように地表面に日光があたることで、タヌキマメやツリガネニンジン、ワレモコウなどの草原植生が維持されます。
生物班 参加者 |
刈り取った草を湿地内から除去 |
イノシシの泥浴び場「ぬたば」 |
孵化直前のアカガエル類の卵塊 |
トウカイコモウセンゴケの日照を回復 |
葉の痛みがあるトウカイコモウセンゴケ
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【生物班】サイエンスキャッスル ジャパンに2025に参加しました
3月22日関西大学千里山キャンパスで開催された「サイエンスキャッスルジャパン2025」に参加しました。
全国大会ですが、海外からもフィリピンの高校生や先生約30名が参加しました。
生物班からは2つの研究テーマ「簡易防獣柵の効果についての検証」と「高価な設備をつかわない無菌培養実験の開発」でエントリーし、口頭発表の12演題には選ばれませんでしたが、ともにポスター発表80演題に選ばれました。
全国大会では、SSH指定校だけでなく個人で大学に通いながら研究をおこなっている生徒の参加も多く、内容的に卒論をこえた成果をあげている研究テーマもあります。龍野高校の研究にも活用できそうな「マミズクラゲのライフスタイル」などのテーマもありました。
表彰式では、ポスター発表では12演題が入賞できますが、残念ながらここで私たちの研究が紹介されることはありませんでした。予選通過団体に与えらる奨励賞どまりと思われました。
しかし表彰式の最後に「無菌培養実験」の発表番号がコールされました。サイエンスキャッスルは国内だけでなくアジアでも開催されています。マレーシア大会にサンゴの研究をおこなっている学校が、フィリピン大会では龍野高校の「高価な設備をつかわない無菌培養技術の開発」が大会主催者の推薦により出場権を獲得しました。
今回フィリピンから参加された先生方は、限られた教育資源でも工夫することでより良い教育を提供できるように日頃から努力されてます。「高価な設備をつかわない無菌培養技術の開発」は、十分な実験設備のないフィリピンの教育現場にも貢献できると評価していただきました。
グローバルな観点から、私たちの研究がどのように世界貢献できるのか再検討し、実験内容を組み立て直し海外の発表に向けて準備したいと思います。
【参考】サイエンスキャッスルジャパンHP https://s-castle.com/schedule/japan2025/
開会式 |
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「高価な設備を必要としない無菌培養技術の開発」 |
「簡易防獣柵の効果についての検証」 |
【生物班】西播磨地域ビジョンフォーラムに参加
3月1日に西播磨総合庁舎で開催された西播磨地域ビジョンフォーラムに自然科学部生物班が参加した。
このフォーラムは、各学校や団体による地域づくり活動実践報告会をかねている。
生物班では、地域の自然環境やいきもの保全活動「生物多様性龍高プラン」について、今年重点的に取り組んでいる簡易防獣柵による絶滅危惧植物の保全方法など模型やポスターをつかい発表を行った。
ポスター発表の後、参加団体が6つグループにわかれて、「地域の強みを活かした賑わいと活力のあるまち、住み続けたい選んでもらえる西播磨 ~連携の輪を広げる、つながりから新たな可能性を~」をテーマに地域課題の解決について世代をこえて議論した。その内容については各グループ代表者が発表し意見を共有し合った。
多種多様な取り組みを行う地域団体の活動の様子を知ることができ、また日頃議論することがない大人と意見を交わす貴重な機会となった。
例年「生物多様性龍高プラン」にたいして助成していただき、このような交流会の開催を設けていただいた西播磨県民局担当者の方々に感謝したい。
光都周辺地域でも「生物多様性龍高プラン」として、絶滅危惧種ササユリの保全やセツブンソウの調査を行っている。県立大理学部の協力のもと調査研究している「簡易防獣柵を活用したササユリの保全」の活動場所で柵に異常がないか点検したところ特に問題はなかった。一方セツブンソウ群落は例年であれば100輪以上の開花や数多くの実生苗が確認できていたが、数年前よりシカの往来が激しくなっているようで、開けた場所ではほとんど消滅し、ササなどの間にシカの食害や踏み荒らしを逃れた株が少数開花するにとどまった。ここ数年のシカの影響が顕著になっている。
