校長室

1月全校集会校長講話(全校集会は、寒波による休校で実施できず)

 3年生が自由登校に入り、校内は1・2年生だけになりました。2年生は最高学年になるという自覚、1年生は学校の中核になるという自覚を持ち、高校生として、また明高生として恥ずかしくない言動がとれているかどうか、今一度自己点検してほしいと思います。

 さて、今日は、現在の京セラとKDDIを創業した方で、経営破綻した日本航空の立て直しにも奔走され、昨年8月に亡くなられた稲盛和夫氏について話をしたいと思います。

 稲盛氏の少年・青年時代は決して順風満帆なものではありませんでした。むしろ挫折の連続であったようです。 中学受験・大学受験に失敗、結核を煩い、戦争の空襲で家も焼失してしまいます。入社した会社は赤字続きで、逃げ場もない不遇な状況に追い込まれた稲盛氏は腹をくくり、「周囲のせいにしているうちは何も始まらない」と一念発起、それからは一切の不平不満を捨て、目の前の仕事に「ど・真剣」に取り組んだそうです。そこから人生は好転します。稲盛氏は「与えられたことに必死に打ち込むことで、弱い心を鍛え、人間性を養い、幸福をつかむことができた」と言っています。そして、「人生には方程式がある」として「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」であるとも言っています。かけ算ですからどれか一つが「0」ならば結果も出せません。「能力」がまだ十分でなくても「考え方」が人として正しく、「熱意」をもって目の前のことに取り組んでいけば、大きな結果が得られる、そうして人生は拓けていく、と断言しています。

 稲森氏には多くの著作がありますが、その一つ『生き方』の一部を紹介します。

 「世の中のことは思うようにならない、私たちは人生で起こってくるさまざまな出来事に対して、ついそんなふうに見限ってしまうことがあります。けれどもそれは、『思うとおりにならないのが人生だ』と考えているから、そのとおりの結果を呼び寄せているだけのことで、その限りでは、思うようにならない人生も、実はその人が思ったとおりになっていると言えます。人生はその人の考えた所産であるというのは、多くの成功哲学の柱となっている考え方ですが、私もまた、自らの人生経験から、『心が呼ばないものが自分に近づいてくるはずがない』ということを信念として強く抱いています。つまり実現の射程内に呼び寄せられるのは自分の心が求めたものだけであり、まず思わなければ、叶うはずのことも叶わない。換言すれば、その人の心の持ち方や求めるものが、そのままその人の人生を現実に形づくっていくのであり、したがって何かことをなそうと思ったら、まずこうありたい、こうあるべきだと思うこと、それもだれよりも強く、身が焦げるほどの熱意を持って、そうありたいと強く願望することが何より大切になってきます」。

 皆さんは今、勉強に、部活動に、自分のやりたいこと、やらなければならないことに「ど・真剣」ですか。「だれよりも強く、身が焦げるほどの熱意を持って、そうありたいと強く願望」していますか。高校時代は勉学を通して自分自身を鍛え、世界を広げる時期であり、他者との関わりの中で生き方や在り方を考える時期であり、そして人生を選び取る時期です。こうした時期にあって日々どう過ごすかは、皆さん一人一人の「考え方」と「熱意」にかかっています。今一度、このことを強く自覚して日々高校生活を送ってほしいと思います。

 最後に、皆さんには繰り返し新型コロナウイルス感染防止対策を訴えかけていますが、集団で一緒に話をしながら食事をとったために感染した、濃厚接触者になったという事案が相変わらず多発しています。本校生の中にも、皆さんの家族の中にも重症化リスクを抱えた人がいます。取り返しのつかない事態にならないよう、皆さん一人一人が自覚して行動してほしい、責任ある行動をとってほしいと切に願います。

3学期始業式式辞

 皆さん、おはようございます。2023年がスタートしました。皆さん一人一人が大きな夢や希望を持って今そこにいると思います。コロナ禍で不安が尽きない中ですが、その大きな夢や目標に向かって決して挫けず、諦めず、邁進する、そんな充実した1年にしてほしいと思います。

 さて、今や年末年始の風物詩となっているのが数々のスポーツです。中でも、私がいつも見入ってしまうのが箱根駅伝です。教え子が箱根路を走り、テレビの画面越しに応援したことが契機となりました。

