校長室

お届け物2と「第38回定期演奏会」のお知らせ

 そろそろ節分ですね。節分の行事は、追儺(ついな)という中国の行事が平安時代のころわが国にとり入れられたものだそうです。しかし、当時、朝廷や貴族の間で行われていた追儺は鬼を外に追い出す発想は同じだが、豆をまかずたいまつをかざして追い出したとのことだそうです。最近は住宅事情等ですっかりと「鬼は外!福は内!」の威勢のいい子ども達の声も聞かれなくなりました・・・。 事務員さんからのお届けものです。

 

 

 令和6年度4月6日(土)明石市民会館において開催されます音楽部「第38回定期演奏会」。昨年の創立記念式典後の記念演奏会では、壮大なスケールの演奏に私たち一堂圧倒されたことがついこの前のことのように感じます。顧問の田中先生から案内チラシを数枚いただき校長室に掲示しました。来室者へのアナウンスです。あの感動を再び!

 冬の気温が低い中にあっては、指先の微妙な感覚がつかめず演奏がままならないと思います。そんな厳しい状況の中、練習に励んでいます。音楽部の皆さん、頑張ってください!

 

事務員さんからのお届け物

 鏡餅は年神の新しい生命をのり移す呪具で、不老不死の霊果であるダイダイやミカン、ユズなどを鏡餅の上にのせて、病魔退散の呪いをかけるのだそうです。

今年も残すところあとわずか。あっという間の一年間でした。
 22日の終業式では、文筆家の頭木弘の言葉を紹介しました。
『「何をしたか」ではなく「何をしなかったか」を振り返ることも大切ではないでしょうか。人を傷つけなかったか、人の上に立とうとしなかったか、差別しなかったか、欲におぼれなかった・・・か」。

来年はどんな年になるでしょうか。皆さん良いお年を。

1月の美術科展に向けて頑張っています♪

朝夕の寒さが厳しくなってきました。今年は例年よりもインフルエンザの流行が前倒しとなっています。
新型コロナウィルス感染症拡大により、インフルエンザに対する免疫が低下していることが要因だそうです。今一度、手洗い うがい 十分な食事と睡眠など基本的な生活習慣を確立しましょう。

さて、写真はある日の放課後、校長室の窓から撮ったものです。

寒風吹きすさぶ中、美術科の皆さんが連日遅くまで制作活動に取り組んでいます。

例年この時期、美術科最大のイベント「第39回明石高校美術科展(2024.1.12~13)」に向けて懸命に頑張っているのだそうです。

仲間の力作を多くの明高生が鑑賞されることを期待しています。

あと一息がんばれ!

11/11(土)「ふれあいコンサート」・11/22(水)~26(日)創立100周年記念美術展「関西展」が行われます!

 11/11(土)本校中部講堂において「ふれあいコンサート」が実施されます。朝霧中、大蔵中、綿城中の各吹奏楽部との共演です。音楽部の皆さん頑張ってください!ちなみに中部講堂が建てられた昭和31年当時は、1,500人規模を収容できる会場が市内にはなく、市の行事の多くを中部講堂で開催されたそうです。明石市民に愛され続けている歴史文化あふれる講堂での演奏、楽しんでください!

 そして、本校100周年記念事業の目玉イベントがいよいよ開催されます。第1弾の11/22(水)~26(日)、県立美術館ギャラリー棟で創立100周年記念美術展「関西展」として、本校美術科OBの諸先輩方の素晴らしい作品が数多く展示されます。23日(木)にはOBトークイベントなど、オープニングセレモニーが実施されます!皆さん、お時間を見つけて是非、会場を訪れてみてください!

表紙を飾りました♪

 本校の空撮と100周年式典の一部が明石ケーブルテレビ発刊「ミルマガ11号」の表紙を飾りました!「明石高等学校創立100周年おめでとうございます」の表記も記載くださいました。ありがとうございます。

「新たなステージへ まっすぐに!!」

※「ミルマガ9月号」の表紙では、本校放送部制作「部室 de 生放送」も取り上げていただきました。11/7(火),8(水)のオープンスクールでは、学校紹介として活用します!お楽しみに。

生け花をプレゼントしていただきました!

 

 先週、華道部の部員お二人からすてきな生け花をプレゼントしていただきました。

 華道部の皆さんは、定期的に創作品を校内に飾ってくださり、生徒・教職員の毎日の学校生活に潤いや季節感をもたらしてくれています。今回は、校長室にも是非ということでした。感激です!

 執務中にも、自然に視界に入る場所に飾らせていただきました。隣の初代校長 山内佐太郎先生の表情も微笑んでいらっしゃるような気がします。

 

 

 

令和5年 入学式 式辞

瀬戸内の波に柔らかな陽光が差し、波の煌めきもその輝きを一段と増すとともに、本校校庭の葉桜もまぶしく映えるなど、まさに春爛漫の佳き日に、多数のご来賓、保護者の皆様にご臨席賜り、本校第七十八回入学式を挙行できますことは、限りない慶びであり、関係者全ての皆様に、心より厚く御礼申し上げます。

ただいま、入学を許可致しました三二〇名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。私たち教職員一同心から皆さんの入学を歓迎致します。

皆さんは、コロナ禍による受け入れ難い様々な制約を余儀なくされた中学校生活の中でも、懸命に努力し、苦境を乗り越え、今日、この日を迎えられました。その努力に対し、心から敬意を表するとともに、ご家族をはじめ、みなさんを支えてこられた方々にも、教職員を代表して、お祝いをお伝えしたいと思います。

今、入学できたことへの喜びや、今日からはじまる高校生活への期待感、緊張感があふれる皆さんの表情は、とてもすがすがしく凜々しくもあり、私たち教職員もあらためて身の引き締まる思いです。皆さんにとって、充実した高校生活となるよう精一杯、応援することをお約束いたします。

さて、本校は、大正十二年に明石市立明石中学校として開校し、昭和三年に県立明石中学校、昭和二十三年の学制改革により県立明石高等学校となり、今年、創立百周年を迎える伝統校であります。その間、県下唯一の美術科の設置や、西オーストラリア州モーリー高校との国際交流、理数探究類型の設置、そして令和二年度からは、国際的に活躍できるグローバルリーダーの育成を図る「ひょうごスーパーハイスクール」の研究指定を受ける等、社会の変化に伴い、時代の要請に応じた、柔軟な学校改革を進めながら、地域社会や国際社会で活躍する有為な人材を多数輩出してきました。

来年、令和六年度からは「科学、技術、工学、芸術、数学」これらを総合的・横断的に学ぶ「STEAM探究科」をスタートさせるなど、さらなる飛躍に向け、準備しているところです。

また、凛として伸びるクスノキや桜など緑豊かな木々に囲まれた校庭、教室の窓から明石海峡を望むことができる閑静な高台に位置するなど恵まれた教育環境があります。

皆さんには、このすばらしい環境の下で、「明高生」として、人生でも最も意義深い、青春の三年間を送っていただきたいと願っています。

では、「明高生」とはなんでしょうか。

それは、本校の建学の精神である「自彊不息(じきょうふそく)」、のもと、本校の教育綱領に込められた「社会的で創造力豊かな自主的個人」の形成を目指し、常に励み続ける人」であります。

皆さんには「明高生」としての成長を期待しています。「社会的で創造力豊かな自主的個人」、その資質や能力を身につけていくには、物事の道理を判断し、処理していく心の働きや能力を指す「知恵」の新たな習得が必要です。私から皆さんにその習得のための二つの大切なことを伝えたいと思います。

一つは「多様性から学ぶ」ということです。

「知恵」は多様なメンバーが関わってこそ豊かに膨らみます。

高等学校では、多様な人々がそれぞれの違いを尊重し合いながら、協力して共に創造的な作業を行う学習活動が、これまで以上に設定されています。

勉学でも、スポーツや文化・芸術活動でも、多様なメンバーがそれぞれの強みを持ち寄り、議論し、上手くつなぎ合わされたとき、残念ながら失敗した時でも、新しい「知恵」が身につきます。逆にいえば、同じような価値観や知識を持っている人だけが集まっても、「知恵」は膨らまず、動き始めないのです。

今日から皆さんには、新しい出会いやこれまで経験したことがないことに関わるチャンスがたくさん出てきます。失敗を恐れず、果敢に挑戦し、「知恵」を豊かに膨らませてください。

一方で、学校というところは、自己の範囲内においての失敗や考え方の変更に寛容であり自由でもあります。果敢に挑戦した失敗という経験を糧に、ときにはふりだしに戻り、ゆっくりと安心して考えることも、自己実現を図る上において、大切であることを忘れずにいてください。

二つ目は「多様性を尊重する」ということです。

言い換えれば「互いの個性を認め合う」ということです。重要なことは、「自分の固定観念や思い込みで他人や物事を見ないこと」そして、「自分自身を客観的に見ることができて、冷静な判断や行動ができる能力を身につけること」です。新しい仲間と出会った時や何かにチャレンジするとき、この二つのことを常に思い出してみてください。今まで考えもしなかったことに気づけたり、感じもしなかったことを共感できるようになったりと、知識や価値観、感性の広がりを実感できる瞬間に必ず出会うことでしょう。

どうぞ、皆さんの身近に、多くの可能性を持つ多様な人びとが存在することを、そしてそれら一つ一つの可能性がすべて尊いものであることを、忘れないでください。私たち明石高校の教職員もまた、みなさん一人ひとりの個性とその可能性を最大限に尊重し、みなさんとの対話と共感をさらに深めていきたいと考えています。

最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。高校の三年間は、将来の方向を決定する大切な時期であり、その一方で、不安や悩みなど精神的に不安定な多感な時期でもあります。大切なお子様が、自らの進路を、自らの力で切り拓いていけるよう、教職員一丸となって、全力で教育活動に邁進することをお誓い申し上げます。

何卒、本校に対するご理解ご協力をよろしくお願い申し上げます。

新入生の皆さん、皆さんの輝かしい未来に向かって、ともに歩んでいきましょう。

ようこそ、「明高」へ。

 

 

令和五年四月十日 

 

兵庫県立明石高等学校

学校長 北中 睦雄

令和5年度 始業式 校長講話

4/10(月)の朝、始業式を行いました。

始業式中の校長講話では、何か不安があれば先輩・友人・親・先生等に相談すること、学力の形成・学習習慣をつけることについての話や、教育活動中のマスク着用については基本的に不要で自己判断になる、同調圧力などは絶対にやめようという新たな形式についての話等がありました。

晴天の中のスタート、創立100周年の明石高校を今年度も宜しくお願い致します。

3学期修了式講話

 皆さんおはようございます。令和4年度が終わります。この1年を振り返ってどうでしたか。納得のいく1年だったでしょうか。今年度もコロナ禍に見舞われたままの、何かと制約を強いられた中での1年ではありましたが、学習に、学校行事に、そして部活動に、多くの人が直向きに取り組んでくれたと思っています。そうした皆さんの頑張りを改めて心から称えたいと思います。

 さて、最近、心理学の立場から注目されている言葉に「グリット」という言葉があります。この「グリット」を提唱したのは、アメリカの心理学者で、ペンシルベニア大学のダックワース教授です。彼は、ニューヨークの公立中学校で数学教師をしていた際、成績が優秀な生徒に共通した特徴が頭の良さや生活環境ではないことに気づきました。そこで、大学に戻り研究を続けた結果、成功する人に共通する特徴は「グリット」にあると結論づけました。

 「グリット」とは、「Guts=困難に立ち向かう闘志」「Resilience=失敗しても諦めない粘り強さ」、「Initiative=目標を設定し取り組む自発性」、「Tenacity=最後までやり遂げる執念」の頭文字をとった造語で、簡潔に言うと「やり抜く力」のことです。

 「グリット」は後天的なものであり、トレーニングをすれば必ず身につくそうです。そのための方法として、「興味があることに打ち込む」「挑戦せざるを得ない環境を作る」「小さな成功体験を積み重ねる」「グリットがある人のいる環境に身を置く」ことが大切だそうです。

 学校生活の中で、例えばクラス役員や生徒会役員、部活動や学校行事おいて自分が本気で打ち込めるものを探してください。本業である学習に直結していなくても構いません。何かに本気で打ち込むことで「グリット」が身につき、本業である学習にもそれが活きてきます。

 どうせ無理だと最初から決めつけずに、「もしかしたらできるかんじゃないか」「どうやったらできるだろうか」と前向きに捉えるクセをつけることも大切です。何もしなければ、何も変わりません。先ずは、チャレンジすることです。

 人はどうしても周囲の環境に依存してしまいがちです。自分の意識や習慣を変えるのはなかなか容易なことではなく、ハードルも高いと思いますが、「グリッド」の高い人が側にいる環境に自ら飛び込み、そうせざるを得ない状況に追い込むことで一歩が踏み出せます。

 また、「グリット」の高い人は常に自分ならやれるという自信、信念を持っています。それを支えている要素の一つが過去の成功体験です。自分ができそうなところから始め、徐々にハードルを上げて自分のスキルより上の目標を設定し、それをクリアしていくという経験を積むことも大切です。

 私は縁あってここ明高で4年間校長として勤務しました。明高生一人一人がこの「グリッド」を最後まで貫けたら、様々な面でもっと伸びていたのではないかと思うことが多々あります。特に、進路面で諦めが早かった人、安きに流れてしまった人が少なからずいたように感じています。

 皆さんには無限の可能性があります。それを切り拓くには、先ずはできそうなことから、そうせざるを得ない状況を作り、一歩前に踏み出し、失敗しても、最後まで諦めず努力を継続してやり抜くこと、この経験を繰り返して習慣化していくことが肝要です。明高生全員が「やり抜く力」、「グリッド」をぜひ身につけてほしいと願っています。

 3月17日に第3学区複数志願選抜の合格者発表がありました。その1ヵ月前には理数探究類型特色選抜と美術科推薦入学の合格者発表がありました。親子で歓喜する姿、涙する姿を目の当たりにして、私も胸が熱くなりました。皆さんにもそんな瞬間があったはずです。

