校長室より
【校長室より】令和3(2021)年度 学校経営について
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令和3(2021)年度 兵庫県立兵庫高等学校 学校経営について
1 教育目標
四綱領「質素剛健 自重自治 これを貫くに至誠を以てす」を基調として精神性を高め、文武両道に精励させるとともに、先進的教育活動に取組み、21世紀の日本の担い手としての志を持って主体的に判断して行動し、他者と協働して課題を創造的に解決できるこころ豊かで自立する人材を育成する。
スローガン 四綱領「質素剛健 自重自治」の精神を教育の根本に新しい時代の開拓者を育てる
キーワード 学校組織・教員
○「適応力」(時流に乗る) ○「許容性」(継続のための寛容さ) ○「本業力」(教育実践)
育成する生徒の資質
○ シェアド・リーダーシップ Shared Leadership ○ 寛容と忍耐 Tolerance
○ 場を和ませる力 Soften the Atmosphere ○ 緊急対応 Emergency Response
2 重点項目
学年・部・委員会・教科等の連携による組織的活動の推進と教職員の指導力の向上により、以下の項目に取り組む。
(1) 新教育課程(令和4年度入学生77回生)の決定、広報
(2) 文部科学省「地域との連携による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」、兵庫県教育員会「STEAM教育実践事業」の研究推進と新たな研究指定に向けた検討
〇 全生徒を対象にした探究的活動の推進(GR、ひょうたん、STEAMライブラリー等)
〇 情報教育(BYOD、オンライン授業等実施体制)の充実
〇 英語教育、キャリア教育の充実
〇 国際交流の推進(新たな連携覚書の締結等)
(3) 教科指導の充実、大学入学共通テスト得点向上への取組み
(4) 生徒理解と対話に基づく生徒指導、学校保健(感染症対策含)、環境整備の充実
(5) 勤務の精鋭化(ペーパーレス化、グループウェア及び採点ソフトの活用等)と年休・夏季休暇の取得促進
【校長室より】令和2年度3学期終業式辞要旨
朝夕は冷えるものの、一雨ごとに春らしくなってきました。
校内の桜もチラホラ花を咲かせ始めました。
全国一斉休校から始まった令和2年度も本日で3学期の終業式となりました。
生徒が一堂に会することは叶いませんでしたが、無事に本日迎えられたことをうれしく、そして大変ありがたく思います。
さて、先日の進路講演会では、本校の卒業生である株式会社ダイヘン取締役社長の田尻哲也氏にご講演をいただきました。皆さんも感じることがたくさんあったことと思います。講演後の「印象に残った本」との質問に対して、田尻氏は、池井戸潤さんの「下町ロケット」そしてケストナーの「飛ぶ教室」をあげられました。下町ロケットはテレビドラマにもなった作品で見た人も多いと思います。
「飛ぶ教室」は1933年に刊行された児童小説で、第一次世界大戦後のドイツのとある寄宿学校の寄宿舎で生活する高等科1年生、日本の学校では中学2年の少年たちが描かれています。「飛ぶ教室」は、物語の内容もさることながら作者ケストナーによる前書きが素晴らしいことでも知られています。
そこには、「大人というものは、どうして自分の子供のころのことを、あんなにすっかり忘れてしまうのだろう。子供にだって時々悲しいことや、不幸せなことがあるということが、いつか、まるっきりわからなくなってしまうなんて。」「この世で大切なのは、何が悲しいかということではなくて、どんなに深く悲しむかということなのだ。子供のなみだは、大人の涙より、確かに小さくない。結構、目方が重い場合がずいぶんある。」と、子どもの時に感じたものをいつまでも大切に覚えていてほしいと示されています。
また、「人間がこの世で、本当に真剣に考えなければならない、大切な問題は、働いてお金を儲けるようになってから、やっと始まるのではない。それからはじまるのでもなければ、それで終わるものでもない。」「諸君はできるだけ幸せであってほしいのだ。そして、元気で、小さなおなかが痛くなるくらい笑ってほしいのだ。」「ただ、お互いに何事もごまかしてはいけない。また、何事もごまかされてはいけない。災難をじっと見つめることを学ぶのだ。何かうまくいかないことがあっても、恐れてはいけない。運が悪くても、がっかりしてはいけない。元気をふるい起すのだ。心にたこをこしらえるのだ。」「そうしないと世の中にでて、その中のパンチを初めてほおに受けたとき、諸君はグロッキーになってしまう。」「だから元気を出すのだ。たこをこしらえるのだ。初めにその用意が出来ているものは、もう、半分勝ったようなものだ。そういう人間は、いくらほっぺたにありがたくパンチを頂戴しても、普段から物事に動じない心構えが十分にできているため、いざというときに、あの二つの大切な性格、つまり勇気と賢さを実地に示すことができるからだ。」と読み手を激励しています。