「生物多様性龍高プラン」 |
「簡易防獣柵」の模型をつかった説明 |
Bグループを代表して発表 |
生物班の代表生徒 |
従来の防獣柵 高い・重い・丈夫 |
簡易防獣柵による各個体別ササユリの保全 |
シカの影響により著しく減少したセツブンソウ |
新鮮なフンがあちらこちらに散在していた |
【生物班】人と自然の博物館「共生のひろば」に参加
2月11日兵庫県立人と自然の博物館で開催された「共生のひろば」に生物班が参加しました。「共生のひろば」は主に兵庫県内で研究活動を行う老若男女が集い、研究成果や活動内容を報告しあうことで研究の深化だけでなく、他の研究者とつながる機会となっています。
生物班は、地域の生物多様性保全活動「生物多様性龍高プラン」について「簡易防獣柵の効果の検証」とオートクレーブやクリーンベンチなど高価な設備を使用しない「簡単無菌培養技術の開発」についてポスター発表しました。
博物館の名誉館長で「滅びゆく植物を救う科学」や「日本絶滅危惧植物」などの著者である岩槻邦男先生にも私たちの研究について聞いていただき、アドバイスをいただきました。
人と自然の博物館のみなさん、毎年県内で活動するアマチュア研究家が一堂に集まる機会をつくっていただき、ありがとうございます。
開会行事 |
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「簡易防獣柵の効果の検証」 |
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研究員トーク 田中研究員(地球科学) |
ツキノワグマとニホンジカと発表者 |
【生物班】「はりまユース研究発表交流会」に参加
12月22日(日)姫路科学館主催の「はりまユース研究発表交流会」に自然科学部生物班が参加しました。
この発表会は、「所属校の所在地」か「研究・開発の拠点または対象地域」のどちらかが播磨圏域連携中枢都市圏であり、播磨広域交流地域においての学校や地域内の課題についての研究発表会です。
生物は班では3つの生物多様性の保全に関する研究発表を行いました。はじめに、1枚のスライドで1分程度の研究紹介を行いました。その後はポスターを使い対面で研究内容を発表しました。
発表者は高校生だけでなく県立森林大学校や京都大学の学生の発表もありました。
他校の発表者や先生だけでなく博物館の学芸員など職員の方々にも発表を聞いていただきアドバイスいただきました。
比較的小規模な研究発表会ですが地域の高校生だけでなく科学館の方々とも交流を深めることができました。
このような機会をつくっていただき、科学館の職員の方々に感謝します。
【参考】姫路科学館ホームページ(発表要旨あり) https://www.city.himeji.lg.jp/atom/research/event/index.html
生物多様性龍高プラン |
生物多様性龍高プラン |
簡単な無菌培養技術の開発 |
簡単な無菌培養技術の開発 |
簡易防獣柵の効果の検証 |
簡易防獣柵の効果の検証 |
【生物班】サイエンスキャッスル2024 大阪・関西大会に出場
12月21日、大和大学 大阪吹田キャンパスで開催された「サイエンスキャッスル2024 大阪・関西大会」に、生物班2名が出場しました。
この大会は口頭発表12演題、ポスター80演題と数多くの研究発表が行われました。会場は熱気にあふれ、高校生だけでなく小学生・中学生も参加する大会です。発表内容を聴くと、発表者がどれほど研究対象に対して、情熱や愛情をもって研究に取り組んでいるのか伝わってきます。
生物班は「防獣柵の効果について」というテーマでポスター発表を行い、若手の研究者や、他の発表者の方々に質問やアドバイスを頂きました。結果は上位入賞はできませんでしたが、他の発表を聞き意見交換を行い、様々な研究内容について知れるとても良い機会となりました。
今大会ではとても充実した時間を過ごすことが出来ました。今後の発表をより良いものにするために、この経験を生かしてさらなる研究発展を目指していきたいです。
開会式 |
会場風景 広い会場でした |
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口頭発表で入賞した中学生研究者に説明
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「心が動くグローバルな研究キャリア」 |
