校長室より

2021年11月の記事一覧

好きこそものの上手なれ

好きこそものの上手なれ

 ことわざシリーズを続けます。生徒の皆さんは、何か好きなものやことはありますか。ゲームをすること、YouTubeやTicTocを見ること、野球をすること、絵を描くこと、友達とマクドに行くこと、人によってそれぞれ好きな事があると思います。嫌いなことをやらされることは苦痛に感じますが、好きなことなら頑張れると思いませんか。

    今年度のノーベル物理学賞を授与された、真鍋淑郎さんが言われた言葉です。

「好きこそものの上手なれ」

 なるほど、自分の好きなことに対しては、熱中できる、時間を忘れる、持続することができる、と思います。特に芸術の業界ではこのことがよく当てはまるのではないでしょうか。絵画を描くことが好きな人は、長時間集中して多くの絵画を制作することができます。楽器の演奏が好きな人は、何回も同じフレーズの練習を繰り返すことを苦にしません。それほど興味のない人から見ると、それは驚くべき集中力です。

 さて、私が20年程前に担任をした生徒の話です。彼は高校入学時から非常に優秀な成績で、特に苦手な教科もありませんでした。当時の私は当然のように彼に対して

「東京大学や京都大学を受験してみないか」と話しました。彼の答えは

「僕は小さい頃から虫が好きで、大学でも虫の研究をしたいと思っています。それには、○○大学の○○学部の○○教授の研究室が一番だと思っているので、そこへ進学するつもりです」私はぐうの音も出ませんでした。

「よくわかった。それがあなたにとって、最善の進路先ですね」

    その後彼は志望の大学に進学し、好きな虫の研究を続けています。研究のためという理由で、人が立ち入ってはいけないエリアで虫の採集活動もしているそうで、その話をしてくれたときの、彼のキラキラ光る目の輝きを今でもよく覚えています。

 皆さんも、好きなことにとことん熱中してみてはいかがですか。また、まだそれだけ熱中する好きなことがないという皆さんは、是非高校生活の中で、見つけていってください。農園に登園して、講演を聞きながら、応援しています。

 

 

募金活動ありがとう

募金活動ありがとう

 香寺高校は例年沖縄へ修学旅行に行ってきました。2019年に沖縄を代表する建築物である首里城が火災のために焼失しました。現在再建中と聞いています。そこで首里城の再建の役に立ちたいということで、3年前から毎年首里城火災復旧支援募金活動を行っています。今年は11月18、19日に校内で、20日には姫路駅前で街頭募金活動を実施しました。生徒たちは最初は引っ込み思案な様子でしたが、次第に呼びかけの声も大きくなり、通路の中央へ少し踏み出しながら2時間の活動を終えることができました。

 多くの市民の方々にご協力をいただき、大変ありがとうございました。その中でありがたいお言葉をちょうだいしました。

「私も香寺高校の卒業生です。高校生たちが頑張っている姿を見て、うれしいです」

「高校生たちが頑張っているので、これでもどうぞ」とお菓子の差し入れをいただきました。

 わずかな時間でしたが、生徒たちはやりきった充実感にあふれていました。高校生は日々成長していくものだなと改めて感じ取れた1日になりました。結果として昨年度を上回る140009円もの募金が集まりました。集まった募金は全額沖縄県に寄付させていただきます。

    今年の2年生の修学旅行は、コロナ渦に配慮して、USJと京都観光の一泊二日になりましたが、来年は集まった募金とともに、是非沖縄を訪れたいと思っています。

 

 

人間万事塞翁が馬

人間万事塞翁が馬

 ことわざシリーズ第2回は「人間万事塞翁が馬」です。これは有名なことわざですので、聞いたことがある人も多いと思います。中国前漢時代に書かれた「淮南子(えなんじ)」が出典で「塞翁(さいおう)」とは、北方の「砦・寨(とりで)」に住むとされた老人(翁)のことです。

 昔、塞翁が飼っていた馬がある日、逃げてしまいました。人々が慰めに行くと、塞翁は「これは幸いになるだろう」と言いました。数ヶ月後、逃げた馬は立派な駿馬(しゅんめ 足の速い優れた馬)を連れて帰ってきたので、人々がお祝いに行くと、今度は「これは災いになるだろう」と言いました。塞翁の息子が駿馬に乗っていると、落馬して足の骨を折ってしまいました。人々がお見舞いに行くと「これは幸いになるだろう」と言いました。1年後、隣国との戦乱が起こり、若者たちはほとんど戦死しましたが、塞翁の息子は足を骨折していたため、兵役を逃れることができ、無事にすみました。この故事から「幸福」と思えることが、後に「不幸」となることもあり、またその逆もあることのたとえとして「塞翁が馬」と言うようになりました。

 生徒の皆さんは「ムダなことはしたくない」と思ってはいませんか。例えば、数学の勉強が嫌いな人は「なんで数学なんか、勉強せんとあかんのか」と思ったことがあるでしょう。運動が苦手な人は体育が嫌いかもしれません。古文漢文の勉強が何の役にたつのかと思う人もいるでしょう。行きたい大学がある人は、その大学の入試科目以外の勉強はムダだと思うかもしれません。しかし私は職業柄かもしれませんが、高校で習ったことは全て私の役に立っていると感じています。若い間に思い切りムダなことをすることが、人生を豊かにすると信じています。自分の視野を広く持つことは、これからのグローバルな社会にとって本当に大切な事だと思います。人間万事塞翁が馬ですから、とりあえず目の前にあることに集中していきましょう。塞翁が馬、なすがまま、茄子がママ、キュウリがパパ、と活用は、しませんね。