皆さんは、今まさに、勉学に、学校行事に、部活動に取り組み、時には迷い、悩みながら「心にたこ」を作っている真っ只中にあるのではないかと思います。今感じている喜びや苦しみ、悲しみには、田尻氏がおっしゃっていたように、「人生にとって不可欠なもの」がきっと隠れている。そして「周りの人々の自分への想い」を大切にする姿勢で過ごせば、小言や説教や面倒な依頼もきっと自分の血や肉にかわり、少々のことではへこたれない自分に成長していけるのではないかと思います。
心がけを少し変えると、自分でも驚くほど大きな良い変化に気づくことが出来ます。勉強も、部活動でも、「これくらいでいいか」と「今、この場所」に安住せず、少しだけ無理をして身近なところから一歩踏み出し、さらに高みを目指して欲しい。1年後、2年後、さらに将来「みんなの幸せの一端を担い」そして「世のため人のため」に活躍する自分を思い描いて過ごしてほしいと願っています。
新型コロナウイルスとの闘いは完全に収束するまでもうしばらく時間がかかりそうです。それまで、健康にはくれぐれも留意して行動してください。
みんなで元気に新学期を迎えましょう。
その名ぞ兵庫 わが母校
以上、第3学期終業式辞とします。
令和3年3月23日
兵庫県立兵庫高等学校長 升川 清則
【校長室より】第73回卒業証書授与式 式辞
式 辞
玄関脇に植えられた白梅が、例年よりも早く 満開の花を咲かせています。本日、第七十三回卒業証書授与式を挙行いたしまところ、武陽会副理事長様、PTA会長様、におかれましては、ご多忙にも関わりませず、ご臨席を賜り厚くお礼申し上げます。また、保護者の皆様には卒業生の門出を 祝うため、ご来校いただきに誠に有り難うございます。心より感謝を申しあげます。
ただ今、卒業証書を授与した309名の皆さん、卒業おめでとうございます。
本日めでたく卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます。3年間の努力と精進に対して心から賛辞をおくります。皆さんは、平成30年4月の入学から今日まで、兵庫高校生らしく 勉学に、学校行事に、部活動などに果敢にチャレンジし、活発に活動してきました。あっという間の3年間で、まだ実感は湧いてこないかもしれませんが、皆さんの凛々しい表情から成長ぶりが伝わってきます。
さて、世の中は依然として厳しい情勢が続いています。新型コロナウイルス感染症の大流行など新たな 感染症との戦いも始まりました。昨年8月には九州・中国地方を中心に、河川の氾濫や土砂災害等により 大きな被害が出ました。先日2月13日には福島、宮城を中心に東日本大震災の余震とみられる震度6強の地震が発生し、感染拡大時における避難住民の安全確保など、困難な危機対応が現実のものとなりました。
海外ではアメリカ大統領選挙でバイデン氏の勝利が確定し、ヨーロッパではイギリスがEUを正式に離脱、一方、アジアに目を向けると、ミャンマーにおける軍事政権クーデターの発生など、政治や経済で緊張が続き、地球環境では温暖化が年々深刻化しています。
特に新型コロナウイルス感染症への対応については、緊急事態宣言による度重なる行動制限、「三密」の回避、ソーシャルディスタンスの確保、手洗い、マスク着用など、新しい生活様式の普及をはじめワクチンの接種開始など感染防止対策に一定の成果はみられるものの、いまだに世界中で猛威を振るっています。我が国では感染者約43万人、死亡約7,700人、世界規模では感染者約1億1,210万人、死者約259万人となり、まさにパンデミィック、未曾有の感染拡大となりました。
本校では、昨年3月2日から5月末まで約3ヶ月にわたり臨時休業となり、恒例の新入生歓迎遠足、文化祭、対神戸高校春季定期戦、合唱コンクール等、1学期の行事をやむなく中止しました。行事を計画していた生徒会執行部、文化祭実行委員など、さぞかし無念であったことでしょう。運動部においては、全国高校総体の 中止を受け、県高校総体の夏季競技が中止となりました。文化部においても、各大会やコンクールが中止されました。特に73回生の皆さんにとって、最終学年の締め括りとして成果を発揮する機会を失い、本当に残念な事態になりました。
