兵庫県立 有馬高等学校
Hyogo Prefectural Arima Senior High School, Since 1896
カテゴリ:農業部
人と自然科 ひとはく連携セミナー3回目 アフリカの古代湖の魚から進化について学ぶ
6月21日(金)人と自然科1年生学校設定科目「人と自然」の授業で、今年度第3回目となる「ひとはく連携セミナー」を行いました。
有馬高校人と自然科と県立人と自然の博物館の間では生徒のセミナー受講について協定を結んでおり、年間8回、県立人と自然の博物館を訪れ、博物館の専門員から、各分野のユニークかつ専門的な講義を直接受講することができます。前回第2回目も太田 英利研究員から「生物の「種」について」をテーマに講義をいただきました。
前回のひとはく連携セミナー2回目 生物の「種」について学ぶ に関する記事はこちら
そして第3回目となるこの日は人と自然の博物館内にあるホロンピアホールにて、高橋 鉄美研究員より、『タンガニイカ湖での調査』をテーマに古代湖に住む魚の生態やそれを通した進化について講義を頂きました。
まずはタンガニイカ湖について・・・世界には約20ほどの古代湖が存在していますが、タンガニイカ湖は1000万年前にできた湖だといわれています。アフリカのザンビアにある大きな湖で、全長650km。その距離は三田市から仙台市と同じ距離になり、地球上の18%の水を占めるといわれている巨大な湖です。
そんなタンガニイカ湖は水深も約1400mあり、この湖には多くの魚が生息しているそうで、そのほとんどが固有種なのだそうです。その中でも特にシクリッド科(カワスズメ科)と呼ばれる魚が特徴的で、例えば歯に注目したらコケを食べる種が歯がブラシのように進化したり、うろこを食べる種は毛抜きのように進化したり・・・など多様な進化を遂げている個体が多く存在しているとのことでした。
講義中盤では、実際に高橋先生が現地調査した現地の生活や動物の生態についても教えていただきました。アフリカでよく食されているホロホロチョウやチニョンゲ、チャンゴンゴなどの熱帯魚の食べ方、ウルウルと呼ばれる小さなハチやサバンナモンキー、カメレオンなどの現地では身近な動物についても、特性や危険性などについて紹介していただきました。
そして最後に調査から見えた生物の進化について説明いただきました。一つの祖種から多くの種に急速に分化し、分化した種が異なる環境に適応する力を持つことを適応放散といいます。そしてタンガニイカ湖のシグリット科の魚においては、口内保育という独特の育児方法と岩住みという特徴から異所的種分化を行いやすいということが分かってきたとのことでした。さらに性選択と自然選択との連動をもたらす形質「マジックトレイト」の一例として、オスとメスでサイズが異なる例やpHの耐性などについての影響も教えていただきました。
専門的な内容はまるで大学の講義のようで難しい部分もあったようですが、振り返りのレポートを見ると「興味深い内容で面白かった」「生物の進化について理解できた」など前向きな感想も多く充実した時間となったようです。
さて、次回の人博連携セミナーは、夏休みを挟んだ9月20日(金)『鳥たちの多彩なコミュニケーション』と題して太田菜央研究員より、鳥たちの鳴き声や行動の意味について学ぶ予定です。楽しみですね。
人と自然科 スマート&大型農業機械ふれあい体験会にお邪魔させていただきました
人と自然科の生徒が学ぶ『農業』において、生産性を高めるために活躍してきたのが農業機械です。2年生の選択科目にも『農業機械』の授業があり、エンジンの仕組みや燃料の種類、性質を学ぶだけでなく、実際に刈払機やトラクタなどの操作方法も、座学と実習をとおして学んでいます。
しかし有馬高校の農場は、大規模な農家さんに比べると小さく、農業機械も小型のものを使用しています。さらに近年、農業者の⾼齢化や労働⼒不⾜を補うために、デジタル技術を活⽤し農業の⽣産性向上を図る技術が搭載されたスマート農業機械が開発され、活躍していますが、残念ながら有馬高校にはまだ導入されていません。
