校長室より

2021年8月の記事一覧

集合知の限界

集合知の限界

 多くの人が知恵を持ち合って構成する知を「集合知」と言い、往々にして一人一人の個人の判断よりよい結果をもたらすことが知られています。この集団的な合意形成の有効性を実体験するために、用いられるものの一つが「NASAゲーム」です。このゲームでは、月に不時着した宇宙飛行士が、320キロ離れた母船へ月面を移動しなければならないという設定で、そのとき宇宙船からどのアイテムを持って行くか、15の中から重要度を順位付けよ、というゲームです。アイテムとしては、マッチの入った箱、宇宙食、ナイロン製ロープ、落下傘の布、ソーラー発電の携帯用暖房器、ピストル二丁、粉ミルク、酸素ボンベ、月から見た星座表、救命いかだ、磁石コンパス、水、信号用照明弾、注射器入りの救急箱、ソーラー発電式FM送受信機の15個です。生徒の皆さんも、一度考えてみて下さいね。

    まず参加者各自が順位付けを行い、その後グループ(4人から8人くらい)で話し合って結論を導きます。そうすると、個人一人で考えていた結果よりも、集団で話し合って導き出した答えの方が有効であることが多いです。例えば、月面での行動ですから、酸素ボンベや、水の優先順位が高いことは明らかです。逆に、月面では酸素や、地磁気がないので、マッチや磁石は役に立ちません。

    さて、ここからが本題です。このゲームでは、模範解答が示されていて、ゲームにおいての勝ち負け、適切な結果を導き出せたかどうかが、よく分かる仕組みになっています。この集合知が有効なのは、「正解」がある場合に限られるということです。特に集合知の代表であるインターネットのウィキペディア等に頼ると、ほとんどの問いに対する解答が出てきます。しかし世の中にある問題は解答があるものばかりではありません。例えば「日本の首都はどこに移転すべきか」「原子力発電所は新たに建造すべきか」等、解のない問題では集合知が正解とは限りません。何でもネットに聞けば答えが出ると思っていると、大きな間違いを犯すことにもなりかねません。世の中には「正解」がない問題の方が多いですからね。正解を得るためには、政界に出て、コロナ渦の中でもパーティーを盛会にしなければいけません。

 

東京藝術大学

最後の秘境 東京藝大

 二宮敦人さんが書いた「最後の秘境 東京藝大」という本が、平成28年に出版されましたが、平成31年に新潮文庫として発売されました。今回はこの本から紹介します。

 皆さんの周りに「東京大学の卒業生」はいますか。なかなか珍しい存在かもしれませんが、ひょっとしているかもしれません。理由は東京大学の一学年の定員が三千人くらいいるからです。では「東京藝大の卒業生」はどうでしょうか。一学年の募集人数は美術学部が234人、音楽学部が237人ですから、合わせて五百人足らず。少ないはずです。

 もともとは東京美術学校、東京音楽学校と別の学校が一緒になって東京藝術大学ができました。ですので今でも上野駅を背にして、左側は美術学部「美校(びこう)」と呼ばれ、右側は音楽学部「音校(おんこう)」と呼ばれています。それぞれの学部で多くの特徴がありますが、その中の学科によっても、藝大の常識が世間の常識とはかけ離れていることがたくさんあって、非常に興味深いです。

①     藝大の生協(大学内にある生活協同組合)には、ガスマスクを売っている。

美校の彫刻科では、木や金属、粘土の他に、樹脂加工の授業があり、その際には有毒ガスが発生するので、学生は皆ガスマスクを購入する。

②     音校に合格した学生は、まず自分の写真を撮る。

自分が商品なので、ドレスを着て、楽器を抱え、にっこりと笑う宣材写真が必要である。

③     口笛を吹いて、藝大に合格した学生がいる。

二次試験の「自己表現」で、ヴィットーリオ・モンティ作曲の「チャルダッシュ」を口笛で吹いて合格した学生は、2014年の「国際口笛大会」成人男性部門のグランドチャンピオンであった。

④     工芸科漆芸(しつげい)専攻は、漆(うるし)塗りを学ぶため、かぶれて手が荒れている学生が多い。工芸科でバレーボール大会をすると、漆芸専攻の学生が触ったボールで、他の専攻の学生の手がかぶれてしまった。

⑤     声楽科の学生には、のどあめが必需品。プロポリス、ボイスケア、龍角散が多いが、最終兵器は漢方薬の「響声破笛丸(きょうせいはてきがん)」です。

藝術を極めるためには、お金も時間もかかり、何より根気と体力が必要なのがよく分かりました。「ローマは一日にしてならず」ということです。テーマを考え、キーマカレーでも食べながら、マンマ・ミーアを鑑賞しましょう。

