校長室より
文明の衝突
文明の衝突
戦争状態になっています。21世紀になって、こんな前近代的な出来事が起こるとは、人間とはいかに愚かな生き物なのでしょうか。ロシアのプーチン大統領がいなければ、こんな事にはなっていないと思いますが、プーチンだけが悪者であるとも思えません。第2、第3のプーチンが出てこないとも限りません。一刻も早く、戦闘状態が終結することを祈るばかりです。
さて、1996年にサミュエル・ハンチントンが書いた「文明の衝突」という書籍が出版されました。日本語訳は1998年に出され、かなりな評判になりました。これは1991年に旧ソ連が崩壊して、「冷戦」と呼ばれた資本主義対共産主義の対決が終了して、平和な世界が訪れるかもしれないという期待があった時期に書かれたものです。そこには、冷戦が終了したとしても、異なる文明の国の間では、衝突が起こりうるということが予言されていました。例えば、アメリカとイスラム勢力との対立、アメリカと中国との対立等です。まさに、冷戦後の対立関係を予言して、的中しているところがあります。またこの本の中には「ロシアがウクライナを攻撃するかもしれない」という一節があります。もちろん歴史的にはウクライナもロシアもソビエト連邦を作っていた兄弟国ですから、私は戦争になることなどは予測できないと思っていました。しかし、ウクライナはロシアやヨーロッパから侵略された歴史を持ち、どちらかと言うとヨーロッパに親近感を持つ人々が多いように思われます。ハンチントン氏は、いわゆるヨーロッパとロシアの間には「文明の衝突」があるかもしれないと、20年以上前に予測をしていました。
戦争を始めるのも人間ですから、戦争を止めるのも人間の力だと思います。私たちの力も微力ですが、無力ではないと思っています。
旧暦と二十四節気
旧暦と二十四節気
現在の日本の暦(こよみ)は、1582年ローマ教皇グレゴリウス13世が改良した太陽暦である「グレゴリオ暦」を採用していますが、この暦を採用したのは1872年、明治5年からです。それまではいわゆる「旧暦」と称する「太陰太陽暦」を用いていました。太陽暦はその名の通り、太陽の運行に着目した暦ですが、太陰暦は月の満ち欠けに着目した暦で、古代中国で成立したものを日本も長く採用してきました。古文を勉強するときに、現在の暦とずれているのはこのためです。
太陰暦では1ヶ月という期間を、満月から満月まで、または新月から新月までとします。そうすると1ヶ月は29日または30日になり、1ヶ月という単位は考えやすいものになります。しかし、1年12ヶ月は約354日になるため、太陽暦の365日に対して約11日短くなるため、3年に1回程度、閏月(うるうづき)を入れて季節の調整をしなければなりませんでした。
旧正月というのは、太陰暦で元日にあたる日のことですが、通常は雨水(うすい)2月19日ごろの直前の朔日(さくび)すなわち新月の日を指します。具体的には1月21日ごろから2月20日ごろまでを毎年移動します。中国等では現在でもこの旧正月を春節(しゅんせつ)と呼んで、大きなお祭りをしています。
旧暦の考え方だけでは、正月等の日程が毎年少しずつ変わってしまいます。そこで太陽暦の考え方を導入して、二十四節気(にじゅうしせっき)を考え出しました。これは太陽の動きを基に、夏至・冬至・春分・秋分の二至二分(にしにぶん)の日を決め、立春・立夏・立秋・立冬の四立(しりゅう)、その他の季節として全部で24の名称を定めました。2月4日ごろに、よくニュースでは「今日から暦の上では春を迎えますが・・・」と言われますが、この日が立春になり、その前の日2月3日が節分になります。二十四節気は太陽暦を基にしているので、日付けが変わったとしても1日程度になっています。旧暦と二十四節気は、全く別の暦なのです。
暦は現在でも世界中で様々なものが使用されています。暦を学習することを強みにして、たくさんの本をお読み。
メタバース
メタバース
最近の流行語である「メタバース」です。メタバース(metaverse)は英語の超(meta)と宇宙(universe)を組み合わせた造語です。コンピュータやネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる三次元の仮想空間やそのサービスのことを指します。利用者はオンライン上に構築された三次元コンピュータグラフィクスの仮想空間に世界中から思い思いのアバターと呼ばれる自分の分身で参加し、相互にコミュニケートしながら買い物やサービス内での商品の制作・販売といった経済活動を行ったり、そこをもう一つの「現実」として新たな生活を送ったりすることが想定されています。もちろん、完全な実用化はもう少し先になりますが、現在でもネット上で買い物をしたり、一部のゲームでは自分のアバターを使って遊ぶものは、メタバースの先取りと言えるかもしれません。Facebookが会社名をMetaに変更したことでも有名になりました。将来的には莫大な量のお金が動くことが予想されていて、多くの企業の参入が見込まれています。
