校長室より

校長室より

卒業生へメッセージ ~子供から大人へ~

 45回生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

 大人と子供のはざまにあって、揺れ動く気持ちが続いていた高校時代。その年代が終わろうとしています。高校を卒業するのに際して、君たちに二つお願いがあります。

 一つ目は、素直に感謝を伝えて欲しいということです。三年間は短いけれども、お世話になった人たちは大勢いたはずです。両親、先生、地域の方々、そして何よりも大切な友人たち。そんな人たちに、時には無礼なことをしたかもしれません。周りの人たちに見守ってもらったことはたくさんあったはずです。そんな人たちに自分の言葉でお礼を述べておくべきでしょう。

 二つ目は、ものに感動する心を見失ってはならないということです。その心は、子供が持っている大切なものです。美しいものに感動し、素晴らしいものに驚嘆する心が、自分に備わっていることをしっかりと確認してから、大人の世界に足を踏み入れてほしいのです。そのような心を失うまいと肝に銘じておいてほしいのです。

 次の段階に一歩踏み出していく卒業生の皆さん、大きな、大きな期待を込めて、私は君たち一人ひとりを大人の世界へ送り出そうと思います。

 

校長 塙 守久

3学期始業式にて ~1枚の紙(プロフェッショナル)~

    皆さん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 季節はこれからますます寒さが厳しくなっていきますが、私たちは新しい年を新春として迎えます。北風が吹きすさぶ季節であるにも拘わらず、新しい1年の始まりの時を新春と呼ぶのは、私たちの気持ちが反映していることのあらわれです。

 新しい年を迎えて、皆さんはそれぞれ、この1年への期待や意気込みを抱いていることと思います。「初心、忘るべからず」という言葉がありますが、改まったときに抱いた思いが、自分を励まして前進させる力になることは疑いのないことです。この1年、お互いに努力を続けましょう。

 さて、昨年の2学期終業式で、読書によってイマジネーションを膨らませて欲しいとお話ししました。今日はそのイマジネーションを働かせてみましょう。

 

想像してください。ここに一枚の紙があります。

何回折れるでしょうか?

二つ折りで40回折れば、厚さはどれくらいになるでしょうか?

1回で2倍、2回で4倍、3回で8倍、4回で16倍、・・・10回で1024倍です。

わかりやすく1000として

20回で、1000×1000=100万倍

30回で、100万×1000=10億倍

40回で、10億×1000=1兆倍

仮に紙が0.1㎜としたら、0.1㎜×1兆=1000億㎜=100億㎝=1億m=10万㎞

地球一周約4万㎞です。2周半できます。

月まで約38万kmです。4倍の0.4㎜の紙を40回折れば月に到達できます。

面積は見えないほどになりますが、紙を折って月に行けるなんて、おとぎ話のようでロマンチックな気分になります。

 

    今もそうでしょうけれど、包丁や刀を作る鍛冶屋さんは、鋼を火の中に入れ、真っ赤にしてグニャッと伸ばし、二つ折りにして、トンテンカンと叩き、また火に入れるということを繰り返します。名刀と言わるものは20回以上繰り返すこともあるそうです。鋼の厚さは紙と比べ物にならないほどの厚さですので、厚さがそのまま倍になったとしたら、余裕で月にとどいています。そして、研ぎあげる。そういう仕事を職人さんは全て手作業でやっている。その道のプロはすごいですね。

    どんな道でもその道の熟練者、つまりプロフェッショナルになるように努めることが大切です。人は学歴や肩書きで仕事をするのではありません。自分の身についたものが、その人の力になります。有名大学に合格したから、有名企業に就職したからといって安穏としている人はプロフェッショナルにはなれません。

皆さんは、今は、自分の進む道を探している段階かもしれませんが、いずれは、それぞれの専門の道で力を蓄え、プロフェッショナルになってほしいと思います。

 さぁ新春です。夢や目標に向かって、新たな意気込みを胸に、2025年をスタートさせましょう!