田植えに向けトラクタ耕うん実習を行いました・・に関する記事はこちら
そのような状況の中、6月21日(金)有馬高校のすぐ目の前にある三田小学校で、5年生を対象とした『農業機械に触れる体験学習会』が企画され、最新のロボットトラクタや、日本最大級の耕うん用トラクタが間近に見ることができるとのこと。そこで農業を学んでいる人と自然科の生徒もぜひご参加どうですか?とお誘いいただき、3年生の生徒が喜んで参加させていただきました。
小学校到着後、まず目の前に現れたのが、横幅5.5mのロータリ&ハロー(畑を耕し、土を砕く作業機)を装着した巨大なトラクタです。
実際に三田市内の大規模農家さんで活躍しているとのことです。農機具メーカーの方によると日本最大級の大きさなのだそうです。後ろの作業機が折りたたむ姿はまるで巨大ロボットのようでしたね。
次はラジコン草刈り機です。
1台は斜面の草を刈るのに適した草刈り機で、エンジンオイルが偏らないように、斜面の角度に応じてエンジンも傾く構造をしていましたね。そしてもう一台はまるでクモのような姿をしており、前後左右縦横無尽に移動する姿に魅了されましたね。
次は田植機とコンバインです。
田植機は6条植え(一度に6列イネの苗を植えることができる)で、GPSがついており直行アシスト機能がついています。そしてコンバインは4条刈(一度に4列のイネを刈ることができる)で、機体についているセンサが作業情報をタブレット端末に伝え、日々の作業情報を蓄積し、作業管理・機械情報管理を分析することができるとのことです。(ちなみにこのコンバインが今回登場した農業機械の中で一番高額とのことでした。)
そして最後はロボットトラクタです。
事前にタブレットPCで耕うんなどを行うコースを設定しておくと、運転席に誰もいない状態で、リモコン操作でトラクタが作業を行います。今回は実際に30m×30mの枠を水田に見立て、無人運転を見せていただきました。
畑の端に近づくとスピードを落とし旋回。そして直進に入るとスピードを上げる姿は感動でしたね。そしてタブレットにはトラクタの前方に付けられたカメラから送られていた映像も観ることができましたね。
約1時間、農機具メーカーの方に丁寧に説明していただきました。今回の体験会は小学5年生の子供たちに、最新&大型の農業機械の姿を見せてときめきを与え、農業への興味、関心を高めることが目的と伺っていましたが、私たち農業を学ぶ高校生も十分ときめきましたね。
今回お誘いいただいた三田小学校の先生方、そして農機具メーカー『株式会社ヰセキ』の皆様、このような貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
人と自然科 ブドウの栽培 現在摘粒作業中です
6月も後半となり、近畿地方もいよいよ梅雨に突入しました。そんな中でも人と自然科の生徒は『総合実習』の授業を中心に実習を頑張っており、例えば野菜苗の土づくりや・・・
学校樹を使った樹木の剪定・・・
大温室の熱帯果樹の管理(今年もバナナに花が咲き、たわわに実がついています。)など、楽しく技術を身に付けています。
そして人と自然科の人気の一品、ブドウ栽培も順調に進んでいます。ちなみに有馬高校ではベリーA、ピオーネ、マスカット3種類のブドウを栽培しており、ベリーAは2年生の生徒が必修(全員)で『果樹と緑』の授業で、ピオーネとマスカットは3年生の『果樹と緑』の授業で選択した技術を学んでいます。
4月から栽培をスタートさせ、栽培は順調に進んでおり、5月下旬~6月上旬にかけて種なしや果実の肥大を目的としたジベレリン処理も実施しました。
その後も生徒はブドウの栽培技術を毎週のように学んでおり、茎と葉の間からでた「副梢」を摘んだり、まきひげを除去したり、伸ばしたつるが地面に付かないように、そして果実に栄養が行きわたるように先端を止める「摘芯」という技術を学びました。
そして6月下旬に入り生徒が頑張っているのが、「摘粒」という技術です。ベリーAの場合は1房75粒。ピオーネの場合は45粒を目標に一粒一粒抜いていきます。まずはピオーネ栽培中の3年生の様子です。