 明高に入学して、1年、あるいは2年が経とうとしていますが、入学した時の「よし、明高で頑張るぞ」という決意を今も持続し、やり抜いていますか。目標に向かって邁進し続けていますか。夢を追い求め続けていますか。自分自身に問いかけてみてください。

 1年前、2年前の合格者発表のあの瞬間を思い起こし、楽な方に逃げず、初心に返って学び続けてください。

 令和5年度の皆さんの飛躍と成長を期待しています。

 最後に、明日から春休みですが、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてください。

卒業式式辞

 「春がすみ とほくながるる 西空に 入日おほきく なりにけるかも」

 大正から昭和にかけて活躍したアララギ派の歌人、斉藤茂吉は、春の訪れへの喜びと、その美しい光景をこのように詠んでいます。自然の営みは実に確かで、ここ自彊が丘の木々も生命の兆しを内に抱き、教室の窓から見える瀬戸内の波の煌めきもその輝きを徐々に増して、春がすぐそこまで来ていることを感じさせます。

 本日は、同窓会長様、PTA会長様、保護者の皆様のご臨席を賜り、このように厳粛に本校第七十五回卒業証書授与式を挙行できますことに心から感謝いたしますとともに厚くお礼申し上げます。

 七十五回生の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただ今卒業証書を授与いたしました三0九名の皆さんに、本校教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。

  「Persistence pays off」、この言葉は七十五回生の学年通信のタイトルです。「継続は力なり」、この言葉に込められた櫻井寛員学年主任はじめ、学年団の先生方の思いを受け止め、「一緒に卒業」「大丈夫」と皆さんに寄り添い励ます学年主任の言葉で、何事にも諦めず挫けず努力を継続して、見事その期待に応えてくれました。皆さんのその妥協を許さず粘り強く取り組む姿、その溌剌として全力で躍動する姿は、確と私の目に焼き付いています。

  さて、現代は「人新世」と言われ、世界は気候変動、人口問題、新型コロナウイルス感染という多くの課題を抱えています。卒業生の皆さんが明高に合格したまさにその年、パンデミックが襲いかかって入学が2ヶ月遅れとなり、多くの制約を強いられた中での高校生活となりました。そして、それは例外なく全世界を覆い尽くし、社会は大打撃を受けています。さらに、アフガニスタンやウクライナに見られるように何の罪もない人の尊い命が危機に晒され、世界の平和が脅かされる状況に私たちは向き合っています。

 一方で、これからの世界には、こうした課題とともに、人が切り拓く新たな知的・情的世界への大きな希望もあります。例えば、「情報通信・AI・ロボット技術の進歩」、「宇宙や生命の起源の解明の進歩」とともに、「人類が宇宙へ気軽に行ける時代の到来」、「国連が提唱するSDGsのような自然界とも融和した社会体制の提案」等、グローバル化時代、情報化時代にあって様々な新しい価値の創造が期待されます。

 このように、激動で(Volatility)、不確実で(Uncertainty)、それらが複雑に絡み(Complexity)、しかも曖昧である(Ambiguity)という、「VUCA=ブーカの時代」、また、「コスモロジー」と言われる、世界における人の立ち位置が不透明な時代にあっても、皆さんには自分の拠って立つ基軸を見失うことなく、地に足を据えて生き抜いてほしいと思います。その意味において、今後特に大切にしてほしい三つの基軸を皆さんに伝えて餞別にしたいと思います。

 一点目は、挑戦する勇気を持ち続けてほしいということです。

 「事の成否は『なりたい』ではなく『なってやる』という強い意志である」という毛利衛氏の言葉を私が耳にしたその五年後、彼は勇気を持って挑戦し日本人初の宇宙飛行士となりました。「今の若者は、夢の実現に手をつけず、失敗という結果を畏怖ばかりしている」とも語っていました。成功は如何に上手くやったかではなく、失敗から何度立ち上がったかです。誤つことのない人は、何事もなさない人です。挑戦が経験となって視野を広げ、自己の成長に結実して新しい自己が形成されます。一回性の人生に悔いを残さないためにも、挑戦する勇気を持ち続けてください。

 二点目は、世のため人のために生きてほしいということです。

 どんな仕事でも、世の中の人々が求めていないものは成立しません。それが世の中にとって必要であるからこそ成立するのです。「義利合一」という概念がありますが、世のため人のためという「義」を軽んじ、拝金的に「利」をのみ追求した人や企業は淘汰されることは過去の歴史が裏打ちしています。実業家で、伊藤忠商事元会長の越後正一氏は「大切なことは、世の中にやらせてもらっているこの仕事を、誠実に謙虚に、そして熱心にやることである。世の中の求めに、精一杯応えることである」と語っています。世のため人のために生きているか、自己を顧みることを忘れないでください。

 三点目は、感謝の気持ちを持ち続けてほしいということです。

  時に厳しく諭し、時に温かく見守ってくださった先生方、三年間ここ明高で同じ時空を共有し、悲しみは半分に、喜びは何倍にもしてくれたかけがえのない七十五回生の仲間、いつも大きな愛情で包み、陰から支え応援してくれた家族、PTA、同窓会、そして地域の方々。皆さんが今日、卒業の日を迎えることができたのは、もちろん、皆さんの弛まぬ努力によるのですが、その裏にはこうした多くの方々の励ましやご支援があったからこそです。「感謝の心が高まれば高まるほど、それに比例して幸福感が高まっていく」と言ったのは松下幸之助氏ですが、感謝の気持ちを決して忘れず、心豊かに生きてください。

 保護者の皆様に、この場を借りまして一言申し上げます。この三年間、本校の教育方針に、またコロナ禍にあって感染症対策にご理解とご協力を賜りましたことに、心より感謝とお礼を申し上げます。お子様は、大きく、立派に成長され、今日この学び舎から巣立っていかれます。この十八年間、言葉には尽くせぬほどのご苦労があったこと、また春から親元を離れていくことに一抹の不安と大きな寂しさを感じておられることと推察いたしますが、今日この日を迎えられ、心からお慶びとお祝いを申し上げます。今後とも引き続き、本校に対して変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 最後になりましたが、不思議な縁でここ明高に集い、ともに育くんだ建学の精神「自彊不息」、校訓「自治・協同・創造」の気概、そして、校歌にある「集え・競え・誓え」の気炎。これらを深く胸に刻んで、皆さん一人一人の活躍が母校の喜びや励みになることを、そして七十五回生全員の力になることを忘れず、命を大切に、自信と誇りをもって、悔いのないすばらしい人生を歩んでいかれることを祈念します。

 「別れては ほどをへだつと 思へばや かつ見ながらに かねて恋しき」

 卒業生の皆さんに限りない惜別の思いを残しつつ、その洋々たる前途を祝して、式辞といたします。

1月全校集会校長講話(全校集会は、寒波による休校で実施できず)

 3年生が自由登校に入り、校内は1・2年生だけになりました。2年生は最高学年になるという自覚、1年生は学校の中核になるという自覚を持ち、高校生として、また明高生として恥ずかしくない言動がとれているかどうか、今一度自己点検してほしいと思います。

 さて、今日は、現在の京セラとKDDIを創業した方で、経営破綻した日本航空の立て直しにも奔走され、昨年8月に亡くなられた稲盛和夫氏について話をしたいと思います。

 稲盛氏の少年・青年時代は決して順風満帆なものではありませんでした。むしろ挫折の連続であったようです。 中学受験・大学受験に失敗、結核を煩い、戦争の空襲で家も焼失してしまいます。入社した会社は赤字続きで、逃げ場もない不遇な状況に追い込まれた稲盛氏は腹をくくり、「周囲のせいにしているうちは何も始まらない」と一念発起、それからは一切の不平不満を捨て、目の前の仕事に「ど・真剣」に取り組んだそうです。そこから人生は好転します。稲盛氏は「与えられたことに必死に打ち込むことで、弱い心を鍛え、人間性を養い、幸福をつかむことができた」と言っています。そして、「人生には方程式がある」として「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」であるとも言っています。かけ算ですからどれか一つが「0」ならば結果も出せません。「能力」がまだ十分でなくても「考え方」が人として正しく、「熱意」をもって目の前のことに取り組んでいけば、大きな結果が得られる、そうして人生は拓けていく、と断言しています。

 稲森氏には多くの著作がありますが、その一つ『生き方』の一部を紹介します。

 「世の中のことは思うようにならない、私たちは人生で起こってくるさまざまな出来事に対して、ついそんなふうに見限ってしまうことがあります。けれどもそれは、『思うとおりにならないのが人生だ』と考えているから、そのとおりの結果を呼び寄せているだけのことで、その限りでは、思うようにならない人生も、実はその人が思ったとおりになっていると言えます。人生はその人の考えた所産であるというのは、多くの成功哲学の柱となっている考え方ですが、私もまた、自らの人生経験から、『心が呼ばないものが自分に近づいてくるはずがない』ということを信念として強く抱いています。つまり実現の射程内に呼び寄せられるのは自分の心が求めたものだけであり、まず思わなければ、叶うはずのことも叶わない。換言すれば、その人の心の持ち方や求めるものが、そのままその人の人生を現実に形づくっていくのであり、したがって何かことをなそうと思ったら、まずこうありたい、こうあるべきだと思うこと、それもだれよりも強く、身が焦げるほどの熱意を持って、そうありたいと強く願望することが何より大切になってきます」。

 皆さんは今、勉強に、部活動に、自分のやりたいこと、やらなければならないことに「ど・真剣」ですか。「だれよりも強く、身が焦げるほどの熱意を持って、そうありたいと強く願望」していますか。高校時代は勉学を通して自分自身を鍛え、世界を広げる時期であり、他者との関わりの中で生き方や在り方を考える時期であり、そして人生を選び取る時期です。こうした時期にあって日々どう過ごすかは、皆さん一人一人の「考え方」と「熱意」にかかっています。今一度、このことを強く自覚して日々高校生活を送ってほしいと思います。

 最後に、皆さんには繰り返し新型コロナウイルス感染防止対策を訴えかけていますが、集団で一緒に話をしながら食事をとったために感染した、濃厚接触者になったという事案が相変わらず多発しています。本校生の中にも、皆さんの家族の中にも重症化リスクを抱えた人がいます。取り返しのつかない事態にならないよう、皆さん一人一人が自覚して行動してほしい、責任ある行動をとってほしいと切に願います。

3学期始業式式辞

 皆さん、おはようございます。2023年がスタートしました。皆さん一人一人が大きな夢や希望を持って今そこにいると思います。コロナ禍で不安が尽きない中ですが、その大きな夢や目標に向かって決して挫けず、諦めず、邁進する、そんな充実した1年にしてほしいと思います。

 さて、今や年末年始の風物詩となっているのが数々のスポーツです。中でも、私がいつも見入ってしまうのが箱根駅伝です。教え子が箱根路を走り、テレビの画面越しに応援したことが契機となりました。

 駅伝のルーツは、古くからあった飛脚制度や、江戸時代に五街道の一つであった東海道で、馬で荷物を運んだ伝馬制にあると言われています。最初の駅伝は1917年に京都から東京まで約508㎞、23区間、昼夜問わず3日間走り続けるというものでした。距離を分担して走るというルールは、個人よりもチームを大切にする、いかにも日本発祥のスポーツだと思います。

 箱根駅伝のルールは実に過酷です。中継点で20分遅れのチームは繰り上げスタートを強いられ、タスキを繋ぐことができません。翌年のシード権は10位までで、それ以下は予選からの熾烈な闘いが待っています。このように、タスキはチームと歴史を繋ぐものであり、学校の名誉と誇り、そして選手一人一人の血と汗と涙が染み込んだものです。

 駅伝はよく人生の縮図であるとも言われます。平坦な道ばかりでなく、時に風雨、風雪にも苛まれます。そうした苦難を克服するために、日頃から弛まぬ努力の積み重ねが必要です。今回の箱根駅伝でも、私達が知り得ない努力の積み重ねが、数々の感動的なドラマとして私達の心に響いたのではないかと思います。

 皆さんに認識してほしいのは、こうした感動的なドラマは何もスポーツに限ったことではなく、皆さんが日頃から取り組んでいる全てのものに共通するものだと思っています。どんな思いで、どんな決意でそれに取り組んでいるか、それは真剣か。そして、そこに弛まぬ努力のプロセスがあるからこそ、ドラマとなり、感動を呼び起こし、周囲がそれに共感、共鳴するのだと思います。真剣であればあるほど、それはより大きなものになります。

 実は、皆さんもそれぞれにタスキを背負って走っています。2023年がスタートしましたが、この1年を見ても、幾つもの節目があります。ゴールとなる目標を設定し、それを見据えて節目節目にタスキをどう繋げていくかをしっかり考えてください。

 1・2年生はそれぞれ2年後、1年後を見据えて。3年生は人によっては1ヶ月後、2ヶ月後、あるいは大学を卒業する4年後、この先10年後を見据えて。皆さんそれぞれにそれぞれの目標に向かって、決して挫けず、諦めず、弛まぬ努力を積み重ねてしっかりと自分のタスキを繋いでいく、そんな3学期、2023年にしてくれることを強く希望します。

 ところで、明高も今年、創立100周年を迎えました。9月30日には記念式典・記念講演会を予定しています。また、記念事業・関連事業として、新資料館の建設、資料館周辺の庭園整備、視聴覚教室を探究ルームに改修、体育館にトイレ新設、記念イベント等を計画しています。明高の歴史と伝統、建学の精神「自彊不息」のタスキを皆さんとともに繋いでいきたいと思います。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止の徹底をお願いします。

2学期終業式講話

 社会は動き始めましたが、依然としてコロナ禍に翻弄されたままの令和4年、そして2学期が終わります。皆さんにとってどんな1年、どんな2学期でしたか。

 ところで、皆さんは「カリカリ」というお菓子を知っていますか。「カリカリ」は、亀田製菓が販売しているインド人向けの「柿の種」のことです。

 人口が頭打ちとなり、食品業界が待ったなしの変革を迫られるなか、亀田製菓は国内中心の事業からスタイルを変えようとしました。その一つが、人気商品である「柿の種」をインドで販売することでした。このインド進出をはじめとした食品事業や海外戦略の舵取り役を担うのがインド人副社長のレカ・ジュネジャさんです。

