校長室

1学期始業式式辞

皆さんおはようございます。令和4年度が始まりました。ここにいる一人ひとりが、気持ちも新たに今日を迎えていることと思います。大切なことは、その気持ちを行動に移すこと、そしてそれを持続させることです。今年度こそ、そんな1年にしてください。

ところで、皆さんは「成功哲学」という言葉があるのを知っていますか。その提唱者がナポレオン・ヒルという人物です。彼は、20年間で約500人もの世界的な成功者を分析して「成功の法則」を見出しました。それは15の法則からなりますが、そのうち皆さんに伝えたい8つを紹介します。

1 目標を明確に自覚すること

なりたい自分を明確化することで今すべきことが見えてきます。

2 不屈の精神力

逆境の中でも決して諦めず、常に目標に向かって努力し続けることです。

3 生涯学習

世の中は変化します。絶えずインプットを行い、常に新しい目線を手に入れることです。

4 時間を有効に使うこと

優先順位を考えて一番大事なことから時間を使います。

5 創造力を駆使すること

どうすれば目標に効率よくたどりつけるかを常に創造的に考え続けることです。

6 自分がしてほしいことを相手にすること

キリスト、ブッダ、ムハンマド、孔子など多くの人に共通しています。

7 プラスアルファの思考

求められたこと、しなければならないこと以上の仕事をすることです。

8 感謝すること

逆境を成長できるチャンスだと考え感謝することでプラスに転化できます。

これらからも分かるように、ナポレオン・ヒルは「人生を決定するものは才能ではない。また、環境や条件でもない。その人の情熱と信念だ」と結論づけています。

皆さんは、日頃、学習や部活動に一生懸命取り組んでいますが、その原動力は何でしょうか。目標に向かって突き進んでいくには、自分の強い気持ちと、それを下支えしてくれるものが必要です。それがナポレオン・ヒルの言う情熱や信念に他なりません。

「やってやるぞ」「志望校に合格してやるぞ」「優勝してやるぞ」、こうした思いが強ければ強いほど精神的な土台は確固たるものになり、信念にブレは無くなります。「何のための行動か」を自覚し、「自分は必ずそれをやり通す」という強固な意思を常に持って行動に移し、それを持続させることが、これまでとは違う展開を生み出し、成功へと近づいていくのだと思います。

新年度を迎えるに当たり、皆さん一人ひとりが情熱と信念を持って先の8つのことを実践し、成功への基盤を作る、そんな実りある1年にしてくれることを期待しています。

最後に、新型コロナウイルス感染が依然として終息せず、第7波さえ危惧されています。不要不急の外出、3密の場所への出入りは避け、やむなく外出した場合も、手洗い・消毒とマスクの着用を徹底してください。また、校内でのマスク無しの会話はしないよう、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてください。

第77回 入学式式辞

 いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな

 時間と空間を超えて美しく芳しい香りを漂わせ続ける桜。ここ自彊が丘の八重桜も、九十九年前の「いにしへ」の創立期と変わらぬ美しさとその香りで、今日の皆さんの入学を祝福しているように感じます。

  ただいま入学を許可いたしました三二一名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同心からお祝い申し上げます。今日のその晴れやかな姿、緊張した表情にも喜びが満ちあふれているようです。

皆さんは、コロナ禍という多くの不安と制約を余儀なくされる中にあって、それらを乗り越えて、見事合格の栄冠を勝ち取りました。

本校では「文武両道」を校是とし、「社会的で創造力豊かな自主的個人」を育成するため、グローバル化時代に求められる思考力や判断力の伸長、主体性や協働性の向上を図る一方で、「ひょうごスーパーハイスクール」の研究指定を受け、地域はもとより、大学や企業等との連携を密にし、探究活動等の教育活動の充実に努めております。このすばらしい環境下で、若者らしく、何事にも果敢に挑戦し、将来の夢や進路希望を実現するべく、高校生活の第一歩を踏み出してください。

さて、本校は、大正十二年に明石市立明石中学校として開校し、昭和三年に兵庫県立明石中学校、昭和二十三年の学制改革により兵庫県立明石高等学校となり、来年度創立百周を迎える県内有数の伝統校であります。その間、県下唯一の美術科の設置、西オーストラリア州モーリー高校との国際交流、理数探究類型の設置等、学校改革を進めながら、地域社会や国際社会で活躍する有為な人材を多数輩出してきました。

 校庭に凜として伸びるクスノキに見守られ、閑静な荷山に位置する本校からは瀬戸内の海と淡路島、そしてそこに架かる雄大な世界二位の長さを誇る吊り橋、明石海峡大橋を臨むことができます。皆さんはこの恵まれた教育環境のもとで、建学の精神である「自彊不息」を基軸にして人生でも最も意義深い、青春の三カ年を送ることになります。この大切で貴重な時期を本校で学ぶ皆さんに、三つのことを希望します。

一つ目は「高い志を持ち続けてほしい」ということです。自分の志を立て、それに向けて具体的な目標を持つことは、自己を律し、生活を充実させる基盤となります。皆さんは高校生活三カ年の延長線上に、将来どのような人生を生きるかということを具体的に考えているでしょうか。どのような職業に就き、社会にいかに貢献していくかを考えておくことによって進路も明確なものが見えてきます。本校での充実した学びを通して自己認識を深め、自己実現をめざして、高い志を持ち続けながら努力を重ねてください。

 二つ目は「確かな自分を作り上げてほしい」ということです。世界はグローバル化時代にあります。あらゆる知識や技術は日進月歩以上であり、おびただしい情報が世界中に氾濫しています。皆さんが心豊かに生活するためには情報に流されたり惑わされたりせず、主体的に判断し行動することが大切です。国際的な広い視野に立って、弾力的で柔軟なものの見方、考え方を持つ、そして善悪・真偽を正しく判断できる確かな自分を作り上げ、磨き上げてください。

 三つ目は「良き友を持ってほしい」ということです。良き友とは、ともに喜び、ともに悲しみ、ともに高め合うことのできる真の友人です。この良き友は、安易に調子を合わせたり、誘われるままに行動したりするような関係の中には育ちません。時には「ノー」と言う友こそ心から信頼できるのです。他を尊重し合い、素直な気持ちをぶつけ合い、目標に向かって切磋琢磨し合う中に友情は育ち、本校校訓の一つ「協同」が生まれます。他を思いやる心を忘れず、自分にないものを学び、お互いを向上させ、信頼関係を深めながら、生涯にわたって心の支えとなる友を得てください。

  最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。私達教職員は、ご子様が、自らの生きる道を、自らの力で切り拓いていけるよう、全力で指導に当たって参りますが、お子様の健全な成長を願い、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要であると存じます。どうか、本校に対するご理解ご協力、そしてご信頼をよろしくお願い申し上げます。

 新入生の皆さん、本校の校訓「自治」「協同」「創造」のもと、知・徳・体の調和のとれた人格の陶冶を図り、心豊かに、高い志を抱き、未来を主体的に切り拓いて行く人間として成長していくことを心から期待し、式辞とします。

3学期終業式 式辞

 

 令和3年度が終わります。この1年を振り返ってどうでしたか。納得のいく1年だったでしょうか。

 今年度もコロナ禍に見舞われ、特に学校行事や部活動において多くの制約を強いられ、十分な活動ができなかったことは非常に残念で申し訳なく思いますが、本校に関しては何とか今日こうして3学期の終業式を無事に迎えることができました。それというのも、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてくれたお陰だと思っています。ありがとうございました。

