校長室より

2021年5月の記事一覧

私を野球に連れてって

私を野球に連れてって

 生徒の皆さんは、野球が好きですか。私は大好きで、もちろん昔から阪神タイガースの大ファンです。今シーズンは、ルーキーの佐藤選手の活躍もあり、首位を独走しているので、2005年以来の優勝を期待しています。

 アメリカのプロ野球メジャーリーグの試合では、どこの球場でも7回表の攻撃が終わると、観客が立ち上がり、「Take Me Out to the Ball Game」という曲をみんなで歌います。この曲は1908年に作られたもので、ある調査によると、アメリカで1番よく演奏される曲は「Happy Birthday」、2番目は「アメリカ国歌」、3番目がこの「Take Me Out to the Ball Game」だそうです。アメリカではこの曲がそれほど有名だということです。皆さんも一度YouTube等で聞いてみてください。

    この曲の日本語でのタイトルは「私を野球に連れてって」となります。1987年に公開された、原田知世さんの主演で「私をスキーに連れてって」という映画がありました(私も映画館で観ました)が、この映画のタイトルはこの曲にちなんだものと思われます(これは私だけが思っているのかもしれません)。

    超満員の観客であふれかえった甲子園球場で、矢野監督の胴上げを見る日を楽しみにしています。ちなみに甲子園という名前は、球場が完成した1924年が、十干十二支(じっかんじゅうにし)では、一番初めの甲子(きのえね こうし)の年に当たることから命名されました。西宮市には甲陽園、苦楽園という地名もあります。動物がいるのが動物園、6歳までの子供がいるのが幼稚園、水戸の偕楽園と金沢の兼六園と岡山の後楽園は、日本三名園。

 

得意な分野

得意な分野

 生徒の皆さんには、得意な分野があると思います。「英語が得意」「マンドリンを弾くのが上手」「油絵を描くのが好き」「サッカーなら任しとけ」などなど。

 ある一つのことに秀でるということは、大変な事ではありますが、必要なことだと思います。それを生かして、進学や就職に繋がるからです。しかし、「一芸に秀でる」だけで大丈夫でしょうか。

 私が尊敬する先輩のN先生は、高校教員を定年退職後、現在パラリンピック競技で、車椅子バスケットボールの運営のお仕事をされています。彼は英語の先生で、通訳としても活躍されました。また車椅子バスケットボールの審判にも参加されていました。

 何が言いたいのかというと、

①    英語ができる人

②    車椅子バスケットボールに詳しい人

①    だけできる人、②だけできる人はたくさんいるかもしれません。しかし、①②の両方できる人は、数が少なく、大変貴重な人材ということになります。

    例えば、英語の得意な人は、もう一つ違う言語をマスターしてみるとか、コンピューターが使えるようになるとか、世界の地理や文化に造詣が深いとか、もう一つの付加価値をつけてみるのはどうでしょうか。

 例えば、サッカーが好きな人は、スペイン語を勉強してスペインで「リーガ・エスパニョーラ」の取材をする記者を目指してみるとか、トレーニング理論を勉強して「FCバルセロナ」のトレーナーになるとか、考えていると夢が広がりませんか。実は、バルセロナはスペインの中でもカタルーニャ地方なので、カタルーニャ語なのですが。

 一つの分野を極めつつ、もう一つの分野にも手を出してみる。今夜、本屋に行って、分野を極めると、何や損や、ということにはなりません。

 

 

分かりやすい授業

分かりやすい授業

 生徒の皆さんは「分かりやすい」ということについて、考えたことがあるでしょうか。「分かりやすい授業」「分かりやすい説明」「分かりやすい話」どれも良いものに思いますよね。本当にそうでしょうか。

 香寺高校の先生方も、日夜「分かりやすい授業」をしようと頑張っておられます。私も理科、主として化学の授業をしていたときは、何とかして「分かりやすい授業」をしようと心がけていました。そのために、何をしていたかというと、「物事を単純に考える」「適切な比喩を取り入れる」「〇か、×かで答えを出す」というようなことです。今振り返ってみて、それは本当に正しかったのか、本当に分かりやすい授業になっていたのかな、と思っています。

 分かりやすく説明しようとするあまり、複雑なものを単純に見せたり、全く異なるものを比喩として取り入れたり、正解が〇か×か、という問いを出したりすることがありました。でもそれって、本来は複雑で分かりにくいものを、分かったような気にさせるだけだったのではないか、と思うようになりました。

 というのも、高等学校までの「勉強」は、ある問題に対しては答えが一つに決まるものがほとんどです。しかし実際の社会における問題では、答えが複数個存在したり、0点の答えや100点の答えはなくて、Aの答えだと60点くらいで、Bの答えだと80点くらいかな、というようなことが、当たり前のように起こります。例えば「地球温暖化を防ぐ方法」とか「パレスチナとイスラエルの平和を実現する」とか「日本の原子力発電はどうすればよいか」「コロナを終息させる方法」これらの問題について、答えは「ない」か「分からない」か「いろいろある」です。ただし、多くの人々が解決に向けて取り組んで、研究をしている問題でもあります。ですから、あまりにも「分かりやすい話」というものは、どこかで「怪しいかもしれない」と思うようにすることが大切ではないか、と思っています。

 「分かりやすい」を求めると、コロナにかかりやすい、大学に受かりやすい、体重を測りやすい、漬物が漬かりやすい、かもしれません。

 

 

神風は吹かない

 

神風は吹かない

 兵庫県に発令されていた緊急事態宣言が、5月31日まで延長されることになりました。この先も不透明な社会情勢が続くことになりそうです。日経プレミアシリーズ「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」という新書が2020年12月に出版されており、非常に参考になります。この本によれば、新型コロナウイルスに対しては、

①        現状を一発で解決する逆転の秘策はない。 神風は吹かない。

②        うまくいってないのは、誰かがサボタージュや事実隠蔽をしているからではない。 犯人捜しをしてもダメ。

とあります。これまで通りの感染症対策を地道に続けることが大切であり、ウイルスやワクチン、免疫の基礎的な内容を解説した後、多くの情報に対して、私たちはどのように接していくのか、その態度や姿勢についてにも触れられています。

③        自分で考えるためには、個々人の「しなやかさと、強さ」が必要である。 「情報を簡単に信じる」「一度信じた情報を疑わない」姿勢は危険である。

 新型コロナに限らず、いわゆる情報リテラシーを身に着けることは大切です。何でもかんでもYouTubeとWikipediaに頼ることは、危険な場合もあるということです。危険を避けるためには、世間の間で、意見を戦わせて、保険をかけんといけんです。