校長による記事

【校長の窓】第49回入学式 式辞

 正門前の桜並木も満開となり、やわらかな陽ざしが春の心地よさを伝える、この佳き日、多くのご来賓の皆様並びに、保護者の皆様のご臨席を賜り、兵庫県立相生高等学校 第四十九回 入学式を挙行できますことを、心から嬉しく思いますとともに、厚くお礼申し上げます。

 ご来賓の皆様には、公私ともご多用のところご臨席を賜りましたこと、このように高いところからではございますが、衷心より厚く御礼申し上げます。

 ただ今 入学を許可いたしました、百八十三名の皆さん、入学おめでとうございます。保護者の皆様、お子様の晴れの入学、誠におめでとうございます。心から、お祝い申し上げます。

 新入生の皆さん、本日、晴れて相生高校の一員になりました。この出会いに感謝し、これからの本校で過ごす日々に一期一会の思いで臨み、かけがえのない日々を積み重ねていって欲しいと願っています。

 そして、保護者の皆様、高校受験に際しましてご不安やご心配、そして言葉にできぬご苦労もあったことと拝察いたします。それだけに、お子様の今日の晴れの姿をご覧になって、皆様のお喜びも一入の事と存じます。

 この門出にあたり、新入生の皆さんに是非、心にとどめておいてほしいことを、三つ述べます。

 一つ目は校訓についてです。

 本校の校訓は、「自律」「創造」「敬愛」です。「自律」とは、自分を律すること、すなわち、自らの意志で自分の行動を統制し制御しようとする強い心をもつことです。「創造」とは、新しいものを自ら創り出すことです。「敬愛」とは、尊敬し親しみの心を持つこと、すなわち、相手を敬い大切にすることです。皆さんには、未来への道を切り拓く力と強い心、そして思いやりと優しさを兼ね備えて欲しいと願っています。

 二つ目は人との出会いを大切にして欲しいということです。私たちは人生の中で多くの人と出会い、その人に支えられて生きていることを知ります。人との出会いは自分を成長させてくれます。ともに学ぶクラスの友達との出会い、部活動や学校行事での先輩、後輩との出会い、熱心に指導をしてくださる先生方との出会い、相生の地域の方との出会い、などすべての出会いを大切にしてください。そして、相生高校で、生涯の友や恩師に巡り会えることを願っています。

 三つ目は、様々な課題に直面したときに、まずは自分の頭で考え、そして仲間と共に課題と向き合い、解決に向けて上手くいかないことがあっても粘り強くあきらめずに取り組める人になって欲しいということです。皆さんが社会に出る頃には、AIはさらに進化を遂げているでしょう。広く浅くそこそこできる能力はAIにはかないません。こういう時代を生き抜くには、皆さんにとって、これだけは誰にも負けないというものを高校三年間で作りあげると、自分の強みにもなりパワーの源にもなります。勉強に関するものでも自分の趣味のものでも構いません。ただし、大事なことは、この誰にも負けないことを他人に的確に伝え、相手を感動させるほどのプレゼンテーション力を身につけて下さい。AIでは太刀打ちできない、皆さん自身で創り上げた魅力あふれるプレゼンテーションを期待しています。

 さて、本校は、周囲を緑豊かな木々に囲まれた閑静な高台に位置し、眼下には相生の街並みや波が穏やかな相生湾を臨むことができる素晴らしい環境に学校があり、保護者の皆様、同窓会や地域の皆様並びに本日ここにご臨席のすべての皆様に支えていただいております。どうぞ、今までにも増して、本校の教育活動へのご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 結びにあたり、保護者の皆様にお願い申し上げます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。

 わたくし達 教職員は、お子様が、自らの生きる道を、自らの力で切り拓いていけるよう、全力で指導にあたって参ります。お子様の健全な成長を願い、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが大切です。

 今後とも、本校の教育方針にご理解をいただき、様々な教育活動にご支援を賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。

 

 

令和七年四月八日  

兵庫県立相生高等学校長

        土井 寛文

 

【校長の窓】1学期始業式 式辞

 あらためまして、おはようございます。

 今日から新しい学年がスタートしました。皆さんの元気な姿を拝見して、とてもうれしく思います。

 さて、皆さんは、新しい学年のスタートにあたって、こういうことをやってみたい、挑戦したいということを考えていますか。是非とも、相生高校でこの1年間で、これだけは頑張りたい、挑戦したいと思うことを考えて、そして実行してください。また、考えたことを私に直接話してくれると嬉しいです。