 彼は、インドの大学院を卒業後に名古屋大学大学院で食品工業化学を学び、博士号を取得。入社した大手食品素材メーカーでは研究も営業もこなして副社長に就任。「お茶の成分のリラックス効果」の研究成果は世界中の商品に活かされています。その後、ロート製薬を経て2020年に亀田製菓に副社長として迎えられました。そして、「研究のための研究はやめて、どんどん新商品を出そう。それも、日本の1億2千万人ではなく、世界の77億人を相手にしよう」と社員に訴えました。彼は「日本の食品企業はまだ世界に出ていない。世界の市場を狙っていった方がいい。世界に出るには苦労があり、容易に成功しない。でも、リスクも取らないとダメ。枠を自分で決めてしまってはダメ。枠を超えたことをやろう」とも訴えました。そこで作り出されたのが、種が大きく、ピーナツ量が多く、生地が厚く、味が辛めで濃い「カリカリ」です。それは現地で瞬く間に人気商品になりました。

  さて、この話から皆さんは何を感じ取ったでしょうか。グローバル時代、やはり世界に目を向けないといけない。リスクを冒してもチャレンジすべきだ。それぞれに感じ取ったものは異なるでしょうが、私が皆さんに伝えたいことは2点あります。

 1点目は「研究のための研究はやめる」です。この「研究」を他の言葉に置き換えてください。たとえば「勉強」「練習」。「勉強のための勉強」「練習のための練習」。皆さんは「進路実現、大学進学のための勉強」ではなく、「宿題のための勉強」「課題提出のための勉強」になっていませんか。「近畿大会出場、全国大会出場のための練習」ではなく、「今日もまた練習があるから練習」になっていませんか。皆さんにはそれぞれ目指すもの、目標とするものがあるはずです。それを達成するために何をしなければならないのか、それを自覚できたら、自ずと意識も姿勢も取組も変わってきます。

 2点目は「枠を自分で決めてしまってはダメ」です。皆さんは自分で自分の限界を決めつけていませんか。やる前からどうせ無理だと諦めていませんか。自分はこの程度じゃない、これでは満足できない、こんなはずはない、このままではダメだと考えて真剣に努力している人がどれだけいるでしょうか。

  令和4年が、そして2学期が終わろうとしている今、これまでの自分を見つめ直してください。皆さんそれぞれに目指すもの、目指すところが何なのかを確認し、そのためにハードルを上げて越える努力を惜しまないでください。皆さんには建学の精神「自彊不息」、この言葉の意味を改めて噛みしめてほしいと思います。皆さん一人ひとりが、2学期が終わるこの節目、年が改まるこの節目を、自分が変わる転機にしてくれることを期待します。

最後に、明日から冬休みに入りますが、改めて新型コロナウイルス感染防止の徹底をお願いします。

それでは、1月10日にこうして全員が元気に登校してくれること、令和5年が皆さんにとってすばらしい1年となることを祈念して、式辞とします。

11月全校集会講話

 皆さんは夏川草介(そうすけ)さんが書き下ろした『神様のカルテ』という小説を読んだことがあるでしょうか。もしかしたら映画で見た人がいるかもしれません。櫻井翔さんが主役を演じていました。

 この小説は、主人公の若手医師である栗原一止(いちと)が、病院で出会う患者さんや、先輩あるいは同僚の医師、看護師、大学同期の親友、アパートの少し変わった住民、主人公を優しく見守る写真家の妻など、多くの人々と接しながら自分自身の生き方について考える姿を描いています。

 その中に、主人公と、彼が担当する患者さんとの対話の場面があります。この患者さんは高校の教師をしていた人で、多くの本に囲まれた自分の部屋で、主人公と次のようなやりとりをします。

 それは患者さんの言葉から始まります。「ヒトは、一生のうちで一個の個人しか生きられない。また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる。」「たくさんの人の気持ち?」「困っている人の話、怒っている人の話、悲しんでいる人の話、喜んでいる人の話、そういう話をいっぱい読む。すると、少しずつだが、そういう人の気持ちがわかるようになる。」「わかると良いことがあるのですか。」「優しい人間になれる。」「しかし、今の世の中、優しいことが良いことばかりではないように思います。」「それは、優しさということと、弱いということを混同しているからです。優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を「優しさ」というのです。優しさというのはね、想像力のことですよ。」

 「優しさ」=「考える力」=「想像力」、思わず納得してしまう、心にストンと落ちてくる言葉です。皆さんには「優しさ」がありますか。最近、いじめと思われる事案、SNSをめぐるトラブルが多発しています。本校も例外ではありません。人に「優しく接する」とはどういうことか、どうすることか、この機会に一人一人考えてほしいと思います。

 さて、本を読んでいると、自分ではうまく言い表せないでいた考えや気持ちを的確に表した表現に出くわすことがよくあります。表現の仕方や語彙を身に付けるツールとして、言葉を自在に操る小説家の書いた文章にふれることは大変意味があると思います。また、映像を見るのではなく、活字を読むことで、想像力を高めることもできます。読書は豊かな感性を磨き、幅広い知識を得て、考える力を育て、表現力や想像力を育みます。大学入学共通テストにおいても、どの教科も多量の文章や設問文、資料文を読ませる出題に変化しています。こうした様々な理由から、ぜひとももっと読書に勤しんでほしい、1日10分でいい、読書に時間を割いてほしいと思います。

 最後に、新型コロナウイルス感染がまた拡大しています。本校でも、特に濃厚接触者が非常に増加しています。教室の換気の徹底、マスクを外した会話や昼食時の会話の厳禁、こうした感染防止対策の徹底を改めてお願いします。一人一人が自覚を持って行動してください。

10月全校集会講話

 

 少し前、7月の話になりますが、陸上の世界選手権がアメリカのオレゴン州ユージンで開催され、サニブラウン選手が日本人短距離界初の決勝進出という快挙を成し遂げました。その決勝では、惜しくも銅メダルに0秒18届きませんでした。レース後のサニブラウン選手は、「近いようで遠い。1ミリ1ミリ縮めるために、1日1日、1秒1秒を大切に頑張っていきたい」とコメントしましたが、私にはまさに極限の世界を生きる人が発する言葉に聞こえました。

 実際、このニュースを報じた新聞のコラムに北京オリンピック400mリレーの銀メダリスト、朝原宣治氏が寄稿していたので紹介します。「私も、何度もファイナル進出に挑戦したが、準決勝はとてつもないエネルギーが渦巻いている。まるで格闘技のように同じ組のライバルと、肉体と精神をぶつけ合うような感覚を味わった。その場を支配する巨大なエネルギーに耐えられた人間だけが、決勝の8人に選ばれる。ただ速いから立てる場所ではないから尊いのだ」。この言葉からも、サニブラウン選手の強靱なまでのメンタルの強さがうかがえます。

 サニブラウン選手は2019年に日本新記録となる9秒97をマークしましたが、以降、腰痛に苦しみ、その中で彼が感じたのは「スポーツ競技はメンタル勝負である」ということ、そしてどん底を乗り越えて学んだのが「マインドセット」の重要性であると語っています。

 「マインドセット」とは、それまでの経験や学習、先入観から作られる思考パターンのことです。簡潔に言うと「無意識の思考・癖・思い込み」のことです。

 普段、私達人間の行動は、95%が無意識に行われていると言われています。それはそれまでの経験や学習、自分の中の常識によってかたちづくられた「マインドセット」を持って行動しているからだそうです。

 その「マインドセット」には「成長型」と「固定型」があって、「成長型マインドセット」は「自分の能力は努力次第で成長させることができる」という思考、「固定型マインドセット」は「能力はもともと決められており変わらない」という思考で、多くの人はこの両方を持っているそうです。

 例えば、「大リーグは別世界だ」と思っていた人が、大リーグで活躍する大谷選手の姿を見て「自分にもできる」と思うようになる、「大リーグは別世界だ」という思いが「固定型マインドセット」、「自分にもできる」という思いが「成長型マインドセット」です。

 この「成長型マインドセット」を持って挑戦することが成功の秘訣です。試合ともなると、失敗できない大事な場面ともなると、あるいは受験ともなると、緊張の極限状態に置かれます。しかし、「成長型マインドセット」を日頃から研ぎ澄ましていくことで、動じない精神力を身に付け、それを乗り越えられるはずです。「自分は必ずできる」「自分は必ず成功する」「自分は必ず合格する」、無意識にそう思える、そう信じられるマインドをセットできるよう、1日1日、1秒1秒を大切に鍛錬を重ね、自分を追い込んでほしいと思います。逆に、無意識にそう思えたら、「自分はやり切った、悔いはない」と思えたら、きっと緊張を楽しむことができるようにもなるはずですし、どんな結果であれ、それを納得して受け入れられずはずです。

 明高生の誰もが「成長型マインドセット」を持ち、理想像を描いてその実現のために努力し続ける、そんな学校生活を送ってくれることを期待しています。

 最後に、新型コロナウイルス感染防止の徹底を改めてお願いします。

2学期始業式講話

 皆さんおはようございます。この夏休み、コロナ感染や熱中症等、大変心配していましたが、命に関わる大きな事案もなく、こうして全員が元気に登校できたことをともに喜びたいと思います。

 この夏休み、皆さんの頑張りや活躍を幾度となく耳にしました。本当に嬉しく思っています。まだ結果の出ていない人もいるかと思いますが、「ローマは一日にしてならず」と言います。諦めず、挫けず、頑張り抜いてください。

 ところで、皆さんは、兵庫県出身のお笑い芸人と言えば誰を思い浮かべますか。私は真っ先にダウンタウンの松ちゃんこと松本人志さんを思い浮かべます。

 彼は、尼崎市出身で日本のお笑い界を代表するカリスマ的芸人の一人です。誰も想像できない発想で笑いをとるセンスだけでなく、お笑いの新しいフォーマットをつくる企画力においても卓越した才能を発揮し続けています。

 実は、評論家の多くは、彼の笑いの発想には「悲しさがある」と評しています。彼は、「おもしろさの裏にはやっぱり悲しさがあって、悲しさの裏には、例えばお葬式でおかしくてしょうがないみたいなことがあって。だからおもしろいこと、おもしろいことって考えているんですけど、ちょっと視点を変えればすごく悲しくもなるし。だから笑いっておもしろいなぁって思います」と語っています。

 自身の幼少期の体験から形成された貧しさや悲しみを独特の言い回しで笑いに変えるセンス。視点を変えることで笑いを生みだす体験があったからこそ、お笑いの世界で頂点に登ることができたのだと思います。私達は日頃、困ったり、行き詰まったりすることがよくありますが、そんな時には「視点を変える」ということ、大事なことを示唆してくれています。

 彼はこんな発言もしています。

「人と比較して劣っているといっても、決して恥じることじゃない。けれど、去年の自分と今年の自分を比較して、もしも今年が劣っているとしたら、それこそ恥ずべきことだ」、この言葉をそのまま皆さんに贈ります。恥ずべき自分がいませんか。

 「100点は無理かもしれん。でもMAXなら出せるやろ」、これは彼の名言と言われる言葉です。深い言葉ですよね。パーフェクトな結果は初めから出せないかもしれないけれど、今の自分が持っている力を最大限に出すことはできるだろうというのです。これは、妥協を許すということではなくて、初めから完璧を求める必要はないけれど、常に本気で物事に向かっていけということだと思います。初めから完璧な人はいませんし、初めから完璧を求めてしまうとしんどくもなってしまいます。また、何かを成し遂げようとする時、いきなり大きな目標を立ててしまうと、そこまでの道のりが遠く長いために挫折してしまいます。だから、少し頑張ればできそうな小さな目標を立ててそれを達成していく。これを繰り返していくうちに、最初に掲げた大きな目標に近づいていくことができます。

 今日から2学期が始まりました。大きな目標、3年生は進路実現、2年生は進路目標の確立とその実現、1年生は将来の目標の確立と学力の向上、できそうな小さな目標を立ててそれを達成していく、それを積み重ねて大きな目標に近づいていく、そんな2学期にしてくれることを期待しています。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止の徹底をお願いします。

1学期終業式 講話

 早いもので、1学期が終わります。皆さんは、納得のいく1学期を送れましたか。送れたという人は手を挙げてください。何に納得できていないのか、それはなぜなのか。しっかり自己分析し、すぐに改善に努めてください。改善なくして成長なし、です。

 さて、「グローバル化」「グローバル人材」という言葉はよく耳にするところです。「グローバル化」とは、人や商品、資本、情報などの様々な分野で、国や地域の垣根を超えた移動が活発化し、世界の結びつきが深まる現象を言います。現実に、労働力が安価な新興国で商品を製造することで、企業は増収、私達消費者は安価に商品を入手しています。海外の製品やサービスが国内に溢れ、街には多国籍の人々が往来しています。インターネットを介して瞬時に情報が世界中を駆け巡っています。世界中に拡大した感染症の問題もグローバル化が一因です。コロナ禍で人の移動がいまだに制限されていますが、新たな技術や手法の開発によって「グローバル化」が停滞することはないと言われています。

 こうした「グローバル化」時代を生きる「グローバル人材」に求められる力は何か。早稲田大学の白木三秀教授が、海外に派遣された日本企業の社員を対象に、コンピテンシー、つまり安定的に期待される成果を挙げている人に共通して見られる特性を調査したところ、共通して4つの力が備わっていることが判明しました。その4つとは何だと思いますか。

 私は、英語力がその1つだと考えましたが、英語力、特に話す力は備わっていることが大前提の話でした。その4つとは、

1 前向きな行動力

2 対人関係構築力

3 異文化適応力

4 仕事力

でした。そして、細かく分析したところ分かったことが、誰もが高校時代に好奇心を持って大小様々なことに主体的に挑戦し、成功と失敗を積み重ねる、そうした経験を数多くしていることでした。