 

汗牛充棟

汗牛充棟

 それでは、ことわざシリーズの始まりです。栄えある第1回は「汗牛充棟(かんぎゅうじゅうとう)」です。少し難しく、知らなければ読めない言葉だと思います。私も7年前に、当時勤務していた高校の国語(漢文の大家)の先生に教えてもらうまでは知りませんでした。

 出典は中国の唐の時代「柳宗元(りゅうそうげん)」という人の書いた「陸文通先生墓表(りくぶんつうせんせいぼひょう)」です。「所有している書物がとても多いことのたとえ」です。車に載せれば車を引く牛が汗をかくほど重く、家の中で積み上げれば天井の棟木(むなぎ)に届くほど書物が多いという意味です。「牛に汗し棟に充つ(うしにあせしむなぎにみつ)」とも訓読するようです。唐の時代にはまだ印刷の技術はありませんから、当然書物は紙に墨で手書きしたものでしょう。その貴重な書物が汗牛充棟ということは、かなりな財産ということになります。

 もちろん世の中には私より読書家の方は、星の数ほどおられると思いますが、私の住まいにも「充棟」まではいきませんが、かなりの数の本がありました。整理することと、若い高校生に読んでもらいたいということで、前任の高校の図書室に「木村文庫」を作ってもらい、ある程度の量の本を寄贈させてもらいました。現在の私は文字通り汗牛充棟である、姫路や加古川の図書館と、本屋さんを利用させてもらっている日々です。今はインターネットで何でも調べられる時代ですが、ネット情報は浮かんでは消えるものもあり、詳しく調べるためには書籍の利用は大切です。生徒の皆さんは、身近なところである香寺高校の図書室も、新刊の本もそろっており、是非利用してみてください。充棟させるためには、ある程度の本を充当させて、野球の試合では重盗はよろしいが、銃刀はいりません。

 

言語化する

言語化する

 日本の女子体操界を引っ張ってきた、村上茉愛(むらかみ まい)選手が現役引退を表明しました。村上選手は東京オリンピックの体操種目別床の演技で銅メダル、秋に行われた世界選手権でも床で金メダルを獲得しました。彼女は引退後、指導者の道を歩むそうですが、こんなことを言われていました。

「これまでは体操競技を、演技で表現してきた。これからは、体操の素晴らしさを言語化して表現しなければいけない」

    この「言語化する」ということは、大変難しいことですが、とても大切な事だと思います。例えば、絵画が美しい、音楽が魅力的だ、ご飯が美味しい、という事実があったとします。絵画を見る、音楽を聴く、ご飯を食べるという実際の体験ができるのであれば、それが一番です。しかし、みんなが体験できることばかりではありません。ですから、絵画の美しさを、音楽の魅力を、ご飯の美味しさを言葉で表現して、伝える必要があります。

    香寺高校では12月に3年次、2年次それぞれ「総合的な探究の時間」の発表会があります。また2月には「総合学科発表会」も予定されています。この会は、探究してきた内容を言語化して、皆さんに伝えるものです。大変な作業だと思いますが、自分の力を発揮する良い機会だと思います。また、3年次の皆さんは就職、進学するにあたって、しっかり練習をして、面接試験に臨んだ、またはこれから臨んでいくと思います。このときも、自分の考えや経験を言語化することが必要です。「3年間○○部で頑張りました」で終わるのではなく、どんな苦労があって、どんな経験をしたので、自分がどれくらい成長することができたのか、やはり体験を言語化することが必要です。この力は大学へ進学した後も、就職試験等で必ずまた必要になります。

    もちろん私は日頃から親父ギャグを考え、言語化することを実践していますから、言語化はめっちゃ得意です。特異な話も得意です。

 

 

こども食堂

こども食堂

 生徒の皆さんは「こども食堂」をご存じですか。子供やその親、および地域の人々に対し、無料または安価で栄養のある食事や温かな団欒を提供するための日本の社会活動で、2010年代頃よりマスコミで多く報じられたことで動きが活発化し、孤食の解決、子供と大人たちの繋がりや地域のコミュニティの連携の有効な手段として、日本各地で同様の運動が急増しています。そして現在では全国で約5000団体が活動しているようです。

 例えば姫路市のHPを見ると、14の団体が紹介されています。そのうちの一つに、的形町にある善正寺の横山正仁住職さんが、白浜町の灘市民センターを会場に運営されている「白浜こども食堂」があります。毎月第4日曜日に開かれていますが、このこども食堂に香寺高校の授業の一つである「保育技術」を選択した生徒たちが、地域のボランティアの方々と共に継続的に参加しています。その様子が写真入りで、11月3日神戸新聞の地方版、広域Bわがまち「灘新聞」で紹介されました。7月のメニューは「ガパオライスとサバ缶のコロッケ」ということで、大変美味しそうに出来上がっていました。

 様々な理由により、子供の貧困が取り上げられています。本来は国や地方自治体の福祉行政が対応すべき問題だと思いますが、現実として「こども食堂」の活動に支えられている面は多く、一層の充実が望まれています。運営の主体はNPO法人や民間団体、住民による融資、個人など、ボランティアによるものが大部分です。運営に要する費用や食材の調達、会場の問題、継続的なボランティアスタッフの確保など、課題は多いようです。どんな形であれ、協力することができれば素晴らしいなと思います。こども食堂の運営に、柔道、剣道、弓道、茶道、華道の生徒が参加したらドウでしょうか。