梅雨に入ったということでこれから雨の日が増えてきます。今はまだ小粒ですが、ブドウの粒は雨が降るたびに肥大するので、ブドウ畑に行くたびに房が詰まっています。そこで房の内側にある上向き、下向きの粒や変形の粒、割れた粒を抜いていきます。ピオーネは房をゆすってみて、支梗(粒の塊)が独立して動いたら完成です。
続いてベリーA栽培中の2年生の様子です。抜きすぎると房がすかすかになり、残しすぎたら粒が割れてしまいます。完成形を予想しながら行うので、もっとも技術と経験が必要な作業といえます。時には玉直しといい、粒の位置を変えながら円筒型に整えていきます。
ベリーAは最終的に房を釣り針上に曲げられるようになったらOKです。この作業が7月上旬まで続き、いよいよ袋がけに入っていきます。9月の収穫に向けあと一踏ん張りです。
みんな真剣な表情ですね。
さて、収穫したブドウは有馬高校の生徒、保護者限定に販売します。現時点では9月第2週を予定していますが、今後の天候によって変わってくるので2学期に始業式に配布予定の『ブドウ販売について』のお知らせを楽しみに待っていてください。
美味しいブドウを皆さんに購入していただけるように頑張りましょう。(もちろん一週間を切った1学期期末考査も全力で頑張りましょう。)
人と自然科 農業機械の授業で刈払機の操作方法について学びました
6月も中旬を過ぎ、いよいよ梅雨が近づいてきました。人と自然科の農場でこの時期に大変なことは、もち米を栽培している水田のあぜやブドウを栽培している果樹園のに繁茂する雑草です。雨上がりに一気に成長してしまい、病気の原因や害虫のすみかになってしまいます。
1年生「農業と環境」の授業で田植え実習を行いました・・・に関する記事はこちら
ブドウ栽培 ジベレリン処理を行いました・・に関する記事はこちら
梅雨を前に、実習でいつでも草刈りができる技術を習得するため、2年生農業機械の授業で、刈払機の操作について学びました。
運転実習の前に、まずはエンジンの仕組みや安全に実習を行うための知識を習得しました。ちなみに刈払機に搭載されているエンジンは2サイクルエンジンです。点火プラグやキャブレターなどガソリンエンジン特有の部品の役割や仕組み、エアークリーナーやマフラーの役割、燃料となる混合油の作り方などについて実物を交えながら学びました。
さらに刈払機を使用する際に最も重要な安全について。保護エプロンや保護面の装着やベルトの調整など実演を交えて学びまた。そして刃に当たった石が飛ばないための刃の動かし方、刃の交換方法、エンジンのかけ方などについてしっかり学びました。
しっかり知識を身につけ、翌週は早速果樹園に向かい、実習を通して技術を習得します。今回は安全に配慮しながら同時に10台の機械を動かし、草刈りを行いました。
保護面や保護エプロンを着用、ベルトの長さを調節し、エンジンをかけまます。刃の周囲に人や物がないかしっかり確認しましょう。
エンジンが始動したところで、草刈りの開始です。ポイントは・・・刃を水平にし、地面に近い位置で、右から左に動かし、一歩前に出て再び右から左に刃を動かします。
刃の角度が上向きになってしまうと、刃に当たった石が顔の付近に飛んできてしまうので危険です。また、刃を反対の左から右に動かすと、刈った草が前に飛んでしまい、刈りにくくなります。
合計2時間の実習を行いましたが、きれいになりましたか?初めて機械を使用するということで、少し刈った草丈が長めに残っている部分も見られましたね。農業機械はとにかく使い続けることで上達します。これから何度も実習で操作し、技術を習得しましょう。
人と自然科では夏季休業中、農業や造園業、建設業などに就業した際、刈払機を運転するときに必要な「刈払機取扱作業者」の資格を取得することができます。
昨年夏季休業中に実施した「刈払機取扱作業者」資格取得講習の様子はこちら
ちなみに今年はフォークリフト、チェンソー、ガス溶接の資格取得講習を予定しており、延べ60名以上の生徒が申し込みを終えています。卒業後の進路実現に向け、様々な機会を生かし、スキルアップしていきましょう。
