自然科学

【自然科学部】たつの市のオニバスの調査

 オニバスは国内最大の水草です。栄養条件がよければ1枚の葉が2m前後になります。兵庫県内では、瀬戸内海側のため池に稀に生育しています。兵庫県版レッドデータブック2020ではBランクに評価されており兵庫県内の個体群は10程度とされています。

 たつの市内のオニバスの今年の生育状況を確認するために、8月2日に調査に行きました。

 A池は平野部に位置し泥底の富栄養なため池です。水面の90%以上がヒシに覆われていました。オニバスの個体数は15株前後でした。1年草のオニバスは年によって発芽率が著しく変動します。今年はやや発芽率が悪かったようです。発芽率の良い年は個体数が数えきれないほどの大群落を形成します。

 B池はやや山間部の貧栄養なため池です。地域住人によりヒシモドキの保全活動がされています。例年であれば、落ち葉の堆積した泥底の南側で生育しているのですが、今年は北側の堤体にそって7株が生育していました。このあたりの底質は貧栄養な粘土だったの思うのですが、そのためなのかA池のオニバスに比較してやや小型でした。

 まだ、両方のため池ともに、オニバスのつぼみを確認することはできませんでしたが株のサイズから開花・結実してくれると思います。

A池 平野部で富栄養のため池

B池 やや山間部で貧栄養のため池

もうすぐツボミが上がるはず。

地域住民の保護により開花したヒシモドキ

 

【自然科学部】柳池生物多様性野外実験場でヒシの除草作業

2022年7月30日、太子町総合公園柳池内の生物多様性野外実験場で、ヒシの除去作業を行いました。ヒシは在来種の浮葉植物で、やや富栄養な条件下では爆発的に繁殖します。柳池の生物多様性野外実験場では兵庫県下ではたつの市内に1カ所しか自生地がない、希少植物ヒシモドキなどの絶滅危惧種の生息域外保全を行っています。ザリガニやコイなどの影響を心配したのですが、自生地以上に順調な生育をしており、6月中旬以降栽培では開花困難な、開放花も数多く咲かせています。

 実験場内にヒシが入り込みヒシモドキの生育を妨げないように、侵入防止フェンス付近のヒシを除去しました。

 また、授業「探究」で実験に使用するヒシとヒシモドキを採集しました。これまでの研究でヒシモドキがヒシと似た生育環境で育つ植物だが、ヒシが繁栄しヒシモドキが絶滅する原因として、「種子の機能」「根の機能」などの差があることは分かっています。今回の実験ではヒシモドキが絶滅危惧種になった原因の一つに、「除草剤などの薬剤耐性が極めて乏しいため」という仮説を検証する予定です。

手前:ヒシモドキ(絶滅危惧種) 奥:ヒシ(普通種)

左:ヒシ(普通種)  右:ヒシモドキ(絶滅危惧種) 

ヒシの除去前 侵入防止フェンスをヒシが圧迫している

ヒシの除去 水温は気温より低くため池内は案外快適

 

ヒシ除去後 左前の植物がヒシモドキ  右奥はヒシ 

 ヒシモドキは水深90cm付近で開放花が開花

 

【自然科学部】 「科学の屋台村」に「不思議な世界 食虫植物」で出展しました

 令和4年7月23日(土)・24日(日)に姫路科学館などで開催された「桜山公園まつりウィズコロナ」の「科学の屋台村」に自然科学部が出展しました。完全事前予約抽選制で開催され、来館される家族も例年に比べて少なくさみしい「科学の屋台村」でした。しかし昨年・一昨年と2年間新型コロナウイルス感染防止のため中止だったので大きな前進といえます。 

 龍野高校自然科学部の出展内容は「不思議な世界 食虫植物」と題して、食虫植物の実物を観察しながら、「なぜ虫を食べる必要があるのか?」「どのように虫を捕まえるのか?」「ハエトリソウの捕虫実験」などの解説や実験を参加者のみなさんと楽しみました。

