校長室より

校長室より

山紫水明

山紫水明

 山紫水明(さんしすいめい)という言葉は「日に映じて、山は紫に、澄んだ水は清くはっきりと見えること。山水の景色の清らかで美しいこと」という意味で、風光明媚(ふうこうめいび)な景色を表すものです。しかし普通、山は春から夏にかけては緑色だし、秋からは紅葉で黄色か赤色のはずです。山が紫色とはどういうことでしょう。

 四字熟語の漢字ですから、語源は中国の歴史書からのものと思いがちですが、実はこの言葉は日本の江戸時代後期に、平安時代から江戸時代までの歴史書「日本外史」を書いたことで有名な「頼山陽(らい さんよう 1781~1832)」が作った言葉です。頼山陽は京都鴨川の西岸に「水西荘(すいせいそう)」と名付けた居を構え、敷地内の書斎に「山紫水明処」という号をつけました。夕方に水西荘から東側を見ると、日が傾いて東山の山肌はすでに紫色にかげっているが、鴨川の川面は夕日の照り返しでまだ明るい。昼から夜に移り変わる夕暮れの短い間にだけ見られる、はかなくも美しい特別な景色を山紫水明と名付けたのです。後の人々は、時間を限定せずにただ美しい山水の景色を山紫水明と呼ぶようになっていった訳です。

 このように江戸時代には、まだまだ漢文の文化が主流でした。揖斐高(いび たかし)さんが書いた岩波新書の「江戸漢詩の情景」には、山紫水明以外にも多くの江戸時代の日本における漢詩が紹介されています。当時の学問といえば「儒学」とりわけ「朱子学」ですから、漢字ばかりです。漢字を知らないと、いい感じの幹事にはなれません。

 

カタール

カタール

 サッカーのワールドカップが開かれる、中東の国カタールです。アラビア半島に突き出したカタール半島で、面積は日本の秋田県と同じくらいの1427km2で、人口は250万人くらいの小さな国家です。国土の全域が砂漠気候であり、年間降水量が100ミリといいますから、日本で少し強い雨が1日降るときの降水量が、1年分ということになります。もちろん豊富な石油と天然ガスの産地ですから、経済的には豊かで、カタールでも大人気のスポーツであるサッカーのワールドカップを招致することができました。

 世界中で人気のあるヨーロッパのリーグ戦が毎年秋から春にかけて行われるため、これまでのワールドカップは、それを避けて夏の時期に実施されてきました。ですから最初はカタールでも夏に行うことを考えましたが、カタールの夏は気温が50℃になるくらいのとんでもない暑さなので、スタジアム全体を冷却する案が検討されたりもしました。結局夏の開催は諦めて、そのかわりヨーロッパリーグ戦を一時中断する(! 非常に大きな金額のお金が動いた?)ということで、開催に至りました。

 カタールは、本来のカタール人は人口の1割強しかおらず、残りの9割弱は南アジアや東南アジアからの外国人労働者で、特に男性労働者が大量に流入しているため、住民の4分の3が男性です。今回、狭い国家にスタジアムを作るために、かなり無理をして工事を行ったようで、外国人労働者の人権を無視した可能性が高いようです。そのためワールドカップの実施自体、どうなんだ、という意見もあり、ヨーロッパの中には、通常であればパブリックビューイングを実施するはずが、抗議の意味を込めて実施しない国もあるようです。でもワールドカップ自体を中止するということにはなりません。

 日本代表は、初戦のドイツ戦を逆転勝利という素晴らしいスタートを切りましたが、大きなスポーツの大会がお金まみれという現状はいかがなものか、という感じもします。ワールドカップはコップの中でアップして、シップを貼って、トップを目指しましょう。

 

これからのリーダー

これからのリーダー

 厚生労働省で事務次官を務めた村木厚子さん(木村ではない)は、これからの時代のリーダーに求められるのは「メンバーそれぞれの強みを生かすチームづくりだ」と言っています。そして「どんな上司が望まれますか」という問いには「情報を上げたいと思われる上司になることが大切だ」と話しています。

