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校長室
10月全校集会講話
少し前、7月の話になりますが、陸上の世界選手権がアメリカのオレゴン州ユージンで開催され、サニブラウン選手が日本人短距離界初の決勝進出という快挙を成し遂げました。その決勝では、惜しくも銅メダルに0秒18届きませんでした。レース後のサニブラウン選手は、「近いようで遠い。1ミリ1ミリ縮めるために、1日1日、1秒1秒を大切に頑張っていきたい」とコメントしましたが、私にはまさに極限の世界を生きる人が発する言葉に聞こえました。
実際、このニュースを報じた新聞のコラムに北京オリンピック400mリレーの銀メダリスト、朝原宣治氏が寄稿していたので紹介します。「私も、何度もファイナル進出に挑戦したが、準決勝はとてつもないエネルギーが渦巻いている。まるで格闘技のように同じ組のライバルと、肉体と精神をぶつけ合うような感覚を味わった。その場を支配する巨大なエネルギーに耐えられた人間だけが、決勝の8人に選ばれる。ただ速いから立てる場所ではないから尊いのだ」。この言葉からも、サニブラウン選手の強靱なまでのメンタルの強さがうかがえます。
サニブラウン選手は2019年に日本新記録となる9秒97をマークしましたが、以降、腰痛に苦しみ、その中で彼が感じたのは「スポーツ競技はメンタル勝負である」ということ、そしてどん底を乗り越えて学んだのが「マインドセット」の重要性であると語っています。
「マインドセット」とは、それまでの経験や学習、先入観から作られる思考パターンのことです。簡潔に言うと「無意識の思考・癖・思い込み」のことです。
普段、私達人間の行動は、95%が無意識に行われていると言われています。それはそれまでの経験や学習、自分の中の常識によってかたちづくられた「マインドセット」を持って行動しているからだそうです。
その「マインドセット」には「成長型」と「固定型」があって、「成長型マインドセット」は「自分の能力は努力次第で成長させることができる」という思考、「固定型マインドセット」は「能力はもともと決められており変わらない」という思考で、多くの人はこの両方を持っているそうです。
例えば、「大リーグは別世界だ」と思っていた人が、大リーグで活躍する大谷選手の姿を見て「自分にもできる」と思うようになる、「大リーグは別世界だ」という思いが「固定型マインドセット」、「自分にもできる」という思いが「成長型マインドセット」です。
この「成長型マインドセット」を持って挑戦することが成功の秘訣です。試合ともなると、失敗できない大事な場面ともなると、あるいは受験ともなると、緊張の極限状態に置かれます。しかし、「成長型マインドセット」を日頃から研ぎ澄ましていくことで、動じない精神力を身に付け、それを乗り越えられるはずです。「自分は必ずできる」「自分は必ず成功する」「自分は必ず合格する」、無意識にそう思える、そう信じられるマインドをセットできるよう、1日1日、1秒1秒を大切に鍛錬を重ね、自分を追い込んでほしいと思います。逆に、無意識にそう思えたら、「自分はやり切った、悔いはない」と思えたら、きっと緊張を楽しむことができるようにもなるはずですし、どんな結果であれ、それを納得して受け入れられずはずです。
明高生の誰もが「成長型マインドセット」を持ち、理想像を描いてその実現のために努力し続ける、そんな学校生活を送ってくれることを期待しています。
最後に、新型コロナウイルス感染防止の徹底を改めてお願いします。