  私が今、皆さんに伝えたいことは理解していただけたと思います。グローバル化時代を生きるグローバル人材となる皆さん、特に1・2年の皆さんには、好奇心を持って大小様々なことに主体的に挑戦し、自分を高めてほしい、自分を成長させてほしい、グローバル人材の基盤を作ってほしいと思います。ぜひそんな夏休みにしてください。もちろん、学習面では、特に復習を中心とした基礎基本の徹底的理解、その定着を図ることは言わずもがなです。また、特に2年生は志望する大学に足を運んで、「よしやるぞ」という不退転の決意を新たにしてください。

 3年生の皆さん、就職・公務員志望の人、しっかりと対策を立て妥協せず納得のいくまでやりきってください。進学志望の人、「夏を制する者は受験を制する」と言われます。この夏の頑張りを期待しています。しかし、必死に勉強しても、すぐに結果は出るとは限りません。早い人で3ヶ月後です。逆に考えると、この夏休みに頑張らないと受験には間に合わないことになります。必ずや志望校に合格するぞという不退転の強固な意志を持って、この夏休みを乗り切ってください。

 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症が再拡大し、感染者が激増しています。改めて感染防止の徹底をお願いします。特に部活動内での感染が拡大しないよう留意してください。

6月全校集会校長講話

 大学進学を目指す人の多くは「大学入学共通テスト」を受験します。私立大学の多くが取り入れ、国公立大学受験者は必須です。この「共通テスト」は、大学入試改革の目玉として、単に知識だけを問うのではなく、受験生の思考力や判断力を評価する出題内容となっています。来年度で3回目となります。

 今年度の試験では、多くの科目で平均点が過去最低となりました。そのため、昨年度の3年生も受験校を決定する際、悩んだ人が非常に多くいました。英語ではリスニングのウエイトが非常に高くなりました。英語の読解問題では図や資料など様々なテクストから概要や要点を把握したり情報を読み取ったりする問題、国語では本文に関連する別の文章が提示されて内容や表現の特徴について類似点や相違点を問う問題、数学では会話文を用いて数学的な問題解決の過程を問う問題、地歴では史料や図表を読み取る問題、理科では実験や考察問題が非常に多く出題されました。

 しかし、問題を解いてみると、実は基本事項が理解できていれば、ちゃんと正解にたどり着ける問題ばかりです。ポイントは、日頃の学習において、単に知識だけを覚え込むのではなく、それを使って考える、いわゆる「思考の訓練」をしっかり行えているかどうかです。

 「思考」とは、辞書には「すでにある情報から新しい情報を導き出す心の活動」とあります。イメージ的に言うと、「こうだからこう、こうだからこう、だから結論的にはこう」といった考え方の形式のことです。例えば、自明の真実からスタートして、結論を導き出す演繹的思考では、「昆虫は6本足、クモは8本足、だからクモは昆虫でない」という結論になります。また、前提に「全ての」とか「ある」といった量を表す表現が含まれるパターンの定言的思考では、「全てのAはB、全てのBはC、よって全てのAはC」という結論になります。

 こうした「思考の訓練」は、いつでもどこでもできるものだと私は思っています。部活動でも意識して臨めば、相当な訓練になるでしょう。また、こうした思考は、何も学習や受験だけではなく、自己理解はもちろん、他者の気持ちへの理解、想像力を働かせることなど、私達が生きる上での全ての活動において活かされるものだと思います。

 皆さんには、日頃からあらゆる場面で「思考すること」「思考する訓練」を実践し、それを継続してほしいと思います。そして、一方向だけから物事を見るのではなく、できるだけ多くの視点から物事を捉え観察し、思考を深めてほしいと思います。この習慣が大学受験も含め、様々な意味での自己実現に繋がっていくはずです。

 最後に、新型コロナウイルス感染については、まだまだ油断できません。感染防止の徹底をお願いします。感染防止は、新たな取組ではなく、これまでやってきた基本的なルールを正しく守るということに他なりません。皆さんの教育活動を通常に近い形で行うためです。協力をお願いします。

5月全校集会講話

 ゴールデンウイーク前後に、多くの部で東播大会が開催されました。優勝、準優勝、入賞を勝ち取った部や選手が例年以上に多く、報告を聞いて大変嬉しく思いました。この勢いで、県総体でも活躍してくれることを期待し、楽しみにしています。

 私事ですが、高野連の仕事に携わっていることから、県大会はもちろんのこと、近畿大会や甲子園大会の試合を直接球場で観戦する機会がよくあります。高校野球の世界で強豪校と言えば、皆さんもすぐに大阪桐蔭、智弁和歌山、東海大相模といった名前が思い浮かぶのではないでしょうか。私は、全国からトップレベルの選手を集めれば当然強くなるはずだという考えを持っていましたが、強豪校の試合を観戦するにつけそれは誤りであることに気づかされました。

 スポーツではよく、「リズム感がある」とか「テンポがいい」とか言われます。リズムは「動きの規則正しい繰り返し」、テンポは「リズムの速さ」です。

 スポーツのパフォーマンスにおける二大要素と言われているのが、筋力やスピードなどの「身体機能」と、ボールに合わせる、タイミングを合わせる、相手に合わせる「協調」です。この「協調」ですが、こちらが相手に合わせるのか、相手がこちらに合わせるのかがポイントです。勝負事では「自分の中に基準とする内的テンポを持って臨むこと」、つまり相手がこちらに合わせる状況を作ることが絶対条件であると言われています。

 大阪桐蔭は、グランド上での動きは非常に機敏で、攻守交代も全力です。例えば、相手のピッチャーがマウンドに行くまでに、すでに先頭打者がバッターボックス横で素振りを始めています。それを見てピッチャーが慌ててピッチングを始める。つまり、相手がこちらの内的テンポに合わせてリズムを崩すことになります。このリズムのよさ、テンポのよさが大阪桐蔭はじめ強豪校の強さであると私は認識するようになりました。どんな競技でもそうですが、それを身につけることで、どんな時にも自分のリズム、自分のテンポで試合ができます。リズムやテンポは脳の働きによって刻まれるため、脳にリズムやテンポを染みこませることが重要です。日常のスピーディーな動きが身体に染みついて、それが自然な状態になっているのだと思います。ぜひそんなチームづくりをしてください。ダラダラ練習していたのでは絶対に勝てません。余談ですが、強豪校はどこも相手が誰であろうとしっかり挨拶ができます。春の甲子園は選抜になりますが、その第1条件は挨拶を含めたマナーの良さです。

 ところで、ヒトの様々な機能は生体リズムにより制御されていると言われます。夜になると眠気が増すのもそのためです。スポーツの国際大会で、ジェットラグ(時差ぼけ)によりパフォーマンスが低下するのも生体リズムが崩れたことによるものです。

 皆さんは、生活習慣の確立・生活リズムの確立ということを口酸っぱく指導されてきたと思います。それは、一定の規則正しいリズムで生活することが、安定して力を発揮することに繋がるからです。それが証拠に、普段家庭で2時間しか勉強しない人がいきなり5時間勉強しようとしても容易ではありません。1月に大学入学共通テストが実施されました。思考力を問う問題が増加し、時間内に問題を解き終えられなかったという声が多く聞かれました。これに対応するには、日頃から脳にそうなりたい自分のリズムやテンポを染みこませることが必要です。例えば、学習時間を徐々に長くするとか、歩くスピードを速くするとか、食べるスピードを速くするとか、問題を解くスピードを速くするとか。

 今日の話を、自分のリズムやテンポがどうか、試合に向けて、学習に向けて、受験に向けて自分を見直す、自分をつくり変える契機としてほしいと思います。

 最後に、新型コロナウイルス感染がまた拡大の様相を呈しています。不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。特に、部活動内での感染と濃厚接触の回避を徹底してください。また、下校時は飲食や寄り道をせず、まっすぐ帰宅してください。

4月全校集会講話

 新年度が始まって2週間が経ちました。1年生は高校生活にも徐々に慣れてきましたか。高校生・明高生としての自覚を持てるようになってきましたか。2・3年生には始業式で、「成功哲学」の話をしました。情熱と信念を持って8つのことを実践できていますか。成功への階段を一歩一歩上れていますか。

 昨日は、全学年とも仲間づくり、仲間との交流に主眼を置いた遠足でした。目的は達成できましたか。楽しい時間を過ごせましたか。今日から一週間、ゴールデンウイークまでギアをさらに一段上げて突っ走ってください。

 ところで、大手電機メーカーのソニーが電気自動車、いわゆるEV車製造へ参画するために、今春新たな会社を立ち上げました。個人的には、ソニーが自動車メーカーになるのかと大きな驚きを持ってこのニュースを耳にしました。今や、危険を察知して自動的に制御するシステムが搭載された自動車は当たり前になりつつあります。また、数年前から「空飛ぶ車」の構想が取り沙汰され、2025年に開催予定の大阪万博において、その姿が披露されることになりそうです。

 このように、これまでの常識では計り得ないこと、予想だにできなかったことが現実に起ころうとしているのが今の世の中です。こうした動きは、物づくりに携わる人々の壮大な夢の具現化、夢へのチャレンジに他なりません。本校の卒業生の中にも、著名な方では楽天の三木谷氏など、夢を具現化し社会に貢献されている方が多数おられます。皆さんが、そんな先輩方の後に続いてくれること、夢にチャレンジしそれを実現してくれることを強く願っています。

 実は、皆さんもこれまで様々なことにチャレンジしてきたと思います。人が生きていくということは、日々の小さなチャレンジの積み重ねであると言っても過言ではありません。しかし、ややもすると、新しいことにチャレンジしようとする時、自信がない、失敗したらどうしよう、自分には不向きなのではないかなどと躊躇し、挙げ句の果てにチャレンジしない理由をあれこれ考えて諦めてしまったり、先延ばししてしまったりすることも多いのではないでしょうか。そして、「あの時、やっておけばよかった」と後悔することはよくあることです。

 先日、ある大手企業の方が、「現状維持のままでは何も変わらない。現状維持は後退である。人は変化しないとゼロのまま、むしろマイナスかもしれない」とおっしゃっていました。そして、「変えることですぐに100の成果を望むな。1でもいい、10でもいい、チャレンジすることは次につながる。だから、変化は常に必要だ」とも。

 さて、皆さんも何か一つだけでも変えてみませんか。例えば、「朝ギリギリに登校している習慣を8時に変える」「一日のスマホの時間を1時間減らす」「小テストはすべて合格する」「(3年生なら)平日4時間以上は勉強する」など、できそうなことから始めてください。チャレンジとは、失敗を恐れず自分から進んで挑むこと、経験を通して自分を進化させていくことです。

 自分の課題に気づき、改善する、そしてチャンスをものにしてくれることを期待しています。

 最後に、新型コロナウイルス感染防止対策はしっかり行えていますか。特に、昼食時の会話、部活動時のマスクなしでの会話、これは絶対にしないでください。見かけたら互いに注意し合える、そんなクラスメイト、チームメイトであってください。また、下校時の飲食は自粛の通知が県教育委員会からも来ています。寄り道をせず、まっすぐ帰宅してください。

1学期始業式式辞

皆さんおはようございます。令和4年度が始まりました。ここにいる一人ひとりが、気持ちも新たに今日を迎えていることと思います。大切なことは、その気持ちを行動に移すこと、そしてそれを持続させることです。今年度こそ、そんな1年にしてください。

ところで、皆さんは「成功哲学」という言葉があるのを知っていますか。その提唱者がナポレオン・ヒルという人物です。彼は、20年間で約500人もの世界的な成功者を分析して「成功の法則」を見出しました。それは15の法則からなりますが、そのうち皆さんに伝えたい8つを紹介します。

1 目標を明確に自覚すること

なりたい自分を明確化することで今すべきことが見えてきます。

2 不屈の精神力

逆境の中でも決して諦めず、常に目標に向かって努力し続けることです。

3 生涯学習

世の中は変化します。絶えずインプットを行い、常に新しい目線を手に入れることです。

4 時間を有効に使うこと

優先順位を考えて一番大事なことから時間を使います。

5 創造力を駆使すること

どうすれば目標に効率よくたどりつけるかを常に創造的に考え続けることです。

6 自分がしてほしいことを相手にすること

キリスト、ブッダ、ムハンマド、孔子など多くの人に共通しています。

7 プラスアルファの思考

求められたこと、しなければならないこと以上の仕事をすることです。

8 感謝すること

逆境を成長できるチャンスだと考え感謝することでプラスに転化できます。

これらからも分かるように、ナポレオン・ヒルは「人生を決定するものは才能ではない。また、環境や条件でもない。その人の情熱と信念だ」と結論づけています。

皆さんは、日頃、学習や部活動に一生懸命取り組んでいますが、その原動力は何でしょうか。目標に向かって突き進んでいくには、自分の強い気持ちと、それを下支えしてくれるものが必要です。それがナポレオン・ヒルの言う情熱や信念に他なりません。

「やってやるぞ」「志望校に合格してやるぞ」「優勝してやるぞ」、こうした思いが強ければ強いほど精神的な土台は確固たるものになり、信念にブレは無くなります。「何のための行動か」を自覚し、「自分は必ずそれをやり通す」という強固な意思を常に持って行動に移し、それを持続させることが、これまでとは違う展開を生み出し、成功へと近づいていくのだと思います。

新年度を迎えるに当たり、皆さん一人ひとりが情熱と信念を持って先の8つのことを実践し、成功への基盤を作る、そんな実りある1年にしてくれることを期待しています。

最後に、新型コロナウイルス感染が依然として終息せず、第7波さえ危惧されています。不要不急の外出、3密の場所への出入りは避け、やむなく外出した場合も、手洗い・消毒とマスクの着用を徹底してください。また、校内でのマスク無しの会話はしないよう、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてください。

第77回 入学式式辞

 いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな

 時間と空間を超えて美しく芳しい香りを漂わせ続ける桜。ここ自彊が丘の八重桜も、九十九年前の「いにしへ」の創立期と変わらぬ美しさとその香りで、今日の皆さんの入学を祝福しているように感じます。

  ただいま入学を許可いたしました三二一名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同心からお祝い申し上げます。今日のその晴れやかな姿、緊張した表情にも喜びが満ちあふれているようです。