 さて、誰もが知る徳川家康は、「不自由を常と思えば不足なし。堪忍(かんにん)は無事長久の基、怒りは敵と思え」という言葉を人生訓としていました。これは、不自由なことがあっても、実はそれが当たり前のことだと考えれば不満を感じることはない、様々な出来事に我慢できなくなったり、我がままになったり、苛立って怒ってしまったりするのは、正しい心の持ち方ではない、自分をコントロールできなくなるのは「心の敵」だと思え、という意味です。このことは、私達が日頃生活を送る中で心掛けたいこと、コロナ禍を生きる上で認識を新たにしなければならないことのように思います。

 現代は科学技術の発展もあり、私達の生活の質は大きく向上し、自由で便利で豊かなものになっています。この状態がノーマルとなって、それに慣れすぎてしまったり、合理的なことばかりを追求しすぎてしまったりした結果、イレギュラーな状態を不自由で窮屈に感じたり、本来そこにある大切なプロセスを踏まえることに対して「面倒だ」「無駄だ」などと考えてしまいがちになっていないでしょうか。それは、短絡的な、打算的な思考に堕してしまうことにも繋がっているように感じます。

 学習について言えば、「苦手だから」「興味がないから」「時間がないから」「受験に関係がないから」などと自分を納得させる理由をいくつも考えて楽な方に逃げていませんか。自分に問いかけてみてください。

 話は変わりますが、2022年度入試において出題された英語長文のテーマを調べました。国公立大学進学のために必須の大学入学共通テストでは、デザートの作り方、テレビ発明の特許権争い、プラスチックのリサイクルなどが出題されました。

 皆さんが目標とする

 神戸大学は、光害が夜行性生物に与える影響・樹木の成長など

 岡山大学は、遺棄された漁網が環境に及ぼす影響・読書の効果

 兵庫県立大学は、デジタル技術が生活に与える影響・自動翻訳機能の開発と将来の展望

 同志社大学は、食料の廃棄・DNAの解読・南極グリーランドの氷の溶解など

 立命館大学は、ルネサンス期の女性画家・人の心理など

 関西学院大学は、科学観察・コーヒーの普及など

 関西大学は、奴隷の歴史・創造力を生み出す条件など

 こうして見ると、理科、地歴・公民、保健、家庭、情報など幅広く出題されていることがわかります。国語の評論のテーマも同様です。基礎知識、予備知識がないと、英単語、英文法、英語構文がわかっても、内容を理解することはできません。英単語、英文法、英語構文が「わかる」ということと、内容が「わかる」ということは別の次元の話です。

 このことからも、学習に楽はない、学習に無駄はないということを強く認識してほしいと思います。「面倒だ」「無駄だ」と思われることの方がはるかに重要であることの方が多いのです。

 今日で令和3年度が終わりますが、この1年間の自分の姿勢を顧みてください。1年前、2年前の合格者発表のあの瞬間を思い起こし、楽な方に逃げず、「面倒だ」「無駄だ」と思わず、初心に返って学び続けてください。

 令和4年度の皆さんの飛躍と成長を期待しています。

 最後に、明日から春休みです。不要不急の外出、3密の場所への出入りは避け、やむなく外出した場合も、手洗い・消毒とマスクの着用を徹底し、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてください。

卒業式 式辞

 「石ばしる 垂水の上の さわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも」

 これは万葉の歌人である志貴皇子が、岩の上を流れ落ちる滝のほとりで、芽を出したばかりの蕨を見つけて春の訪れを感じたその喜びと感動を詠んだものです。自然の営みは実に確かで、ここ自彊が丘においても桜のつぼみが日増しに膨らみを見せ、窓から差し込む日差しも力強さを次第に増して、春がすぐそこまで来ていることを感じさせます。

 本日は、PTA会長様、保護者の皆様のご臨席を賜り、このように厳粛に本校第七十四回卒業証書授与式を挙行できますことに心から感謝いたしますとともに厚くお礼申し上げます。

 七十四回生の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ただ今卒業証書を授与いたしました三0九名の皆さんに、本校教職員を代表して、心からお祝いを申し上げます。

  「明けゆく空」、この言葉は校歌の一節でもあり、七十四回生の学年通信のタイトルでもあります。そこには、本校での三年間の学びを通じて、皆さん一人一人が自立して生きるための確たる基盤を築き上げてほしい、文武にわたり相互に刺激し合い高め合いながら確かな成長の歩みを進めてほしい、そしてそれぞれに志望する進路実現を果たし自らの力で未来を切り拓いてほしいという、米田学年主任、久保田学年副主任はじめ、学年団の先生方の強く熱い思いが込められています。この三年間、皆さんは濃密で充実した時間を過ごし、その期待に見事応えてくれました。その妥協を許さず粘り強く取り組む姿、その溌剌として全力で躍動する姿は、今も私の目から離れません。

  さて、コロナ禍に見舞われたこの二年間でしたが、新たな価値観や生活様式が生まれ、それが潮流となって社会も大きな転換期を迎えています。人々を時間や空間、身体的制約から解放するデジタル化の加速、サプライチェーンの国内回帰と分散化、密から疎への地殻変動と地方回帰など、枚挙に暇がありません。

 こうしたニューノーマルなポストコロナ社会を生きる皆さんには、自分の拠って立つ基軸を見失うことなく、地に足を据えて生き抜いてほしいと思います。その意味において、今後特に大切にしてほしい三つの基軸を皆さんに伝えて餞別にしたいと思います。

 一点目は、挑戦する勇気を持ち続けてほしいということです。

 「人間にとって成功とは何だろう。結局のところ、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑戦したかではないだろうか」と言ったのは、芸術家の岡本太郎氏です。人の一生は航海やマラソンに例えられるように決して平坦なものではありません。次々と苦悩に苛まれ、挫折や失敗が襲ってきます。限界は他人に突きつけられるものではなく、自分の心の中にあるものです。それらを乗り越えるには、挑戦し続けるしかありません。自分が諦めない限り限界はないのです。途中で諦めてしまうから、夢が潰えてしまうのです。いかなる状況に置かれようとも、挑戦する勇気を持ち続け、自らの道を自らの力で切り拓いていってください。

 二点目は、言語化力を高めてほしいということです。

 コロナ禍にあってデジタル革新と呼ばれる大変革が急進し、サイバー空間の急拡大は個人ばかりか国家や世界のあり方まで激変させています。イギリスの哲学者アンディ・クラークは「言語が登場して以来、我々はある意味サイボーグだった」、つまり身体と言語が複雑に融合したことにより文明や社会を生み出すことができたと言っていますが、身体と言語が乖離したコロナ禍でのリモートやオンラインによるコミュニケーションには限界があることが露呈しました。こうしたニューノーマルなコミュニケーション環境を生き抜くために、伝えるべきことを踏まえて論旨を構造的に整理し、文章に昇華する力、いわゆる言語化力の質と量を高めていってください。