 駅伝のルーツは、古くからあった飛脚制度や、江戸時代に五街道の一つであった東海道で、馬で荷物を運んだ伝馬制にあると言われています。最初の駅伝は1917年に京都から東京まで約508㎞、23区間、昼夜問わず3日間走り続けるというものでした。距離を分担して走るというルールは、個人よりもチームを大切にする、いかにも日本発祥のスポーツだと思います。

 箱根駅伝のルールは実に過酷です。中継点で20分遅れのチームは繰り上げスタートを強いられ、タスキを繋ぐことができません。翌年のシード権は10位までで、それ以下は予選からの熾烈な闘いが待っています。このように、タスキはチームと歴史を繋ぐものであり、学校の名誉と誇り、そして選手一人一人の血と汗と涙が染み込んだものです。

 駅伝はよく人生の縮図であるとも言われます。平坦な道ばかりでなく、時に風雨、風雪にも苛まれます。そうした苦難を克服するために、日頃から弛まぬ努力の積み重ねが必要です。今回の箱根駅伝でも、私達が知り得ない努力の積み重ねが、数々の感動的なドラマとして私達の心に響いたのではないかと思います。

 皆さんに認識してほしいのは、こうした感動的なドラマは何もスポーツに限ったことではなく、皆さんが日頃から取り組んでいる全てのものに共通するものだと思っています。どんな思いで、どんな決意でそれに取り組んでいるか、それは真剣か。そして、そこに弛まぬ努力のプロセスがあるからこそ、ドラマとなり、感動を呼び起こし、周囲がそれに共感、共鳴するのだと思います。真剣であればあるほど、それはより大きなものになります。

 実は、皆さんもそれぞれにタスキを背負って走っています。2023年がスタートしましたが、この1年を見ても、幾つもの節目があります。ゴールとなる目標を設定し、それを見据えて節目節目にタスキをどう繋げていくかをしっかり考えてください。

 1・2年生はそれぞれ2年後、1年後を見据えて。3年生は人によっては1ヶ月後、2ヶ月後、あるいは大学を卒業する4年後、この先10年後を見据えて。皆さんそれぞれにそれぞれの目標に向かって、決して挫けず、諦めず、弛まぬ努力を積み重ねてしっかりと自分のタスキを繋いでいく、そんな3学期、2023年にしてくれることを強く希望します。

 ところで、明高も今年、創立100周年を迎えました。9月30日には記念式典・記念講演会を予定しています。また、記念事業・関連事業として、新資料館の建設、資料館周辺の庭園整備、視聴覚教室を探究ルームに改修、体育館にトイレ新設、記念イベント等を計画しています。明高の歴史と伝統、建学の精神「自彊不息」のタスキを皆さんとともに繋いでいきたいと思います。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止の徹底をお願いします。

2学期終業式講話

 社会は動き始めましたが、依然としてコロナ禍に翻弄されたままの令和4年、そして2学期が終わります。皆さんにとってどんな1年、どんな2学期でしたか。

 ところで、皆さんは「カリカリ」というお菓子を知っていますか。「カリカリ」は、亀田製菓が販売しているインド人向けの「柿の種」のことです。

 人口が頭打ちとなり、食品業界が待ったなしの変革を迫られるなか、亀田製菓は国内中心の事業からスタイルを変えようとしました。その一つが、人気商品である「柿の種」をインドで販売することでした。このインド進出をはじめとした食品事業や海外戦略の舵取り役を担うのがインド人副社長のレカ・ジュネジャさんです。

 彼は、インドの大学院を卒業後に名古屋大学大学院で食品工業化学を学び、博士号を取得。入社した大手食品素材メーカーでは研究も営業もこなして副社長に就任。「お茶の成分のリラックス効果」の研究成果は世界中の商品に活かされています。その後、ロート製薬を経て2020年に亀田製菓に副社長として迎えられました。そして、「研究のための研究はやめて、どんどん新商品を出そう。それも、日本の1億2千万人ではなく、世界の77億人を相手にしよう」と社員に訴えました。彼は「日本の食品企業はまだ世界に出ていない。世界の市場を狙っていった方がいい。世界に出るには苦労があり、容易に成功しない。でも、リスクも取らないとダメ。枠を自分で決めてしまってはダメ。枠を超えたことをやろう」とも訴えました。そこで作り出されたのが、種が大きく、ピーナツ量が多く、生地が厚く、味が辛めで濃い「カリカリ」です。それは現地で瞬く間に人気商品になりました。