 事前予約されていた方には、龍野高校で栽培増殖したハエトリソウやモウセンゴケ類、サラセニア、ムシトリスミレ、ムジナモなどをおみやげにプレゼントしました。栽培については簡単な説明しかできませんでしたが、本やインターネットで栽培方法を調べて大切に育ててほしいと思います。

 「科学の屋台村」を開催していただいた、姫路科学館のみなさんありがとうございました。

 参加していただいた小学生・幼稚園児・保育園児のみなさん。みなさんが中学生・高校生になったとき、みなさんが子どもたちに科学の面白さを伝えてくれる日を楽しみにしています。

 またどこかでお会いしましょう。

自然科学部生物班だけでなく化学班・物理班からも応援参加

展示品 はじめて食虫植物を見る人もいました

「ハエトリソウはどうやって、虫を判断するの?」

例年よりは少ないのですが、多くの家族に説明させていただきました。

ハエトリソウの捕虫実験

プレゼント用 ハエトリソウ、サラセニア等

「食虫植物展」で、自然科学部の研究成果を展示

 姫路市立手柄山温室植物で開催されている、「食虫植物展」で自然科学部の研究成果をポスター展示させていただいています。

 内容は、食虫植物のモウセンゴケの進化についてです。食虫植物のモウセンゴケの交配種に、動物性・植物性さまざまな試料を腺毛や葉身にのせた時の腺毛の運動や葉身の屈曲度合いを、タイムラプス機能付きのデジタルカメラで記録して分析しました。その結果、動物性の試料に限らず、植物性の試料についても腺毛や葉身の運動が確認できました。

 モウセンゴケは進化の過程で、はじめは花粉や胞子などの植物性の付着物を養分にしながら、次第に小型昆虫などの動物に対しても確実に捕虫できるように腺毛や葉身の運動を獲得したと考えられます。

 この研究成果は2020年に姫路市で開催予定であった「第13回食虫植物国際会議 in 姫路」で発表予定でした。しかし新型コロナウイルスが世界中で蔓延したため、国際会議は2023年の開催をめざし延期されています。(食虫植物国際会議HP)

 当時の研究を行った生徒たちは卒業してしまいましたが、2023年に姫路市で食虫植物の国際会議が開催されたときは、龍野高校からも何らかの研究発表ができるようにがんばりたいと思います。

 

食虫植物展は 8月31日まで開催します

ウツボカズラの大株

世界のモウセンゴケと研究成果の展示

モウセンゴケの一種 アデラーエ(豪州産)

【生物多様性龍高プラン】 幻の花 絶滅危惧種ヒシモドキの開花

 昨年より龍野高校課題研究生物多様性班(ため池班)と自然科学部が、太子町まちづくり課と協働で太子町総合公園柳池で「ため池を活用した絶滅危惧植物の生息域外保全」の野外実験を行っている。

 昨年度、挿し木などで移入したヒシモドキが結実し、今春発芽、そして現在開花している。

 ヒシモドキは全国的に希少な水草で、兵庫県内にはたつの市内のため池1カ所にしか自生していない。その自生地もため池の改修工事後、水深が深くなり、さらに天敵のブラックバスがいなくなったことでアメリカザリガニが増殖するなど環境の変化により絶滅の危険性が増大している。

 ヒシモドキの野外絶滅に備えて、栽培による生息域外保全を長年取り組んできたが、水鉢などでの栽培条件下では開放花が咲くことは極めてまれである。昨年から、ため池を活用した生息域外保全に取り組んできたが、捕食者のコイがいるためかアメリカザリガニの被害も少なく、昨年は開花を確認できなかったが今年はじめて開放花を咲かせた。

 ヒシモドキが希少植物であるだけでなく、栽培条件下では開花しにくいこともあり、「幻の花」といえる。

 なお6月12日にアメリカオニアザミの駆除をおこなったが、開花株は順調に枯死していた。ただし、未開花のため除草剤の散布を逃れた幼苗(ロゼット状)がまだ残されていることがわかったので、今後再度駆除作業を行いたい。