皆さんは、コロナ禍という多くの不安と制約を余儀なくされる中にあって、それらを乗り越えて、見事合格の栄冠を勝ち取りました。

本校では「文武両道」を校是とし、「社会的で創造力豊かな自主的個人」を育成するため、グローバル化時代に求められる思考力や判断力の伸長、主体性や協働性の向上を図る一方で、「ひょうごスーパーハイスクール」の研究指定を受け、地域はもとより、大学や企業等との連携を密にし、探究活動等の教育活動の充実に努めております。このすばらしい環境下で、若者らしく、何事にも果敢に挑戦し、将来の夢や進路希望を実現するべく、高校生活の第一歩を踏み出してください。

さて、本校は、大正十二年に明石市立明石中学校として開校し、昭和三年に兵庫県立明石中学校、昭和二十三年の学制改革により兵庫県立明石高等学校となり、来年度創立百周を迎える県内有数の伝統校であります。その間、県下唯一の美術科の設置、西オーストラリア州モーリー高校との国際交流、理数探究類型の設置等、学校改革を進めながら、地域社会や国際社会で活躍する有為な人材を多数輩出してきました。

 校庭に凜として伸びるクスノキに見守られ、閑静な荷山に位置する本校からは瀬戸内の海と淡路島、そしてそこに架かる雄大な世界二位の長さを誇る吊り橋、明石海峡大橋を臨むことができます。皆さんはこの恵まれた教育環境のもとで、建学の精神である「自彊不息」を基軸にして人生でも最も意義深い、青春の三カ年を送ることになります。この大切で貴重な時期を本校で学ぶ皆さんに、三つのことを希望します。

一つ目は「高い志を持ち続けてほしい」ということです。自分の志を立て、それに向けて具体的な目標を持つことは、自己を律し、生活を充実させる基盤となります。皆さんは高校生活三カ年の延長線上に、将来どのような人生を生きるかということを具体的に考えているでしょうか。どのような職業に就き、社会にいかに貢献していくかを考えておくことによって進路も明確なものが見えてきます。本校での充実した学びを通して自己認識を深め、自己実現をめざして、高い志を持ち続けながら努力を重ねてください。

 二つ目は「確かな自分を作り上げてほしい」ということです。世界はグローバル化時代にあります。あらゆる知識や技術は日進月歩以上であり、おびただしい情報が世界中に氾濫しています。皆さんが心豊かに生活するためには情報に流されたり惑わされたりせず、主体的に判断し行動することが大切です。国際的な広い視野に立って、弾力的で柔軟なものの見方、考え方を持つ、そして善悪・真偽を正しく判断できる確かな自分を作り上げ、磨き上げてください。

 三つ目は「良き友を持ってほしい」ということです。良き友とは、ともに喜び、ともに悲しみ、ともに高め合うことのできる真の友人です。この良き友は、安易に調子を合わせたり、誘われるままに行動したりするような関係の中には育ちません。時には「ノー」と言う友こそ心から信頼できるのです。他を尊重し合い、素直な気持ちをぶつけ合い、目標に向かって切磋琢磨し合う中に友情は育ち、本校校訓の一つ「協同」が生まれます。他を思いやる心を忘れず、自分にないものを学び、お互いを向上させ、信頼関係を深めながら、生涯にわたって心の支えとなる友を得てください。

  最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。私達教職員は、ご子様が、自らの生きる道を、自らの力で切り拓いていけるよう、全力で指導に当たって参りますが、お子様の健全な成長を願い、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要であると存じます。どうか、本校に対するご理解ご協力、そしてご信頼をよろしくお願い申し上げます。

 新入生の皆さん、本校の校訓「自治」「協同」「創造」のもと、知・徳・体の調和のとれた人格の陶冶を図り、心豊かに、高い志を抱き、未来を主体的に切り拓いて行く人間として成長していくことを心から期待し、式辞とします。

3学期終業式 式辞

 

 令和3年度が終わります。この1年を振り返ってどうでしたか。納得のいく1年だったでしょうか。

 今年度もコロナ禍に見舞われ、特に学校行事や部活動において多くの制約を強いられ、十分な活動ができなかったことは非常に残念で申し訳なく思いますが、本校に関しては何とか今日こうして3学期の終業式を無事に迎えることができました。それというのも、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてくれたお陰だと思っています。ありがとうございました。

 さて、誰もが知る徳川家康は、「不自由を常と思えば不足なし。堪忍(かんにん)は無事長久の基、怒りは敵と思え」という言葉を人生訓としていました。これは、不自由なことがあっても、実はそれが当たり前のことだと考えれば不満を感じることはない、様々な出来事に我慢できなくなったり、我がままになったり、苛立って怒ってしまったりするのは、正しい心の持ち方ではない、自分をコントロールできなくなるのは「心の敵」だと思え、という意味です。このことは、私達が日頃生活を送る中で心掛けたいこと、コロナ禍を生きる上で認識を新たにしなければならないことのように思います。

 現代は科学技術の発展もあり、私達の生活の質は大きく向上し、自由で便利で豊かなものになっています。この状態がノーマルとなって、それに慣れすぎてしまったり、合理的なことばかりを追求しすぎてしまったりした結果、イレギュラーな状態を不自由で窮屈に感じたり、本来そこにある大切なプロセスを踏まえることに対して「面倒だ」「無駄だ」などと考えてしまいがちになっていないでしょうか。それは、短絡的な、打算的な思考に堕してしまうことにも繋がっているように感じます。

 学習について言えば、「苦手だから」「興味がないから」「時間がないから」「受験に関係がないから」などと自分を納得させる理由をいくつも考えて楽な方に逃げていませんか。自分に問いかけてみてください。

 話は変わりますが、2022年度入試において出題された英語長文のテーマを調べました。国公立大学進学のために必須の大学入学共通テストでは、デザートの作り方、テレビ発明の特許権争い、プラスチックのリサイクルなどが出題されました。

 皆さんが目標とする

 神戸大学は、光害が夜行性生物に与える影響・樹木の成長など

 岡山大学は、遺棄された漁網が環境に及ぼす影響・読書の効果

 兵庫県立大学は、デジタル技術が生活に与える影響・自動翻訳機能の開発と将来の展望

 同志社大学は、食料の廃棄・DNAの解読・南極グリーランドの氷の溶解など

 立命館大学は、ルネサンス期の女性画家・人の心理など

 関西学院大学は、科学観察・コーヒーの普及など

 関西大学は、奴隷の歴史・創造力を生み出す条件など

 こうして見ると、理科、地歴・公民、保健、家庭、情報など幅広く出題されていることがわかります。国語の評論のテーマも同様です。基礎知識、予備知識がないと、英単語、英文法、英語構文がわかっても、内容を理解することはできません。英単語、英文法、英語構文が「わかる」ということと、内容が「わかる」ということは別の次元の話です。

 このことからも、学習に楽はない、学習に無駄はないということを強く認識してほしいと思います。「面倒だ」「無駄だ」と思われることの方がはるかに重要であることの方が多いのです。

 今日で令和3年度が終わりますが、この1年間の自分の姿勢を顧みてください。1年前、2年前の合格者発表のあの瞬間を思い起こし、楽な方に逃げず、「面倒だ」「無駄だ」と思わず、初心に返って学び続けてください。

 令和4年度の皆さんの飛躍と成長を期待しています。

 最後に、明日から春休みです。不要不急の外出、3密の場所への出入りは避け、やむなく外出した場合も、手洗い・消毒とマスクの着用を徹底し、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてください。

卒業式 式辞

 「石ばしる 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも」

 これは万葉の歌人である志貴皇子が、岩の上を流れ落ちる滝のほとりで、芽を出したばかりの蕨を見つけて春の訪れを感じたその喜びと感動を詠んだものです。自然の営みは実に確かで、ここ自彊が丘においても桜のつぼみが日増しに膨らみを見せ、窓から差し込む日差しも力強さを次第に増して、春がすぐそこまで来ていることを感じさせます。

 本日は、PTA会長様、保護者の皆様のご臨席を賜り、このように厳粛に本校第七十四回卒業証書授与式を挙行できますことに心から感謝いたしますとともに厚くお礼申し上げます。

 七十四回生の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただ今卒業証書を授与いたしました三0九名の皆さんに、本校教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。

  「明けゆく空」、この言葉は校歌の一節でもあり、七十四回生の学年通信のタイトルでもあります。そこには、本校での三年間の学びを通じて、皆さん一人一人が自立して生きるための確たる基盤を築き上げてほしい、文武にわたり相互に刺激し合い高め合いながら確かな成長の歩みを進めてほしい、そしてそれぞれに志望する進路実現を果たし自らの力で未来を切り拓いてほしいという、米田学年主任、久保田学年副主任はじめ、学年団の先生方の強く熱い思いが込められています。この三年間、皆さんは濃密で充実した時間を過ごし、その期待に見事応えてくれました。その妥協を許さず粘り強く取り組む姿、その溌剌として全力で躍動する姿は、今も私の目から離れません。

  さて、コロナ禍に見舞われたこの二年間でしたが、新たな価値観や生活様式が生まれ、それが潮流となって社会も大きな転換期を迎えています。人々を時間や空間、身体的制約から解放するデジタル化の加速、サプライチェーンの国内回帰と分散化、密から疎への地殻変動と地方回帰など、枚挙に暇がありません。

 こうしたニューノーマルなポストコロナ社会を生きる皆さんには、自分の拠って立つ基軸を見失うことなく、地に足を据えて生き抜いてほしいと思います。その意味において、今後特に大切にしてほしい三つの基軸を皆さんに伝えて餞別にしたいと思います。

 一点目は、挑戦する勇気を持ち続けてほしいということです。

 「人間にとって成功とは何だろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑戦したかではないだろうか」と言ったのは、芸術家の岡本太郎氏です。人の一生は航海やマラソンに例えられるように決して平坦なものではありません。次々と苦悩に苛まれ、挫折や失敗が襲ってきます。限界は他人に突きつけられるものではなく、自分の心の中にあるものです。それらを乗り越えるには、挑戦し続けるしかありません。自分が諦めない限り限界はないのです。途中で諦めてしまうから、夢が潰えてしまうのです。いかなる状況に置かれようとも、挑戦する勇気を持ち続け、自らの道を自らの力で切り拓いていってください。

 二点目は、言語化力を高めてほしいということです。

 コロナ禍にあってデジタル革新と呼ばれる大変革が急進し、サイバー空間の急拡大は個人ばかりか国家や世界のあり方まで激変させています。イギリスの哲学者アンディ・クラークは「言語が登場して以来、我々はある意味サイボーグだった」、つまり身体と言語が複雑に融合したことにより文明や社会を生み出すことができたと言っていますが、身体と言語が乖離したコロナ禍でのリモートやオンラインによるコミュニケーションには限界があることが露呈しました。こうしたニューノーマルなコミュニケーション環境を生き抜くために、伝えるべきことを踏まえて論旨を構造的に整理し、文章に昇華する力、いわゆる言語化力の質と量を高めていってください。

 三点目は、感謝の気持ちを持ち続けてほしいということです。

  時に厳しく諭し、時に温かく見守ってくださった先生方、三年間ここ明高で同じ時空を共有し、悲しみは半分に、喜びは何倍にもしてくれたかけがえのない七十四回生の仲間、いつも大きな愛情で包み、陰から支え応援してくれた家族、PTA、同窓会、そして地域の方々。皆さんが今日、卒業の日を迎えることができたのは、もちろん、皆さんの弛まぬ努力によるのですが、その裏にはこうした多くの方々の励ましやご支援があったからこそです。「感謝は、過去を意味あるものとし、今日に平和をもたらし、明日のための展望を創る」、これはアメリカの作家、メロディ・ビーティの言葉ですが、感謝の気持ちを決して忘れることなく、心豊かに生きてください。

 保護者の皆様に、この場を借りまして一言申し上げます。この三年間、本校の教育方針や学校運営に、またコロナ禍にあっては感染防止対策にご理解とご協力を賜りましたことに、心より感謝とお礼を申し上げます。お子様は、大きく、立派に成長され、今日この学び舎から巣立っていかれます。この十八年間、言葉には尽くせぬほどのご苦労があったこと、また春から親元を離れていくことに一抹の不安と大きな寂しさを感じておられることと推察いたしますが、今日この日を迎えられ、心からお慶びとお祝いを申し上げます。今後とも引き続き、本校に対して変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 最後になりましたが、不思議な奇縁によってここ明高に集い、ともに育くんだ建学の精神「自彊不息」、校訓「自治・協同・創造」の気概、そして、校歌にある「集え・競え・誓え」の志気。これらを深く胸に刻んで、皆さん一人一人の活躍が母校の喜びや励みになることを、そして七十四回生全員の力になることを忘れず、命を大切に、自信と誇りをもって、悔いのないすばらしい人生を歩んでいかれることを祈念しています。

 「ほのぼのと あかしの浦の 朝霧に 島隠れゆく 舟をしぞ思ふ」

 卒業生の皆さんに限りない惜別の思いを残しつつ、その洋々たる前途を祝して、式辞といたします。

1月全校集会(放送で実施)講話

 

 3年生が自由登校となり、1・2年生だけの全校集会となりました。少し寂しい気持ちもしますが、2年生は最高学年になるという自覚、1年生は学校の中核になるという自覚を持ち、高校生として、また明高生として恥ずかしくない言動がとれているかどうか、今一度自己点検してほしいと思います。

 ところで、皆さんはこれまで、繰り返し「凡事徹底」という言葉を耳にしてきたことと思います。「凡事徹底」とは、字のごとく「平凡なことを徹底する」という意味です。成功する秘訣、それは奇をてらうことなく、当り前のことを当たり前に徹底してできるかどうかです。

 元プロ野球選手のイチロー氏は、毎日素振りを欠かさず積み重ね、日本を代表する大リーガーとして記録と記憶に名を残す名選手となりました。まさに「凡事徹底」の結果です。

 経営の神様と呼ばれた松下電器産業、現在のパナソニックの元社長・会長であった松下幸之助氏は、「店の経営がうまくいっているかどうか、三つのことを見れば分かる」と言ったそうです。その三つとは何だと思いますか。答えは、「挨拶」「整理整頓」「トイレ」です。会社経営の秘訣は、この3つの「凡事徹底」が大切だと言っています。

