校長室より

2022年11月の記事一覧

戦争絶滅受合法案

戦争絶滅受合法案

 今から約100年前に、大正デモクラシーを代表するジャーナリストである「長谷川如是閑(はせがわ にょぜかん 1875~1969)が紹介した「戦争絶滅受合法案(せんそうぜつめつうけあいほうあん)」です。

 「開戦後10時間以内に次の者を最下級兵卒として最前線に送ること。①国家元首 ②その親族 ③首相・大臣・次官 ④戦争に反対しなかった代議士ら」

 この法案が可決されれば、間違いなく戦争はすぐに終結します。それほど、①~④の人たちは、戦争を他人事として考えているわけです。戦争というものはいつの時代でも、年寄りが考えて、若者が戦うものです。長谷川如是閑がこの法案を考えた時代は、ちょうど日本が戦争に向かっていた時代でした。ですからかなりの勇気を持って、この法案を発表したのでしょう。約100年後の現在のロシアに対しても、当てはまるところです。

 生徒の皆さんも、役に立ちそうな法案を、草庵にこもって、答案を考案してみて下さい。

 

周りがあきらめてくれる

周りがあきらめてくれる

 兵庫県神河町の出身である女優の「のん」さんです。2006年にオーディションでグランプリを獲得し、本名の「能年玲奈(のうねん れな)」としてテレビや映画で活躍していましたが、いろいろなトラブルがあったようです。2016年から現在の「のん」という名前で活動しています。現在も映画「さかなのこ」では「さかなクン」をモデルにした役を演じています。

 そののんさんが、あこがれの人だという「矢野顕子」さんと対談をしました。矢野顕子さんといえば、シンガーソングライターとして独創的な歌声で世界的に評価されています。坂本龍一さんの奥さんで、子どもさんはやはりミュージシャンの「坂本美雨」さんです。

 のんさんは「どうやったら、やりたいことを貫いている矢野さんのようになれるのですか」と尋ねました。矢野さんの答えは「やりたいことをやり続けたら、周りがあきらめてくれるのよ」というものでした。のんさんには、やりたいことをやるために、相手を説得する考えはあっても、あきらめてもらう発想はありませんでした。「こんな言葉は矢野さんからしかきいたことがない。かっこいいなと思いましたね。余計なことを考えずに、シンプルにやりたいことをやろうと思うようになりました」

 生徒の皆さんはどう思いますか。自分がやりたいと思うことがやれていますか。他人にどう思われるか、を気にしすぎて、最初から諦めていませんか。萎縮していませんか。自分がなにものであるのか、なにができるのか、なにがしたいのか、自己肯定感を持てていますか。周りがあきらめてくれるくらいに、突っ走ってみてはどうでしょうか。私は、周りがあきらめてくれるくらいの、親父ギャグラーを目指していますが、まだまだ道半ばです。あきら君が馬手(めて)をくれるかな。

 

むずかしいこと

むずかしいこと

 「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをおもしろく」

 私がこの「校長室より」で目指していることなのですが、もちろん、私が考えた台詞ではありません。作家や劇作家として著名な「井上ひさし(1934~2010)」さんの言葉です。

 「私たちはとかく『やさしいことをむずかしく』「むずかしいことをあさく」『あさいことをつまらなく』語ってしまいがちです。『むずかしく』『あさく』『つまらない』文章を書くことは簡単だからです。深く考えないで、脊髄反射で、思い浮かんだことを書けばいいのですから。『むずかしく』『あさく』『つまらない』文章は、コンテンツを発信する側が受け取る相手のことより、自分の都合や思いを優先しているときに起きます。相手を雑に型にはめて単純化してしまうことで、思考停止になってしまっているのです」

 私がこの井上ひさしさんの言葉を知ったのは、朝日新聞夕刊の「素粒子」というコラムを読んだときです。新しくこのコラムを担当する方が、座右の銘として、この言葉を書いていました。私自身も目指していますが、なかなかたどり着けない目標として、素晴らしい言葉です。生徒の皆さんに話す機会の多い私としては、常に心がけたいと思っています。

 やさしく、ふかく、おもしろいこと、白い犬は、おもしろい(尾も白い)。

 

不思議なイギリス

不思議なイギリス

 2022年のサッカーワールドカップは、中東のカタールで開催されます。32の参加国の中には、イングランドとウェールズが入っています。同じイギリスという国の中に属するはずなのに、これはどういうことでしょうか。

 実はイギリスという国の正式な名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」といいます。グレートブリテン島と呼ばれ、イギリスの本体である島の中にイングランド、ウェールズ、スコットランドという3つの地域「カントリー」があり、隣にあるアイルランド島のうち、北東部の「北アイルランド」を含め、4つの「カントリー」からできています。国家としてはイギリスとして1つの国ですが、サッカーやラグビー等のスポーツでは、カントリー毎にチームを作っているので、イングランドとウェールズは異なる2つのチームとして出場します。日本から「関東チーム」と「関西チーム」が出場するようなものです。

 もっと不思議なことは、アイルランド島という地続きの島で、北東部の北アイルランドはイギリスであり、それ以外の南西部は「アイルランド」という違う国になっています。これには長い歴史と、宗教の違い、文化の違い等があり、戦争も行われたりして複雑に絡み合って、現在のようになっています。これも日本でいうと、関ヶ原の戦いで徳川家康の東軍と、豊臣秀頼の西軍が別々の国として独立したようなものです。

 イギリスというと、世界で最初に産業革命を行い「大英帝国」として(多くの地域を植民地として)発展した国ですが、最近ではEUから離脱したり、今年は70年に渡り在位してきたエリザベス女王が亡くなり、チャールズ皇太子が国王となったり、話題を提供しています。また政権党である保守党のゴタゴタがあり、ポリス・ジョンソン首相、リズ・トラス首相を経て、インド系のリシ・スナクが首相になります。これまでにマーガット・サッチャー、テリーザ・メイと2人の女性首相がいましたが、リズ・トラスは非常に短命の3人目の女性首相でした。日本では女性の総理大臣はこれまでにはいません。また外国にルーツを持つ人間が首相になることはなかなか考えにくいです。やはり英国は、えい国なのでしょうか。