 さて、私は、今年度、相生高校を「あいさつ日本一の学校」、「清掃日本一の学校」にしたいと考えています。

 まず、挨拶について、皆さんは普段、どのような挨拶を心がけていますか。私は、自分にとって心地よいと思える挨拶を人に対してしようと考えています。基本的には、自 分から、そして相手の顔を見て、笑顔で、元気よくを心がけています。しかし、以前、挨拶をしても相手から何も返答がなかったので、その人に挨拶をするのをやめましたということを言っていた人がいました。皆さんは、このことについてどう思いますか。私がもしそういう状況になったら、自分の挨拶が相手に届いていなかった、伝わっていなかったと思うようにしています。挨拶はコミュニケーションで最も重要だと思います。相手にどうしたら届くのか、伝わるのかを考えて表現してみる。一人ひとりが考えて実行できると、すばらしい挨拶のできる学校になります。挨拶は学校の中だけでなく、お家の中で家族に対しても、登下校での地域の方々に対しても同様です。相生高校生はもちろんのこと、相生高校を訪問される方も含め、みんなが挨拶で気持ちのよい一日を過ごせる学校にしたいと考えています。

 二つ目に清掃についてです。私は4月1日に相生高校に着任したとき、校舎は古くなってきているけど廊下や階段など掃除が行き届き、すごくきれいな学校だと感じました。掃除をするとストレスホルモン(コルチゾール)のレベルを低下させる効果もあります。さらに、心地よく感じ、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンやエンドルフィンの放出も促され、これが結果として心に安定をもたらします。また、掃除を通して達成感を感じることで、自信や自尊心が高まる場合もあり、良いとこだらけです。私は、皆さんにこの学び舎を今まで以上に愛着を持って大切に使ってほしいと願っています。普段の掃除に対しても、現状で満足せず、気持ちひとつで、もっときれいになるのではないかと思います。

 最後になりますが、今日の午後、入学式があり、新入生がやってきます。みんなで温かく迎えましょう。そして、2年生の皆さんは、今年度、相生高校の屋台骨となって活躍してください。3年生の皆さんは進路を決定する大事な1年となります。後悔をしないよう、進路実現に向け、突き進んでください。

 令和7年度が皆さんにとって、充実した年になることを願っています。

 以上で、式辞を終わります。

【校長の窓】3学期終業式 式辞

3学期終業式    校長 小田 昌史

皆さんおはようございます。令和6年度もいよいよ3学期の終業式となりました。

進級し新しい年度を迎えるこの時期は、夢や目標に向かってどう取り組むか決意を新たにする良い機会です。

皆さんは先日の合格体験発表会で、受験を乗り越えてきた先輩からあたたかい応援のメッセージを受け取りました。実際に相生高校で学び、考え、実践してきた上で、うまくいったことだけでなく、うまくいかなかった反省も踏まえて、後輩である皆さんの進路実現を応援するために送ってくれたアドバイスの中には、自分の今のやり方をさらにアップデートするヒントがたくさんあったのではないでしょうか。

新生活への準備で忙しいこの時期に多くの先輩が、後輩のために時間を割いて協力してくれる相生高校は本当に素晴らしい学校だと思います。

楽して成果が出せるということはありません。成果をあげるためには計画的にコツコツと積み上げていくしかありません。ただ、その方法によっては成果につながりにくかったり、他にもっと効率の良い方法があったりします。同じ方法でも、人によって合う、合わないということもあります。だからこそ常に自分の取り組みを振り返ってより効果的な方法へと改善するという意識を持ち続けることが大事なのです。先輩からのアドバイスで自分に生かせると感じたことがあれば、すぐに取り入れてみることです。

学び方には、大きく分けると3つのタイプがあるといわれています。一つは授業を受けていても学んでいないという人、2つめは授業だけで学んでいるという人、3つめは日常のすべてが学びにつながっている人です。

皆さんは、自分がどのタイプだと思いますか?まず授業でしっかり学べていますか?何も考えずにノートに写す作業だけになっていませんか?授業で学んだことを自分に定着させるため努力はできていますか?