 三点目は、感謝の気持ちを持ち続けてほしいということです。

  時に厳しく諭し、時に温かく見守ってくださった先生方、三年間ここ明高で同じ時空を共有し、悲しみは半分に、喜びは何倍にもしてくれたかけがえのない七十四回生の仲間、いつも大きな愛情で包み、陰から支え応援してくれた家族、PTA、同窓会、そして地域の方々。皆さんが今日、卒業の日を迎えることができたのは、もちろん、皆さんの弛まぬ努力によるのですが、その裏にはこうした多くの方々の励ましやご支援があったからこそです。「感謝は、過去を意味あるものとし、今日に平和をもたらし、明日のための展望を創る」、これはアメリカの作家、メロディ・ビーティの言葉ですが、感謝の気持ちを決して忘れることなく、心豊かに生きてください。

 保護者の皆様に、この場を借りまして一言申し上げます。この三年間、本校の教育方針や学校運営に、またコロナ禍にあっては感染防止対策にご理解とご協力を賜りましたことに、心より感謝とお礼を申し上げます。お子様は、大きく、立派に成長され、今日この学び舎から巣立っていかれます。この十八年間、言葉には尽くせぬほどのご苦労があったこと、また春から親元を離れていくことに一抹の不安と大きな寂しさを感じておられることと推察いたしますが、今日この日を迎えられ、心からお慶びとお祝いを申し上げます。今後とも引き続き、本校に対して変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 最後になりましたが、不思議な奇縁によってここ明高に集い、ともに育くんだ建学の精神「自彊不息」、校訓「自治・協同・創造」の気概、そして、校歌にある「集え・競え・誓え」の志気。これらを深く胸に刻んで、皆さん一人一人の活躍が母校の喜びや励みになることを、そして七十四回生全員の力になることを忘れず、命を大切に、自信と誇りをもって、悔いのないすばらしい人生を歩んでいかれることを祈念しています。

 「ほのぼのと あかしの浦の 朝霧に 島隠れゆく 舟をしぞ思ふ」

 卒業生の皆さんに限りない惜別の思いを残しつつ、その洋々たる前途を祝して、式辞といたします。

1月全校集会(放送で実施)講話

 

 3年生が自由登校となり、1・2年生だけの全校集会となりました。少し寂しい気持ちもしますが、2年生は最高学年になるという自覚、1年生は学校の中核になるという自覚を持ち、高校生として、また明高生として恥ずかしくない言動がとれているかどうか、今一度自己点検してほしいと思います。

 ところで、皆さんはこれまで、繰り返し「凡事徹底」という言葉を耳にしてきたことと思います。「凡事徹底」とは、字のごとく「平凡なことを徹底する」という意味です。成功する秘訣、それは奇をてらうことなく、当り前のことを当たり前に徹底してできるかどうかです。

 元プロ野球選手のイチロー氏は、毎日素振りを欠かさず積み重ね、日本を代表する大リーガーとして記録と記憶に名を残す名選手となりました。まさに「凡事徹底」の結果です。

 経営の神様と呼ばれた松下電器産業、現在のパナソニックの元社長・会長であった松下幸之助氏は、「店の経営がうまくいっているかどうか、三つのことを見れば分かる」と言ったそうです。その三つとは何だと思いますか。答えは、「挨拶」「整理整頓」「トイレ」です。会社経営の秘訣は、この3つの「凡事徹底」が大切だと言っています。

 イエローハット元社長の鍵山秀三郎氏は、「凡事徹底」を「平凡を非凡に努める」と言い換え、これを徹底できるかどうかが成功のカギになると語っています。売れない営業マンの共通点は、すべてが適当、すべてが中途半端、いつも言い訳や誤魔化しばかりなのだそうです。平凡なこと、簡単なことをとことん極める、その姿勢がすべてに繋がっていくと言いたいのだと思います。信頼できる人とはどんな人でしょうか。少なくとも、適当な人、中途半端な人、言い訳ばかりする人、誤魔化してばかりいる人を信頼することなどできないと思います。

 皆さんに聞きます。すべてが適当になっていませんか。すべてが中途半端になっていませんか。すぐに言い訳をしていませんか。いつも誤魔化したりしていませんか。ぜひ周囲から信頼される人であってほしいと願っています。

 ちなみに、イエローハットが「平凡を非凡に努める」こととして徹底しているのは、

 1 約束の時間より10分早く行動する

 2 大きな声で元気よく挨拶する

 3 率先して清掃する

 4 訪問先では相手が来るまで立って待つ

 5 相手に感謝を伝える

 6 話を聞くときはメモを取る 

 皆さんもぜひ今から実践してください。少なくとも社会人になったら、この6つは必須です。覚えておいてください。

 さて、皆さんは「凡事徹底」ができていますか。

 生活面では、挨拶、清掃。

 学習面では、予習・授業・復習という基本サイクル、基本事項の徹底理解、課題の提出。

 部活動では、基礎体力、基本の徹底。オフシーズンの今がチャンスです。

 この機会にぜひ一度、自己を省みてください。

 最後に、オミクロン株の感染拡大が続き、兵庫県でもまん延防止等重点措置が取られます。改めて感染防止の徹底をお願いします。オミクロン株の感染力が非常に強いため、保健所の判断が変わり、自分がマスクをしていても相手の感染者がマスクをしていなかったら濃厚接触者になってしまいます。マスク無しの会話は絶対にしないでください。また、一つの部で感染が広がるとすべての部の活動を一定期間休止しなければなりません。一人一人が自覚を持って行動してください。

3学期始業式式辞

皆さん、新年明けましておめでとうございます。2022年、寅年を迎えました。寅は、陽気を内に宿して草花が伸びようとする状態を表し、新型コロナウイルス感染症の問題など、様々な問題が大きな社会問題となっている中で、安定した繁栄・成長の礎を築く年になると言われています。ぜひ、そんな1年であってほしいと願っています。

ところで、新年を詠んだ夏目漱石の句に、「新しき 願もありて 今朝の春」という句があります。この「願をかける」という風習は古今東西、すべての人の営みであったようです。皆さんの中にも、この正月、願をかけた人が少なからずいるのではないでしょうか。少なくとも、ほぼ全員が新年を迎えて気持ちも新たに、「今年こそ」という決意、何らかの目標を持って今ここにいることと思います。

中国の道家の思想書である『列子』の中に、「呑舟(どんしゅう)の魚は枝流に游(およ)がず」という言葉があります。呑舟の魚とは、舟を一呑みしてしまうほどの大きな魚のことです。そんな大きな魚は支流では泳がない、つまり「大人物はつまらない者とは交わったりしない」「高遠な志を抱く者は小事には関わらない」という意味ですが、この言葉には「大きな目標を立てろ」という教えが込められています。「大成する人は初めから大きな目標を立て、大きな舞台で勝負する」というわけです。目標が大きければ大きいほど達成感も大きくなり、そのための努力によって自分が成長できる度合いも大きくなります。万が一失敗したとしても、得るものは異なるはずです。

この言葉を実践したような話があります。戦国武将の毛利元就が12歳の時、家来たちを引き連れて厳島神社に参拝した際、家来たちに何を祈願したか尋ねたところ、ある家来が「殿が中国地域の主になることを祈願しました」と答えると、元就は「中国地域の主とは愚かだ。日本を手に入れるように祈願すべきだ。日本を手に入れようと思ってはじめて、中国地域を手に入れることができるのだ」と語ったそうです。

