自然科学
校内の里山で、生息域外野外実験 【自然科学部】
5月27日、校内の里山でムラサキとフウランの生息域外保全に取り組みました。
ムラサキはたつの市新宮町産で、すでに現地では野生絶滅しています。しかし実生による累代栽培でたつの市産ムラサキの系統保全を行っています。今回は、簡易防獣柵による効果と、無潅水栽培による個体の維持が可能か調べたいと思います。
野外実験が成功すれば、野生絶滅した現地の復元などに一歩前進できるのではないかと思います。
フウランはたつの市内の神社から提供された株です。落雷により着生していた木が枯死し、倒木の危険性があったため枝の伐採時に着生していた株を提供していただき、校内の中庭で栽培していました。しかし、シカの食害にあうなどしたため、シカに食害されにくい高さのアラカシの樹幹に麻縄でしばりつけ、着生させることにしました。現在、根が成長をはじめていますが、うまくいけば今年中には着生するのではないかと思います。
ムラサキもフウランも兵庫県レッドデータAランクの植物です。もし野外で見かける機会がありましたら、継続的な観察を行い、写真撮影など記録を残してください。そして、減少が著しいと判断されたら保全のため人と自然の博物館など専門家に相談してください。
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径1mmの針金ネットで、簡易防獣柵を製作 |
2年前に、校内花壇に植えたムラサキの開花 |
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校内の里山に、ムラサキを移植 |
簡易防獣柵で保護したムラサキの苗 |
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フウランの移植 麻縄でアラカシに縛り付ける |
白い根は今年発根した部分。樹皮に接触すると着生する |
「全国花のまちづくり姫路大会」に姫路市花サギソウの研究成果を展示 【自然科学部】
花を生かした地域の街づくりに取り組む「全国花のまちづくり姫路大会」が21日、アクリエひめじで開催された。
姫路市内の高校生も、華道部や園芸部が生け花や立体花壇などの作品を展示した。
龍野高校からは自然科学部で取り組んでいるサギソウ関係の研究について展示した。内容は姫路市花である絶滅危惧植物のサギソウの「微酸性電解水添加培地」を活用した無菌培養技術をポスターと無菌培養中の培養器の展示。またサギソウ自生地における保全活動として、人工交配や大型草本の刈り取りの効果などもポスター展示を行った。
今回は、定期考査中のために部員の参加ができず残念であった。
なお、姫路市以外の高校からは龍野高校のみの参加であったが、以前から調査研究活動などでお世話になっている姫路市立手柄山温室植物園から展示スペースを提供していただき参加することができた。ご協力ありがとうございました。
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ササユリ・ギンランの生息域内保全
4月30日、兵庫県立大学理学部構内のササユリ・ギンランの生息地での保全活動を行いました。
理学部に行く前に、兵庫県RD Aランクのヤマブキソウの自生地での現状調査を行いました。
例年よりもシカによる食害が目立ちました。今後個体数が急激に減少することが予想されます。現在の群落の分布を、レーザー距離計を使用し記録しました。
理学部では、大学から許可をとりササユリとギンランの保全活動を行っています。全国的にいえることですがシカの増殖により、林床の植物は食害され激減しています。ササユリやギンランも30年前は、それほど珍しい植物ではなかったのですが、近年は開花株に成長する前にシカに食べられているようです。針金のネットをチューブ状に加工して株を囲みました。
午後からは、「ひょうご環境体験館」の見学に行きました。以前龍野高校でも勤務されていた芦谷館長はから館内の展示物の解説などをしていただき、その後屋外でジャコウアゲハの産卵などを観察しました。
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ヤマブキソウ |
群落を記録 |
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簡易防獣柵を製作
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ギンラン(クゲヌマラン?) |
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ササユリの幼株
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保護柵の設置状況 |
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ひょうご環境体験館の見学 |
ジャコウアゲハの産卵 |
絶滅危惧種オチフジの移植
オチフジは、フジの花の咲くころに、渓流に面する落葉樹林の林床に生育するシソ科の植物です。日本の固有種で、地球上では現在西播磨地方の数カ所にしか生育していません。初めて発見されたのは和歌山県高野山(真言宗本山)奥の院です。西播磨の生育地の一つが船越山で、船越山には真言宗別格本山瑠璃寺があり、たびたび本山へ僧侶を派遣していました。和歌山では高野山の1か所にしかないオチフジは、もともと船越山から僧侶が移植した株ではないかといわれています。
播磨高原を開発する時に環境アセスメント調査が行われ、多くの貴重な植物が見つかりました。オチフジもそのような植物の一種です。上郡町金出地ダム建設にともない水没するオチフジの自生地から、SPring-8や県立大理学部、近隣の小・中・高等学校に移植されました。
龍野高校にあるオチフジは、県立大附属高校に移植され繁殖した株から、挿し木により増やした金出地系統の株です。生息域外保全のため、4月22日ポット苗を校内に地植えを行いました。環境に適応できれば、ポットで栽培するよりも生育は安定すると思います。
絶滅危惧種オキナグサの開花
オキナグサは草原に生育する絶滅危惧植物です。スキー場や河川の草地などにわずかに生育地が残されているようですが、野生株をみることは極めて稀です。
龍野高校で栽培している系統は、上郡町の植物愛好家により千種川(赤穂市坂越)で数十年前に採集され栽培により維持されていた株の子孫です。
河川改修工事などにより、現地ではすでに絶滅しており、貴重な系統といえます。2020年の初夏に種子を分けてもらい、2年目の今年いくつか開花しました。将来、野生復帰を考えて校内の空き地に100粒以上の種を播き、無潅水・無肥料で育てた株も1株だけですが、開花しました。また、昨年7月に太子町内の野外実験場に播種1年後の苗を移植しました。地温が低いためかまだ開花はしていませんが、花芽を確認できました。
今後シカの食害に注意し、採種し実生により千種川系統オキナグサの維持に努めたいと思います。
将来的に、赤穂市立高雄小学校のハマウツボの保全活動のように、千種川流域の小学校の環境教育に活用してもらえるように、千種川系統オキナグサの生息域外保全を続けたいと思います。
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プランター栽培 |
直播き栽培 |