校長室より

校長室より

【校長室より】令和4年度第3学期終業式辞(要旨)

 おはようございます。

 朝夕肌寒いものの、一雨ごとに春らしくなってきました。

 校内の桜もチラホラ花を咲かせ始めました。

 昨日から蔓延防止期間も終わり、令和3年度も本日で3学期の終業式となりました。無事に本日迎えられたことをうれしく、そして大変ありがたく思います。

 新型コロナウイルス感染症の蔓延防止期間は終わりましたが、ここで感染防止対策を怠ってはなりません。残念ですが、マスクせず会話しながら下校する生徒が一部見られます。大切な試合にチームとして出場できないなどということは可能な限りゼロに近づけたい。また、家族の生活にも影響がないに越したことはありません。今一度、マスク着用、咳エチケット、黙食、など細心の注意を払いたいものです。

 さて、先日、KTカーニー株式会社日本代表の関灘茂さんにご講演をいただきました。残念ながら別の用務で中座しましたが、映像で講演を拝聴できました。「モチベーションが高まっている」「本をしっかり読む」と感想に書いた人も多いと思います。今一度、忘れてはならないことを2つ述べます。

 まず行動あるのみ。

 講演後、実際に書店で本を漁った人、志を現実にするために学習計画をたてて即実行した人がいると信じます。

 2つ目にその高いモチベーションをいかに継続させるか。「喉元過ぎて熱さ忘れる」にならないようにしたいものです。心に誓ったと思っても、日増しに熱はさめ、そして忘れてしまいます。忘れないためには、いつも目標を見据えるしかありません。目の前に目標を掲げたい。手帳に書留め、常に眺める。ちょっとした工夫で、道は拓けます。いや、拓くと言い聞かせるのです。

 講演いただいて、少々のことではへこたれない自分に成長していけるのではないかと、勇気をいただいた人も多いと思います。「今、この場所」に安住せず、少しだけ無理をして身近なところから一歩踏み出し、さらに高みを目指して欲しい。将来「みんなの幸せの一端を担い」そして「世のため」に活躍する自分を思い描いて過ごしてほしいと、願っています。

 春休み中、油断せず健康にくれぐれも留意して行動してください。

 みんなで元気に新学期を迎えましょう。

 その名ぞ兵庫 わが母校 

 以上、第3学期終業式辞とします。

 令和4年3月23日 

                                    兵庫県立兵庫高等学校長 升川 清則

【校長室より】第74回卒業証書授与式辞

※いつも兵庫高等学校のホームページをご覧いただきありがとうございます。

 

                       式   辞

 玄関脇に植えられた白梅も日ごとにつぼみを開き、春の訪れを感じる季節になりました。
 本日、第74回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、PTA会長様、武陽会理事長様には、ご多忙にも関わりませず、ご臨席を賜り厚くお礼申し上げます。また、保護者の皆様には卒業生の門出を祝うため、ご来校いただきに誠に有り難うございます。心より感謝を申しあげます。
 ただ今、卒業証書を授与された314名の皆さん、卒業おめでとう。
 本日めでたく卒業の日を迎えられたこと、心よりお祝い申し上げます。3年間の努力と精進に対して心から賛辞をおくります。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は衰えを見せず、兵庫県において感染症との戦いが依然として続いています。
 本校では、これまで感染防止に細心の注意を払いながら教育活動を行ってきました。
 教科の学習に加えて、全生徒が探究活動に精力的に取組んでくれました。74回生は探究全体発表会を7月に初めて実施しました。さらに校外の発表会等では高い評価を受けました。コロナ禍の教育活動において、ICT活用など前進した面もあります。まさに、「禍福はあざなえる縄のごとし」、多面的に物事を捉えることの大切さを痛感しています。様々な行事が天候に恵まれ滞りなく実施できたことを喜び感謝したい気持ちでいっぱいです。
 さて、私たちは、時代に応じた新しいものの見方を迫られています。
 新たな社会は、サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間の融合を目指すSociety 5.0と言われています。今まさに進展しつつある情報社会の生産力は、工業社会のそれをはるかにしのぐものと予測され、新しい知識労働者時代のプレーヤーとして活躍するために、我われには何が必要なのでしょうか。
 アメリカの作家スティーブン・R・コヴィーは、多くの人たちに影響を与えた人物、あるいは何か有意義な変化を起こした人物は、共通した4つの特質を有していると指摘しています。
 1つ目は「ビジョン」を持つことです。ビジョンとは、知性の目で将来を見ること、想像力を働かせることです。望み、夢、希望、目標、計画とも考えられます。
 2つ目は「自制」することです。自制とはビジョンを実現するために目の前の厳しい事実から逃げずに、物事を成し遂げるために必要なことを着実に実行することです。自制の対極にあるのが無節操です。無節操が過ぎれば、快楽やスリルのために、人生において最も大切なことを犠牲にすることになります。
 3つ目は、「情熱」を持つことです。外からの働きかけで情熱は生まれません。自分が主体的に選択することを力として、内面から湧いて出るものです。情熱は、ビジョンを達成するまで自制し続ける原動力になります。
 最後は「良心」を持つことです。良心は善悪を判断する道徳観であり、自分の存在意義、貢献へと後押しする力といえます。良心に従って生きることで、ビジョン、自制、情熱が生まれます。良心の対局にあるエゴは、横暴で尊大で独裁的なものであることを理解する必要があります。
 いかなる世の中になろうとも「ビジョン」「自制」「情熱」「良心」を欠くことなく、自分自身で「内なる炎」を燃え立たせ、自信を持って自分の道を究めて欲しいと願っています。
 保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。本校の教育方針をご理解いただき3年間ご協力、ご支援を賜りましたことを改めまして心よりお礼申し上げます。お子様が健康で立派な社会人となられることを切にお祈りいたします。
 卒業生の皆さん、健康にはくれぐれも留意し、壁に直面した時は「ネバーギブアップ」の精神で自ら行動して乗り越えてください。君たちの後に続く後輩たちのため、そして世のため人のために大いに活躍されることを期待しています。
 74回生、109陽会の皆さんの前途に幸多かれと、心よりお祈りしつつお別れいたします。