校長 塙 守久

2学期終業式にて ~イマジネーションを膨らませる~

 皆さん、おはようございます。寒くなりましたが風邪などひいていませんか?体調管理をしっかり行ってコロナやインフルエンザに打ち勝ちましょう。

 さて、“百聞は一見に如かず”とよく言います。このことは探究活動などを行っている君たちにとって納得できることかと思います。様々な活動を通し、自分の目で見て体験することによって納得したことがたくさんあったと思います。

 しかし、私たちひとり一人には1日24時間という時間が割り当てられています。ひとりだけ25時間とか20時間とかではなく、誰しもが平等に24時間です。つまり、限りがあるということです。何でも見てやろう何でもやってやろうとしても限度があります。そこで、読書です。読書の秋と言われますが、皆さんはこの秋に読書をしましたか?

 最近は、高校生の一ヶ月平均読書数は1.7冊だそうです。忙しい高校生活では月1冊2冊が限度であると思いますが、驚いたのは不読者の割合です。なんと48.3%の高校生が一ヶ月0冊、つまり約半数が本を読んでいないということです。読書をすることによって、実際の経験には及びませんが、どこにでも行けます。どんな時代でも、どんな人の立場でも立てます。ドキドキしたり、ハラハラしたり、楽しんだり、悲しんだり、怒ったりもできます。そのためには、イマジネーション(想像力)が必要です。今まで、イマジネーションが大切と何度か話してきましたが、読書によってイマジネーションが大きく育ちます。イマジネーションによって読書の幅が広がります。イマジネーションによって優しさも生まれます。イマジネーションによって危険も回避できます。

また、心を落ち着かせて本を読むことによって、言葉が心の中に降り積もっていくのです。そして、それによって、長い間、自分の心から離れないものになっていくというのが読書の醍醐味だと、私は思います。

 読書は、堅苦しいものであってはいけません。自分の好きな本、自分に合った本を読めばよいのです。義務を感じて読む必要はありません。自分から進んで読んで、興味をひかれたものは自分の糧になります。どこかできっと自分に役立つはずです。

 読書は嫌いだ、読書は面白くないという人がいるとすれば、その人は、何を読んでも興味が持てないというところに問題があるのです。読書のせいではなく、その人の生き方に関わることであると思います。様々な本を読んで、イマジネーションを働かせ豊かな人生を送ってほしいと、私は若い君たちに願っています。

 3年生は、受験勉強で頭がいっぱいだと思います。一段落したところで読書をしてください。1・2年生は年末年始に、気に入った本を読んでイマジネーションを膨らませてください。

それでは、よいクリスマス、よいお年を迎えてください。

 

校長 塙 守久

平和の有難さ ~2学期始業式にて~

 皆さん、おはようございます。7月下旬からの長い夏季休業期間が終わりました。正規の授業がないというだけであって、補習、部活、模擬試験などで、普段と変わらないような生活をした人も多かったことと思います。事故や怪我なく無事に過ごせたでしょうか。

 1学期の終業式では、パリオリンピック閉会式で飛び降りてきたトム・クルーズの話で「しぶとく夢を追いかけること。」についてお話しました。3年生はしぶとく頑張り抜きましたか?2年生はしぶとく文武両道に徹することができましたか?1年生は何かしぶとくチャレンジできましたか?できた人は、必ず2学期にグングンと成長します。楽しみにしておきましょう。

 さて、毎年のことですが、8月は、戦争と平和や、人の命のことを考える機会が多くありました。8月6日は広島に原子爆弾が投下された日、9日は長崎の日、そして15日は終戦の日と、連日、新聞やテレビで関連のニュースや番組が多く取り上げられました。

2・3年生には昨年話しましたが、私は、この時期に必ず「火垂るの墓」という映画を観ることにしています。野坂昭如の原作で、戦時中、神戸を舞台に子供の兄と妹だけで生き抜こうと、必死で生きたが、はかなく二人とも亡くなってしまう物語です。この映画を観る度、涙が流れます。涙する度、生きていることを実感します。生きていることを実感する度、平和の有難さを感じます。今年は「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」という現代の女子高生と特攻兵の作品も観ました。