  さて、この話から皆さんは何を感じ取ったでしょうか。グローバル時代、やはり世界に目を向けないといけない。リスクを冒してもチャレンジすべきだ。それぞれに感じ取ったものは異なるでしょうが、私が皆さんに伝えたいことは2点あります。

 1点目は「研究のための研究はやめる」です。この「研究」を他の言葉に置き換えてください。たとえば「勉強」「練習」。「勉強のための勉強」「練習のための練習」。皆さんは「進路実現、大学進学のための勉強」ではなく、「宿題のための勉強」「課題提出のための勉強」になっていませんか。「近畿大会出場、全国大会出場のための練習」ではなく、「今日もまた練習があるから練習」になっていませんか。皆さんにはそれぞれ目指すもの、目標とするものがあるはずです。それを達成するために何をしなければならないのか、それを自覚できたら、自ずと意識も姿勢も取組も変わってきます。

 2点目は「枠を自分で決めてしまってはダメ」です。皆さんは自分で自分の限界を決めつけていませんか。やる前からどうせ無理だと諦めていませんか。自分はこの程度じゃない、これでは満足できない、こんなはずはない、このままではダメだと考えて真剣に努力している人がどれだけいるでしょうか。

  令和4年が、そして2学期が終わろうとしている今、これまでの自分を見つめ直してください。皆さんそれぞれに目指すもの、目指すところが何なのかを確認し、そのためにハードルを上げて越える努力を惜しまないでください。皆さんには建学の精神「自彊不息」、この言葉の意味を改めて噛みしめてほしいと思います。皆さん一人ひとりが、2学期が終わるこの節目、年が改まるこの節目を、自分が変わる転機にしてくれることを期待します。

最後に、明日から冬休みに入りますが、改めて新型コロナウイルス感染防止の徹底をお願いします。

それでは、1月10日にこうして全員が元気に登校してくれること、令和5年が皆さんにとってすばらしい1年となることを祈念して、式辞とします。

11月全校集会講話

 皆さんは夏川草介(そうすけ)さんが書き下ろした『神様のカルテ』という小説を読んだことがあるでしょうか。もしかしたら映画で見た人がいるかもしれません。櫻井翔さんが主役を演じていました。

 この小説は、主人公の若手医師である栗原一止(いちと)が、病院で出会う患者さんや、先輩あるいは同僚の医師、看護師、大学同期の親友、アパートの少し変わった住民、主人公を優しく見守る写真家の妻など、多くの人々と接しながら自分自身の生き方について考える姿を描いています。

 その中に、主人公と、彼が担当する患者さんとの対話の場面があります。この患者さんは高校の教師をしていた人で、多くの本に囲まれた自分の部屋で、主人公と次のようなやりとりをします。

 それは患者さんの言葉から始まります。「ヒトは、一生のうちで一個の個人しか生きられない。また別の人生があることを我々に教えてくれる。たくさんの小説を読めばたくさんの人生を体験できる。そうするとたくさんの人の気持ちもわかるようになる。」「たくさんの人の気持ち?」「困っている人の話、怒っている人の話、悲しんでいる人の話、喜んでいる人の話、そういう話をいっぱい読む。すると、少しずつだが、そういう人の気持ちがわかるようになる。」「わかると良いことがあるのですか。」「優しい人間になれる。」「しかし、今の世の中、優しいことが良いことばかりではないように思います。」「それは、優しさということと、弱いということを混同しているからです。優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を「優しさ」というのです。優しさというのはね、想像力のことですよ。」

 「優しさ」=「考える力」=「想像力」、思わず納得してしまう、心にストンと落ちてくる言葉です。皆さんには「優しさ」がありますか。最近、いじめと思われる事案、SNSをめぐるトラブルが多発しています。本校も例外ではありません。人に「優しく接する」とはどういうことか、どうすることか、この機会に一人一人考えてほしいと思います。