その後、6月15日から通常の教育活動を再開し、 7月31日に1学期終了、授業確保のため夏季休業を短縮して8月17日に2学期を開始しました。2学期当初は、新型コロナウイルス感染症と 暑さとの戦いでした。エアコンが不調になるほどの酷暑の中で、マスクの着用を続けながらよく乗り切ってくれました。
県内の感染状況も落ち着いてきたことから9月17日に、今年初めて全校生徒が一堂に会し体育祭を実施しました。生徒が全力で競技する姿は清々しく頼もしく、3年生ここにありと印象付けてくれました。そして10月恒例のUSJ校外学習では、皆さんの適切な行動、保護者のご理解、先生方の周到な準備のおかげで、多くの思い出を残すことができました。また、10月28日には「三密」回避のため、神戸総合運動公園で対神戸高校秋季定期戦を実施しました。
このように年度後半は、様々な行事が概ね天候にも恵まれて滞りなく実施できたことを生徒諸君とともに喜び感謝したい気持ちでいっぱいです。皆さんも、勉強や部活動ができることの「ありがたさ」を、身に染みて感じた人も多かったのではないでしょうか。
73回生は「責任ある自由」を育くみ、真の兵庫高校生へと成長していきました。112年の伝統を誇る本校の偉大な先輩方にも劣らぬ高校生活を全うした皆さんに改めて敬意を表します。
作家の城山三郎氏は、著書「少しだけ、無理をして生きる」の中で、次の三つの努力の積み 重ねが道を開くことに繋がると述べています。
1つ目は、「いつも初心を忘れず、今に安住せず、人から受信し吸収しようとする生き方」が 大切であることです。今、NHK大河ドラマの主人公として描かれている渋沢栄一氏が、「持ち前の好奇心で逆境に置かれても逆境を意識する暇がないほど取りつかれたように勉強し提案する。全身が受信機の塊のようなもので、このことが地方の一少年を日本最大の経済人にした要因である。」と述べています。人が成長するかしないかは、出会った人や経験から、何かを学び取る力があるかどうかが大きい。学ぶ力があるとは、学ぼうという謙虚さがあるということに他なりません。謙虚さを持っている人は何事も学び自らを鍛えていくことができるようになります。
2つ目は、人間を支える3本柱、「自己(self)」 「親近性(intimacy)」「達成(achievement)」をバランス良く保つことです。「自己」は自分だけの世界で、読書、音楽 鑑賞、絵画や書道、座禅に取り組むなどがそれにあたります。個人だけで完結する世界、思索をめぐらすこと、趣味など、一人ひとりの世界を大切にするということです。「親近性」は親しい人たちとの関係のことで、我われは、夫婦や子、親しい友人、古い友人、親近者たち、地域の仲間によって支えられています。「達成」は目標を立てて行動することです。大学でこんな研究をしたい、社会に出てこんな 仕事をやりたい、あるいは趣味の世界でも構わない。目標や段階を作って挑んでいくことです。3つの柱のうち、1本の柱だけに頼っていると人は弱く脆いものです。1本だけの柱が折れてしまうと、なかなか立ち上がることが出来なくなります。 我われは、とかく仕事や趣味の目標達成ばかりに気をとられがちです。「個人だけで完結するひとりの世界」や「親しい人たちとの関係」を大切にして、3本柱のバランスを保って欲しいと思います。
最後3つ目は、ほんの少しでも高い目標を設定して「少しだけ無理をしてみる」ということです。自分を壊すほどの激しい無理をするのではなく、 少しだけ無理な状態に置ことで、大きな実りをもたらしてくれます。このことを、周りの人との交流において考えると、人には好き嫌いの感情があり、それを克服することは簡単ではありません。好き嫌いは人間が持って生まれた自然の感情なのでそれに逆らうには我慢がいります。我慢は苦痛ですが、それは目先の苦痛で、長い目で見れば大きな何かを得ることが出来るものです。なるべくその人の長所を見て、欠点は許し、少し無理をして相手を受け入れることでその人もこちらに一目を置いて信頼してくれる。渋沢氏は、自分の前に座った人にすべてを傾けて応対したといいます。このことにより、パリ万博から帰国後にも活躍する場を与えられたのです。いろいろなことが上手く進めば自分の人生は大きく広がります。