 

 令和4年3月1日

                                         兵庫県立兵庫高等学校長
升 川 清 則

【校長室より】阪神・淡路大震災から27年

阪神・淡路大震災発生から27年
 
 皆さんこんにちは。
 今、私は、1階事務室前の柱の銘板の前に立っています。
 ここには「兵庫県立兵庫高等学校は、神戸市内で最大の避難所となり、被災者支援と教育活動の両立に困難を極めた。しかしながら、生徒も、教職員も粘り強く耐え、被災された人々とともに、394日間を戦い抜いた。」と刻まれています。

 今から27年前、平成7(1995)年1月17日5時46分、淡路島北部を震源とし、死者6,435名、重傷者10,683名の未曾有の被害をもたらした震度7の大地震、阪神・淡路大震災が発生しました。
 犠牲になられた多くの方々のご冥福をあらためて心よりお祈りいたします。
 さて、本校では、震災直後から校内には 2,500人を超す避難者を受入れました。「394日間を戦い抜いた」とあるのは、震災発生後の翌年、2月14日に校内の避難者がゼロとなるまで、避難者とともに学校生活を送ったことを示しています。

 震災発生後、1年生は北区の神戸甲北高校で、2年生は鈴蘭台高校(現在の神戸鈴蘭台高校)で、教室を間借りして授業が再開されましたが、当時の2年生が次のように綴っています。


『学ぶという事』
「学校という勉強するには恵まれ過ぎた環境が当たり前のようにあって、僕は色々なことを知る喜びを最近まで知らずにいたけれど、今はとてもおもしろいことだということに気付いた。今回の震災で気付いたことは、えらそうに自分は勉強していることになっているが、実は自分の身の回りのことを何ひとつ、1回の食事すら自分で世話できない人間なのだということだ。親をはじめ、社会全体が勉強できる環境をすべて整えてくれていて、それらすべてを土台にして勉強させてもらっていた。生きることが何ひとつ自分でできないことに気付いた。自分一人でも生きてゆけるようになるためにも、今は鈴高というあまりある環境で勉強させてもらっている。」

 通常の学校生活は困難を極める中でも、生徒は多くのことを感じ、そして学んだのです。
 その年の3月1日には鈴蘭台高校で第47回卒業証書授与式が挙行され、3年生の元生徒会長が「破壊された神戸の復興、混迷する世界情勢の打開を担うのは私たちなのだ。」と力強く答辞で語りました。その方は現在、外務省に務めておられます。東京みらいフロンティアツアーの代替研修でも、アフガニスタン情勢が緊迫するお忙しい中、お話しをいただいた方です。

 年度が変り4月からは北区の西鈴蘭台にあった当時の鈴蘭台西高校のグラウンドに仮設校舎が建設され、3学年全員そろって新学期をスタートしました。4月26日、3年生が九州方面への修学旅行を実施。そして、6月5日から3年生が本校に復帰。その時の避難者は約600人を数えました。
 そのような中で8月には吹奏楽部が全国大会への出場を決めるなど全校生徒が一丸となって部活動でも大いに気を吐いたのです。1,2年生が本校に復帰し、全校生1117名が揃ったのは9月26日のことでした。


 1月15日には南太平洋のトンガで海底火山で大規模噴火がおこり、日本にも、場所によって1Mを超える津波が記録されました。東日本大震災をはじめ、多くの豪雨や地滑り被害などの自然災害の発生、そして新型コロナウイルス感染症などの感染症の流行も含め、我々が自然界で生きていく中では、いつどこで何が起こるか分かりません。
 2年前の7 月に、本校職員が東日本大震災後の東北地方にボランテイアに赴きました。全校生徒に 「災害はいつどこで発生するかわからない、いかにして自分事としてとらえるか 」が重要であり、「自分の命の重みを十分認識して精一杯生きよう」と問いかけたことが今でも心に残っています。

 全く心配のない平穏な日常を送ることができるのは、当たり前のことではなく、むしろ例外であることを、我々は今、コロナと闘うことで身をもって体験しています。当たり前ではないことを経験できてありがたく思うことができれば、それは大いに意味のあることです。兵庫高校生は、大震災や2009年の新型インフルエンザの流行など、いかなる時も苦難を前向きに捉えて乗り越えてきました。これからも阪神淡路大震災を忘れず、伝え、次の災害へ備える心構えを持ち続けましょう。

 令和4(2022)年1月17日

                              兵庫県立兵庫高等学校長
                                  升 川 清 則