校長室より
周りがあきらめてくれる
周りがあきらめてくれる
兵庫県神河町の出身である女優の「のん」さんです。2006年にオーディションでグランプリを獲得し、本名の「能年玲奈(のうねん れな)」としてテレビや映画で活躍していましたが、いろいろなトラブルがあったようです。2016年から現在の「のん」という名前で活動しています。現在も映画「さかなのこ」では「さかなクン」をモデルにした役を演じています。
そののんさんが、あこがれの人だという「矢野顕子」さんと対談をしました。矢野顕子さんといえば、シンガーソングライターとして独創的な歌声で世界的に評価されています。坂本龍一さんの奥さんで、子どもさんはやはりミュージシャンの「坂本美雨」さんです。
のんさんは「どうやったら、やりたいことを貫いている矢野さんのようになれるのですか」と尋ねました。矢野さんの答えは「やりたいことをやり続けたら、周りがあきらめてくれるのよ」というものでした。のんさんには、やりたいことをやるために、相手を説得する考えはあっても、あきらめてもらう発想はありませんでした。「こんな言葉は矢野さんからしかきいたことがない。かっこいいなと思いましたね。余計なことを考えずに、シンプルにやりたいことをやろうと思うようになりました」
生徒の皆さんはどう思いますか。自分がやりたいと思うことがやれていますか。他人にどう思われるか、を気にしすぎて、最初から諦めていませんか。萎縮していませんか。自分がなにものであるのか、なにができるのか、なにがしたいのか、自己肯定感を持てていますか。周りがあきらめてくれるくらいに、突っ走ってみてはどうでしょうか。私は、周りがあきらめてくれるくらいの、親父ギャグラーを目指していますが、まだまだ道半ばです。あきら君が馬手(めて)をくれるかな。
むずかしいこと
むずかしいこと
「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをおもしろく」
私がこの「校長室より」で目指していることなのですが、もちろん、私が考えた台詞ではありません。作家や劇作家として著名な「井上ひさし(1934~2010)」さんの言葉です。
「私たちはとかく『やさしいことをむずかしく』「むずかしいことをあさく」『あさいことをつまらなく』語ってしまいがちです。『むずかしく』『あさく』『つまらない』文章を書くことは簡単だからです。深く考えないで、脊髄反射で、思い浮かんだことを書けばいいのですから。『むずかしく』『あさく』『つまらない』文章は、コンテンツを発信する側が受け取る相手のことより、自分の都合や思いを優先しているときに起きます。相手を雑に型にはめて単純化してしまうことで、思考停止になってしまっているのです」
私がこの井上ひさしさんの言葉を知ったのは、朝日新聞夕刊の「素粒子」というコラムを読んだときです。新しくこのコラムを担当する方が、座右の銘として、この言葉を書いていました。私自身も目指していますが、なかなかたどり着けない目標として、素晴らしい言葉です。生徒の皆さんに話す機会の多い私としては、常に心がけたいと思っています。
やさしく、ふかく、おもしろいこと、白い犬は、おもしろい(尾も白い)。
不思議なイギリス
不思議なイギリス
2022年のサッカーワールドカップは、中東のカタールで開催されます。32の参加国の中には、イングランドとウェールズが入っています。同じイギリスという国の中に属するはずなのに、これはどういうことでしょうか。
実はイギリスという国の正式な名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」といいます。グレートブリテン島と呼ばれ、イギリスの本体である島の中にイングランド、ウェールズ、スコットランドという3つの地域「カントリー」があり、隣にあるアイルランド島のうち、北東部の「北アイルランド」を含め、4つの「カントリー」からできています。国家としてはイギリスとして1つの国ですが、サッカーやラグビー等のスポーツでは、カントリー毎にチームを作っているので、イングランドとウェールズは異なる2つのチームとして出場します。日本から「関東チーム」と「関西チーム」が出場するようなものです。
もっと不思議なことは、アイルランド島という地続きの島で、北東部の北アイルランドはイギリスであり、それ以外の南西部は「アイルランド」という違う国になっています。これには長い歴史と、宗教の違い、文化の違い等があり、戦争も行われたりして複雑に絡み合って、現在のようになっています。これも日本でいうと、関ヶ原の戦いで徳川家康の東軍と、豊臣秀頼の西軍が別々の国として独立したようなものです。
