校長室より

校長室より

小さな目標

小さな目標

 今やアメリカで最も有名な日本人は、メジャーリーグエンゼルスの大谷翔平選手でしょうか。30年前だと、多分オノ・ヨーコさん(元ビートルズのジョン・レノンの奥さん)だったと思います。

 大谷選手は岩手県の花巻東高校の出身ですが、3学年先輩に菊池雄星選手がいます。同じ高校から二人のメジャーリーガーを輩出したというのはすごいことです。湯川秀樹さんと朝永振一郎さんという、京都一中(現在の京都府立洛北中学校・高校)から二人のノーベル賞受賞者を出したのと同じくらいの値打ちがあると思います。

 大谷選手は高校1年生の頃、目標を立てています。曼荼羅(まんだら)チャートとして有名なので、見たことがある人もいるかもしれません。目標の真ん中には「ドラ1、8球団」とあります。日本のプロ野球で8球団からドラフト一位指名を受けると言うことです。その周りに下位の目標8個が書かれています。「体づくり」「メンタル」「人間性」「運」「変化球」「スピード160km/h」「キレ」「コントロール」。当時の彼の考え方では、「体づくり」と「運」は並列関係にあったということが見て取れます。そして、その8個の目標に対して、またそれぞれ下位の目標8個が書かれています。例えば「運」の項目では「あいさつ」「道具を大切に使う」「プラス思考」「応援される人間になる」「本を読む」「審判さんへの態度」「部屋そうじ」「ゴミ拾い」とあります。

 一つの大きな目標を掲げ、それを実現するために小さな目標をいくつか立てて努力を続ける。誰もが大谷選手のようになれるわけではありませんが、その姿勢を見習うことはできるかもしれません。姿勢は良いのに越したことはありません。知性を磨き、個性を生かし、既成の概念を打ち壊し、野生の勘で余生を送りましょう。

 

明るく、自ら考え、へこたれない

明るく、自ら考え、へこたれない

 このフレーズは今から14年前に、私がそのとき勤務していた県立高校で、学年主任を務めたときのキャッチフレーズです。生徒の皆さんにも、学年の先生方にもこのフレーズを多用していました。

 「明るく」というのはそのままで、明るい挨拶、明るい返事、明るい対応、明るい学年集会等を含んでいます。思えば私の親父ギャグもこの頃から一層磨き(?)がかかったように思います。

 「自ら考え」というのは、親、先生や友人からの意見や考えをよく聞く必要はあるけれども、最後に取り入れるかどうかはその人の判断であり、何事も自分でよく考えてから行動するのが望ましいということです。そのためにも、多くの人と意見交換をしたり、読書をしたりして(スマホをいじるだけではない)、自分が考えられる材料を多く持つことが大切です。

 「へこたれない」というのは、やはり何事かを成し遂げようと頑張っても、失敗することの方が多いです。そのときに「自分はもうだめだ」と思うのか、「次はもう少し工夫してチャレンジしてみよう」と思うのかは決定的です。うまく行かないときに「へこたれない」、最近の流行の言葉で言うと「レジリエンス」でしょうか。竹のように、重みがかかってもしなる力で持ちこたえて、もとへ復元するという力です。

 そのときに高校生だった皆さんや、同僚の先生方は、跡形もなく忘れておられると思いますが、私はなぜか気に入っていて、覚えています。あれから14年たちましたが、改めて皆さんに紹介する「木村オリジナル」です。「オリジナル」という言葉は「独創的」「独自のもの」という意味で、ナショナルに、パーソナルに、プロフェッショナルに、インターナショナルなものではありません。

 

世界のおすもうさん

世界のおすもうさん

 相撲は皆さんの身近にありますか。日本の伝統ある格闘技、興行ではあるのですが、若い世代にとっては少しとっつきにくいですよね。特に最近の大相撲を見ていると、日本人力士よりモンゴル出身力士の方が活躍しているイメージがあります。

    大相撲の世界に外国出身力士が登場しはじめたのは、ハワイ出身の高見山からだと思います。以後曙や武蔵丸、小錦とハワイ出身力士が活躍しますが、これは第二次世界大戦以前から、日本からハワイに移民する人たちが増えて、相撲が普及していったという経緯があります。

    実は1992年から「世界相撲選手権」が始まっています。世界中からアマチュアの力士が集まり、日本の相撲のルールで戦うのです。2019年には大阪で第23回世界相撲選手権大会が世界31の国と地域から選手が集まり開催されました。2020年は当然のように新型コロナウイルスの影響で中止になったそうです。

