校長室

6月全校集会校長講話

 大学進学を目指す人の多くは「大学入学共通テスト」を受験します。私立大学の多くが取り入れ、国公立大学受験者は必須です。この「共通テスト」は、大学入試改革の目玉として、単に知識だけを問うのではなく、受験生の思考力や判断力を評価する出題内容となっています。来年度で3回目となります。

 今年度の試験では、多くの科目で平均点が過去最低となりました。そのため、昨年度の3年生も受験校を決定する際、悩んだ人が非常に多くいました。英語ではリスニングのウエイトが非常に高くなりました。英語の読解問題では図や資料など様々なテクストから概要や要点を把握したり情報を読み取ったりする問題、国語では本文に関連する別の文章が提示されて内容や表現の特徴について類似点や相違点を問う問題、数学では会話文を用いて数学的な問題解決の過程を問う問題、地歴では史料や図表を読み取る問題、理科では実験や考察問題が非常に多く出題されました。

 しかし、問題を解いてみると、実は基本事項が理解できていれば、ちゃんと正解にたどり着ける問題ばかりです。ポイントは、日頃の学習において、単に知識だけを覚え込むのではなく、それを使って考える、いわゆる「思考の訓練」をしっかり行えているかどうかです。

 「思考」とは、辞書には「すでにある情報から新しい情報を導き出す心の活動」とあります。イメージ的に言うと、「こうだからこう、こうだからこう、だから結論的にはこう」といった考え方の形式のことです。例えば、自明の真実からスタートして、結論を導き出す演繹的思考では、「昆虫は6本足、クモは8本足、だからクモは昆虫でない」という結論になります。また、前提に「全ての」とか「ある」といった量を表す表現が含まれるパターンの定言的思考では、「全てのAはB、全てのBはC、よって全てのAはC」という結論になります。

 こうした「思考の訓練」は、いつでもどこでもできるものだと私は思っています。部活動でも意識して臨めば、相当な訓練になるでしょう。また、こうした思考は、何も学習や受験だけではなく、自己理解はもちろん、他者の気持ちへの理解、想像力を働かせることなど、私達が生きる上での全ての活動において活かされるものだと思います。

 皆さんには、日頃からあらゆる場面で「思考すること」「思考する訓練」を実践し、それを継続してほしいと思います。そして、一方向だけから物事を見るのではなく、できるだけ多くの視点から物事を捉え観察し、思考を深めてほしいと思います。この習慣が大学受験も含め、様々な意味での自己実現に繋がっていくはずです。

 最後に、新型コロナウイルス感染については、まだまだ油断できません。感染防止の徹底をお願いします。感染防止は、新たな取組ではなく、これまでやってきた基本的なルールを正しく守るということに他なりません。皆さんの教育活動を通常に近い形で行うためです。協力をお願いします。