 79年前、第2次世界大戦によって、心ならずも犠牲になった方々が大勢おられました。日本では300万人以上の方が亡くなられたと言われています。神戸市人口の倍以上です。その中には君たちと同世代の若い人たちも多数含まれていました。戦争末期、片道限りの特攻隊が組織され、出撃した特攻隊員の多くが20歳前後の若者でした。爆弾を搭載した航空機ごと搭乗員が敵艦などに体当たりする特別攻撃隊のことを特攻と言いました。航空機には片道の燃料しか積まれていません。1945年8月の敗戦までの10カ月間でおよそ4000人が命を落としたと言われます。陸軍少年飛行兵学校や予科練習生を経た少年、学徒出陣で動員された大学生もいました。戦争の時代と言える昭和初期に育ち、"お国のために"戦争におもむくのは当然、戦場で命を散らすのは名誉なことだという価値観、教育の中で生きていました。特攻隊員になることは志願制とされましたが、そこには命令や指名もあり、拒否することはできませんでした。そのなかで、万に一つも生き残る可能性のない特攻を前に、苦悩したり、疑問を感じたりした若者も少なくなかったことでしょう。痛ましいことです。

戦争は、まともな人間らしさを持つことが許されません。ですから、人間らしさを保てる平和な時代に生きている私たちは、次の世代に歴史を語り継ぎ、同じ過ちをせず、平和の大切さを伝えなければなりません。

 今、ウクライナでは、ロシアの侵攻による戦争が2年半も続いています。パレスチナ・ガザ地区でも多くの命が奪われています。ウクライナ国民、ガザ地区市民は、いつ平和が訪れるのか、いつ日常が戻ってくるのか、不安な日々を過ごしていることでしょう。同じ時代に生きている私たちは、しっかりと関心を持ち続け、彼らが平和へ近づくため、何らかの支援をすることが今後も大切です。

私たちひとり一人の命は、平和が繋いだ大切な命です。どんな時でも、人間らしさを忘れず、ひとり一人の命を守っていきましょう。この夏、南海トラフ地震臨時情報も発表されました。また、昨日は防災の日です。“よ・い・こ”は覚えていますか?災害伝言ダイヤル覚えていますか?

この2学期に君たちひとり一人の命が、より一層輝くことを願っています。

校長 塙 守久

「しぶとく」~1学期終業式にて~

 みなさんおはようございます。

 コロナによる大きな影響もなく、また学校において大きな事故もなく、無事に1学期の終了を迎えることができました。皆さん一人ひとりの協力のお陰です。ありがとうございます。

 さて、皆さん、ディスレクシアという言葉をご存じですか?「ディスレクシア」日本語では読み書き障害と言うのでしょうか。文字が読めない、書けないという特性です。

 昔、アメリカで、そのディスレクシアの少年がいました。その少年の夢は、「パイロットになって空を飛びたい。」という夢でした。周りの人たちは「字が読めないのに空を飛ぶなんて不可能だ。」「試験問題読めないじゃん。」「そんなの絶対無理。」と言ってからかいました。少年はその特性から、いじめに会い何度かの転校を余儀なくされたといいます。

その少年は青年になり、俳優になりました。そして、映画出演によって、飛行機に乗り大空を飛びました。そう、その映画が「トップガン」という作品です。その少年の名は、「ミッションインポッシブル」等で有名なトム・クルーズ。彼は、台本のセリフが読めないので、テープに吹き込んでもらい、何度も何度も聞き返し、セリフを覚えたということです。

少年は、旅客機のパイロットにはなれませんでしたが、俳優として、少年の頃の夢を実現しました。

皆さんも夢や目標があると思います。それを実現するためには、一つの道だけではありません。人それぞれのアプローチ、方法があるはずです。自分の気持ちを偽ることなく、しぶとく、簡単にあきらめず、自分はどうしたらいいのか考え、工夫をしながら努力してください。まさしく校訓「立志・誠実・努力」です。

3年生、高校生活最後の夏休みです。来年4月の自分の姿を思い浮かべ、後悔しないよう、やるべきことを精一杯しぶとく頑張ってください。

 2年生、学校生活、部活の中心として迎える夏休みですが、部活や趣味だけでなく勉強との両立、どちらもしぶとく頑張り、文武両道を目指してください。

 1年生、高校生活初めての夏休みです。まとまった時間がたっぷりあります。せっかくですので、何でも構いません、何かやりたいこと新しいことにしぶとくチャレンジしてください。きっと自分を成長させてくれます。

とにかく夏休み中、皆さんが事故や怪我なく過ごし、9月2日、元気に登校してくれることが一番の願いです。

全校生の皆さんが充実した夏休みになることを願っています。

 

校長 塙 守久