 「重要な情報が耳に入らずに『自分は聞いていない』という上司がいます。私もそう言いたいときはありますが、自分が部下の立場だったら、本当に大事な人には相談しています。もっとはっきりいうと、役に立つ上司のところには情報を持っていきます。大事なことを聞かされないのはリーダーとして格好悪いことなのかもしれません」

 確かに「私は聞いていない」と言って怒る社長や校長たちがいると聞いたことがあります。それは部下に対して「ちゃんと報告しない部下が悪い」と怒っているのでしょうが、実は聞かされていない自分の責任である、と考えることもできるわけです。怒る前に、自分のやり方を反省した方がよいのかもしれません。

 村木厚子さんは、厚労省の課長時代に事件に巻き込まれ、逮捕されましたが、実は冤罪(えんざい 無実なのに罪をかぶせられること)で裁判では無罪判決となり、厚労省に復帰して官僚としては最高位である事務次官になった人です。普通ではできないような経験をしてきた人だからこその説得力があります。生徒の皆さんも、情報を上げたいと思われる上司を目指しましょう。上司がよければ、調子に乗って、よい表紙が書けそうです。

 

二兎を追う

二兎を追う

 「二兎を追うものは一兎も得ず」ということわざは、もともと英語で「If you run after two hares you will catch neither」ということわざを日本語に訳したもののようです。「同時に2つのことをしようとする者はどちらの成功も得られない。1つの事柄に集中するのがよろしい」という意味です。しかしこのことわざに対して「二兎を追うものだけが二兎を得る」という言葉もあります。生徒の皆さんはどう考えますか。

 「文武両道」という言葉があります。中国の歴史書である「史記」にも記述があるようですが、日本では鎌倉時代以降の武士の世界で、文事と武事の両方に秀でることとして使われた言葉です。現在の高等学校でも、勉強と部活動の両立を目指すこととして、多くの学校の目標として用いられています。確かに、高校生には勉強はもちろんですが、部活動に取り組むことも大切で「二兎を追う」ことにつながります。

 総合学科の高等学校では、以前から「探究活動」に重きを置いてきました。探究は自分の興味関心のある事柄について、色々な方法を駆使しながら深堀していくもので、現在では普通科の高等学校にも広く取り入れられています。通常の学習活動と探究活動を両立させていくことも「二兎を追う」ことになると思います。

 ビジネスの世界では「二兎を追っていると三兎めが出てくる」という話もあるようです。多角経営を奨励するときには、適切なのかもしれません。皆さんも二兎を追うと、古都を問う事ができるかもしれません。

 

自信を持つ

自信を持つ

 生徒の皆さんは自信がありますか。どうすれば自信が持てるようになるのでしょうか。クラブの大きな大会に臨むとき、大学の入学試験を受けるとき、就職試験の面接を受けるとき、どれも緊張しますよね。これまでに経験のない状況になったとき、緊張したり、自信を持てなくなったりします。どうすればいいのでしょうか。

 まず、準備をしっかり行うことが1番大切です。大会前に練習をしっかりやって、試合に臨む。その大学の過去の入試問題を10年分くらいやり遂げてから、入試を受ける。先生方を利用し倒して、面接の練習を繰り返し行った後で面接試験を受ける。どこまで準備すれば100%になるのかは分かりませんが、しっかりした準備は必ず自信につながります。

 次は、自分を客観視することです。自分を自分以外の人から見たときに、どのように見えているのだろうと、想像してみることをおすすめします。緊張して、手足や唇が震えているとしたら「他人から見ても、緊張しているように見えるだろうな。でも、自分でもそのように思えているということは、私は落ち着いている」「大丈夫。これまでの人生の中で、1番緊張した○○のときよりも、私は落ち着いている」少し難しく感じるかもしれませんが、こういう習慣を身につけてしまえば、案外使えるようになるものです。

 最後は楽観的になることです。失敗しても、ミスをしても、命がなくなる訳ではありません。自分ではうまくいかなかったと思ったとしても、他人からは評価される場合もあります。頑張って、ダメならまた次に頑張れば大丈夫だ、と信じて対応することです。

 この3つの考え方は、私が40年以上昔の、大学受験のときに思ったことです。今でも本当に大変だった思いがありますが、やり遂げたことが私の自信につながっています。皆さんも、自信を持って、地震に負けずに、自身を発揮して下さい。