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校長室
11月全校集会講話
皆さんは夏川草介(そうすけ)さんが書き下ろした『神様のカルテ』という小説を読んだことがあるでしょうか。もしかしたら映画で見た人がいるかもしれません。櫻井翔さんが主役を演じていました。
この小説は、主人公の若手医師である栗原一止(いちと)が、病院で出会う患者さんや、先輩あるいは同僚の医師、看護師、大学同期の親友、アパートの少し変わった住民、主人公を優しく見守る写真家の妻など、多くの人々と接しながら自分自身の生き方について考える姿を描いています。
その中に、主人公と、彼が担当する患者さんとの対話の場面があります。この患者さんは高校の教師をしていた人で、多くの本に囲まれた自分の部屋で、主人公と次のようなやりとりをします。
それは患者さんの言葉から始まります。「ヒトは、一生のうちで一個の個人しか生きられない。また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる。」「たくさんの人の気持ち?」「困っている人の話、怒っている人の話、悲しんでいる人の話、喜んでいる人の話、そういう話をいっぱい読む。すると、少しずつだが、そういう人の気持ちがわかるようになる。」「わかると良いことがあるのですか。」「優しい人間になれる。」「しかし、今の世の中、優しいことが良いことばかりではないように思います。」「それは、優しさということと、弱いということを混同しているからです。優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を「優しさ」というのです。優しさというのはね、想像力のことですよ。」
「優しさ」=「考える力」=「想像力」、思わず納得してしまう、心にストンと落ちてくる言葉です。皆さんには「優しさ」がありますか。最近、いじめと思われる事案、SNSをめぐるトラブルが多発しています。本校も例外ではありません。人に「優しく接する」とはどういうことか、どうすることか、この機会に一人一人考えてほしいと思います。
さて、本を読んでいると、自分ではうまく言い表せないでいた考えや気持ちを的確に表した表現に出くわすことがよくあります。表現の仕方や語彙を身に付けるツールとして、言葉を自在に操る小説家の書いた文章にふれることは大変意味があると思います。また、映像を見るのではなく、活字を読むことで、想像力を高めることもできます。読書は豊かな感性を磨き、幅広い知識を得て、考える力を育て、表現力や想像力を育みます。大学入学共通テストにおいても、どの教科も多量の文章や設問文、資料文を読ませる出題に変化しています。こうした様々な理由から、ぜひとももっと読書に勤しんでほしい、1日10分でいい、読書に時間を割いてほしいと思います。
最後に、新型コロナウイルス感染がまた拡大しています。本校でも、特に濃厚接触者が非常に増加しています。教室の換気の徹底、マスクを外した会話や昼食時の会話の厳禁、こうした感染防止対策の徹底を改めてお願いします。一人一人が自覚を持って行動してください。