これまで何度も言ってきたように、皆さんは「なりたい自分」になることができるのです。自分で自分の可能性を限定しないでください。自分の意識を少し変えるだけでも学びを変えることはできます。日常の中で感じる、「なぜだろう」や「どうしたらいいのだろう」という疑問を大切にしてください。そして考えたり調べたりする習慣をつけることです。なりたい自分に近づくために考えたことは、どんどん実践してください。あきらめずにチャレンジを続ければきっと道は拓けてきます。

4月から始まる令和7年度が、みなさんにとって笑顔と感謝であふれる充実した1年となるように、夢に向かって新たなチャレンジを始めてください。この春休みの皆さん一人一人の成長を期待しています。

【校長の窓】第46回卒業証書授与式 式辞

厳しかった冬の寒さもようやく和らぎ、相高坂にも花の香りが漂い、春の到来を感じられる今日の佳き日に、多くのご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席を賜り、ここに令和六年度兵庫県立相生高等学校第四十六回卒業証書授与式を挙行できますことを心から感謝申し上げます。

ただ今、卒業証書を授与いたしました187名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。教職員一同、心よりお祝い申し上げます。

皆さんは、この三年間、日々の学習だけでなく部活動や学校行事、ボランティア活動など様々な活動に明るく元気に、そして真摯に取り組み、心身ともに逞しく、大きく成長してくれました。

相高祭や体育大会などの学校行事では、一致団結して練習に取り組み、そして本番では、全力で演技や競技をし、仲間を応援している姿は、本当に素晴らしく、心から感動しました。そんな皆さんの姿は相生高校の誇りだと思います。皆さんが相生高校で培ってきた仲間との絆は一生の宝物となるはずです。

皆さんはこれから、先を見通すことができない変化の激しい社会を生きていくことになります。

世界では、今もなお戦争や紛争が続いています。気候変動による自然災害も毎年のように頻繁に起こって人々の暮らしに大きな影響を及ぼしています。この冬の豪雪は、各地に大きな被害をもたらしています。

また、高度情報化社会の進展はめざましく、生成AIによって社会は大きく変わろうとしています。つい先日にも生成AIが作った偽の小説が有名作家の作品かのように電子書籍として販売されているというニュースが報道されていました。あふれる情報の中で、何が正しくて、何がフェイクなのかを見極めることさえ難しいような情報化社会で皆さんは、判断し決断していかなければなりません。

4月から、新しいステージで新たなチャレンジを始める皆さんに、二つのことをお願いしたいと思います。

一つ目は、「失敗を恐れず、目標や夢に向かってチャレンジし続ける人になってほしい」ということです。皆さんは「なりたい自分になることができる」のです。自分の力を信じて、可能性を広げるための努力を続けてください。

そのためには、好奇心を持って楽しむことが必要です。しかし、人に言われたから楽しくできるものではありません。だから自分が興味関心を持てるところから好奇心を育てていくのです。「自分の人生」について、関心がないという人はいないと思います。まずは、「なりたい自分」の具体的な姿をイメージするのです。健康や体力面、美容面でも、あるいは学習面でも、「なりたい自分」の姿を描き、そのためにどうすればよいか、調べたり考えたりして実践するのです。そうすれば課題や、疑問点が出てきて、さらに調べたり考えたりするという循環が生まれます。そうして、なりたい自分の姿はいっそう具体的になり、するべきことが鮮明に浮かび上がってくると思うのです。

こうした試行錯誤を繰り返すことが、やがては自分自身のあり方生き方そのものにつながり、さらには社会のあり方についても考えるということにまでつながっていくのではないかと思います。まずは、自分の関心があることについて、「なぜだろう」とか「どうしたらいいのだろう」というWhyやHowという疑問を自分自身に投げかけて考えてください。新しい知識を得たり、課題を解決するために考えたり、試行錯誤することの楽しさを感じてください。それはきっと自分の成長につながり、よいサイクルが生まれて続くようになるはずです。

二つ目は、「人との絆を大切にし、豊かな人間関係を築いてほしい」ということです。相生高校で育んできた仲間との友情、絆を大切にして下さい。そしてさらに豊かな人間関係を築いてほしいと思います。困っている人へ手を差し伸べることができる思いやりや心の余裕が持てる人になれるように自らを成長させる努力を忘れないで下さい。困ったときにはお互いが助け合えるような豊かな人間関係のネットワークを広げて下さい。

そして、笑顔と感謝の心、社会への貢献ということを忘れずにいてほしいと思います。私は、皆さんの明るい笑顔や笑い声にいつも元気と勇気をもらっていました。笑顔には、周りを明るく安心できる雰囲気に変える力があります。どうかその笑顔をいつまでも忘れないでください。