 さて、本を読んでいると、自分ではうまく言い表せないでいた考えや気持ちを的確に表した表現に出くわすことがよくあります。表現の仕方や語彙を身に付けるツールとして、言葉を自在に操る小説家の書いた文章にふれることは大変意味があると思います。また、映像を見るのではなく、活字を読むことで、想像力を高めることもできます。読書は豊かな感性を磨き、幅広い知識を得て、考える力を育て、表現力や想像力を育みます。大学入学共通テストにおいても、どの教科も多量の文章や設問文、資料文を読ませる出題に変化しています。こうした様々な理由から、ぜひとももっと読書に勤しんでほしい、1日10分でいい、読書に時間を割いてほしいと思います。

 最後に、新型コロナウイルス感染がまた拡大しています。本校でも、特に濃厚接触者が非常に増加しています。教室の換気の徹底、マスクを外した会話や昼食時の会話の厳禁、こうした感染防止対策の徹底を改めてお願いします。一人一人が自覚を持って行動してください。

10月全校集会講話

 

 少し前、7月の話になりますが、陸上の世界選手権がアメリカのオレゴン州ユージンで開催され、サニブラウン選手が日本人短距離界初の決勝進出という快挙を成し遂げました。その決勝では、惜しくも銅メダルに0秒18届きませんでした。レース後のサニブラウン選手は、「近いようで遠い。1ミリ1ミリ縮めるために、1日1日、1秒1秒を大切に頑張っていきたい」とコメントしましたが、私にはまさに極限の世界を生きる人が発する言葉に聞こえました。

 実際、このニュースを報じた新聞のコラムに北京オリンピック400mリレーの銀メダリスト、朝原宣治氏が寄稿していたので紹介します。「私も、何度もファイナル進出に挑戦したが、準決勝はとてつもないエネルギーが渦巻いている。まるで格闘技のように同じ組のライバルと、肉体と精神をぶつけ合うような感覚を味わった。その場を支配する巨大なエネルギーに耐えられた人間だけが、決勝の8人に選ばれる。ただ速いから立てる場所ではないから尊いのだ」。この言葉からも、サニブラウン選手の強靱なまでのメンタルの強さがうかがえます。

 サニブラウン選手は2019年に日本新記録となる9秒97をマークしましたが、以降、腰痛に苦しみ、その中で彼が感じたのは「スポーツ競技はメンタル勝負である」ということ、そしてどん底を乗り越えて学んだのが「マインドセット」の重要性であると語っています。

 「マインドセット」とは、それまでの経験や学習、先入観から作られる思考パターンのことです。簡潔に言うと「無意識の思考・癖・思い込み」のことです。

 普段、私達人間の行動は、95%が無意識に行われていると言われています。それはそれまでの経験や学習、自分の中の常識によってかたちづくられた「マインドセット」を持って行動しているからだそうです。

 その「マインドセット」には「成長型」と「固定型」があって、「成長型マインドセット」は「自分の能力は努力次第で成長させることができる」という思考、「固定型マインドセット」は「能力はもともと決められており変わらない」という思考で、多くの人はこの両方を持っているそうです。

 例えば、「大リーグは別世界だ」と思っていた人が、大リーグで活躍する大谷選手の姿を見て「自分にもできる」と思うようになる、「大リーグは別世界だ」という思いが「固定型マインドセット」、「自分にもできる」という思いが「成長型マインドセット」です。

 この「成長型マインドセット」を持って挑戦することが成功の秘訣です。試合ともなると、失敗できない大事な場面ともなると、あるいは受験ともなると、緊張の極限状態に置かれます。しかし、「成長型マインドセット」を日頃から研ぎ澄ましていくことで、動じない精神力を身に付け、それを乗り越えられるはずです。「自分は必ずできる」「自分は必ず成功する」「自分は必ず合格する」、無意識にそう思える、そう信じられるマインドをセットできるよう、1日1日、1秒1秒を大切に鍛錬を重ね、自分を追い込んでほしいと思います。逆に、無意識にそう思えたら、「自分はやり切った、悔いはない」と思えたら、きっと緊張を楽しむことができるようにもなるはずですし、どんな結果であれ、それを納得して受け入れられずはずです。

