塔陵健児のひとりごと

塔陵健児のひとりごと~佐用高校からのお知らせ~

三線

わたくし、生まれは南の島。
潮風育ち、名を三線(さんしん)と申します。
胴は蛇皮、糸は三本。
見た目は渋め、音色は人情派でございます。

もともとは琉球生まれ。
祝いも別れも、暮らしの真ん中で鳴らされてきた楽器です。
多くを語らず、でも胸にすっと染みる。
それが三線の持ち味。

さて今、わたくしは2年生の授業に出張中。
和楽器体験として、「海の声」を練習しております。
最初は指が届かないだの、音が出ないだの、
まあ賑やかなことこの上なし。
それでも少しずつ、音がつながってきました。

上手じゃなくていい。
揃わなくてもいい。
隣の音を聴いて、自分の音を出す。
それが三線流。

今日も教室の隅で、
そっと糸を鳴らすのを待っております。
さあ皆さん、
海の声、もう一曲いきましょうか。

そこには確かに

そこには確かに、声があった。

名前を呼ぶ声、
答えを間違えて笑う声、
眠気をごまかすための小さな咳払い。

今はもう、
床に光が落ちているだけだが、
その光の下に、
確かに時間が積もっていた。

机はない。
椅子もない。
だが、
ここで悩んだ背中があり、
ここで迷った視線があり、
ここで決心した沈黙があった。

がらんとした教室は、
空っぽではない。
思い出で満ちている。

別れは、まだ来ていない。
二十六日には、足音が戻り、
二十七日には、胸を張る姿が並ぶ。

それでもこの静けさは、
「もう同じ日は来ない」と
確かに知っている。

ここは通過点だった。
泣く場所でも、
留まる場所でもなく、
旅立つための、
ほんの一瞬の居場所だった。

それでも言おう。

そこには確かに、青春があった。
声があり、迷いがあり、
未完成のまま輝く時間があった。

そして今、
教室は何も語らず、
ただ静かに、
その証を抱いている。

 

マラソン大会

男子は8km。
女子は6km。
数字だけ見ると「まあまあじゃない?」と思うんですが、
これが走るとね、
8kmって永遠なんですよ。
6kmもね、だいたい途中で一回、人生を見つめ直します。

マラソンの起源は古代ギリシャ。
勝利を伝えるために走った兵士がいたそうですが、
今日の生徒たちも、
「なぜ走っているのか」を自分に問いかけながら進みます。

隊列を組んで走る姿は真剣そのもの。
最初は笑顔、途中から無言。
会話が消えるあたりから、本番です。

でも不思議なもので、
順位よりもタイムよりも、
最後に残るのは
「止まらずに走り切った」という事実。

ゴールした瞬間の顔が、何よりの証明です。
苦しかったはずなのに、
どこか誇らしい。

冬の寒さの中で走り抜けた8kmと6km。
これはもう、立派な物語です。

……ちなみに私は走っていません。
応援で声を出しすぎて、
一番息が上がりました。

 

地方国公立大学の魅力

 

1月30日(金)、2年生普通科文理類型を対象に講演会を実施しました。
テーマは「地方国公立大学の魅力について」
講師は、鳥取大学 教授の森川 修 先生です。

進路について考え始めたばかりの生徒から、すでに方向性を描きつつある生徒まで、2年生の今だからこそ響く内容を、分かりやすくお話しいただきました。

講義では、
・なぜ大学を目指すのか
・大学と専門学校の違い
・学費や生活費、奨学金などの現実的な話
・入試制度、面接、小論文のポイント
など、進路選択に欠かせないテーマを幅広く扱われました。

森川先生が繰り返し強調されていたのは、
**「知らないまま選ぶことが一番もったいない」**という言葉です。

地方国公立大学の強みとして、学生と教員の距離が近く、手厚い指導が受けられること、地域と結びついた学びができることなどが紹介されました。

生徒たちは資料にメモを取りながら、真剣な表情で話を聞いていました。

2年生の今は、まだ答えを出す時期ではありません。
しかし、考え始めること、知ろうとすることが、確実に次の一歩につながります。

今日の講演が、自分の将来を自分の言葉で考えるきっかけとなることを願っています。

 

正解

体育館に、歌声が流れ始めた瞬間、
「ああ、いよいよなんだな」と、誰もが感じたのではないでしょうか。

今年の卒業式で、3年生が歌う曲。
野田洋次郎さん作詞・作曲の「正解」。
本校にとっても、今年が初めての取り組みです。

この曲は、NHK「18祭」のために書き下ろされました。
テーマは、
「誰かの答えではなく、自分だけの正解を探しにいくこと」

正解は一つじゃない。
遠回りでも、迷っても、立ち止まってもいい。
それでも自分の足で選んだ道なら、それが正解になる――
そんなメッセージが、歌の一つ一つの言葉に込められています。

今日は、3年生にとって1月最後の登校日
学年全体で、この「正解」を歌いました。

歌いながら、
入学した日のこと、
思うようにいかなかった日々、
友だちと笑った時間、悔しくて泣いた夜、
それぞれの3年間が、胸の奥から静かに立ち上がってきたのではないでしょうか。

今日が終わると、3年生は月曜日から自由登校。
もう「いつもの教室」に集まる日はありません。

あと学校に来るのは、
26日(木)の予行、
27日(金)の卒業式本番。
たった二日です。

その事実が、歌声を、より深く、より切なく響かせました。

誰かと比べなくていい。
誰かの地図をなぞらなくていい。
ここまで歩いてきた道も、
これから踏み出す一歩も、
すべてが「自分だけの正解」。

卒業式当日、
この歌を歌う3年生の背中は、
きっともう、在校生の知っている「生徒」ではなく、
それぞれの未来へ向かう旅立ちの姿になっているはずです。

どうか胸を張って、歌ってください。
あなたが選んだ道が、
あなたの「正解」なのですから。

――体育館に残った余韻が、
なかなか消えませんでした。