私の教員としての経験から、このことは、受験や部活動にも当てはまります。目標とする大学のワンランク上の大学を目指して取り組むことが目標とする大学の合格に繋がり、目標とする結果のワンランク上の結果を目指して取り組むことが目標達成に繋がります。目標より一段高いレベルの取組によって目標とするレベルをクリアできるからです。

教員として、私が生徒たちに教えられたことは多々ありますが、そのうちの一つが、「絶対に目標を達成するぞ」という強い覚悟ができた時、目の色が変わり、生活が変わり、人が変わり、結果も変わるということです。明高生の中から、そんな人が一人でも多く出てくれることを期待しています。

ちなみに、エジソンがこんなことを言っています。「結局、日常をダラダラ過ごし、ズルズルと落ちていく人間の何と多いことか。直前になって準備不足に気づいて初めてそこで後悔する人間ばかり。残念ながら、それは負けたことにはならない。負けたという事実は勝負をした人間にのみ与えられるのだ。勝つための努力を放棄した者は勝負すらしていないのだから」

さて、3学期を迎えました。1・2年生は1年間の総仕上げとして3学期をしっかりと締めくくってくれること、3年生は全員が進路実現を果たし人生の新たな門出を晴れやかな気持ちで迎えてくれることを期待しています。

最後に、新型コロナウイルス感染の第6波が危惧されています。感染者が日増しに増加しています。今一度緊張感を持ち、3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。過去に本校で感染者が出たケースはそのほとんどが家庭内で感染したものです。家庭内でも感染防止に努めてください。マスクをしていない人との会話・食事は絶対に避けてください。お願いします。

2学期終業式式辞

コロナ禍に翻弄された令和3年、そして2学期が終わります。皆さんにとってどんな1年、どんな2学期でしたか。

ところで、幕末の志士の一人である吉田松陰の言葉の中に「ごくにありては、ごくでできることをする」というものがあります。「ごく」とは、獄中のことです。1853年、アメリカの黒船が下田に来航した時、松陰は、当時の鎖国の禁を破り、密航を図ろうとして失敗し、捕らえられて山口県の萩に投獄されました。その時の言葉であると言われています。

そもそも松陰が鎖国の禁を破った理由は、日本が世界の中で発展していくためには、外国の状況を知っておかなければならないという、将来に向けた野心から生まれた行動でした。松陰は、獄中であっても、限りある時間を一時も無為に過ごしてはならないと、自ら学ぶとともに他の囚人やまたその監視の役人にまで、中国の古典である『論語』や『孟子』を講義したと言われています。そして、その影響を受けた人たちが、後の日本を創り上げていくことになります。

松陰の発した言葉には、彼の思想的信条がよく表れており、時代を超えて人生を豊かにするための教訓が数多くありますが、先の言葉には、万人に等しく与えられている時間をもっと有効に使うべきだという教えが込められています。

時間は有効に活用すれば精神的にも、物質的にもその人の人生に大きくプラスになります。しかし、時間を自分のものとして活用するには、それなりの意思と努力が必要です。人はとかく困難を避け、安きに流れやすいものです。困難なことから何かしらの理由をつけて一時的に逃避したい、回避したいという心理が働きますが、それはいつか自分に返ってきます。その代償は必ず自分で払うことになります。

『日本書紀』に引用されていることで知られる中国の書物『淮南子』の中に「学ぶに暇あらずと謂う者は暇ありと雖も亦た学ぶ能はず」という言葉があります。勉強する時間がないという人は、時間があっても勉強しないという意味ですが、皆さんの実態はどうでしょうか。過去は過去として、大切なのは今後です。

さて、私たちは繰り返しの利かない一回性の人生を生きています。時間とは貴重な財産であり、それを持ち腐れにさせないためにも、また後悔しないためにも、やるべきことに順位をつけ、確実にやり切る、この冬休みから、ぜひこれを実践してほしいと願っています。

3年生は受験に向けた最後の追い込みです。現役生は今も、そして今からでも伸びます。模試でE判定でありながら合格した人を私は数え切れないほど見てきました。最後まで諦めず、やるべきことを確実にやり切ってください。

最後に、明日から冬休みに入りますが、オミクロン株が拡大を見せています。不要不急の外出、3密の場所への出入りは避け、やむなく外出した場合も、手洗い・消毒とマスクの着用を徹底し、皆さん一人一人が新型コロナウイルス感染予防に努めてください。

それでは、1月11日にこうして全員が元気に登校してくれること、令和4年が皆さんにとってすばらしい1年となることを祈念して、式辞とします。

11月全校集会講話

今年、米国プリンストン大学上級研究員の真鍋淑郎さんがノーベル物理学賞を受賞しました。真鍋さんは、地球の気候をコンピューターで再現する方法を開発し、気候変動や地球温暖化の予測に関する研究分野を世界に先駆けて切り拓きました。その研究の中で、大気中の二酸化炭素(CO2)が増えると地表の温度が上がることを数値で示した「気候モデル」は、人類の大きな課題である地球温暖化の予測に欠かせないものになっています。また、気象予測の世界に初めてコンピュータによるシュミレーションを持ち込み、飛躍的に高精度な予測を実現した功績は大きく、「温暖化研究の父」とも呼ばれています。


その真鍋さんですが、ノーベル物理学賞の受賞に際して、「研究を始めたころは、こんな大きな結果を生むとは想像すらしていなかった。後に大きな影響を与える大発見は、研究を始めたその時には、その重要さに誰も気付かないものだと思う」と語っています。皆さんは、日々学習に取り組んでいますが、それが将来、皆さん自身の未来を切り拓く基盤になるかもしれない、あるいは世界的な大発見の礎になるかもしれない。それは誰にも分かりません。しかし、誰にもその可能性があります。そう考えたら、日々の学習は無駄にはならない、無駄にはできないということを皆さんには強く認識してほしいと思います。


また、真鍋さんは、「気候変動の研究を楽しんでいる。全ての研究活動が好奇心によって突き動かされている。研究の醍醐味は好奇心だ」とも語っています。


そう言えば、平成30年に、体内の異物を攻撃する免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を突き止め、癌の免疫治療薬の開発に道を切り拓いたことでノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑教授は、非常に好奇心旺盛で、納得できるまで調べ尽くす頑なさを持っていたそうです。その本庶教授ですが、時代を変えるには6つの「C」が必要であると語っていました。英語表記で「C」で始まる6つの「C」とは何だと思いますか。答えは


①好奇心=Curiosity
②勇気=Courage
③挑戦=Challenge
④確信=Conviction
⑤集中=Concentration
⑥継続=Continuation です。


本庶教授は、「好奇心Curiosityを大切に、勇気Courageを持って困難な問題に挑戦Challengeし、必ずできるという確信Conviction をもち、全精力を集中Concentration させ、諦めず継続Continuationすることで、時代を変えられる」と言いたいのだと思います。


今の皆さんに欠けているのは、この6つの「C」のうち、どれでしょうか。この機会に、自分の取り組む姿勢を見つめ直してほしいと思います。そして、様々なことに好奇心を持てる明高生であってほしいと思います。皆さんの中から、世界に貢献する、世界を牽引する人材が育ち、活躍してくれることを強く願っています。


最後に、新型コロナウイルス感染拡大が収まっていますが、ワクチン接種が進んでいた海外でも再度感染拡大が続いており、日本でもやがて第6波がくると言われています。引き続き、感染防止の徹底をお願いします。

