校長室より
成熟スイッチ
成熟スイッチ
皆様、明けましておめでとうございます。2023年が始まりました。今年こそ平和な世界の実現を望んでやみません。
さて今回は、作家の林真理子さんの新著「成熟スイッチ」です。古希(70歳)に近づいている林真理子さんですが、日本大学の理事長を引き受け、雑誌の連載も続け、今回のエッセイの出版です。どれだけ元気でパワフルやねん、と感心するのですが、この本から引用します。
「年をとって、後輩に成熟の素晴らしさを教えてくれる人と、老いの醜さ見せつける人がいます。若い頃には、それほど違いがなかったかもしれない人たちが、歳月を経ると、まるで別世界の住人のように振り分けられていきます。成熟にも格差が生じてくるのです」
「成熟は一日にしてならず。しかし成熟への道は、成熟を目指したとたんに開けていきます。日常の小さな心がけの一つ一つ、世の中のいたるところに、成熟へと向かう小さなスイッチがちりばめられているのです」
確かに年齢を重ねていくにつれ、「老害」「暴走老人」になってしまってはいけません。私も我が身を振り返り、スイッチを探そうという気になりました。成熟するためには、早熟のまま、原宿や新宿で遊ばなければなりません。
怒らない男
怒らない男
作家の吉行淳之介さんは、温厚で「怒らない男」と呼ばれたそうですが、本人はそうでもないと書かれています。負の感情が爆発しそうになると、ある禅僧の次の言葉を思い出したそうです。
「気に入らぬ風もあろうに柳かな」
あの柳をごらん。気分のいい風ばかりではなかろうに素知らぬ顔で吹かれているじゃないか。と、そう考えれば少しは落ち着く。吉行さんによれば「だいたい効き目がある」そうです。
本当に怒らなければならないこともたくさんあると思います。しかし、後になって冷静に考えてみると、そこまで腹を立てる必要もなかったことも数多いのではないでしょうか。腹立たしいことがあったときに、柳の木を思い出してみることも大切かもしれません。2022年も終わりを迎えますが、来年は腹立たしいことが少なくなるような年にしたいものです。腹立つことは、巨人の原辰徳監督に任せましょう。
トマ・ピケティ
トマ・ピケティ
その筋では有名な人物であるトマ・ピケティです。1971年に生まれたフランスの経済学者です。彼を有名にしたのは、2013年の著書「21世紀の資本」です。当然フランス語で書かれた本ですが、世界10数カ国語に翻訳され、累計百万部を超えるベストセラーになりました。日本語版はみすず書房が2014年に出版しましたが、728ページもあり、定価5500円にもかかわらず、13万部売れています。
「21世紀の資本」の内容を簡単に要約すると、次のようになります。「資本から得られる収益率が経済成長率を上回ると(実際にそうなっている)富は資本家へ蓄積される。そして富が公平に再分配されないことによって、貧困が社会や経済の不安定を引き起こすということを主題としている。この格差を是正するために、累進課税の富裕税を、それも世界的に導入することを提案している」この本が画期的だったのは、データが残っている範囲で、過去200年以上のデータを分析して、これまで収益率が経済成長率を上回ってきたことを実証したことにあります。
今回、香寺高等学校の図書室にトマ・ピケティの新著「来たれ、新たな社会主義」を購入してもらいました。この本は学術書に近い「21世紀の資本」とは異なり、フランスの新聞「ル・モンド」に書いたコラムをまとめたもので、かなり読みやすくなっています。この本から引用します。
「ハイパー資本主義はあまりにも行き過ぎてしまった。いまや私たちは、資本主義を超える新しい体制、すなわち、参加型かつ分散型、連邦主義的かつ民主主義的で、環境にやさしく、他民族共生かつ男女同権といった新しい形の社会主義について考える必要がある。私はそう確信している」
「社会主義」という言葉にネガティブなイメージを持つ人もいると思いますが、現在の資本主義が絶対的に正しいとも言えないように思います。トマ・ピケティの言うことが100%正しいかどうかは分かりませんが、考えてみる余地は多分にあるように思います。ピケティよりキティちゃんの方が可愛いのは間違いありませんが。
杜撰
杜撰
さて今回は杜撰(ずさん)です。物事が大雑把でいい加減、中途半端な様子を表す言葉ですが、私はこの言葉には語源があることを知りませんでした。
中国の宋の時代(960~1279)に実在した詩人である杜默(ともく)にあるとされています。名前の「杜(と)」と詩文を作成するという意味の「撰(さん)」が組み合わさり生まれたものです。杜默が作る詩や文章は、定型詩の形式に当てはまらないものが多く、当時いい加減と批判されました。その故事から、詩や文章など著作物において誤りが多い、ひいては、いい加減な様子を著す四字熟語として「杜默詩撰(ともく しさん)」という言葉ができ、「杜撰」という言葉が生まれたと言われています。
杜默にすれば迷惑な話ですが、それから千年も使われている言葉として残っているということは、逆にありがたい話なのかもしれません。計画性がなかったり、詰めが甘いということで、悪い意味で用いられてきました。私たちも杜撰な仕事をしないように心がけたいものですね。杜撰なことをすれば、悲惨な予算を組むことになり、遺産や資産をなくして破産してしまうかもしれません。
フリーのコーラ
フリーのコーラ
「木村先生は、親父ギャグというか、ダジャレが好きですね」とよく言われます。「はい、その通りです」と答えています。日本語は同音異義語が多く、また、脚韻や頭韻を踏むと、文章にリズムが出てくるので、私が書く文章や、人前でお話をする場面で、数多く利用しています。
しかし日本語以外の言語でも、このような例はたくさんあります。今でも私が鮮明に覚えているのが、1985年のアメリカ映画「バックトゥザフューチャー」の中の台詞です。主人公のマーティ(マイケルJフォックス)がタイムマシンに乗って、30年前の世界にタイムスリップしたときの話です。喫茶店だったか、ドラッグストアだったかで、マーティが好きな「ペプシコーラ」を注文するときに「FreeのCola」を頼みます。マーティが頼んだのはもちろん「Sugar Free」のコーラ、砂糖が入っていないコーラのつもりです。しかし、30年前の世界には「Sugar Free」のコーラは存在していませんから、店のおじさんは「Free(値段がタダ)のCola」なんかうちの店にはないと、怒ってしまいます。Freeという単語には、○○がない、という意味と、値段がタダ、という2つの意味があるから生じた、親父ギャグ、ダジャレだということです。当時の映画の日本語字幕では、Freeという単語の上に、マーティの台詞では○○がない、店のおじさんの台詞では値段がタダ、という風になっていたと思います。
このように、ダジャレは世界中で愛好されています。皆さんも生活の中に潤いを求めて、使用してみて下さい。ダジャレは、オシャレなワインのボジョレーや、コジャレたすじゃれ(すだれ)にも使われます。
学校紹介・美術工芸部紹介
サンテレビ「4時!キャッチ」2020/7/15
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