校長室より

2024年9月の記事一覧

平和の有難さ ~2学期始業式にて~

 皆さん、おはようございます。7月下旬からの長い夏季休業期間が終わりました。正規の授業がないというだけであって、補習、部活、模擬試験などで、普段と変わらないような生活をした人も多かったことと思います。事故や怪我なく無事に過ごせたでしょうか。

 1学期の終業式では、パリオリンピック閉会式で飛び降りてきたトム・クルーズの話で「しぶとく夢を追いかけること。」についてお話しました。3年生はしぶとく頑張り抜きましたか?2年生はしぶとく文武両道に徹することができましたか?1年生は何かしぶとくチャレンジできましたか?できた人は、必ず2学期にグングンと成長します。楽しみにしておきましょう。

 さて、毎年のことですが、8月は、戦争と平和や、人の命のことを考える機会が多くありました。8月6日は広島に原子爆弾が投下された日、9日は長崎の日、そして15日は終戦の日と、連日、新聞やテレビで関連のニュースや番組が多く取り上げられました。

2・3年生には昨年話しましたが、私は、この時期に必ず「火垂るの墓」という映画を観ることにしています。野坂昭如の原作で、戦時中、神戸を舞台に子供の兄と妹だけで生き抜こうと、必死で生きたが、はかなく二人とも亡くなってしまう物語です。この映画を観る度、涙が流れます。涙する度、生きていることを実感します。生きていることを実感する度、平和の有難さを感じます。今年は「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」という現代の女子高生と特攻兵の作品も観ました。

 79年前、第2次世界大戦によって、心ならずも犠牲になった方々が大勢おられました。日本では300万人以上の方が亡くなられたと言われています。神戸市人口の倍以上です。その中には君たちと同世代の若い人たちも多数含まれていました。戦争末期、片道限りの特攻隊が組織され、出撃した特攻隊員の多くが20歳前後の若者でした。爆弾を搭載した航空機ごと搭乗員が敵艦などに体当たりする特別攻撃隊のことを特攻と言いました。航空機には片道の燃料しか積まれていません。1945年8月の敗戦までの10カ月間でおよそ4000人が命を落としたと言われます。陸軍少年飛行兵学校や予科練習生を経た少年、学徒出陣で動員された大学生もいました。戦争の時代と言える昭和初期に育ち、"お国のために"戦争におもむくのは当然、戦場で命を散らすのは名誉なことだという価値観、教育の中で生きていました。特攻隊員になることは志願制とされましたが、そこには命令や指名もあり、拒否することはできませんでした。そのなかで、万に一つも生き残る可能性のない特攻を前に、苦悩したり、疑問を感じたりした若者も少なくなかったことでしょう。痛ましいことです。

戦争は、まともな人間らしさを持つことが許されません。ですから、人間らしさを保てる平和な時代に生きている私たちは、次の世代に歴史を語り継ぎ、同じ過ちをせず、平和の大切さを伝えなければなりません。

 今、ウクライナでは、ロシアの侵攻による戦争が2年半も続いています。パレスチナ・ガザ地区でも多くの命が奪われています。ウクライナ国民、ガザ地区市民は、いつ平和が訪れるのか、いつ日常が戻ってくるのか、不安な日々を過ごしていることでしょう。同じ時代に生きている私たちは、しっかりと関心を持ち続け、彼らが平和へ近づくため、何らかの支援をすることが今後も大切です。

私たちひとり一人の命は、平和が繋いだ大切な命です。どんな時でも、人間らしさを忘れず、ひとり一人の命を守っていきましょう。この夏、南海トラフ地震臨時情報も発表されました。また、昨日は防災の日です。“よ・い・こ”は覚えていますか?災害伝言ダイヤル覚えていますか?

この2学期に君たちひとり一人の命が、より一層輝くことを願っています。

校長 塙 守久