 イエローハット元社長の鍵山秀三郎氏は、「凡事徹底」を「平凡を非凡に努める」と言い換え、これを徹底できるかどうかが成功のカギになると語っています。売れない営業マンの共通点は、すべてが適当、すべてが中途半端、いつも言い訳や誤魔化しばかりなのだそうです。平凡なこと、簡単なことをとことん極める、その姿勢がすべてに繋がっていくと言いたいのだと思います。信頼できる人とはどんな人でしょうか。少なくとも、適当な人、中途半端な人、言い訳ばかりする人、誤魔化してばかりいる人を信頼することなどできないと思います。

 皆さんに聞きます。すべてが適当になっていませんか。すべてが中途半端になっていませんか。すぐに言い訳をしていませんか。いつも誤魔化したりしていませんか。ぜひ周囲から信頼される人であってほしいと願っています。

 ちなみに、イエローハットが「平凡を非凡に努める」こととして徹底しているのは、

 1 約束の時間より10分早く行動する

 2 大きな声で元気よく挨拶する

 3 率先して清掃する

 4 訪問先では相手が来るまで立って待つ

 5 相手に感謝を伝える

 6 話を聞くときはメモを取る 

 皆さんもぜひ今から実践してください。少なくとも社会人になったら、この6つは必須です。覚えておいてください。

 さて、皆さんは「凡事徹底」ができていますか。

 生活面では、挨拶、清掃。

 学習面では、予習・授業・復習という基本サイクル、基本事項の徹底理解、課題の提出。

 部活動では、基礎体力、基本の徹底。オフシーズンの今がチャンスです。

 この機会にぜひ一度、自己を省みてください。

 最後に、オミクロン株の感染拡大が続き、兵庫県でもまん延防止等重点措置が取られます。改めて感染防止の徹底をお願いします。オミクロン株の感染力が非常に強いため、保健所の判断が変わり、自分がマスクをしていても相手の感染者がマスクをしていなかったら濃厚接触者になってしまいます。マスク無しの会話は絶対にしないでください。また、一つの部で感染が広がるとすべての部の活動を一定期間休止しなければなりません。一人一人が自覚を持って行動してください。

3学期始業式式辞

皆さん、新年明けましておめでとうございます。2022年、寅年を迎えました。寅は、陽気を内に宿して草花が伸びようとする状態を表し、新型コロナウイルス感染症の問題など、様々な問題が大きな社会問題となっている中で、安定した繁栄・成長の礎を築く年になると言われています。ぜひ、そんな1年であってほしいと願っています。

ところで、新年を詠んだ夏目漱石の句に、「新しき 願もありて 今朝の春」という句があります。この「願をかける」という風習は古今東西、すべての人の営みであったようです。皆さんの中にも、この正月、願をかけた人が少なからずいるのではないでしょうか。少なくとも、ほぼ全員が新年を迎えて気持ちも新たに、「今年こそ」という決意、何らかの目標を持って今ここにいることと思います。

中国の道家の思想書である『列子』の中に、「呑舟(どんしゅう)の魚は枝流に游(およ)がず」という言葉があります。呑舟の魚とは、舟を一呑みしてしまうほどの大きな魚のことです。そんな大きな魚は支流では泳がない、つまり「大人物はつまらない者とは交わったりしない」「高遠な志を抱く者は小事には関わらない」という意味ですが、この言葉には「大きな目標を立てろ」という教えが込められています。「大成する人は初めから大きな目標を立て、大きな舞台で勝負する」というわけです。目標が大きければ大きいほど達成感も大きくなり、そのための努力によって自分が成長できる度合いも大きくなります。万が一失敗したとしても、得るものは異なるはずです。

この言葉を実践したような話があります。戦国武将の毛利元就が12歳の時、家来たちを引き連れて厳島神社に参拝した際、家来たちに何を祈願したか尋ねたところ、ある家来が「殿が中国地域の主になることを祈願しました」と答えると、元就は「中国地域の主とは愚かだ。日本を手に入れるように祈願すべきだ。日本を手に入れようと思ってはじめて、中国地域を手に入れることができるのだ」と語ったそうです。

私の教員としての経験から、このことは、受験や部活動にも当てはまります。目標とする大学のワンランク上の大学を目指して取り組むことが目標とする大学の合格に繋がり、目標とする結果のワンランク上の結果を目指して取り組むことが目標達成に繋がります。目標より一段高いレベルの取組によって目標とするレベルをクリアできるからです。

教員として、私が生徒たちに教えられたことは多々ありますが、そのうちの一つが、「絶対に目標を達成するぞ」という強い覚悟ができた時、目の色が変わり、生活が変わり、人が変わり、結果も変わるということです。明高生の中から、そんな人が一人でも多く出てくれることを期待しています。

ちなみに、エジソンがこんなことを言っています。「結局、日常をダラダラ過ごし、ズルズルと落ちていく人間の何と多いことか。直前になって準備不足に気づいて初めてそこで後悔する人間ばかり。残念ながら、それは負けたことにはならない。負けたという事実は勝負をした人間にのみ与えられるのだ。勝つための努力を放棄した者は勝負すらしていないのだから」

さて、3学期を迎えました。1・2年生は1年間の総仕上げとして3学期をしっかりと締めくくってくれること、3年生は全員が進路実現を果たし人生の新たな門出を晴れやかな気持ちで迎えてくれることを期待しています。

最後に、新型コロナウイルス感染の第6波が危惧されています。感染者が日増しに増加しています。今一度緊張感を持ち、3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。過去に本校で感染者が出たケースはそのほとんどが家庭内で感染したものです。家庭内でも感染防止に努めてください。マスクをしていない人との会話・食事は絶対に避けてください。お願いします。

2学期終業式式辞

コロナ禍に翻弄された令和3年、そして2学期が終わります。皆さんにとってどんな1年、どんな2学期でしたか。

ところで、幕末の志士の一人である吉田松陰の言葉の中に「ごくにありては、ごくでできることをする」というものがあります。「ごく」とは、獄中のことです。1853年、アメリカの黒船が下田に来航した時、松陰は、当時の鎖国の禁を破り、密航を図ろうとして失敗し、捕らえられて山口県の萩に投獄されました。その時の言葉であると言われています。

そもそも松陰が鎖国の禁を破った理由は、日本が世界の中で発展していくためには、外国の状況を知っておかなければならないという、将来に向けた野心から生まれた行動でした。松陰は、獄中であっても、限りある時間を一時も無為に過ごしてはならないと、自ら学ぶとともに他の囚人やまたその監視の役人にまで、中国の古典である『論語』や『孟子』を講義したと言われています。そして、その影響を受けた人たちが、後の日本を創り上げていくことになります。

松陰の発した言葉には、彼の思想的信条がよく表れており、時代を超えて人生を豊かにするための教訓が数多くありますが、先の言葉には、万人に等しく与えられている時間をもっと有効に使うべきだという教えが込められています。

時間は有効に活用すれば精神的にも、物質的にもその人の人生に大きくプラスになります。しかし、時間を自分のものとして活用するには、それなりの意思と努力が必要です。人はとかく困難を避け、安きに流れやすいものです。困難なことから何かしらの理由をつけて一時的に逃避したい、回避したいという心理が働きますが、それはいつか自分に返ってきます。その代償は必ず自分で払うことになります。

『日本書紀』に引用されていることで知られる中国の書物『淮南子』の中に「学ぶに暇あらずと謂う者は暇ありと雖も亦た学ぶ能はず」という言葉があります。勉強する時間がないという人は、時間があっても勉強しないという意味ですが、皆さんの実態はどうでしょうか。過去は過去として、大切なのは今後です。

さて、私たちは繰り返しの利かない一回性の人生を生きています。時間とは貴重な財産であり、それを持ち腐れにさせないためにも、また後悔しないためにも、やるべきことに順位をつけ、確実にやり切る、この冬休みから、ぜひこれを実践してほしいと願っています。

3年生は受験に向けた最後の追い込みです。現役生は今も、そして今からでも伸びます。模試でE判定でありながら合格した人を私は数え切れないほど見てきました。最後まで諦めず、やるべきことを確実にやり切ってください。

最後に、明日から冬休みに入りますが、オミクロン株が拡大を見せています。不要不急の外出、3密の場所への出入りは避け、やむなく外出した場合も、手洗い・消毒とマスクの着用を徹底し、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてください。

それでは、1月11日にこうして全員が元気に登校してくれること、令和4年が皆さんにとってすばらしい1年となることを祈念して、式辞とします。

11月全校集会講話

今年、米国プリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞しました。真鍋さんは、地球の気候をコンピューターで再現する方法を開発し、気候変動や地球温暖化の予測に関する研究分野を世界に先駆けて切り拓きました。その研究の中で、大気中の二酸化炭素(CO2)が増えると地表の温度が上がることを数値で示した「気候モデル」は、人類の大きな課題である地球温暖化の予測に欠かせないものになっています。また、気象予測の世界に初めてコンピュータによるシュミレーションを持ち込み、飛躍的に高精度な予測を実現した功績は大きく、「温暖化研究の父」とも呼ばれています。


その真鍋さんですが、ノーベル物理学賞の受賞に際して、「研究を始めたころは、こんな大きな結果を生むとは想像すらしていなかった。後に大きな影響を与える大発見は、研究を始めたその時には、その重要さに誰も気付かないものだと思う」と語っています。皆さんは、日々学習に取り組んでいますが、それが将来、皆さん自身の未来を切り拓く基盤になるかもしれない、あるいは世界的な大発見の礎になるかもしれない。それは誰にも分かりません。しかし、誰にもその可能性があります。そう考えたら、日々の学習は無駄にはならない、無駄にはできないということを皆さんには強く認識してほしいと思います。


また、真鍋さんは、「気候変動の研究を楽しんでいる。全ての研究活動が好奇心によって突き動かされている。研究の醍醐味は好奇心だ」とも語っています。


そう言えば、平成30年に、体内の異物を攻撃する免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を突き止め、癌の免疫治療薬の開発に道を切り拓いたことでノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑教授は、非常に好奇心旺盛で、納得できるまで調べ尽くす頑なさを持っていたそうです。その本庶教授ですが、時代を変えるには6つの「C」が必要であると語っていました。英語表記で「C」で始まる6つの「C」とは何だと思いますか。答えは


①好奇心=Curiosity
②勇気=Courage
③挑戦=Challenge
④確信=Conviction
⑤集中=Concentration
⑥継続=Continuation です。


本庶教授は、「好奇心Curiosityを大切に、勇気Courageを持って困難な問題に挑戦Challengeし、必ずできるという確信Conviction をもち、全精力を集中Concentration させ、諦めず継続Continuationすることで、時代を変えられる」と言いたいのだと思います。


今の皆さんに欠けているのは、この6つの「C」のうち、どれでしょうか。この機会に、自分の取り組む姿勢を見つめ直してほしいと思います。そして、様々なことに好奇心を持てる明高生であってほしいと思います。皆さんの中から、世界に貢献する、世界を牽引する人材が育ち、活躍してくれることを強く願っています。


最後に、新型コロナウイルス感染拡大が収まっていますが、ワクチン接種が進んでいた海外でも再度感染拡大が続いており、日本でもやがて第6波がくると言われています。引き続き、感染防止の徹底をお願いします。

10月全校集会 校長講話

 早いもので、令和3年度も折り返し点を過ぎました。この半年を振り返り、どれだけの人が自分に納得できているでしょうか。納得できていないという人は、それぞれに事情や理由があるのでしょうが、大事なことはそれを踏まえて「これからどうするか、どう立て直していくか」だと思います。原因を考えて、それを改善するためにすぐに行動に移してください。

 さて、随分以前になりますが、NHKのEテレビで『テストの花道』という番組をしていました。実は私の教え子がこの番組のディレクターをしていたこともあり、私は毎回見ていました。ある回で、日本史の先生が授業をした後、抜き打ちのテストをしました。すると教室の1列目と2列目の生徒の平均点が20点台だったのに対して、3列目と4列目の生徒の平均点は60点でした。皆さんは、この差が生じたのはなぜだと思いますか。座席の位置が問題なのでしょうか。

 実は、この授業では、3列目と4列目の生徒に、事前にある指示が出されていました。その指示というのは、板書をノートに写す際に、①自分が疑問に思ったこと、②先生が大事だと言ったこと、③感想、この3つをノートの余白に必ず書き込むというものでした。それだけでこんなに大きな差が出るのかと思ってしまいますが、実際にノートをとる時の脳の働きを調べてみると、ただ板書を写すだけの生徒の脳はほとんど活動していないのに対して、考えながらノートをとっている生徒の脳は盛んに活動していることが分かりました。

 今、『テストの花道』という番組でのノートのとり方についての話をしましたが、このことから、学習に限らず何事も、単なる作業から思考へ、受動から能動へ、客体から主体へ、自ら考えながら行動に移すことが大変重要であることが分かります。

 部活動についてもそうです。何も考えずにプレーしていたのでは力はつかず、結果も伴いません。個人の課題、チームの課題を直視してそれを克服する練習に取り組むこと、つまり、考えること、考えて次の行動に移すことが皆さん一人ひとりの無限大の潜在能力を引き出し、チームとして勝利をつかむことにもつながるはずです。

 話は変わりますが、全県的に高校生のSNSを巡るトラブルが急増しています。本校も例外ではありません。後先のことを考えず、一時的な感情で、興味本位で、あるいは自分の正体がバレないだろうと錯覚して書き込んだことが、相手から誹謗中傷であるとして被害届が提出されると、必ず加害者が特定され、侮辱罪・名誉毀損等で処罰されて慰謝料まで請求されます。最近になって法律が改正され、非常に厳罰化されています。「自分がどういうつもりだったか」ではなく「相手がそれを読んでどう感じたか」が問題です。一歩立ち止まって「考える」ということをしてください。友達への発言もそうです。その善悪、是非をしっかり判断してください。人生が変わってしまうことのないようにしてください。

 今日は皆さんに、「考えること」「考えて行動に移すこと」をメッセージとして伝えます。

 最後になりますが、皆さんが新型コロナウイルス感染防止に努めてくれたお陰で、2学期以降、教育活動を支障なく進められています。本当にありがとうございます。しかしながら、決して油断はできません。