10月全校集会 校長講話

 早いもので、令和3年度も折り返し点を過ぎました。この半年を振り返り、どれだけの人が自分に納得できているでしょうか。納得できていないという人は、それぞれに事情や理由があるのでしょうが、大事なことはそれを踏まえて「これからどうするか、どう立て直していくか」だと思います。原因を考えて、それを改善するためにすぐに行動に移してください。

 さて、随分以前になりますが、NHKのEテレビで『テストの花道』という番組をしていました。実は私の教え子がこの番組のディレクターをしていたこともあり、私は毎回見ていました。ある回で、日本史の先生が授業をした後、抜き打ちのテストをしました。すると教室の1列目と2列目の生徒の平均点が20点台だったのに対して、3列目と4列目の生徒の平均点は60点でした。皆さんは、この差が生じたのはなぜだと思いますか。座席の位置が問題なのでしょうか。

 実は、この授業では、3列目と4列目の生徒に、事前にある指示が出されていました。その指示というのは、板書をノートに写す際に、①自分が疑問に思ったこと、②先生が大事だと言ったこと、③感想、この3つをノートの余白に必ず書き込むというものでした。それだけでこんなに大きな差が出るのかと思ってしまいますが、実際にノートをとる時の脳の働きを調べてみると、ただ板書を写すだけの生徒の脳はほとんど活動していないのに対して、考えながらノートをとっている生徒の脳は盛んに活動していることが分かりました。

 今、『テストの花道』という番組でのノートのとり方についての話をしましたが、このことから、学習に限らず何事も、単なる作業から思考へ、受動から能動へ、客体から主体へ、自ら考えながら行動に移すことが大変重要であることが分かります。

 部活動についてもそうです。何も考えずにプレーしていたのでは力はつかず、結果も伴いません。個人の課題、チームの課題を直視してそれを克服する練習に取り組むこと、つまり、考えること、考えて次の行動に移すことが皆さん一人ひとりの無限大の潜在能力を引き出し、チームとして勝利をつかむことにもつながるはずです。

 話は変わりますが、全県的に高校生のSNSを巡るトラブルが急増しています。本校も例外ではありません。後先のことを考えず、一時的な感情で、興味本位で、あるいは自分の正体がバレないだろうと錯覚して書き込んだことが、相手から誹謗中傷であるとして被害届が提出されると、必ず加害者が特定され、侮辱罪・名誉毀損等で処罰されて慰謝料まで請求されます。最近になって法律が改正され、非常に厳罰化されています。「自分がどういうつもりだったか」ではなく「相手がそれを読んでどう感じたか」が問題です。一歩立ち止まって「考える」ということをしてください。友達への発言もそうです。その善悪、是非をしっかり判断してください。人生が変わってしまうことのないようにしてください。

 今日は皆さんに、「考えること」「考えて行動に移すこと」をメッセージとして伝えます。

 最後になりますが、皆さんが新型コロナウイルス感染防止に努めてくれたお陰で、2学期以降、教育活動を支障なく進められています。本当にありがとうございます。しかしながら、決して油断はできません。

部活動では、一つの部で感染が広まれば、すべての部の活動を停止するよう県教育委員会より求められています。そうなれば、感染対策を徹底している他の部の県大会・近畿大会・全国大会への出場の機会を奪うことも起こり得ます。改めて、感染防止の徹底と、「考えて行動すること」を皆さんにお願いします。

2学期始業式 校長講話

 皆さんおはようございます。新型コロナウイルス感染拡大が続いていますが、こうして無事に2学期をスタートできることを大変嬉しく思います。

 この夏休み、一生懸命勉強に励む姿を校内のあちこちで見かけました。一方で、部活動での活躍も幾度となく耳にしました。皆さんが頑張っている姿を見るにつけ、あるいは聞くにつけ、こんなに嬉しいことはありません。

 さて、この夏休みの大きな話題と言えば、やはり東京オリンピック・パラリンピックでしょうか。開催に賛否両論ある中でしたが、終わってみれば、日本人選手の活躍が非常に目を引きました。今日はオリンピック・パラリンピックに関する二つの思いを伝えたいと思います。

 オリンピックは1896年のアテネ大会、パラリンピックは1960年のローマ大会に始まります。昨年、「一人の医師が社会を変える~人生をかけた夢~」と題したテレビ番組が放映されました。その医師は、日本のパラリンピックの父と言われる中村裕(ゆたか)氏です。

 ローマ大会当時、整形外科医として勤務していた中村氏は、骨髄を損傷して車椅子生活を余儀なくされた患者さんが仕事や趣味を失い、笑顔までなくすことに、医師として耐えられなかったそうです。そんな患者さんの治療法の一つにリハビリテーションというものがあると知り、イギリスに渡りました。そこで、車椅子の患者さんがバスケットボールをしているのを見て大きな衝撃を受けたといいます。「スポーツこそ、身体のリハビリ、心のリハビリになる」と学んだ中村氏は、帰国後すぐに病院や行政、企業に働きかけ、日本での車椅子バスケットが実現し、1964年の東京大会で新種目となりました。

 中村氏の行動力には驚かされますが、その根底にあったのは何でしょうか。私は、人としての夢・優しさ、医師としての責任感もさることながら、医師としての「矜持」ではないかと思います。「矜持」、換言すれば、「誇り」「プライド」です。

 皆さんに聞きます。皆さんには明高生としての「矜持」がありますか。こうしなければ明高生じゃない、明高生としてそこは譲れない、いわゆる「明高プライド」です。明高の神髄である建学の精神「自彊不息」、明高生なら決して怠惰に陥らず自己の向上に励むのは当然である、そうでなければ明高生じゃない。明高の教育目標の一つ「文武両道」、勉強だけじゃダメ、部活だけでもダメ、両方頑張ってこそ意味がある、それを成し遂げるのが明高生である。

 皆さんには、「明高プライド」を持ち、自己を律して行動してほしいと思います。各学年、各クラス、各部も然りです。我が学年、我がクラス、我が部はこれができて当然、この一線は譲れないという心を一つにできる「矜持」、それを持って学校生活を送ってほしいと思います。これが一点目です。

 二点目は「戦略と戦術を持つ」ということです。「戦略」とは目標を立ててそれを達成するためのシナリオ、「戦術」とはそのシナリオにそって具体的に実践していく手段です。たとえば、日本の女子バスケットボールは銀メダルを獲得しました。それは、私にとって驚き以上のものがありました。トム・ホーバスヘッドコーチはメダルを取るという目標を達成するための「戦略」を立て、最大の課題である背丈の低さを克服するべく100以上の「戦術」を練って、練習で徹底的にそれを磨き試合で実践したといいます。皆さんにも目標があると思いますが、それを達成するために、ただ漠然と頑張るのではなく、自己分析し、弱点をどうやって克服・強化していくのか、先生にもアドバイスを求めて「戦略」と「戦術」を立てて、具体的・効果的に取り組んでほしいと思います。

 いよいよ2学期です。1年生は将来の職業や生き方を考え、それを踏まえた文理選択に入ります。自分の将来像を描けるようにしてください。と同時に基礎学力をしっかりと定着させる時期です。そのための「戦術」を考え、努力を惜しまないでください。

 2年生は高校生活の折り返し点を迎え、進路実現に向けて本気になる時期です。「中だるみ」している場合ではありません。いつ本気になるかで進路結果が大きく変わってきます。すぐにでも「戦略」と「戦術」をしっかり立てて取り組んでください。