 世界中には、相撲のようにいわゆる武器を手にせずに、肉体のぶつかり合いだけで勝敗を決する格闘技が数多く存在しています。沖縄相撲シマトゥイ、韓国のシルム、中国のシュアイジャオ、そして「モンゴル相撲」等です。大相撲にモンゴル出身力士が多いのも、「モンゴル相撲」の存在があるからです。

 「モンゴル相撲」正しくは「ブフ」といいます。ブフのルールは、日本の大相撲とはかなり異なります。まず土俵がありません。ですから寄り切りとか押し出しという決まり手はありません。勝負は両足の裏側以外の部分が地面についたら負けです。だからモンゴル出身力士は、外掛けやけたぐり等の足技や、投げ技が得意な人が多いわけです。

 おすもうさん達は、身体を大きくするのが仕事です。朝起きて、稽古をして、ちゃんこ(いわゆる「ちゃんこ鍋」以外でもおすもうさんの食事は「ちゃんこ」と言うらしい)をたくさん食べて、昼寝をする。また起きて、稽古をして、ちゃんこをたくさん食べて寝る。一日2食で、食べたら寝る。これが太るのに適しているようです。ちゃんこはおすもうさんが食べるもので、にゃんこのエサにはなりません。

Beatles

Beatles

 もちろん「カブトムシ」ではなくて、バンドとしての「ビートルズ」です。世界の音楽業界に燦然とした実績を残し、現在でも多くのアーティスト達からリスペクトされている伝説のバンドでした。

 イギリスのリバプールという港町で結成された「ジョン・レノン」「ポール・マッカートニー」「ジョージ・ハリスン」「リンゴ・スター」の4人組ですが、ジョンは1980年にニューヨークで撃たれて、ジョージは2001年に亡くなっており、ポールとリンゴも80歳くらいになっています。

 1960年にThe Beatlesという名前になり、1962年に「ラヴ・ミー・ドゥ」でレコードデビュー(CDでも、配信でもない)し、1970年には解散しましたから、実質8年間ほどの活動でしかありませんでした。ミュージシャンとして素晴らしい才能を発揮したビートルズでしたが、絶大なる人気のため、世間を賑わせることでも超一流でした。いくつかの例を挙げます

1 1965年にイギリス帝国五等勲章をもらうとき、元軍人たちが「ビートルズのような胡散臭い芸人などと一緒にされるのは屈辱である」として勲章を返納した。そのときにジョン・レノンは次のように言った。「人を殺したことによってではなく、人を楽しませたことによって勲章をもらうのを誇りに思う」

2 1966年に来日し、日本武道館でコンサート(ライブという言葉はなかった)を行った。今でこそ武道館は多目的に使用していて、たくさんのアーティストがライブ会場に使っているが、もともとは1964年の東京オリンピックの柔道会場に使用するために建てられた、武道の大会に用いる施設で、音楽のしかも外人のコンサート会場に使用するなどとは想像もできなかった。いわゆる右翼団体がコンサート使用反対行動を行ったため、約1万人の観客に対して3千人の警察官が配備された。

 60年代のイギリスという混沌とした社会が生んだという側面もある、偉大なロックバンドでした。皆さんも、今度バンドを組んで、温度の高いインド本土で、何度も限度までライブをやりませんか。

 

芸術文化観光専門職大学

芸術文化観光専門職大学

 先日、総合学科を持つ高等学校の校長先生方の会議で、県立豊岡総合高等学校へ行ってきました。その日には、豊岡にこの4月に開学した「芸術文化観光専門職大学」にも見学に行くことができました。

 この大学は兵庫県立の公立大学で、日本で初めて芸術文化と観光が学べる専門職大学で、学長が平田オリザさんという、有名な劇作家、演出家の方です。この日はたまたま平田学長がおられたので、少しだけ話を伺うこともできました。

 見学させてもらうと、建物はできたばかりですし、施設設備も大変充実していました。劇場に使える部屋が大小2カ所あり、照明や音響の勉強もできるようになっています。大学のスタッフも、世界的にも有名な方々を招いており、少人数での教育活動があるようです。今年の入試では全国から出願があり、人気を集めました。地域に根ざした大学を目指しているようで、豊岡や但馬地区にある多くの事業所ともコラボしています。

    私も若ければ、このような大学で学んでみたいな、と思いました。受験して合格するためには、かなり難しそうではありますが、生徒の皆さんの進路先の選択肢に加えてみてはどうでしょうか。芸術文化観光専門職大学は、「芸術」と「文化」と「観光」の三つが学べるのではなくて、「芸術文化」と「観光」の二つが学べる大学です。文化を分化してはいけません。