 

クオータ制度

クオータ制度

 2021年3月末に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数で、日本は120位と、前年の121位からほとんど変わりませんでした。このジェンダーギャップは、男女格差を表す指数で、とりわけ指導的立場に就く女性の割合が比較的大きく反映されるという特質を持ちます。

①     9.9%  衆議院に占める女性議員の率 2020年 世界166位

②     30.2%  町村議会の中で、女性議員がゼロである議会の率 2019年

③     26人 全国の市区町村1721自治体のうち、女性首長の数 2020年

このように、日本では依然として大きな男女格差が残っているのが現状です。そこで「クオータ制度」の出番です。実は私も「クオータ制度」というのは、「女性の割合をクオーター(四分の一)に増やすシステム」と誤解していました。クオータ(quota)は「割り当て」という意味で、クオーター(quarter) 四分の一のことではありません。クオータとは、属性による不均衡を是正するために、少数派に対して一定割合・数をあらかじめ設定する手法です。アメリカでは大学入試において、少数の人種であるとされてきた黒人やアジア系、ヒスパニック系に対してクオータ制度が導入されてきました。議員を選ぶ選挙において、一定割合を女性に割り当てるジェンダー・クオータ制度は、129カ国に導入されていて、世界中の約三分の二の数になります。

一方、クオータ制度の導入に反対する意見もあります。①クオータは女性に下駄をはかせる逆差別だ ②女性政治家が少ないのは、女性が望まないからだ ③クオータは民主主義的な選出と矛盾するものだ 等です。私はこれらの意見は男性からの一方的な考えに基づくもののように思います。実際に女性の議員の数は圧倒的に少ないのですから、一度クオータ制度の導入を考えてみるべきだと思っています。クオータの導入には、赤ちゃんをセオータまま、ウオータを飲みながら考えてみましょう。

 

赤米

赤米

 普通に精米したお米の色は白いです。ところが、大昔は赤色や黒色、緑色のお米がありました。赤米は縄文時代に古代中国から伝わったとされ、玄米の色が赤褐色で、果皮・種皮部にタンニン系の赤色色素を含んでいます。五分づき精米するとピンク色に、普通に精米すると白米と変わらない色になります。赤飯の元となったという説もあります。

 一般的には生命力が強いのですが、米の性質にばらつきがあったり、収量が少なかったりしたため、明治時代以降はほとんど生産されなくなりました。ところが最近、白米に比べてタンパク質やビタミン、ミネラル等を多く含んでいることが明らかになり、健康食として注目を集めています。食べるときは、赤米単独ではなく、普通の白米に少し混ぜて炊くのが良いようです。また、お酒や菓子、麺類等に加工されて販売もされています。

 赤米は「あかごめ」や「あかまい」と読むようですが、曖昧な商いをして、お見舞いに良いかもしれません。

 

YOASOBI

YOASOBI

 生徒の皆さんは、当然よく知っているYOASOBIです。Ayaseとikuraによる2人組の音楽ユニットですが、配信する(CDという形式ではほとんど発表されていない)楽曲がどれも大ヒットです。2019年に結成し、小説を音楽にするプロジェクトから誕生しました。「夜に駆ける」「ハルジオン」「たぶん」「群青」「もう少しだけ」「三原色」どの曲も個性的で、一度聞くと忘れられない感じがします。私のようなおじさん達がYOASOBIを知ったのは、2020年12月の紅白歌合戦で「夜に駆ける」を歌ってからでしょうか。現在ではユニクロがコラボしてTシャツを販売したりもしています。

    今回、Kiss FMで8月1日に放送された「日本郵便 SUNDAY’S POST」という番組を聴いていると、その番組内で「レターソングプロジェクト」という企画で、小学校6年生の「はつね」さんからの手紙をもとに、YOASOBIが「ラブレター」という楽曲を完成し、8月9日から配信が始まることが分かりました。この「はつね」さんが書いた手紙が非常に感動的で「私は苦しいときも楽しいときも音楽を聴いてきた。音楽さん、ありがとう」という内容なのですが、ほぼ忠実に内容を生かした「ラブレター」がまた大変素晴らしい曲にできあがっています。この曲も大ヒット間違いなしだと思います。合唱や、吹奏楽等の課題曲に採用されるかもしれません。皆さんも夜遊びをしながら、YOASOBIの「ラブレター」という楽曲を聴いてみて下さい。