人と自然科 地域自然保護 現地フィールドワークその3 有馬富士公園の昆虫を調査する
人と自然科3年生の学校設定科目「地域自然保護」の授業では、今年も県立有馬富士公園をフィールドとし、1年かけて有馬富士公園を訪れるゲストに公園の自然を感じてもらうための体験プログラムを生徒自身が企画し、実践する授業を行っています。
前回は「緑の環境クラブ」の皆様に、里山管理に関する夢プログラムを体験させていただきました。(5月28日に予定されていた、元キッピーフレンズ、公園の植物を活用した夢プログラムは警報による休校のため、10月に延期となりました)
前回のフィールドワーク 里山管理を体験する に関する記事はこちら
現地フィールドワーク3回目となる6月11日(火)は、三田市自然学習センターの吉田コミュニケーターにお世話になり、公園内の昆虫を捕獲・調査するプログラムを体験しました。
緑豊かな有馬富士公園には多様な種類の昆虫が生息しており、とにかく捕まえまくる(危険な蜂やヘビはNG)という、楽しそうなプログラムです。世界には約100万種、日本には約3万種の昆虫が確認されていますが、そのうち1000種類を越える昆虫が公園に生息しているとのこと。今日の目標はみんなで力を合わせて50種類以上の昆虫を捕獲することです。(特別な許可を得て捕獲しております。)
捕獲するコツを教えていただいた後、早速網と虫かごを持って出発です。公園に出た瞬間全員スイッチが入りましたね。里山の中にも入り、全力で追いかけます。
早速チョウを捕獲したようですね。捕獲した昆虫は虫かご、もしくはジップロックに入れます。一見かわいそうに見えるかもしれませんが、トンボや蝶などは羽を傷めない優しい方法なのだそうです。
公園内にある、狐の巣穴を再現した洞窟内も捜索。洞窟内に生息するカマドウマが発見されました。そして葉の上にケムシ発見。タケカレハの幼虫です。どうやら毒を持っているようで慎重にジップロックにいれます。
地面や樹木もじっくり観察します。いつもは気になりませんが、アリがあちらこちらに歩きまわっていました。よくよく見てみると、種類の異なるアリが。最終的には3種類確認できました。
そして木の幹には擬態している昆虫が結構いました。どこに隠れているのか分かりますか?(2種類います)
さらに樹液が出ている樹木も観察。甲虫が集まっており、枝などでほじくってみるとクワガタムシが出てきました。(これまでの地域自然保護の活動でクワガタムシが捕獲できたのは初めてですね)
こんな感じであっというまに約1時間、みんな小学生に戻ったかのように全力で公園内を走り回り、様々な昆虫を捕獲・観察することができました。
学習センターに戻り、捕獲した昆虫の名前を図鑑で調べ、仲間分けをしていきます。
名前がわかったら付箋を貼って、「チョウの仲間」「カメムシの仲間」「コウチュウの仲間」「トンボの仲間」・・・など仲間分けします。分からない名前は吉田さんに同定してもらいました。
調査の結果、「チョウの仲間」は、ベニシジミやヒョウモンエダシャク、テングアツバなど8種類、「コウチュウの仲間」は、ノコギリクワガタやスジクワガタ、シロテンハナムグリなど15種類、その他二ホンミツバチやハナアブ、マダニなどなど・・・全部で56種類の昆虫を捕獲することができました。目標達成ですね。
プログラムを通して、楽しみながら有馬富士公園の生物多様性が感じることができました。コミュニケーターの吉田さん楽しいプログラムをありがとうございました。
今回の夢プロ体験で前半の公園でのフィールドワークは終了です。ここからは、これまでの活動を通して取材した、あ有馬富士公園の魅力と改善点を有馬富士公園の巨大な白地図にまとめていきます。そして9月には人と自然の博物館の研究員や公園関係者、県職員の皆様の前で発表し、自分たちが実際に企画、実施する夢プログラムへとつなげていきます。頑張りましょう。
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