 

 

 

 柳池生物多様性野外実験場

 

順調に生育するヒシモドキ (周辺にはヒシも自生)

 ヒシモドキの開花状況 通常閉鎖花で結実する

 ヒシモドキの開放花 

枯死するアメリカオニアザミの開花株

薬剤散布を逃れた幼株

 

 

 

 

【自然科学部】 アメリカオニアザミの駆除

 太子町総合公園で要注意外来植物のアメリカオニアザミの駆除を行いました。

 アメリカオニアザミはヨーロッパ原産の外来植物でアメリカから輸入された飼料に混入し帰化したそうです。

 花は大変美しく鑑賞価値があるのですが、全草に鋭いトゲがありシカも食害することがありません。

 多くの花を咲かせ、長い冠毛を持つ種子は遠くまで飛散します。昨年の課題研究生物多様性班の植物相の調査で太子町総合公園柳池に、アメリカオニアザミが造成につかわれた用土とともにもちこまれ生育地が拡大していることが分かりました。このまま放置しておくと、公園で遊ぶ幼児・児童がけがをする危険性があるので、対策を太子町まちづくり課担当者と協議しました。草刈り機では根を枯らすことが困難で再生しやすいことから、農地用の除草剤を葉面散布し駆除することにしました。

 今回の駆除では、アメリカオニアザミに除草剤を散布した後、効果不足の場合でも種子の形成と飛散を防止するために花茎を切除しました。すでに園路にも分布を拡大しており、今後も継続的な観察と駆除を行う予定です。

 アメリカオニアザミの除草剤の散布後、龍野高校生物多様性実験場にノジギクとフジバカマの苗を移植しました。

 

柳池の最大の群落 除草剤散布後、花茎を切除

 園路沿いに生育するアメリカオニアザミ

通路に生育するアメリカオニアザミ

チョウやハチなど訪花昆虫は多い(写真 モンキアゲハ)

ノジギクの苗の移植

 

 

【自然科学部】 姫路市の福泊海岸で海浜植生調査

5月29日、西播磨地区の自然科学系クラブが姫路市の福泊海岸に集合し、海浜植物の植生調査をおこなった。

福泊海岸は,姫路市的形町にあり播磨灘に面した人工海浜である。1989年に造成され,2002年に海浜植物の生育が確認された。

遷移の経過を記録すること、さらに西播磨地区自然科学系クラブの活性化などを目的として2005年に高校生が主体となって植生調査を実施した。以降は毎年、西播地区の自然科学系クラブの高校生があつまり、兵庫県生物学会と兵庫県教育研究会生物部会西播磨支部が共同で植生調査を継続してきた。2020年と2021年はコロナ過のため高校生による調査は3年ぶりに実施することができた。

 開会式の後、本校自然科学部顧問の田村教諭より簡単に植生調査方法など説明があり、各校・各班に分かれて調査をおこなった。

広い海浜の植物を調べるために、海岸沿いの北側歩道から海岸に下るコンクリート階段を起点として、砂浜を横断して波打ち際近く植生がなくなるところを終点に、西から東へ10m間隔でライントランセクトを19本設置した。トランセクト起点から終点まで1m×1mの方形区を連続的に設けて,方形区内の全ての植物名と被度を記録した。

 調査の結果、コウボウムギやコウボウシバの定着。ハマゴウやハマボウフウの大株の出現や、オカヒジキやツルナの分布の拡大などが確認できた。近年砂浜を攪乱するような大型台風がなかったことがこのような結果につながっていると考えられる。

 開会式 生物部会西播支部長からの挨拶

 調査前に、写真と標本を使って事前学習

 陸から海へ設置されたライントランセクト

 各校・各班に分かれての植生調査

海岸を華やかに彩る、ハマヒルガオ

潮風に耐えるためクチクラの発達するハマボウフウ

長い地下茎で分布を拡大するコウボウシバ

コウボウシバに似たコウボウムギ

オカヒジキは蒸散量を減らすため松葉状の葉をもつ

貯水組織が発達した多肉植物のツルナ

   