来場証明書前でパチリ |
【生物班】ひょうごユースecoフォーラムに参加しました
12月14日兵庫県立工業技術センターで開催された兵庫県・ひょうご環境創造協会が主催する「第6回ひょうごユースecoフォーラム」に生物班の3名が参加しました。
このフォーラムでは日頃兵庫県内で環境保全活動などに取り組む団体の活動報告や交流が行われます。
口頭発表では龍野高校生物班を含む7団体が発表を行いました。生物班は部活動や課題研究生物多様性班で取り組む「生物多様性龍高プラン」の活動内容について発表を行いました。昼食後はポスターセッションにより各団体のメンバーと活動内容について発表や質問を行いました。その後各団体の参加者とともに16グループを作り「将来につなぐ兵庫の自然の恵み〜私たちができること〜」のテーマでグループディスカッションを行いました。グループディスカッションの内容については最後に発表を行いました。生物班の2名もグループを代表して発表を行うことができました。
兵庫県内の各地で自然保護などに取り組む多くの団体の活動を知り交流ができて大変有意義な1日でした。
参加した自然科学部生物班の3名 |
開会行事 |
口頭発表 |
テーマ「生物多様性龍高プラン」 |
ポスター発表 |
発表内容は簡易防獣柵と簡単無菌培養など |
グループディスカッション |
各自意見を付箋に書き込んでグループ化 |
グループの意見を発表する生物班生徒 |
2班の提案 |
【生物班】環境活動発表大会近畿地方大会で入賞
第10回全国ユース環境活動発表大会近畿地方大会(主催 環境省/独立行政法人環境再生保全機構/国連大学サスティナビリティ高等研究所)が、AP大阪駅前で開催され生物班が出場した。
一次選考会を通過した13団体が日頃取り組んでいる生物多様性の保全やSDGs活動についてプレゼンテーションを行った。龍野高校の発表内容は生物班や授業課題研究で生物多様性班が取り組んでいる「生物多様性龍高プラン」についてプレゼンテーションを行った。龍野高校からは生徒を代表して生物班の1年生2名が参加した。
発表会の後の審査時間を利用して生徒や指導教員の交流会もあり、いろいろな情報交換ができて楽しい時間を過ごすことができた。
全国大会の出場権は「最優秀賞」か「高校生が選ぶ特別賞」を受賞した団体に与えられる。また今年は第10回の記念大会なので「10周年記念賞」を受賞すれば北海道研修に参加することができる。
生物班は「先生が選ぶ特別賞」を受賞した。この賞は団体の指導教員による投票により決定する。全国大会への出場は逃したが参加校の先生方から高い評価を得ることができた。
他校の活動内容を知ることができ、学ぶことの多い貴重な体験であった
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【生物班】龍野東中学生と合同調査
龍野東中学校区にあるサギソウ群落の調査・トウカイコモウセンゴケ群落の保全活動について龍野東中学校の生徒と一緒に取り組みました。
サギソウ群落の調査については9月1日に人工交配をおこない、その効果について検証を行いました。サギソウの受粉はイチモンジセセリなどがおこなっていることはこれまでの観察からわかりました。結実率についてはこれまでの交配実験からも効果があることがわかっています。今年の人工交配でも未交配の株に比較して高い結実率を確認できました。
食虫植物のトウカイコモウセンゴケ群落の保全については、ため池周辺部からコシダ・ネザサの分布の拡大にともないトウカイコモウセンゴケ群落(イトイヌノハナヒゲ群落)が水際にしか生育できなくなっていました。そこで、日当たりを回復するためにコシダ・ネザサを刈り取りました。来年の3月の成長期前にはトウカイコモウセンゴケに被る落ち葉などを除去したいと思います。
最後に迎えがくるまでの時間を利用して、生物班の野外活動恒例の「10種おぼえるまで帰れま10」を行いました。播磨地方南部によくみられる、ウラジロやコシダ、サカキやヒサカキなどの植物の名前をみんなで覚えました。
地域住民の尽力により木道や解説板が整備されている |
白い点は交配実験中のサギソウ |
サギソウの果実の回収 |
果実の評価と記録 |
トウカイコモウセンゴケ群落にせまるコシダ・ネザザ |
食虫植物のトウカイモウセンゴケ |
コシダ・ネザサの刈り取りと除去 |
生物班恒例の「10種覚えるまで帰れま10」に挑戦 |