 3年生は受験への不安、すぐに結果が出ないことへの焦りが大きくなるばかりだと思いますが、この夏の頑張りが結果に出るのは早くて3ヶ月後です。精神的にタフでなければなりません。自分を信じ、先生方の指導を信じて最後まで諦めず挫けず弱気にならず「戦略」を実践してください。

 最後になりますが、この夏休み、県内でも部活動中の新型コロナウイルス感染が頻発しました。ほとんどの事例が家庭内で感染し、そうとは知らず登下校時、更衣時、昼食時にマスクを外して近距離で会話したことによります。改めて、家庭内での感染防止、マスクを外した会話や食事の厳禁、コンビニ等での飲食厳禁の徹底をお願いします。

1学期終業式

 今日で1学期が終わります。4月以降、日々の授業や部活動、学校行事等において、皆さんが真剣に、前向きに、そして真摯に頑張っている姿を見るにつけ、心を打たれることが多々ありました。そんな明高生に、私が偶然見つけ感銘を受けた言葉の一つをお伝えします。

 それは、東日本大震災が発生し、卒業式を中止せざるを得なかったある高校のホームページに掲載された「時に海を見よ」と題するメッセージの一節です。

 「時に、孤独を直視せよ。海原の前に一人立て。自分の夢が何であるか。海に向かって問え。青春とは、孤独を直視することなのだ。いかなる困難に出会おうとも、自己を直視すること以外に道はない。いかに悲しみの涙の淵に沈もうとも、それを直視することの他に我々にすべはない。海を見つめ、大海に出よ。嵐にたけり狂っていても海に出よ。」

 つまり、「いかなる困難も、自己を直視すること以外に乗り越えるすべはない」ということが言いたいのだと思います。

 皆さんの中には、「勉強をしても成績が伸びない」、「部活動を頑張っても結果が出ない」「自分が将来、何をしたいのか分からない」等、いろいろな悩みを抱えている人がいると思います。皆さんの家族も、そして、私を含む多くの先生方も、皆さんと同じ10代の頃は、そうだったと思います。

 では、どうやってそれを乗り越えるのか。それは、このメッセージにあるように、いろいろな困難に直面するたびに、自分自身と向き合うことから次のステップが始まるのだと私は思います。

 誰かに「してもらう」「やらされる」自分から、自ら「する」自分に変えること。自分を支えてくれている周囲に感謝の気持ちで接すること。人と自分を比べることを止め、未来に向けてコツコツと学び続けること。この一瞬一瞬をかけがえのない時間と捉え、自分を信じ、常にベストを尽くすこと。

 大切なことは、勉強や部活動で仮に目に見える成果が得られなかったとしても、その経緯を振り返り、今後の展望を自ら見出し、それを実行することです。

 私は、これこそが、今年度から始まった大学入試で評価される「学びに向かう力」だと思います。そして、日々の一つ一つの取組を振り返り、自分自身と向き合う。その地道な繰り返しこそが、これからの一人一人の「物語」、「人生」を創り上げていくのだと思います。

 さて、明日から夏休みに入ります。3年生の皆さん、受験勉強に行き詰まった時には自分と向き合う時間を作ってみてください。「自分の夢が何であるか」、きっと勇気と希望、打開の糸口が見出せるはずです。1・2年生の皆さん、携帯の電源を切って自分と向き合う時間を作ってみてください。そして、課題や部活動などで忙しい合間に、1冊の本と出会ってみてください。「大海に出よ」、自分を知るための「海」になるはずです。

 「いかなる困難も自己を直視すること以外に乗り越えるすべはない」

 この言葉を胸に、この夏休みを通して、今の自分を乗り越え、新たな自分に出会えること、成長した自分に出会えることを期待し、終業式の式辞とします。有意義な夏休みにしてください。

 最後に、新型コロナウイルス感染がまた拡大の様相を呈しています。不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。特に、夏休み中の部活動内での感染を回避できるよう一人一人が細心の注意を払ってください。また、下校時の飲食は禁止の通知が県教育委員会からも来ています。寄り道をせず、まっすぐ帰宅してください。

6月全校集会

 部活動の県総体が行われました。剣道部女子団体が優勝し全国総体出場を決めました。剣道部女子団体と個人のほか、男子ソフトボール部、男女ハンドボール部が近畿大会出場を決めました。他の部も含め、本当によく頑張ってくれました。

 さて、5月から6月にかけて、皆さんの授業の様子を見ました。ほとんどの人が熱心に取り組んでいる中で、残念ながら、ごく一部の人ですが、寝ていたり、どう見ても授業に意欲的に参加しているとは思われない人もいました。

 以前、元宇宙飛行士の山崎直子さんの話を聞く機会がありました。彼女は女性で54番目、日本人で8番目に宇宙飛行士になった人ですが、飛行士になってから実際に宇宙へ行くまでに11年もかかったそうです。彼女が宇宙飛行士になりたいと思い、東大在学中にアメリカへ留学した時のことです。現地の他の留学生と話をしていると、自分以外の学生は高校時代から文系・理系の科目にとらわれず、体育や芸術、家庭など、受験科目以外の多方面の学習を熱心にしてきていると感じたと言います。また、一人のアメリカ人から日本の歴史や文化・風習、風土について尋ねられても全く答えられなかったばかりか、尋ねたアメリカ人の方が日本のことをよく知っており、自分の無知に愕然とし、強く羞恥の念に駆られたそうです。彼女は、高校時代に受験科目以外の教科・科目ももっと熱心に勉強しておけばよかった、日本人としてもっと日本のことを学んでおくべきだったと後悔したそうです。社会人となり、JAXAの一員となってからも、この経験をメッセージとして発信し続けているとのことでした。グローバル化時代に生きるとはこういうことなんですね。

 学ぶことの有用性や意味は予め分かっていて学び始めるのではなく、それらは後になって気づくものなのだと思います。メンデルは遺伝法則を見出すためにエンドウを掛け合わせたのではありませんでした。アインシュタインは特殊相対性理論の後に重力理論たる一般相対性理論の可能性を見出せるとは思ってもいませんでした。両者とも科学者なので、仮説は立てたでしょう。しかし、最初からすべてが分かっていた訳ではありません。

 発見というものは、現行の知識が示唆する探究可能性によってもたらされることが多いですが、その手続きには、予想もつかなかったことや検証しにくいことが含まれているものです。これを、ハンガリーの科学者マイケル・ポランニーは暗黙知と呼びました。私達の「知」には形式知と暗黙知と呼ばれるものがあります。通常学校で学ぶのは形式知であり、新たな発見をもたらすような知を暗黙知といいます。これが科学を発展させてきたと言っても過言ではありません。しかし、それには一定の基礎的な形式知が必要であり、その積み重ねの中で、何かと何かが結びつき新たな知を生んでいくのです。何が重要であり、何が重要でないかは少なくとも学問の基礎をやろうとしている高校生の皆さんの段階で判断することはできません。授業の一時間、一時間は人類のこれまでの叡智を振り返り辿っていく時間です。その振り返りの基礎があって、次の新たな一歩があるはずです。どうか授業の一時間、一時間をもっともっと大切にしてください。

