自然科学

絶滅危惧種オキナグサの開花

   

 オキナグサは草原に生育する絶滅危惧植物です。スキー場や河川の草地などにわずかに生育地が残されているようですが、野生株をみることは極めて稀です。

 龍野高校で栽培している系統は、上郡町の植物愛好家により千種川(赤穂市坂越)で数十年前に採集され栽培により維持されていた株の子孫です。

 河川改修工事などにより、現地ではすでに絶滅しており、貴重な系統といえます。2020年の初夏に種子を分けてもらい、2年目の今年いくつか開花しました。将来、野生復帰を考えて校内の空き地に100粒以上の種を播き、無潅水・無肥料で育てた株も1株だけですが、開花しました。また、昨年7月に太子町内の野外実験場に播種1年後の苗を移植しました。地温が低いためかまだ開花はしていませんが、花芽を確認できました。

 今後シカの食害に注意し、採種し実生により千種川系統オキナグサの維持に努めたいと思います。

 将来的に、赤穂市立高雄小学校のハマウツボの保全活動のように、千種川流域の小学校の環境教育に活用してもらえるように、千種川系統オキナグサの生息域外保全を続けたいと思います。

 

プランター栽培

直播き栽培

絶滅危惧種オオツルコウジの保全活動

 オオツルコウジは照葉樹林の林床に生育する常緑低木です。普通種のヤブコウジに似ていますが2回りほど大型です。

 兵庫県南部のオオツルコウジ群落に、要注意外来植物のトキワツユクサが侵入し、オオツルコウジの生育に悪影響を与えています。そのため、自然科学部ではオオツルコウジ群落の保全のために、昨年に続き3月27日にトキワツユクサの除草作業を行いました。

 トキワツユクサは、除草をしても茎の一節からも発芽再生するので、どのようにしたら生育を抑制できるのか、除草場所のモニタリングについても今後行う予定です。

 

絶滅危惧種 オオツルコウジ

 除草作業

 

トキワツユクサの除草前

 

トキワツユクサの除草後 

 

絶滅危惧種ムラサキの移植

 

 ムラサキは、古来より染色や医薬品の原料として利用されてきた有用植物です。

 しかし、牛馬の飼育や、かやぶき屋根の減少に伴い、飼料や資材の供給の場となっていたススキ草原は放置され、遷移の進行に伴いなくなりました。その結果ムラサキだけでなくキキョウやオミナエシなどの草原生植物の多くが絶滅危惧種になっています。

 龍野高校で栽培してているムラサキはたつの市新宮町で発見されたムラサキの種子からの増殖品ですが、野生株はシカの食害のためか消滅しました。

 たつの市新宮町産ムラサキの絶滅を防止するために、龍野高校だけでなく姫路市立手柄山温室植物園などでも生息域外保全を行っています。

 長年の栽培からムラサキの特性もわかってきました。発芽率が低いといわれるムラサキですが、翌春に発芽しなくても、あきらめず管理すると一年後に発芽することもわかりました。

 今回の移植苗も昨年秋に播種したものではなく昨年春に発芽しなかったものが今春発芽した実生苗です。

写真左上 ポットに用土を入れて1本ずつ移植

 

写真右上 5つタネをまき、翌々春に5粒とも発芽。     中列 左2本は雑草の発芽苗

 

写真左下 ムラサキの花 5月~10月に開花

     今年の発芽苗も生育の早い株は6月から開花 

     予定。

 

 

 

 

太子町総合公園柳池で生物調査に参加

 3月19日、太子町総合公園柳池の清掃活動・生物調査に自然科学部5名と課題研究生物多様性班2名が参加しました。

 清掃活動・生物調査に先立って、前姫路市立手柄山温室植物園園長の松本修二氏による講演会がありました。「植物を守るには」というテーマで話していただきました。手柄山温室植物園の地域の希少植物の保全活動の様子や、生物多様性、絶滅危惧植物、特定外来種・要注意外来種についての解説や、生息域内保全・生息域外保全を行う場合の注意点についても説明がありました。