この話の中で私が思い出すのは、2021年公開、細田守監督のアニメーション映画「竜とそばかすの姫」です。この映画では50億人以上が集うインターネット仮想空間「U」と出会ったそばかすのある女子高校生「すず」が、歌姫の「ベル」というアバターで「U」に参加し、その歌声でたちまち世界に注目される存在になっていきます。現実と仮想空間を行き来して物語が進みますが、映画やドラマになった「美女と野獣」をモチーフにしたところもあります。「竜とそばかすの姫」は細田守監督の長編オリジナル作品第6作になりますが、2009年公開の第1作「サマーウォーズ」も同じようなネット上の仮想空間でのお話しでした。今から13年前の作品でしたが、山下達郎さんの主題歌「僕らの夏の夢」とともに記憶に残る良い映画でした。
今後のメタバースは、どのように発展していくのかはわかりません。メタバースといえば、昔阪神で活躍した外国人選手の・・・。それはランディ・バース。
ウエスト・サイド・ストーリー
ウエスト・サイド・ストーリー
スティーブン・スピルバーグ監督が「ウエスト・サイド・ストーリー」を再び映画化しました。現在上映中です。元々は1957年に初演された、ブロードウェイ・ミュージカルで、シェークスピアの有名な戯曲「ロミオとジュリエット」に着想を得て、当時のニューヨークを舞台に、ポーランド系アメリカ人とプエルトリコ系アメリカ人との2つの異なる少年非行グループの抗争の犠牲となる若い男女の2日間の恋と死までを描いています。
舞台で大評判となったため、まず1961年に映画化されました。映画も大ヒットし、この年のアカデミー賞では作品賞をはじめ、10部門を受賞しました。1961年といえば、私が生まれた年ですが、私はこの映画を映画館で見た記憶があります。多分中学生くらいの頃、リバイバル上映をしていたのだと思います。レナード・バーンスタイン作曲の歌は素晴らしく、登場人物のダンスも魅力的なのですが、結末はなかなか悲しいもので、涙を誘います。
今回2021年版も見てきました。びっくりしたのは、1961年版でアニタ(プエルトリコ系のシャークス団のリーダー、ベルナルドの恋人)役を演じたリタ・モレノ(彼女は1961年版で、アカデミー助演女優賞に輝きました。現在は90歳を超えていますが、元気です)が、2021年版では、若者たちのたまり場となるドラッグストアの店主であるヴァレンティナ役で出演しています。しかし何といってもこの映画の主人公はロミオにあたるトニーと、ジュリエットにあたるマリアの2人です。今回トニー役はアンセル・エルゴート、マリア役はレイチェル・ゼグラーというあまり知られていない役者さんが演じていますが、マリアの役は約三万人の中からオーディションで選ばれただけあって、さすがの出来映えでした。2021年版もアカデミー賞には多くの部門でノミネートされていて、受賞が楽しみです。
最後に難点を1つだけ。生徒の皆さんでしたら、全く問題ないと思いますが、私のような年寄りには、2時間37分という上映時間は長すぎます。予告編等を含むと3時間近くになってしまいます。映画鑑賞を執行するためには水分補給にご注意を。
世界史は暗記もの?
世界史は暗記もの?
私が大学受験の時、社会科で共通一次試験を受けたのは、世界史と倫理社会の2科目でした。世界史は縦の年代と、横の各国同士の関係を座標のように捉えていく必要があるので、理科系の生徒向きといわれていました。日本史は小学校以来何度も学習したり、大河ドラマ等で見聞きする機会もありますが、世界史は普段はなかなか触れることが少ないです。昨年末から、岩波講座「世界歴史」の第3期が発刊されています。全24巻ということですが、とりあえず第1巻のうちのほんの一部を紹介します。
世界史といえば「○○という国と○○という国の間で、○○年に○○戦争が起こった」というような事をひたすら暗記していくというイメージがありますが、第1巻冒頭の小川幸司さん(この人は長野県の高等学校の先生)の「私たちの世界史へ」を読み、ある意味感動しました。
2011年3月11日は東日本大震災が起こった日ですが、この日、福島県の双葉消防本部の4人の消防士は、全国消防駅伝大会のために、東京都内に滞在しており、この日の夕食を「最後の晩餐」だと思った、と話しています。原発の事故が伝えられると、消火、救助活動に当たった消防士たちは、ソ連(当時)の「チェルノブイリ原子力発電所」の事故の際に消火活動に当たった消防士たちのその後の悲惨な運命を思い浮かべました。また福島第一原発に出発する消防士は「きっと特攻隊はこうだったのだろう」という思いでした。そしてこのような思いや発言が残されているのは、震災から9年後の2020年、吉田千亜さんによる「孤塁―双葉郡消防士たちの3・11」というルポルタージュが出版されたおかげです。
このように、過去の人間たちの姿やイメージを引照しながら、自分の生きている位置を見定め、自分の進むべき道を決めようとするのであれば、それは世界史を考えていることになる。またその記憶を、記録として残していくことは「世界と向き合う世界史」であると、小川幸司さんは述べています。世界史は、偉い歴史家や学者の先生が出す論文の中だけにあるのではなく、私たちの「世界史実践」の中にもあるということです。
私がこれまで考えていた「世界史」というものとは全く違う捉え方です。1つの出来事を、多面的に理解してまとめていく姿勢には驚きでした。「最後の晩餐(ばんさん)」は「最後の電算」でも「最後の換算」でも「最後の塩酸」でもありません。
学校紹介・美術工芸部紹介
サンテレビ「4時!キャッチ」2020/7/15
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