 こんな言葉があります。

努力をして結果が出ると自信になる。

努力をせずに結果が出ると傲りになる。

努力をせず結果も出ないと後悔が残る。

努力をして結果が出なくても、経験が残る。

 自信と経験を積み重ねていく明高生であってほしいと願っています。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止ため、不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。家庭内感染や部活動感染が大半を占めています。家庭でも感染防止に努めてください。部活動では、特に、更衣時、昼食時はマスクを外した会話を絶対にしないでください。お願いします。

5月全校集会

前回の全校集会では、放送でしたが、部活動の壮行会も行いました。ゴールデンウィークを中心に、全国大会予選、県総体、東播地区大会等、多くの大会があり、どの部もよく健闘し、百人一首かるた部が全国大会出場を決めたほか、いくつもの部が優勝や上位入賞を果たしてくれました。個人種目では、ベストの結果を出した人が何人も出ていると報告を受けています。校長として明高生を非常に誇らしく、また頼もしく思っています。本当によく頑張りました。今後、大会を迎える部がいくつもありますが、更なる健闘を期待しています。

ところで、今日は皆さんに時間について、あるいは時間の使い方について考えてほしいと思います。

皆さんは、お父さんやお母さんが年をとるにつれてだんだんと時間が経つのが早く感じられる、と呟いているのを聞いたことがあると思います。実際、皆さん自身も、小学校、中学校、高校と進むにつれてだんだんと時間が経つのを早く感じていませんか。                    

では、このことは本当でしょうか。実は本当なんです。フランスの心理学者であるジャネーという人物がそれを明らかにしました。「ジャネーの法則」と言います。「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する」というものです。

例えば1歳の子供にとっての1年は人生の1/1、5歳で1/5、皆さんであれば1/16~18です。このように、年を取るごとに1年の比率が小さくなり、体感時間は相対的に短くなります。この考え方でいくと、0歳から20歳までと、20歳から80歳までの体感する時間は同じになり、皆さんはもうすぐ人生の半分を迎えることになります。驚愕ですね。

このことについて、子供の頃は未知との遭遇の連続で、毎日新しい発見があり、日々の何気ない日常が刺激に満ちているが、大人になると大半が「知っている」ことであり、同じことの繰り返しに脳が慣れて活性化されなくなり、体感時間に影響を及ぼすという研究もあります。

いずれにしても、ジャネーは「刻一刻と時間は早まっているんですよ。ついついやり過ごして後で後悔しても遅いですよ」と言っています。

作家の林真理子さんは、「やってしまった後悔はだんだん小さくなるけど、やらなかった後悔はだんだん大きくなる」と語っています。私は、思わず共感してしまいました。

さて、皆さんの学校生活の様子を見ていて感じるのは、時間を無駄にしている人が非常に多いということです。例えば、3時5分に6時間目が終了して、部活動の開始時間はその何分後ですか。SHRと掃除があるのは分かります。しかし、1時間後の4時5分になっても練習を始めていない部がいくつもある。皆さんにその気があれば、遅くとも4時前には練習を始められるはずです。どれだけ時間を無駄にしているか考えてみてください。

学習も同じことです。皆さんは何時間スマホを触っていますか。触るなとは言いませんが、自分なりの時間のルールを作って、限られた時間を学習のために有効に使ってほしいと思います。

日本にも「光陰矢のごとし」という諺があります。月日が経つ早さを矢の飛んでいく速さにたとえたものですが、この機会に改めて時間の使い方について考えてみてください。

最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止ため、不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。特に、昼食時は「席を動かさない」「対面で食事をしない」「会話をしない」この「3つのない」を厳守してください。また、登下校時、部活動時にマスクをしないで会話をする人がいます。これも絶対にやめてください。

「創立記念日」に寄せて

5月26日は本校の創立記念日です。今年度で創立98周年、2年後には創立100周年の大きな節目を迎えます。創立記念日を迎えるに当たり、改めて本校の歴史と伝統に思いを致し、明高生としての自覚を胸に、これまで以上に明高で学ぶ喜びと誇りを感じながら充実した高校生活を送ってくれることを願っています。

                                       

本校の沿革                                     

  • 大正12年4月 明石市立明石中学校開校
  • 昭和3年4月 兵庫県立明石中学校と改称
  • 昭和23年4月 学制改革により兵庫県立明石高等学校となる
  • 昭和24年4月 男女共学の高等学校(普通科・商業科)となる
  • 昭和28年4月 商業科募集停止
  • 昭和50年4月 総合選抜制度実施
  • 昭和58年4月 美術科設置
  • 平成5年10月 西オーストラリア州モーリー高等学校と姉妹校提携
  • 平成20年3月 複数志願選抜制度実施
  • 平成20年4月 普通科に生命科学探究類型設置
  • 平成25年4月 生命科学探究類型を理数探究類型に改編
  • 平成27年4月 学区再編に伴い、第3学区(旧明石・加印・北播学区)となる
  • 令和2年4月 ひょうごスーパーハイスクール(HSH)事業研究指定

 

本校は、地域の大きな期待を受けて、大正12年に明石市立明石中学校として開校しました。以来、建学の精神である「自彊不息」を基軸にして、「社会的で創造力豊かな自主的個人」の育成を目指し、知・徳・体の調和がとれた生きる力を育む教育活動を営々と積み重ねてきました。その建学の精神は確と息づき、広く国内外でリーダーとして活躍する有為な人材を多数輩出し、着実に発展を遂げてきました。今年3月現在、卒業生は33,631名を数えます。

今後も、本校の歴史と伝統を受け継ぎながら、校訓「自治・協同・創造」の具現化を図る中で、地域の期待に応える魅力と特色ある学校づくりを推進していきたいと思います。皆さん一人一人が、先輩方の偉功に深く敬意を表しながら、本校での確かな学びを通して自己実現を図るべく、さらに飛躍してくれることを期待しています。

4月全校集会

 令和3年度が始まって2週間ほどが経ちました。3年生は最高学年、受験生という自覚、2年生は中堅学年、先輩という自覚が持てていますか。1年生は高校生、明高生という自覚が出てきましたか。

 ところで、皆さんは、高校卒業後、あるいは大学などの上級学校卒業後、ほぼ全員が就職すると思います。

 今日、人口減少と並行して世界が経験したことのない猛スピードで労働人口も減少し、一部企業がコロナ禍の影響を大きく受けているとはいえ、就職活動においては、売り手市場が続いています。いわゆる、働き手が会社を選べる状況です。

 実は、先日、学生時代の友人と偶然出会いました。彼はある私立女子大学で教授として学生を指導する傍ら、就職担当の業務も行っているということでした。私が彼に、「選り好みをしなければどこかに就職できる時代だから苦労はないだろう」というと、「そんなことはない。内定を勝ち取る学生は何社も勝ち取るし、勝ち取れない学生は1社も勝ち取れない」というのです。そこで私が「どんな学生がいくつも内定を勝ち取ってくるのか」と聞くと、「いい子だよ。高校にもこの子はいい子だな、と思える生徒がいるだろう」という回答が返ってきました。

 話は変わりますが、私たちは日々、さまざまな人との出会いを繰り返しています。皆さんもこの春、ここ明高で多くの新たな出会いがあったはずです。その中で、「いい感じの人だなあ」などと、ラべリング、つまり評価をしています。