部活動では、一つの部で感染が広まれば、すべての部の活動を停止するよう県教育委員会より求められています。そうなれば、感染対策を徹底している他の部の県大会・近畿大会・全国大会への出場の機会を奪うことも起こり得ます。改めて、感染防止の徹底と、「考えて行動すること」を皆さんにお願いします。

2学期始業式 校長講話

 皆さんおはようございます。新型コロナウイルス感染拡大が続いていますが、こうして無事に2学期をスタートできることを大変嬉しく思います。

 この夏休み、一生懸命勉強に励む姿を校内のあちこちで見かけました。一方で、部活動での活躍も幾度となく耳にしました。皆さんが頑張っている姿を見るにつけ、あるいは聞くにつけ、こんなに嬉しいことはありません。

 さて、この夏休みの大きな話題と言えば、やはり東京オリンピック・パラリンピックでしょうか。開催に賛否両論ある中でしたが、終わってみれば、日本人選手の活躍が非常に目を引きました。今日はオリンピック・パラリンピックに関する二つの思いを伝えたいと思います。

 オリンピックは1896年のアテネ大会、パラリンピックは1960年のローマ大会に始まります。昨年、「一人の医師が社会を変える~人生をかけた夢~」と題したテレビ番組が放映されました。その医師は、日本のパラリンピックの父と言われる中村裕(ゆたか)氏です。

 ローマ大会当時、整形外科医として勤務していた中村氏は、骨髄を損傷して車椅子生活を余儀なくされた患者さんが仕事や趣味を失い、笑顔までなくすことに、医師として耐えられなかったそうです。そんな患者さんの治療法の一つにリハビリテーションというものがあると知り、イギリスに渡りました。そこで、車椅子の患者さんがバスケットボールをしているのを見て大きな衝撃を受けたといいます。「スポーツこそ、身体のリハビリ、心のリハビリになる」と学んだ中村氏は、帰国後すぐに病院や行政、企業に働きかけ、日本での車椅子バスケットが実現し、1964年の東京大会で新種目となりました。

 中村氏の行動力には驚かされますが、その根底にあったのは何でしょうか。私は、人としての夢・優しさ、医師としての責任感もさることながら、医師としての「矜持」ではないかと思います。「矜持」、換言すれば、「誇り」「プライド」です。

 皆さんに聞きます。皆さんには明高生としての「矜持」がありますか。こうしなければ明高生じゃない、明高生としてそこは譲れない、いわゆる「明高プライド」です。明高の神髄である建学の精神「自彊不息」、明高生なら決して怠惰に陥らず自己の向上に励むのは当然である、そうでなければ明高生じゃない。明高の教育目標の一つ「文武両道」、勉強だけじゃダメ、部活だけでもダメ、両方頑張ってこそ意味がある、それを成し遂げるのが明高生である。

 皆さんには、「明高プライド」を持ち、自己を律して行動してほしいと思います。各学年、各クラス、各部も然りです。我が学年、我がクラス、我が部はこれができて当然、この一線は譲れないという心を一つにできる「矜持」、それを持って学校生活を送ってほしいと思います。これが一点目です。

 二点目は「戦略と戦術を持つ」ということです。「戦略」とは目標を立ててそれを達成するためのシナリオ、「戦術」とはそのシナリオにそって具体的に実践していく手段です。たとえば、日本の女子バスケットボールは銀メダルを獲得しました。それは、私にとって驚き以上のものがありました。トム・ホーバスヘッドコーチはメダルを取るという目標を達成するための「戦略」を立て、最大の課題である背丈の低さを克服するべく100以上の「戦術」を練って、練習で徹底的にそれを磨き試合で実践したといいます。皆さんにも目標があると思いますが、それを達成するために、ただ漠然と頑張るのではなく、自己分析し、弱点をどうやって克服・強化していくのか、先生にもアドバイスを求めて「戦略」と「戦術」を立てて、具体的・効果的に取り組んでほしいと思います。

 いよいよ2学期です。1年生は将来の職業や生き方を考え、それを踏まえた文理選択に入ります。自分の将来像を描けるようにしてください。と同時に基礎学力をしっかりと定着させる時期です。そのための「戦術」を考え、努力を惜しまないでください。

 2年生は高校生活の折り返し点を迎え、進路実現に向けて本気になる時期です。「中だるみ」している場合ではありません。いつ本気になるかで進路結果が大きく変わってきます。すぐにでも「戦略」と「戦術」をしっかり立てて取り組んでください。

 3年生は受験への不安、すぐに結果が出ないことへの焦りが大きくなるばかりだと思いますが、この夏の頑張りが結果に出るのは早くて3ヶ月後です。精神的にタフでなければなりません。自分を信じ、先生方の指導を信じて最後まで諦めず挫けず弱気にならず「戦略」を実践してください。

 最後になりますが、この夏休み、県内でも部活動中の新型コロナウイルス感染が頻発しました。ほとんどの事例が家庭内で感染し、そうとは知らず登下校時、更衣時、昼食時にマスクを外して近距離で会話したことによります。改めて、家庭内での感染防止、マスクを外した会話や食事の厳禁、コンビニ等での飲食厳禁の徹底をお願いします。

1学期終業式

 今日で1学期が終わります。4月以降、日々の授業や部活動、学校行事等において、皆さんが真剣に、前向きに、そして真摯に頑張っている姿を見るにつけ、心を打たれることが多々ありました。そんな明高生に、私が偶然見つけ感銘を受けた言葉の一つをお伝えします。

 それは、東日本大震災が発生し、卒業式を中止せざるを得なかったある高校のホームページに掲載された「時に海を見よ」と題するメッセージの一節です。

 「時に、孤独を直視せよ。海原の前に一人立て。自分の夢が何であるか。海に向かって問え。青春とは、孤独を直視することなのだ。いかなる困難に出会おうとも、自己を直視すること以外に道はない。いかに悲しみの涙の淵に沈もうとも、それを直視することの他に我々にすべはない。海を見つめ、大海に出よ。嵐にたけり狂っていても海に出よ。」

 つまり、「いかなる困難も、自己を直視すること以外に乗り越えるすべはない」ということが言いたいのだと思います。

 皆さんの中には、「勉強をしても成績が伸びない」、「部活動を頑張っても結果が出ない」「自分が将来、何をしたいのか分からない」等、いろいろな悩みを抱えている人がいると思います。皆さんの家族も、そして、私を含む多くの先生方も、皆さんと同じ10代の頃は、そうだったと思います。

 では、どうやってそれを乗り越えるのか。それは、このメッセージにあるように、いろいろな困難に直面するたびに、自分自身と向き合うことから次のステップが始まるのだと私は思います。

 誰かに「してもらう」「やらされる」自分から、自ら「する」自分に変えること。自分を支えてくれている周囲に感謝の気持ちで接すること。人と自分を比べることを止め、未来に向けてコツコツと学び続けること。この一瞬一瞬をかけがえのない時間と捉え、自分を信じ、常にベストを尽くすこと。

 大切なことは、勉強や部活動で仮に目に見える成果が得られなかったとしても、その経緯を振り返り、今後の展望を自ら見出し、それを実行することです。

 私は、これこそが、今年度から始まった大学入試で評価される「学びに向かう力」だと思います。そして、日々の一つ一つの取組を振り返り、自分自身と向き合う。その地道な繰り返しこそが、これからの一人一人の「物語」、「人生」を創り上げていくのだと思います。

 さて、明日から夏休みに入ります。3年生の皆さん、受験勉強に行き詰まった時には自分と向き合う時間を作ってみてください。「自分の夢が何であるか」、きっと勇気と希望、打開の糸口が見出せるはずです。1・2年生の皆さん、携帯の電源を切って自分と向き合う時間を作ってみてください。そして、課題や部活動などで忙しい合間に、1冊の本と出会ってみてください。「大海に出よ」、自分を知るための「海」になるはずです。

 「いかなる困難も自己を直視すること以外に乗り越えるすべはない」

 この言葉を胸に、この夏休みを通して、今の自分を乗り越え、新たな自分に出会えること、成長した自分に出会えることを期待し、終業式の式辞とします。有意義な夏休みにしてください。

 最後に、新型コロナウイルス感染がまた拡大の様相を呈しています。不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。特に、夏休み中の部活動内での感染を回避できるよう一人一人が細心の注意を払ってください。また、下校時の飲食は禁止の通知が県教育委員会からも来ています。寄り道をせず、まっすぐ帰宅してください。

6月全校集会

 部活動の県総体が行われました。剣道部女子団体が優勝し全国総体出場を決めました。剣道部女子団体と個人のほか、男子ソフトボール部、男女ハンドボール部が近畿大会出場を決めました。他の部も含め、本当によく頑張ってくれました。

 さて、5月から6月にかけて、皆さんの授業の様子を見ました。ほとんどの人が熱心に取り組んでいる中で、残念ながら、ごく一部の人ですが、寝ていたり、どう見ても授業に意欲的に参加しているとは思われない人もいました。

 以前、元宇宙飛行士の山崎直子さんの話を聞く機会がありました。彼女は女性で54番目、日本人で8番目に宇宙飛行士になった人ですが、飛行士になってから実際に宇宙へ行くまでに11年もかかったそうです。彼女が宇宙飛行士になりたいと思い、東大在学中にアメリカへ留学した時のことです。現地の他の留学生と話をしていると、自分以外の学生は高校時代から文系・理系の科目にとらわれず、体育や芸術、家庭など、受験科目以外の多方面の学習を熱心にしてきていると感じたと言います。また、一人のアメリカ人から日本の歴史や文化・風習、風土について尋ねられても全く答えられなかったばかりか、尋ねたアメリカ人の方が日本のことをよく知っており、自分の無知に愕然とし、強く羞恥の念に駆られたそうです。彼女は、高校時代に受験科目以外の教科・科目ももっと熱心に勉強しておけばよかった、日本人としてもっと日本のことを学んでおくべきだったと後悔したそうです。社会人となり、JAXAの一員となってからも、この経験をメッセージとして発信し続けているとのことでした。グローバル化時代に生きるとはこういうことなんですね。

 学ぶことの有用性や意味は予め分かっていて学び始めるのではなく、それらは後になって気づくものなのだと思います。メンデルは遺伝法則を見出すためにエンドウを掛け合わせたのではありませんでした。アインシュタインは特殊相対性理論の後に重力理論たる一般相対性理論の可能性を見出せるとは思ってもいませんでした。両者とも科学者なので、仮説は立てたでしょう。しかし、最初からすべてが分かっていた訳ではありません。

 発見というものは、現行の知識が示唆する探究可能性によってもたらされることが多いですが、その手続きには、予想もつかなかったことや検証しにくいことが含まれているものです。これを、ハンガリーの科学者マイケル・ポランニーは暗黙知と呼びました。私達の「知」には形式知と暗黙知と呼ばれるものがあります。通常学校で学ぶのは形式知であり、新たな発見をもたらすような知を暗黙知といいます。これが科学を発展させてきたと言っても過言ではありません。しかし、それには一定の基礎的な形式知が必要であり、その積み重ねの中で、何かと何かが結びつき新たな知を生んでいくのです。何が重要であり、何が重要でないかは少なくとも学問の基礎をやろうとしている高校生の皆さんの段階で判断することはできません。授業の一時間、一時間は人類のこれまでの叡智を振り返り辿っていく時間です。その振り返りの基礎があって、次の新たな一歩があるはずです。どうか授業の一時間、一時間をもっともっと大切にしてください。

 こんな言葉があります。

努力をして結果が出ると自信になる。

努力をせずに結果が出ると傲りになる。

努力をせず結果も出ないと後悔が残る。

努力をして結果が出なくても、経験が残る。

 自信と経験を積み重ねていく明高生であってほしいと願っています。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止ため、不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。家庭内感染や部活動感染が大半を占めています。家庭でも感染防止に努めてください。部活動では、特に、更衣時、昼食時はマスクを外した会話を絶対にしないでください。お願いします。

5月全校集会

前回の全校集会では、放送でしたが、部活動の壮行会も行いました。ゴールデンウィークを中心に、全国大会予選、県総体、東播地区大会等、多くの大会があり、どの部もよく健闘し、百人一首かるた部が全国大会出場を決めたほか、いくつもの部が優勝や上位入賞を果たしてくれました。個人種目では、ベストの結果を出した人が何人も出ていると報告を受けています。校長として明高生を非常に誇らしく、また頼もしく思っています。本当によく頑張りました。今後、大会を迎える部がいくつもありますが、更なる健闘を期待しています。

ところで、今日は皆さんに時間について、あるいは時間の使い方について考えてほしいと思います。

皆さんは、お父さんやお母さんが年をとるにつれてだんだんと時間が経つのが早く感じられる、と呟いているのを聞いたことがあると思います。実際、皆さん自身も、小学校、中学校、高校と進むにつれてだんだんと時間が経つのを早く感じていませんか。                    

では、このことは本当でしょうか。実は本当なんです。フランスの心理学者であるジャネーという人物がそれを明らかにしました。「ジャネーの法則」と言います。「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する」というものです。

例えば1歳の子供にとっての1年は人生の1/1、5歳で1/5、皆さんであれば1/16~18です。このように、年を取るごとに1年の比率が小さくなり、体感時間は相対的に短くなります。この考え方でいくと、0歳から20歳までと、20歳から80歳までの体感する時間は同じになり、皆さんはもうすぐ人生の半分を迎えることになります。驚愕ですね。

このことについて、子供の頃は未知との遭遇の連続で、毎日新しい発見があり、日々の何気ない日常が刺激に満ちているが、大人になると大半が「知っている」ことであり、同じことの繰り返しに脳が慣れて活性化されなくなり、体感時間に影響を及ぼすという研究もあります。