そして、自分の人生が多くの人に支えられていることに気づき、感謝するとともに、自分も社会を支える一員であることを自覚してください。未来の社会は、ほかの誰かではなく自分が創るのだという強い気概を持ってください。「なりたい自分」や「ありたい社会」のイメージをしっかりと描き、自己実現のために努力するとともに、より良い社会づくりに貢献できる人となって下さい。

昨年、メジャーリーグで前人未踏の50-50を達成して三度目のMVPを受賞した大谷翔平選手の言葉に「良いことも悪いことも良い経験になる」という言葉があります。人生には思い通りにいかないこともたくさんあると思いますが、大谷選手のように、ポジティブに考えて自分の未来を切り拓いてください。

保護者の皆様、本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様の健やかな成長を願って支えてこられた皆様には、さぞや苦労も多かったことと思います。今日の佳き日を迎え、立派に成長されたお子様の姿に感慨もひとしおのことと存じます。教職員一同、心よりお喜びを申し上げます。また、これまで本校にお寄せいただきましたご支援、ご協力に深く感謝を申し上げます。

結びに、卒業生の前途を祝すとともに、ご来賓の皆様方をはじめこの会場においでの全ての皆様方のご健勝とご多幸をお祈り申し上げ、式辞といたします。

【校長室の窓】 3学期始業式 式辞

読書のすすめ                       

校長  小田 昌史 

 皆さんは、どのくらい本を読んでいますか。2学期に実施した生活実態調査によると「一か月に何冊の本を読みますか」という問いに対して回答者の63%の人が「全く読まない」と答えていました。今の高校生の忙しさやスマートフォン等の普及などからある程度予測してはいましたが、これほどとは思っていませんでした。時代の変化と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、感性豊かな10代の貴重な時期に読書の楽しみを味わわずに過ごすのはとても残念なことだと思っています。

 私自身も高校時代にあまり本を読んでなかったことを後悔していますが、それでも高校生の時に何回も繰り返し読んだ本で今も心に残っている小説があります。それはジョルジュサンドというフランスの作家の「愛の妖精」という小説です。双子の兄弟と少女との恋の物語なのですが、それまでそういう小説を読んだことがなかった私は双子の兄弟に感情移入してドキドキしながら夢中で読んだことを覚えています。読書の大きな楽しみは、登場人物の生き方を通して様々な人の考え方や生き方を学ぶことができることではないかと思います。この作品が発表されたのは19世紀半ば頃です。二百年近く前にフランスの田舎を舞台に書かれた作品が日本人の私たちが読んでも共感できるということはすごいことだと改めて感じます。時代や国が違っていても人間の基本的な感情に大きな違いはないということなのだと思います。今はスマホやタブレットで書籍を読むこともでき、また世界中の最新情報を手に入れることもできますが、紙の本ならではの良さもあるのではないかと思っています。私が機器の操作に慣れていないだけかもしれませんが、振り返って再確認したい箇所をパラパラとページをめくって見直したり、お気に入りの本として何回も読み返したりするには紙の本のほうが扱いやすく、その分深い理解にもつながるのではないかと思います。

 1冊の本との出会いで人生が変わるということもあります。皆さんには、何回も読み返すような心に残る大切な本はありますか。実際に人生を変えるような本に出会うことは稀かもしれませんが、多くの読書を通して徐々に人生が変わっていくということはあるのではないかと思っています。それは読書をすることによって知識や教養、読解力がつくだけでなく、論理的な思考力や集中力、想像力や表現力、コミュニケーション能力などの向上も期待できるからです。私たちが、人とコミュニケーションをとるときの手段は、会話であったり、メールであったりと必ず言語を使います。頭の中で何かを考えるにしても言語を使って考えています。生きていく上で必要な力の多くはそのベースに言語力があるということです。その言語力をつけるためには、多くの洗練された文章や言葉に触れるしかありません。正しい言葉の使い方、美しい言い回しや表現を知らないことには自分で使うことはできません。こうした語彙力を増やすために読書は極めて有効です。今の皆さんは、なんでも吸収できる柔軟な感性を持っています。だからこそ今の時間を大切にしてほしいのです。今の時間が有効に使えているかを常に意識してください。時間がもったいないと思ったときには読書をしてみてはどうですか。そんなときに読む本を常に手元に用意しておいてみてはどうでしょうか。きっと人生が豊かになると思いますよ。