 明高生の誰もが「成長型マインドセット」を持ち、理想像を描いてその実現のために努力し続ける、そんな学校生活を送ってくれることを期待しています。

 最後に、新型コロナウイルス感染防止の徹底を改めてお願いします。

2学期始業式講話

 皆さんおはようございます。この夏休み、コロナ感染や熱中症等、大変心配していましたが、命に関わる大きな事案もなく、こうして全員が元気に登校できたことをともに喜びたいと思います。

 この夏休み、皆さんの頑張りや活躍を幾度となく耳にしました。本当に嬉しく思っています。まだ結果の出ていない人もいるかと思いますが、「ローマは一日にしてならず」と言います。諦めず、挫けず、頑張り抜いてください。

 ところで、皆さんは、兵庫県出身のお笑い芸人と言えば誰を思い浮かべますか。私は真っ先にダウンタウンの松ちゃんこと松本人志さんを思い浮かべます。

 彼は、尼崎市出身で日本のお笑い界を代表するカリスマ的芸人の一人です。誰も想像できない発想で笑いをとるセンスだけでなく、お笑いの新しいフォーマットをつくる企画力においても卓越した才能を発揮し続けています。

 実は、評論家の多くは、彼の笑いの発想には「悲しさがある」と評しています。彼は、「おもしろさの裏にはやっぱり悲しさがあって、悲しさの裏には、例えばお葬式でおかしくてしょうがないみたいなことがあって。だからおもしろいこと、おもしろいことって考えているんですけど、ちょっと視点を変えればすごく悲しくもなるし。だから笑いっておもしろいなぁって思います」と語っています。

 自身の幼少期の体験から形成された貧しさや悲しみを独特の言い回しで笑いに変えるセンス。視点を変えることで笑いを生みだす体験があったからこそ、お笑いの世界で頂点に登ることができたのだと思います。私達は日頃、困ったり、行き詰まったりすることがよくありますが、そんな時には「視点を変える」ということ、大事なことを示唆してくれています。

 彼はこんな発言もしています。

「人と比較して劣っているといっても、決して恥じることじゃない。けれど、去年の自分と今年の自分を比較して、もしも今年が劣っているとしたら、それこそ恥ずべきことだ」、この言葉をそのまま皆さんに贈ります。恥ずべき自分がいませんか。

 「100点は無理かもしれん。でもMAXなら出せるやろ」、これは彼の名言と言われる言葉です。深い言葉ですよね。パーフェクトな結果は初めから出せないかもしれないけれど、今の自分が持っている力を最大限に出すことはできるだろうというのです。これは、妥協を許すということではなくて、初めから完璧を求める必要はないけれど、常に本気で物事に向かっていけということだと思います。初めから完璧な人はいませんし、初めから完璧を求めてしまうとしんどくもなってしまいます。また、何かを成し遂げようとする時、いきなり大きな目標を立ててしまうと、そこまでの道のりが遠く長いために挫折してしまいます。だから、少し頑張ればできそうな小さな目標を立ててそれを達成していく。これを繰り返していくうちに、最初に掲げた大きな目標に近づいていくことができます。

 今日から2学期が始まりました。大きな目標、3年生は進路実現、2年生は進路目標の確立とその実現、1年生は将来の目標の確立と学力の向上、できそうな小さな目標を立ててそれを達成していく、それを積み重ねて大きな目標に近づいていく、そんな2学期にしてくれることを期待しています。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止の徹底をお願いします。

1学期終業式 講話

 早いもので、1学期が終わります。皆さんは、納得のいく1学期を送れましたか。送れたという人は手を挙げてください。何に納得できていないのか、それはなぜなのか。しっかり自己分析し、すぐに改善に努めてください。改善なくして成長なし、です。

