校長室より

2022年1月の記事一覧

正当防衛

正当防衛

 とてもやりきれない、悲しい出来事です。もちろん、他人を傷つけて、他人を巻き込んで自殺するという事件も許されません。それよりも、もっと気の毒だと思われるのは1月23日正午ごろ、栃木県のJR宇都宮線の車内で、優先座席に寝っ転がって加熱式タバコを吸っていた容疑者に「タバコをやめてくれませんか」と注意した男子高校生のことです。この容疑者は「ケンカを売られた」「正当防衛だ」と言っていると報道されていますが、男子高校生に土下座をさせ、暴行をはたらき、顔面骨折などの重傷を負わせたとされています。

 先に言っておきますが、もし私がその場に出くわしていたならば、多分「見て見ぬふり」をしてしまうと思います。人間誰しも自分の身が1番かわいいという事実は変えられません。評論家のようなきれい事を言うつもりはありませんが、その上で考えるべきことがたくさんあります。

 報道されている内容が全て事実であるかどうかは分かりませんが、ほぼ正しい内容であると仮定すると、多くのことが許されないことだと思います。

1 世の中に、禁煙である電車内の、しかも優先座席に寝っ転がって電子タバコを吸う人がいるということ

2 電車内にいた多くの人は、そんな人は「変わった人」「こわい人」だから関わり合いにならずにおこうと、見て見ぬふりをしていたこと

3 見るに見かねて、勇気を出して注意した高校生に「ケンカを売られた」「正当防衛(これは正当防衛とは言いません。過剰防衛です)」という理屈をつけて暴行したこと

4 周りにいた人たち(高校生や大人たち)の多くが、そのまま見て見ぬふりを続けたこと

5 新聞やテレビで報道されると「こういう『違う世界の人』とは関わらないようにしましょう」という感想が出てきたこと

そしてこの事件の教訓が「触らぬ神にたたりなし」ということであるならば、この国は終わってしまいます。世の中の人たちを分断していくことが正当であるとは思えません。勇気ある行動を取った高校生が、早く心の傷を癒やし、萎縮することなく、人生を切り開いていって欲しいと願うばかりです。今回は最後のギャグはやめておきます。