皆さんはこの先、新たな進路において高度な専門性を身に付け、意欲的に研鑽を積まれることでしょう。これからは、日本中、いや世界中の優れた人材と協働することになります。その時には自信を持って、自分の道を究めて欲しいと願っています。
保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。教職員一同、力をあわせ、お子様の教育にあたってまいりましたが、至らぬことも多く、ご迷惑やご心配をおかけしたことも度々であったと存じます。本校の教育方針をご理解いただき3年間ご協力、ご支援を賜りましたことを改めまして心よりお礼申し上げます。お子様が健康で社会に有為な人となられることを切にお祈りいたしますとともに、今後も、本校への変わらぬご交誼とご鞭撻をお願いいたします。
卒業生の皆さん、 壁に直面した時は自ら行動して乗り越えてください。健康にはくれぐれも留意し、自分のため、家族のため、さらに世のため人のため、そして、君たちの後に続く後輩たちのために大いに活躍されることを期待してやみません。
名残は尽きませんが、73回生、108陽会の 前途に幸多かれと、心よりお祈りしつつお別れ いたします。
これをもって式辞といたします。
令和3年3月1日
兵庫県立兵庫高等学校長
升 川 清 則
【校長室より】阪神・淡路大震災追悼行事講話
平成7(1995)年1月17日5時46分、淡路島北部を震源とし、死者6,435名、重傷者10,683名の未曾有の被害をもたらした震度7の大地震、阪神・淡路大震災の発生から26 年を迎えました。犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。
本校においては、震災直後から避難住民を受入れ1月20日には、2,500人を超しました。2月8日から1年生は北区の神戸甲北高校で、2年生は鈴蘭台高校(現在の神戸鈴蘭台高校)で、教室を間借りして授業が再開されました。
それ以降、9月26日に全校生1117名が本校に復帰し、翌年、2月14日に避難者がゼロとなるまで、避難者とともに学校生活を送ったのです。
その歩みは、1階事務室前の柱の銘板に記されており「兵庫県立兵庫高等学校は、神戸市内で最大の避難所となり、被災者支援と教育活動の両立に困難を極めた。しかしながら、生徒も、教職員も粘り強く耐え、被災された人々とともに、394日間を戦い抜いた。」と刻まれています。
昨年1月、2 年生(74 回生)は、災害時に自力で帰宅することも想定し、学校 から HAT 神戸まで歩く「1.17 ひょうごメモリアルウォーク 2020」 に参加しました。その感想の中で、ある生徒は「ウォークに参加していつ起こるかわからない地震などの災害に対して常に備える必要があることを学んだ」、またある生徒は震災体験の継承が「今は被災者から未災者へ、であるのが、未災者から未災者へ、に変わっていくという話が印象に残った」と感想を記しています。震災の教訓を生かすことの必要性を強く感じたことがうかがえます。今年は残念ながらメモリアルウォークは中止されるとの報道がありました。2年生は貴重な体験をすることが出来て本当にありがたいことです。
東日本大震災をはじめ多くの豪雨災害の発生など、感染症の流行も含め、いつどこで何が起こるか分からない時代です。
全く心配のない平穏な日常を送ることができるのは、当たり前のことではなく、むしろ例外なのかもしれません。例外を当たり前だと勘違いすると、世の中を見誤ることになります。3年生は、明日からの大学入試共通テストが始まります。現在の状況において、予定通りテスト実施されること自体大変ありがたいことです。
兵庫高校生は、震災や10年前の新型インフルエンザの流行など、いかなる時も苦難を前向きに捉えて乗り越えてきました。共通テストも心穏やかに、悔いのないよう取組んでくれるものと信じています。
大震災から26年が経過したいま、震災の経験や教訓を忘れず、いかに伝え、これを活かし、しっかりと災害などの危機に備えていくことが、我々の課題です。全校をあげて次の災害へ備える心構えをつらなければなりません。
終わりに、大震災翌年の第48回卒業証書授与式で、生徒代表の石井宏幸さんが答辞で語られた一部を紹介します。
「本校が大規模な避難所となったため、授業は鈴蘭台高校での間借り、 鈴蘭台西高校での仮校舎暮らし、さらに本校で、被災者の方と共同生活をしながら続けられました。戦火の時代を除けば、まさに第二神戸中学校開学以来の危機状況でした。