 さて、「グローバル化」「グローバル人材」という言葉はよく耳にするところです。「グローバル化」とは、人や商品、資本、情報などの様々な分野で、国や地域の垣根を超えた移動が活発化し、世界の結びつきが深まる現象を言います。現実に、労働力が安価な新興国で商品を製造することで、企業は増収、私達消費者は安価に商品を入手しています。海外の製品やサービスが国内に溢れ、街には多国籍の人々が往来しています。インターネットを介して瞬時に情報が世界中を駆け巡っています。世界中に拡大した感染症の問題もグローバル化が一因です。コロナ禍で人の移動がいまだに制限されていますが、新たな技術や手法の開発によって「グローバル化」が停滞することはないと言われています。

 こうした「グローバル化」時代を生きる「グローバル人材」に求められる力は何か。早稲田大学の白木三秀教授が、海外に派遣された日本企業の社員を対象に、コンピテンシー、つまり安定的に期待される成果を挙げている人に共通して見られる特性を調査したところ、共通して4つの力が備わっていることが判明しました。その4つとは何だと思いますか。

 私は、英語力がその1つだと考えましたが、英語力、特に話す力は備わっていることが大前提の話でした。その4つとは、

1 前向きな行動力

2 対人関係構築力

3 異文化適応力

4 仕事力

でした。そして、細かく分析したところ分かったことが、誰もが高校時代に好奇心を持って大小様々なことに主体的に挑戦し、成功と失敗を積み重ねる、そうした経験を数多くしていることでした。

  私が今、皆さんに伝えたいことは理解していただけたと思います。グローバル化時代を生きるグローバル人材となる皆さん、特に1・2年の皆さんには、好奇心を持って大小様々なことに主体的に挑戦し、自分を高めてほしい、自分を成長させてほしい、グローバル人材の基盤を作ってほしいと思います。ぜひそんな夏休みにしてください。もちろん、学習面では、特に復習を中心とした基礎基本の徹底的理解、その定着を図ることは言わずもがなです。また、特に2年生は志望する大学に足を運んで、「よしやるぞ」という不退転の決意を新たにしてください。

 3年生の皆さん、就職・公務員志望の人、しっかりと対策を立て妥協せず納得のいくまでやりきってください。進学志望の人、「夏を制する者は受験を制する」と言われます。この夏の頑張りを期待しています。しかし、必死に勉強しても、すぐに結果は出るとは限りません。早い人で3ヶ月後です。逆に考えると、この夏休みに頑張らないと受験には間に合わないことになります。必ずや志望校に合格するぞという不退転の強固な意志を持って、この夏休みを乗り切ってください。

 最後になりますが、新型コロナウイルス感染症が再拡大し、感染者が激増しています。改めて感染防止の徹底をお願いします。特に部活動内での感染が拡大しないよう留意してください。

6月全校集会校長講話

 大学進学を目指す人の多くは「大学入学共通テスト」を受験します。私立大学の多くが取り入れ、国公立大学受験者は必須です。この「共通テスト」は、大学入試改革の目玉として、単に知識だけを問うのではなく、受験生の思考力や判断力を評価する出題内容となっています。来年度で3回目となります。

 今年度の試験では、多くの科目で平均点が過去最低となりました。そのため、昨年度の3年生も受験校を決定する際、悩んだ人が非常に多くいました。英語ではリスニングのウエイトが非常に高くなりました。英語の読解問題では図や資料など様々なテクストから概要や要点を把握したり情報を読み取ったりする問題、国語では本文に関連する別の文章が提示されて内容や表現の特徴について類似点や相違点を問う問題、数学では会話文を用いて数学的な問題解決の過程を問う問題、地歴では史料や図表を読み取る問題、理科では実験や考察問題が非常に多く出題されました。

 しかし、問題を解いてみると、実は基本事項が理解できていれば、ちゃんと正解にたどり着ける問題ばかりです。ポイントは、日頃の学習において、単に知識だけを覚え込むのではなく、それを使って考える、いわゆる「思考の訓練」をしっかり行えているかどうかです。

 「思考」とは、辞書には「すでにある情報から新しい情報を導き出す心の活動」とあります。イメージ的に言うと、「こうだからこう、こうだからこう、だから結論的にはこう」といった考え方の形式のことです。例えば、自明の真実からスタートして、結論を導き出す演繹的思考では、「昆虫は6本足、クモは8本足、だからクモは昆虫でない」という結論になります。また、前提に「全ての」とか「ある」といった量を表す表現が含まれるパターンの定言的思考では、「全てのAはB、全てのBはC、よって全てのAはC」という結論になります。