 龍野高校での地域の生物多様性の保全活動「生物多様性龍高プラン」に関連した、大変参考になる内容でした。

 講演会の後、まずは柳池周辺や池の中のごみを集めました。自然科学部の生徒も胸の高さまである長靴(胴長)を着用して、ため池内のビニール袋などのゴミを回収しました。

 清掃活動のあと、たも網を使って生き物調査をしました。前日までの雨のため、昨年よりも水位が高くコイなど魚は見えてはいるのですが捕獲できませんでした。しかし、メダカやアメリカザリガニ、ミナミヌマエビなどを採集し、みんなの採集品を持ちよって、松本さんたちに解説をしていただきました。

 新入生の皆さんも、生き物や野外活動に関心のある人は、一緒に活動しませんか。

講演会「植物を守る」

講演会 「植物を守るには」

      松本修二氏(手柄山温室植物園) 

清掃活動

生物調査 (後方は龍野高校生物多様性野外実験場)

採集品の解説

 

講演会のグラフィックレコード 

制作 NPO法人アンビシャスコーポレーション

講演会のグラフィックレコード 

 制作 NPO法人アンビシャスコーポレーション

県総合文化祭自然科学部門発表会で入賞 【自然科学部】

第45回兵庫県総合文化祭自然科学部門発表会が11月6日・7日に開催されました。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、6日の口頭発表は非公開で神戸高校で開催され、7日のポスター発表はバンドー神戸青少年科学館で会場入場者数を各校2人に制限して行われました。

 龍野高校の発表のテーマは「サギソウ共生菌の採集方法と培養方法の開発」です。

 絶滅危惧種サギソウの保全のためには、遺伝子多様性を維持するために実生による増殖技術が必要です。しかし、ラン科植物のサギソウの種子には胚乳が無く、共生菌からの養分供給がなければ発芽できません。そこで、自然の中から、共生菌を見つけ出し、その菌を培養する技術を開発したので発表しました。

 口頭発表の部では奨励賞を、ポスター発表の部では優秀賞を受賞しました。

 残念ながら、全国大会や近畿大会への出場権は獲得できませんでした。来年は今回開発した技術を用いた野外実験を行う予定です。

 自然保護や生きものに興味関心のある中学3年生のみなさんも私たちと一緒にサギソウなどの絶滅危惧種の保全活動に取り組みませんか。いろいろな発見があり面白いですよ。

 なお、詳しい研究内容については、兵庫県高等学校文化連盟自然科学部門ホームページ(https://dmzcms.hyogo-c.ed.jp/sizenkagakubu/NC3/cf/2021)に論文がありますのでご覧ください。

 

 

 

 

 

太子町総合公園 柳池で社会実験【自然科学部・課題研究生物多様性班】

近年シカの増殖などによる食害や、放棄水田の増加に伴うため池の管理不足により、播磨地方だけでなく全国的に絶滅危惧種が増加している。龍野高校ではこのような地域の生物多様性の保全を目的とした「生物多様性龍高プラン」に取り組んでいる。

※「生物多様性龍高プラン」は、「こころ豊かな美しい西播磨推進会議」(事務局西播磨県民局県民交流室県民活動支援課内)より助成をうけた教育活動です。

【参考】 ひょうごの環境 :: 令和2年度自然保護指導員研修会及びひょうごの生物多様性保全プロジェクト団体等活動発表会 (hyogo.lg.jp) https://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/jp/environment/leg_240/leg_292/2
 

水利権の消失したため池を活用して、法面に草原生の植物、水際に湿地生の植物、ため池内には抽水植物や浮葉植物などの水生植物の生息域外保全に活用できると考えた。太子町役場まちづくり課と連携し、太子町総合公園の柳池で、社会実験が行われることになった。そこで、龍野高校自然科学部と授業課題研究(生物多様性研究班)では、ため池を地域の絶滅危惧種の保全とともに自然観察の場としての活用実験をすることにした。自然科学部(5名)と課題研究田村班(4名)が、姫路市産のノジギクやフジバカマ、たつの市産のヒシモドキを植栽した。また、太子町役場からも担当者1名参加していただいた。

なお、事前調査として柳池とその周辺の植物について保全すべきものが残されていないか調査している。

外来植物のセイタカアワダチソウを駆除
浮葉植物のヒシの除去して、ヒシモドキなど植栽
整地して、ノジギクなどを植栽