いずれにしても、ジャネーは「刻一刻と時間は早まっているんですよ。ついついやり過ごして後で後悔しても遅いですよ」と言っています。

作家の林真理子さんは、「やってしまった後悔はだんだん小さくなるけど、やらなかった後悔はだんだん大きくなる」と語っています。私は、思わず共感してしまいました。

さて、皆さんの学校生活の様子を見ていて感じるのは、時間を無駄にしている人が非常に多いということです。例えば、3時5分に6時間目が終了して、部活動の開始時間はその何分後ですか。SHRと掃除があるのは分かります。しかし、1時間後の4時5分になっても練習を始めていない部がいくつもある。皆さんにその気があれば、遅くとも4時前には練習を始められるはずです。どれだけ時間を無駄にしているか考えてみてください。

学習も同じことです。皆さんは何時間スマホを触っていますか。触るなとは言いませんが、自分なりの時間のルールを作って、限られた時間を学習のために有効に使ってほしいと思います。

日本にも「光陰矢のごとし」という諺があります。月日が経つ早さを矢の飛んでいく速さにたとえたものですが、この機会に改めて時間の使い方について考えてみてください。

最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止ため、不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。特に、昼食時は「席を動かさない」「対面で食事をしない」「会話をしない」この「3つのない」を厳守してください。また、登下校時、部活動時にマスクをしないで会話をする人がいます。これも絶対にやめてください。

「創立記念日」に寄せて

5月26日は本校の創立記念日です。今年度で創立98周年、2年後には創立100周年の大きな節目を迎えます。創立記念日を迎えるに当たり、改めて本校の歴史と伝統に思いを致し、明高生としての自覚を胸に、これまで以上に明高で学ぶ喜びと誇りを感じながら充実した高校生活を送ってくれることを願っています。

                                       

本校の沿革                                     

  • 大正12年4月 明石市立明石中学校開校
  • 昭和3年4月 兵庫県立明石中学校と改称
  • 昭和23年4月 学制改革により兵庫県立明石高等学校となる
  • 昭和24年4月 男女共学の高等学校(普通科・商業科)となる
  • 昭和28年4月 商業科募集停止
  • 昭和50年4月 総合選抜制度実施
  • 昭和58年4月 美術科設置
  • 平成5年10月 西オーストラリア州モーリー高等学校と姉妹校提携
  • 平成20年3月 複数志願選抜制度実施
  • 平成20年4月 普通科に生命科学探究類型設置
  • 平成25年4月 生命科学探究類型を理数探究類型に改編
  • 平成27年4月 学区再編に伴い、第3学区(旧明石・加印・北播学区)となる
  • 令和2年4月 ひょうごスーパーハイスクール(HSH)事業研究指定

 

本校は、地域の大きな期待を受けて、大正12年に明石市立明石中学校として開校しました。以来、建学の精神である「自彊不息」を基軸にして、「社会的で創造力豊かな自主的個人」の育成を目指し、知・徳・体の調和がとれた生きる力を育む教育活動を営々と積み重ねてきました。その建学の精神は確と息づき、広く国内外でリーダーとして活躍する有為な人材を多数輩出し、着実に発展を遂げてきました。今年3月現在、卒業生は33,631名を数えます。

今後も、本校の歴史と伝統を受け継ぎながら、校訓「自治・協同・創造」の具現化を図る中で、地域の期待に応える魅力と特色ある学校づくりを推進していきたいと思います。皆さん一人一人が、先輩方の偉功に深く敬意を表しながら、本校での確かな学びを通して自己実現を図るべく、さらに飛躍してくれることを期待しています。

4月全校集会

 令和3年度が始まって2週間ほどが経ちました。3年生は最高学年、受験生という自覚、2年生は中堅学年、先輩という自覚が持てていますか。1年生は高校生、明高生という自覚が出てきましたか。

 ところで、皆さんは、高校卒業後、あるいは大学などの上級学校卒業後、ほぼ全員が就職すると思います。

 今日、人口減少と並行して世界が経験したことのない猛スピードで労働人口も減少し、一部企業がコロナ禍の影響を大きく受けているとはいえ、就職活動においては、売り手市場が続いています。いわゆる、働き手が会社を選べる状況です。

 実は、先日、学生時代の友人と偶然出会いました。彼はある私立女子大学で教授として学生を指導する傍ら、就職担当の業務も行っているということでした。私が彼に、「選り好みをしなければどこかに就職できる時代だから苦労はないだろう」というと、「そんなことはない。内定を勝ち取る学生は何社も勝ち取るし、勝ち取れない学生は1社も勝ち取れない」というのです。そこで私が「どんな学生がいくつも内定を勝ち取ってくるのか」と聞くと、「いい子だよ。高校にもこの子はいい子だな、と思える生徒がいるだろう」という回答が返ってきました。

 話は変わりますが、私たちは日々、さまざまな人との出会いを繰り返しています。皆さんもこの春、ここ明高で多くの新たな出会いがあったはずです。その中で、「いい感じの人だなあ」などと、ラべリング、つまり評価をしています。

 第一印象を決める時間は7秒前後だと言われています。

 第一印象の決め手は視覚から80%、聴覚から15%、嗅覚などから5%だそうです。

 第一印象は短時間でほぼ視覚からの印象で決まることが分かります。

 視覚は、爽やかな笑顔・生き生きとした表情・きびきびとした動作・清潔感ある身だしなみなどです。

 聴覚は、挨拶・言葉遣いです。

 話は戻りますが、彼の言う「いい子」とはどんな人だと思いますか。

  皆さんは、「おはようございます。こんにちは。さようなら」、確かに多くの人はよく挨拶をしてくれます。本当に感心しています。しかし、表情や声の大きさは人によってまちまちです。にこっと笑顔の人、会釈もしてくれる人、立ち止まってお辞儀までしてくれる人、気持ちがいいですよね。

  私の友人は、「大学のキャンパスで、いつも笑顔で挨拶をしてくれる学生がいくつも内定を勝ち取ってくるんだよ」と話してくれました。一人の人間として最も大切なことかもしれませんね。

 小説家の三浦綾子さんは、「挨拶は心を開いて迫ることである。迫るとは近づくことである。心を開いて人に近づくのは人間としての基本的な在り方である」と言っています。皆さんはできていますか。

 さて、皆さんの中に、悪い印象を持たれたいと願う人は一人もいないと思います。できることならいい印象を持たれたい、一人でも多くの友人を持ちたいと誰もが願っているはずです。挨拶ひとつで印象は変わります。是非挨拶の質を高めてほしいと思います。

 ちなみに、爽やかな笑顔・生き生きとした表情を作るトレーニングとして「イ音」の練習があるそうです。たとえば「キウイ・キムチ・好き」、毎朝鏡を見て「キウイ・キムチ・好き」とつぶやいて練習してください。

  明高を皆さんとともにさらにいい印象の学校にしていきたい、皆さん一人一人が自ら積極的に挨拶することで一人でも多くの友人をつくり豊かな学校生活にしてほしいと思います。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止ため、不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。昼食時は「席を動かさない」「対面で食事をしない」「会話をしない」、この「3つのない」を厳守してください。また、登下校時、部活動時にマスクをしないで会話をするのも絶対にやめてください。加えて、家庭内感染が非常に増加しています。家庭内での感染予防も徹底してください。

第76回 入学式 式辞

夕光(ゆふかげ)の なかにまぶしく 花みちて しだれ桜 輝きを垂る
夕陽の優しい光を受けて輝いて見えるしだれ桜の可憐な姿を、歌人、佐藤佐太郎はこのように詠っています。本校校庭、自彊が丘の桜も、この短歌のように、今を盛りに咲き誇り、その可憐な姿はまさに皆さんの姿を象徴しているかのようです。
ただいま入学を許可いたしました三二0名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同心からお祝い申し上げます。今日のその晴れやかな姿、緊張した表情にも喜びが満ちあふれているようです。
皆さんは、コロナ禍という多くの不安と制約を余儀なくされる中にあって、これらにも打ち勝って、見事合格の栄冠を勝ち取りました。
本校では「文武両道」を校是とし、「社会的で創造力豊かな自主的個人」を育成するため、グローバル化時代に求められる思考力や判断力の伸長、主体性や協働性の向上を図る一方で、昨年度より「ひょうごスーパーハイスクール」の研究指定を受け、地域はもとより、大学や企業等との連携を密にし、探究活動等の教育活動の充実に努めております。
このすばらしい環境下で、若者らしく、何事にも果敢に挑戦し、将来の夢や進路希望を実現するべく、高校生活の第一歩を踏み出してください。
さて、本校は、大正十二年に明石市立明石中学校として開校し、昭和三年に兵庫県立明石中学校、昭和二十三年の学制改革により兵庫県立明石高等学校となり、二年後には創立百周を迎える東播磨地域を代表する伝統校であります。その間、県下唯一の美術科の設置、西オーストラリア州モーリー高校との国際交流、理数探究類型の設置等、学校改革を進めながら、地域社会や国際社会で活躍する有為な人材を多数輩出してきました。
校庭に凜として伸びるクスノキに見守られ、閑静な荷山に位置する本校からは瀬戸内の海と淡路島、そしてそこに架かる雄大な世界最長の吊り橋、明石海峡大橋を臨むことができます。皆さんはこの恵まれた教育環境のもとで、建学の精神である「自彊不息」を基軸にして人生でも最も意義深い、青春の三カ年を送ることになります。この大切で貴重な時期を本校で学ぶ皆さんに、三つのことを希望します。
一つ目は「高い志を持ち続けてほしい」ということです。自分の志を立て、それに向けて具体的な目標を持つことは、自己を律し、生活を充実させる基盤となります。皆さんは高校生活三カ年の延長線上に、将来どのような人生を生きるかということを具体的に考えているでしょうか。どのような職業に就き、社会にいかに貢献していくかを考えておくことによって進路も明確なものが見えてきます。
本校での充実した学びを通して自己認識を深め、自己実現をめざして、高い志を持ち続けながら努力を重ねてください。
二つ目は「確かな自分を作り上げてほしい」ということです。世界はグローバル化時代を迎えています。あらゆる知識や技術は日進月歩以上であり、おびただしい情報が世界中に氾濫しています。皆さんが心豊かに生活するためには情報に流されたり惑わされたりせず、主体的に判断し行動することが大切です。国際的な広い視野に立って、弾力的で柔軟なものの見方、考え方を持つ、そして善悪・真偽を正しく判断できる確かな自分を作り上げ、磨き上げてください。
三つ目は「良き友を持ってほしい」ということです。良き友とは、ともに喜び、ともに悲しみ、ともに高め合うことのできる真の友人です。この良き友は、安易に調子を合わせたり、誘われるままに行動したりするような関係の中には育ちません。時には「ノー」と言う友こそ心から信頼できるのです。他を尊重し合い、素直な気持ちをぶつけ合い、目標に向かって切磋琢磨し合う中に友情は育ち、本校校訓の一つ「協同」が生まれます。他を思いやる心を忘れず、自分にないものを学び、お互いを向上させ、信頼関係を深めながら、生涯にわたって心の支えとなる友を得てください。
最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。私達教職員は、ご子様が、自らの生きる道を、自らの力で切り拓いていけるよう、全力で指導に当たって参りますが、お子様の健全な成長を願い、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要であると存じます。どうか、本校に対するご理解ご協力、そしてご信頼をよろしくお願い申し上げます。
新入生の皆さん、本校の校訓「自治」「協同」「創造」のもと、知・徳・体の調和のとれた人格の陶冶を図り、心豊かに、高い志を抱き、未来を主体的に切り拓いて行く人間として成長していくことを心から期待し、式辞とします。

1学期始業式式辞

皆さんおはようございます。新年度を迎えました。5月からは元号が「令和」に替わります。さまざまな意味で大きな節目を迎えます。皆さんも、3年生は最高学年、そして受験生という自覚、2年生は学校の中核、そして先輩という自覚を持ち、気持ちも新たに今日を迎えていることと思います。大切なのは、思うことではなく、"Practice makes perfect." つまり思うことを実践し継続して力に変えること、自己の成長に結びつけることです。このことを強く肝に銘じてください。


ところで、唐突ですが、質問します。皆さんの夢は何ですか。


皆さんは『下町ロケット』というテレビ番組を知っていると思います。この『下町ロケット』のモデルと言われているのが植松努さんです。植松さんが社長を務めるのは北海道にある社員数20名ほどの町工場「植松電機」です。この「植松電機」は2004年からロケットの研究開発に取り組み、現在、国内外の研究者が集まる宇宙開発の拠点になっています。ロケット以外にも人工衛星の研究開発などにも取り組んでおり、無重力状態を作り出す実験装置も完成させたそうです。その植松さんですが、母親から「思いは招く」という言葉を繰り返し教えられたそうです。これは「思ったらそうなるよ」という意味で、思い続ければ必ず夢は実現するということを教えられたといいます。


植松さんは、「やったことのないことは、やれないと思い込んでいるだけ。ものづくりの基本は諦めずに続けること。諦めたりやめたりせずに考えるんだ。考えるのを決してやめちゃいけない。やめない限り、夢が潰えることはないんだから」と語っています。なるほど、その通りですね。また、植松さんは、「どうせ無理ではなく、だったらこうしたらできるかもしれないと頭を切り替えて考え続けることで道は拓ける」とも語っています。心が折れそうな時、植松さんを支えてくれたのが、ライト兄弟であったり、エジソンであったり、それらは皆、植松さんが出会った本の主人公です。その意味では、読書好きが功を奏したとも言えそうです。


さて、皆さんは、する前からできない理由をいくつも考えて「どうせ無理」と諦めていませんか。「もう無理」と勝手に限界を決めつけていませんか。楽な方に逃げていませんか。自分自身に問いかけてください。皆さんには無限の可能性があります。そして、その基盤をなす優れた能力もあります。私達は繰り返しの利かない一回性の人生を生きています。悔いのないように、「思いは招く」という言葉を心に刻んで、それぞれの夢を追い求め続けてほしいと思います。そして、一回性の人生を、世のため人のために貢献できる人間であってほしいと願っています。ちなみに、日本には古く『万葉集』の時代から言霊信仰、つまり言葉に発することそのままが実現するという考え方があります。その意味では、思いを繰り返し言葉に発して招いてほしいと思います。


今日は皆さんに、"Practice makes perfect."、「思いは招く」という言葉を伝え、今年度の皆さんの大いなる飛躍と成長、そして頑張りを期待して式辞とします。