 こうした「思考の訓練」は、いつでもどこでもできるものだと私は思っています。部活動でも意識して臨めば、相当な訓練になるでしょう。また、こうした思考は、何も学習や受験だけではなく、自己理解はもちろん、他者の気持ちへの理解、想像力を働かせることなど、私達が生きる上での全ての活動において活かされるものだと思います。

 皆さんには、日頃からあらゆる場面で「思考すること」「思考する訓練」を実践し、それを継続してほしいと思います。そして、一方向だけから物事を見るのではなく、できるだけ多くの視点から物事を捉え観察し、思考を深めてほしいと思います。この習慣が大学受験も含め、様々な意味での自己実現に繋がっていくはずです。

 最後に、新型コロナウイルス感染については、まだまだ油断できません。感染防止の徹底をお願いします。感染防止は、新たな取組ではなく、これまでやってきた基本的なルールを正しく守るということに他なりません。皆さんの教育活動を通常に近い形で行うためです。協力をお願いします。

5月全校集会講話

 ゴールデンウイーク前後に、多くの部で東播大会が開催されました。優勝、準優勝、入賞を勝ち取った部や選手が例年以上に多く、報告を聞いて大変嬉しく思いました。この勢いで、県総体でも活躍してくれることを期待し、楽しみにしています。

 私事ですが、高野連の仕事に携わっていることから、県大会はもちろんのこと、近畿大会や甲子園大会の試合を直接球場で観戦する機会がよくあります。高校野球の世界で強豪校と言えば、皆さんもすぐに大阪桐蔭、智弁和歌山、東海大相模といった名前が思い浮かぶのではないでしょうか。私は、全国からトップレベルの選手を集めれば当然強くなるはずだという考えを持っていましたが、強豪校の試合を観戦するにつけそれは誤りであることに気づかされました。

 スポーツではよく、「リズム感がある」とか「テンポがいい」とか言われます。リズムは「動きの規則正しい繰り返し」、テンポは「リズムの速さ」です。

 スポーツのパフォーマンスにおける二大要素と言われているのが、筋力やスピードなどの「身体機能」と、ボールに合わせる、タイミングを合わせる、相手に合わせる「協調」です。この「協調」ですが、こちらが相手に合わせるのか、相手がこちらに合わせるのかがポイントです。勝負事では「自分の中に基準とする内的テンポを持って臨むこと」、つまり相手がこちらに合わせる状況を作ることが絶対条件であると言われています。

 大阪桐蔭は、グランド上での動きは非常に機敏で、攻守交代も全力です。例えば、相手のピッチャーがマウンドに行くまでに、すでに先頭打者がバッターボックス横で素振りを始めています。それを見てピッチャーが慌ててピッチングを始める。つまり、相手がこちらの内的テンポに合わせてリズムを崩すことになります。このリズムのよさ、テンポのよさが大阪桐蔭はじめ強豪校の強さであると私は認識するようになりました。どんな競技でもそうですが、それを身につけることで、どんな時にも自分のリズム、自分のテンポで試合ができます。リズムやテンポは脳の働きによって刻まれるため、脳にリズムやテンポを染みこませることが重要です。日常のスピーディーな動きが身体に染みついて、それが自然な状態になっているのだと思います。ぜひそんなチームづくりをしてください。ダラダラ練習していたのでは絶対に勝てません。余談ですが、強豪校はどこも相手が誰であろうとしっかり挨拶ができます。春の甲子園は選抜になりますが、その第1条件は挨拶を含めたマナーの良さです。

 ところで、ヒトの様々な機能は生体リズムにより制御されていると言われます。夜になると眠気が増すのもそのためです。スポーツの国際大会で、ジェットラグ(時差ぼけ)によりパフォーマンスが低下するのも生体リズムが崩れたことによるものです。