イギリスというと、世界で最初に産業革命を行い「大英帝国」として(多くの地域を植民地として)発展した国ですが、最近ではEUから離脱したり、今年は70年に渡り在位してきたエリザベス女王が亡くなり、チャールズ皇太子が国王となったり、話題を提供しています。また政権党である保守党のゴタゴタがあり、ポリス・ジョンソン首相、リズ・トラス首相を経て、インド系のリシ・スナクが首相になります。これまでにマーガット・サッチャー、テリーザ・メイと2人の女性首相がいましたが、リズ・トラスは非常に短命の3人目の女性首相でした。日本では女性の総理大臣はこれまでにはいません。また外国にルーツを持つ人間が首相になることはなかなか考えにくいです。やはり英国は、えい国なのでしょうか。
幸福とは
幸福とは
人は誰しも「幸福」になりたいと思うものです。しかし、現実にはなかなかそうはいきません。少子高齢化に歯止めはかかりませんし、気候変動問題によって、将来の経済発展に期待は持てません。地域間で、世代間で格差は広がり続けています。政治に対する不信感もあり、ロシアとウクライナの戦争の行方も読めません。「人生は本質的に苦しみだ」と考える人がいても不思議ではありません。苦しみに満ちた人生を、いかに生きるべきかを考えた哲学者がドイツのショーペンハウアー(1788~1860)です。
彼は、生きる苦しみと向き合い、苦しみの源泉に他ならない欲望を否定し、エゴを超えていこうとしました。厳しい否定による悟りの境地である「意思の否定」を終着点とする「求道の哲学」を唱えました。なるほど、人間には欲望があるために、それが叶えられないとなると幸せにはなれません。最初から欲望を否定すれば、悲しみもなくなるというわけです。しかし、人間は本当に欲望をなくすることができるのでしょうか。ショーペンハウアーは晩年になり、その回答を示しました。
「人生をできるだけ快適で幸福なものにする」ためには「思慮分別のある人は、快楽ではなく、苦痛なきを目指す」ことが必要です。そして幸福の礎となる「3つの財宝」を規定します。第一に「その人は何者であるか」人柄や個性、人間性などの内面的性質の事で、健康や気質、知性等とそれらを磨いていくことも含まれます。第二に「その人は何を持っているか」金銭や土地といった財産、その人が外面的に所有するものです。第三に「いかなるイメージ、表象・印象を与えるか」他者からの評価であり、名誉や地位、名声等です。
私たちはたいてい、第二、第三のものを追い求めてしまいます。これらは「~がほしい」「~されたい」という欲望の対象で、どれほど多くを手に入れても、決して満足できないものです。もちろん、この第二、第三の財宝が全く価値がないものであるというのではなく、優先順位を明らかにする必要があるということです。第一の財宝は「内面の富」であり、これが「幸福の源泉」であるとします。人間は、若い間はなかなかこのように思うことができないように思います。他者からどのように見られるかは、気になるものです。しかしある程度年齢を重ねていくと、なるほどと思うようになってくるのも事実です。幸福を求めるためには、降伏せずに、合服を着ましょう。
富士山に登る人
富士山に登る人
日本大学というマンモス大学があります。前の理事長が大騒動を巻き起こして辞任してしまい、どうなるのかな、と思っていたら、卒業生で作家の林真理子さんが理事長に就任しました。林真理子さんと言えば、有名な作家で、小説やエッセイを大量に書いてきています。しかし、大学の理事長という職業は全く別の世界なので、大丈夫かな?と思っていました。その林真理子理事長のインタビューを読みました。そこには漫画「浮浪雲(はぐれぐも)」に出てくる次のフレーズが登場していました。
「富士山に登ろうと心に決めた人だけが富士山に登ったんです。散歩のついでに登った人は1人もいませんよ」
漫画「浮浪雲」は、ジョージ秋山さんが1973年から2017年にわたり長期連載した作品です。主人公の「雲」は普段ボーッとしていて、若い女性を見かけると「おねえちゃん、あちきと遊ばない?」と声をかける習慣があります。しかし剣の達人で、顔も広く、哲学的な台詞を多く残しています。大変人気があったので、渡哲也さんやビートたけしさん主演によるテレビドラマやアニメ作品にもなりました。「富士山~」のフレーズも浮浪雲の台詞です。
富士山に登ろうと思えば、かなりの準備が必要です。道具もいりますし、体力も必要です。高山病の対策も考えねばなりません。準備をしても、当日の天候や風などで登頂できないこともあるでしょう。心に決めないとできないことです。散歩がてらでは不可能です。もちろんこれは、富士山登頂に限らず、あらゆる事に当てはまると思います。生徒の皆さんでは、○○大学に合格したい、次の部活動の大会で優勝したい、来年の体育大会や合唱コンクールではクラス優勝をしたい等、何でも当てはまると思います。
「優勝しようと心に決めた人だけが優勝するんです。何の準備もしないで優勝するはずがありません」
私も、小さくても何でも目標をもって、それに向かってしっかり努力をする生活を続けていきたいと思いました。優勝するためには、闘将が交渉をして、通商をして報奨が必要です。
学校紹介・美術工芸部紹介
サンテレビ「4時!キャッチ」2020/7/15
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