それでも、普通の生活が思うに任せない苦境の中でも、我々は耐えてきました。いや、静かに耐えるだけではなく、自己と学校の未来を切り開こうと 懸命でした。震災直後から連日にわたるボランティア活動への参加。学校が再開されると、グラウンドのない劣悪な条件下で県総合体育大会への出場、そして、短時間で作り上げた思い出深い九州修学旅行への取組み。試練にあったとき、人はその人間が試されますが、厳しい環境で、我々が不可能だと思えることを先生方とともに次々と克服してきました。
そうした歩みは、校訓である自らを治める『自重自治の精神』が我々の中に生き続けている証明です。そして私は、その兵庫高等学校生の一員であったことを誇らしく思います。もちろん、復興しなければならないのは兵庫高校だけではなく、神戸の街であり、被災地のすべての街であり、被災者の心です。幸い「再建の意気高く」働ける優位な人材は48回生に数多くおり、神戸復活の気概で燃えています。」
以上、阪神・淡路大震災から26年にあたり、講話とします。
令和3(2021)年1月15日
升 川 清 則
【校長室より】第3学期始業式辞要旨
新年あけましておめでとうございます。新春らしい、寒さが厳しい朝になりました。
君たちが元気に登校し始業式を迎えられたことをうれしく、そして大変ありがたく思います。
さて、昨年2020年の漢字は「密」でした。昨年の3学期始業式で、その字が「金」になればと期待を込めて話しました。しかし、世界中が新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、東京オリンピック・パラリンピックも延期されました。高校総体など多くの大会、コンクールが中止になり結果的に残念な1年になりました。
年末から年明けにかけて、新規の感染者が激増し、昨日は東京都2447人、兵庫県284人と過去最高になりました。昨日、昨年と内容は異なるものの首都圏1都3県に再び緊急事態宣言が発出されています。我々、一人ひとりが感染拡大防止につとめなければ、終息はありえません。
一方、今年の12月25日は、島田叡先輩生誕120周年(1901年明治34年)にあたります。昨年の修学旅行で、島守の塔への献花の折、雨雲の合間から温かな日差しが差し込んだことがこの間のことのように記憶に残っています。島田氏は苦境にあっても、その時を大切にして、未来を信じて尽力されたことと思います。
今年は、禍を「福に転じる」年です。理想の未来を描き、その未来に向かって、自ら新しいスタートを切りましょう。
年頭にあたり次の3つを意識して欲しいと思います。
1つめは、「油断大敵」です。特に感染予防と交通安全についてです。
感染予防に関しては、2学期以降、幸い行事なども順調に実施してきました。今後、同じように実施できるとは限りません。昨年1月27日に校内に消毒液を用意して以来、健康チェック、清掃後の消毒など、学校全体で丁寧に取組んできました。これからも決して気を緩めてはなりません。交通安全に関しては、自転車による事故が多発しています。誰もが交通マナーに注意して、自分自身を守りましょう。
2つめは、「良い行動の習慣化」です。必要なことはとにかく実践して習慣にしてしましましょう。生活実態調査から見ると、学習時間を確保が課題です。特に、1.2年はもう1時間ひねり出せないか生活を見直して欲しい。また、読書、新聞に日常的に親しんで、感性を磨いて欲しい。
3つめは、「ありのままの姿を大切に、脇目を振らず目標に邁進」すること。特に部活動に取組む生徒の皆さんは、どんなことがあろうとも、淀みなくやりきること。
3年生は大学入試共通テスト目前です。手遅れなどと嘆く必要はまったくありません。朝起床から、夜の就寝時間まで、決めたことを丁寧に進めなさい。ラグビー日本代表の田村選手は、2019年のワールドカップのあと、「勝つと信じて準備したから、想像を絶するトレーニングをこなすことができ、結果、史上初の決勝トーナメント進出を果たすことができた。」と語っていました、まず初めに「心」なのです。何事もやってみないとわからない。心が変わればすべてが変わります。もしも、気持ちが揺らいだり、くじけそうになったら、「自分がこの学校に入らないと、良い世の中にならない」と、口に出して言ってみましょう。君たちは絶対できます。目標を達成されることを切に願います。
生徒全員が、それぞれ目標に向かって一緒に頑張っている。そして、一人ひとりが集団に埋没せず、声を出して挨拶できる。兵庫高校は、まさに自立を目指して努力を続ける人たちの共同体です。
その名ぞ兵庫 わが母校
以上、第3学期始業式辞とします。
令和3年1月8日
升川 清則