 皆さんは、生活習慣の確立・生活リズムの確立ということを口酸っぱく指導されてきたと思います。それは、一定の規則正しいリズムで生活することが、安定して力を発揮することに繋がるからです。それが証拠に、普段家庭で2時間しか勉強しない人がいきなり5時間勉強しようとしても容易ではありません。1月に大学入学共通テストが実施されました。思考力を問う問題が増加し、時間内に問題を解き終えられなかったという声が多く聞かれました。これに対応するには、日頃から脳にそうなりたい自分のリズムやテンポを染みこませることが必要です。例えば、学習時間を徐々に長くするとか、歩くスピードを速くするとか、食べるスピードを速くするとか、問題を解くスピードを速くするとか。

 今日の話を、自分のリズムやテンポがどうか、試合に向けて、学習に向けて、受験に向けて自分を見直す、自分をつくり変える契機としてほしいと思います。

 最後に、新型コロナウイルス感染がまた拡大の様相を呈しています。不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。特に、部活動内での感染と濃厚接触の回避を徹底してください。また、下校時は飲食や寄り道をせず、まっすぐ帰宅してください。

4月全校集会講話

 新年度が始まって2週間が経ちました。1年生は高校生活にも徐々に慣れてきましたか。高校生・明高生としての自覚を持てるようになってきましたか。2・3年生には始業式で、「成功哲学」の話をしました。情熱と信念を持って8つのことを実践できていますか。成功への階段を一歩一歩上れていますか。

 昨日は、全学年とも仲間づくり、仲間との交流に主眼を置いた遠足でした。目的は達成できましたか。楽しい時間を過ごせましたか。今日から一週間、ゴールデンウイークまでギアをさらに一段上げて突っ走ってください。

 ところで、大手電機メーカーのソニーが電気自動車、いわゆるEV車製造へ参画するために、今春新たな会社を立ち上げました。個人的には、ソニーが自動車メーカーになるのかと大きな驚きを持ってこのニュースを耳にしました。今や、危険を察知して自動的に制御するシステムが搭載された自動車は当たり前になりつつあります。また、数年前から「空飛ぶ車」の構想が取り沙汰され、2025年に開催予定の大阪万博において、その姿が披露されることになりそうです。

 このように、これまでの常識では計り得ないこと、予想だにできなかったことが現実に起ころうとしているのが今の世の中です。こうした動きは、物づくりに携わる人々の壮大な夢の具現化、夢へのチャレンジに他なりません。本校の卒業生の中にも、著名な方では楽天の三木谷氏など、夢を具現化し社会に貢献されている方が多数おられます。皆さんが、そんな先輩方の後に続いてくれること、夢にチャレンジしそれを実現してくれることを強く願っています。

 実は、皆さんもこれまで様々なことにチャレンジしてきたと思います。人が生きていくということは、日々の小さなチャレンジの積み重ねであると言っても過言ではありません。しかし、ややもすると、新しいことにチャレンジしようとする時、自信がない、失敗したらどうしよう、自分には不向きなのではないかなどと躊躇し、挙げ句の果てにチャレンジしない理由をあれこれ考えて諦めてしまったり、先延ばししてしまったりすることも多いのではないでしょうか。そして、「あの時、やっておけばよかった」と後悔することはよくあることです。

 先日、ある大手企業の方が、「現状維持のままでは何も変わらない。現状維持は後退である。人は変化しないとゼロのまま、むしろマイナスかもしれない」とおっしゃっていました。そして、「変えることですぐに100の成果を望むな。1でもいい、10でもいい、チャレンジすることは次につながる。だから、変化は常に必要だ」とも。

 さて、皆さんも何か一つだけでも変えてみませんか。例えば、「朝ギリギリに登校している習慣を8時に変える」「一日のスマホの時間を1時間減らす」「小テストはすべて合格する」「(3年生なら)平日4時間以上は勉強する」など、できそうなことから始めてください。チャレンジとは、失敗を恐れず自分から進んで挑むこと、経験を通して自分を進化させていくことです。

 自分の課題に気づき、改善する、そしてチャンスをものにしてくれることを期待しています。

 最後に、新型コロナウイルス感染防止対策はしっかり行えていますか。特に、昼食時の会話、部活動時のマスクなしでの会話、これは絶対にしないでください。見かけたら互いに注意し合える、そんなクラスメイト、チームメイトであってください。また、下校時の飲食は自粛の通知が県教育委員会からも来ています。寄り道をせず、まっすぐ帰宅してください。