校内の里山で、生息域外野外実験 【自然科学部】

 5月27日、校内の里山でムラサキとフウランの生息域外保全に取り組みました。

 ムラサキはたつの市新宮町産で、すでに現地では野生絶滅しています。しかし実生による累代栽培でたつの市産ムラサキの系統保全を行っています。今回は、簡易防獣柵による効果と、無潅水栽培による個体の維持が可能か調べたいと思います。

 野外実験が成功すれば、野生絶滅した現地の復元などに一歩前進できるのではないかと思います。

 フウランはたつの市内の神社から提供された株です。落雷により着生していた木が枯死し、倒木の危険性があったため枝の伐採時に着生していた株を提供していただき、校内の中庭で栽培していました。しかし、シカの食害にあうなどしたため、シカに食害されにくい高さのアラカシの樹幹に麻縄でしばりつけ、着生させることにしました。現在、根が成長をはじめていますが、うまくいけば今年中には着生するのではないかと思います。

 ムラサキもフウランも兵庫県レッドデータAランクの植物です。もし野外で見かける機会がありましたら、継続的な観察を行い、写真撮影など記録を残してください。そして、減少が著しいと判断されたら保全のため人と自然の博物館など専門家に相談してください。

径1mmの針金ネットで、簡易防獣柵を製作

2年前に、校内花壇に植えたムラサキの開花

校内の里山に、ムラサキを移植

簡易防獣柵で保護したムラサキの苗

フウランの移植 麻縄でアラカシに縛り付ける

 

白い根は今年発根した部分。樹皮に接触すると着生する

 

「全国花のまちづくり姫路大会」に姫路市花サギソウの研究成果を展示 【自然科学部】

花を生かした地域の街づくりに取り組む「全国花のまちづくり姫路大会」が21日、アクリエひめじで開催された。

姫路市内の高校生も、華道部や園芸部が生け花や立体花壇などの作品を展示した。

龍野高校からは自然科学部で取り組んでいるサギソウ関係の研究について展示した。内容は姫路市花である絶滅危惧植物のサギソウの「微酸性電解水添加培地」を活用した無菌培養技術をポスターと無菌培養中の培養器の展示。またサギソウ自生地における保全活動として、人工交配や大型草本の刈り取りの効果などもポスター展示を行った。

 今回は、定期考査中のために部員の参加ができず残念であった。

 なお、姫路市以外の高校からは龍野高校のみの参加であったが、以前から調査研究活動などでお世話になっている姫路市立手柄山温室植物園から展示スペースを提供していただき参加することができた。ご協力ありがとうございました。

   
   

ササユリ・ギンランの生息域内保全

4月30日、兵庫県立大学理学部構内のササユリ・ギンランの生息地での保全活動を行いました。

理学部に行く前に、兵庫県RD Aランクのヤマブキソウの自生地での現状調査を行いました。

例年よりもシカによる食害が目立ちました。今後個体数が急激に減少することが予想されます。現在の群落の分布を、レーザー距離計を使用し記録しました。

理学部では、大学から許可をとりササユリとギンランの保全活動を行っています。全国的にいえることですがシカの増殖により、林床の植物は食害され激減しています。ササユリやギンランも30年前は、それほど珍しい植物ではなかったのですが、近年は開花株に成長する前にシカに食べられているようです。針金のネットをチューブ状に加工して株を囲みました。

午後からは、「ひょうご環境体験館」の見学に行きました。以前龍野高校でも勤務されていた芦谷館長はから館内の展示物の解説などをしていただき、その後屋外でジャコウアゲハの産卵などを観察しました。

 

ヤマブキソウ

群落を記録

簡易防獣柵を製作

 

ギンラン(クゲヌマラン?)

ササユリの幼株

 

保護柵の設置状況

ひょうご環境体験館の見学

ジャコウアゲハの産卵