 第一印象を決める時間は7秒前後だと言われています。

 第一印象の決め手は視覚から80%、聴覚から15%、嗅覚などから5%だそうです。

 第一印象は短時間でほぼ視覚からの印象で決まることが分かります。

 視覚は、爽やかな笑顔・生き生きとした表情・きびきびとした動作・清潔感ある身だしなみなどです。

 聴覚は、挨拶・言葉遣いです。

 話は戻りますが、彼の言う「いい子」とはどんな人だと思いますか。

  皆さんは、「おはようございます。こんにちは。さようなら」、確かに多くの人はよく挨拶をしてくれます。本当に感心しています。しかし、表情や声の大きさは人によってまちまちです。にこっと笑顔の人、会釈もしてくれる人、立ち止まってお辞儀までしてくれる人、気持ちがいいですよね。

  私の友人は、「大学のキャンパスで、いつも笑顔で挨拶をしてくれる学生がいくつも内定を勝ち取ってくるんだよ」と話してくれました。一人の人間として最も大切なことかもしれませんね。

 小説家の三浦綾子さんは、「挨拶は心を開いて迫ることである。迫るとは近づくことである。心を開いて人に近づくのは人間としての基本的な在り方である」と言っています。皆さんはできていますか。

 さて、皆さんの中に、悪い印象を持たれたいと願う人は一人もいないと思います。できることならいい印象を持たれたい、一人でも多くの友人を持ちたいと誰もが願っているはずです。挨拶ひとつで印象は変わります。是非挨拶の質を高めてほしいと思います。

 ちなみに、爽やかな笑顔・生き生きとした表情を作るトレーニングとして「イ音」の練習があるそうです。たとえば「キウイ・キムチ・好き」、毎朝鏡を見て「キウイ・キムチ・好き」とつぶやいて練習してください。

  明高を皆さんとともにさらにいい印象の学校にしていきたい、皆さん一人一人が自ら積極的に挨拶することで一人でも多くの友人をつくり豊かな学校生活にしてほしいと思います。

 最後に、繰り返しになりますが、新型コロナウイルス感染防止ため、不要不急の外出と3密の回避、マスクの着用、手洗い、うがい、消毒を徹底してください。昼食時は「席を動かさない」「対面で食事をしない」「会話をしない」、この「3つのない」を厳守してください。また、登下校時、部活動時にマスクをしないで会話をするのも絶対にやめてください。加えて、家庭内感染が非常に増加しています。家庭内での感染予防も徹底してください。

第76回 入学式 式辞

夕光(ゆふかげ)の なかにまぶしく 花みちて しだれ桜 輝きを垂る
夕陽の優しい光を受けて輝いて見えるしだれ桜の可憐な姿を、歌人、佐藤佐太郎はこのように詠っています。本校校庭、自彊が丘の桜も、この短歌のように、今を盛りに咲き誇り、その可憐な姿はまさに皆さんの姿を象徴しているかのようです。
ただいま入学を許可いたしました三二0名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。教職員一同心からお祝い申し上げます。今日のその晴れやかな姿、緊張した表情にも喜びが満ちあふれているようです。
皆さんは、コロナ禍という多くの不安と制約を余儀なくされる中にあって、これらにも打ち勝って、見事合格の栄冠を勝ち取りました。
本校では「文武両道」を校是とし、「社会的で創造力豊かな自主的個人」を育成するため、グローバル化時代に求められる思考力や判断力の伸長、主体性や協働性の向上を図る一方で、昨年度より「ひょうごスーパーハイスクール」の研究指定を受け、地域はもとより、大学や企業等との連携を密にし、探究活動等の教育活動の充実に努めております。
このすばらしい環境下で、若者らしく、何事にも果敢に挑戦し、将来の夢や進路希望を実現するべく、高校生活の第一歩を踏み出してください。
さて、本校は、大正十二年に明石市立明石中学校として開校し、昭和三年に兵庫県立明石中学校、昭和二十三年の学制改革により兵庫県立明石高等学校となり、二年後には創立百周を迎える東播磨地域を代表する伝統校であります。その間、県下唯一の美術科の設置、西オーストラリア州モーリー高校との国際交流、理数探究類型の設置等、学校改革を進めながら、地域社会や国際社会で活躍する有為な人材を多数輩出してきました。
校庭に凜として伸びるクスノキに見守られ、閑静な荷山に位置する本校からは瀬戸内の海と淡路島、そしてそこに架かる雄大な世界最長の吊り橋、明石海峡大橋を臨むことができます。皆さんはこの恵まれた教育環境のもとで、建学の精神である「自彊不息」を基軸にして人生でも最も意義深い、青春の三カ年を送ることになります。この大切で貴重な時期を本校で学ぶ皆さんに、三つのことを希望します。
一つ目は「高い志を持ち続けてほしい」ということです。自分の志を立て、それに向けて具体的な目標を持つことは、自己を律し、生活を充実させる基盤となります。皆さんは高校生活三カ年の延長線上に、将来どのような人生を生きるかということを具体的に考えているでしょうか。どのような職業に就き、社会にいかに貢献していくかを考えておくことによって進路も明確なものが見えてきます。
本校での充実した学びを通して自己認識を深め、自己実現をめざして、高い志を持ち続けながら努力を重ねてください。
二つ目は「確かな自分を作り上げてほしい」ということです。世界はグローバル化時代を迎えています。あらゆる知識や技術は日進月歩以上であり、おびただしい情報が世界中に氾濫しています。皆さんが心豊かに生活するためには情報に流されたり惑わされたりせず、主体的に判断し行動することが大切です。国際的な広い視野に立って、弾力的で柔軟なものの見方、考え方を持つ、そして善悪・真偽を正しく判断できる確かな自分を作り上げ、磨き上げてください。
三つ目は「良き友を持ってほしい」ということです。良き友とは、ともに喜び、ともに悲しみ、ともに高め合うことのできる真の友人です。この良き友は、安易に調子を合わせたり、誘われるままに行動したりするような関係の中には育ちません。時には「ノー」と言う友こそ心から信頼できるのです。他を尊重し合い、素直な気持ちをぶつけ合い、目標に向かって切磋琢磨し合う中に友情は育ち、本校校訓の一つ「協同」が生まれます。他を思いやる心を忘れず、自分にないものを学び、お互いを向上させ、信頼関係を深めながら、生涯にわたって心の支えとなる友を得てください。
最後になりましたが、保護者の皆様に一言ご挨拶申し上げます。本日はお子様のご入学本当におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。高校の三年間は、人生の方向を決定する大事な時期であり、その一方で悩みや苦しみが大きい時期でもあります。私達教職員は、ご子様が、自らの生きる道を、自らの力で切り拓いていけるよう、全力で指導に当たって参りますが、お子様の健全な成長を願い、豊かな個性を育てていくためには、学校と家庭がそれぞれの役割を果たしながらも、相互に補完し合い、連携を密にしていくことが重要であると存じます。どうか、本校に対するご理解ご協力、そしてご信頼をよろしくお願い申し上げます。
新入生の皆さん、本校の校訓「自治」「協同」「創造」のもと、知・徳・体の調和のとれた人格の陶冶を図り、心豊かに、高い志を抱き、未来を主体的に切り拓いて行く人間として成長していくことを心から期待し、式辞とします。

1学期始業式式辞

皆さんおはようございます。新年度を迎えました。5月からは元号が「令和」に替わります。さまざまな意味で大きな節目を迎えます。皆さんも、3年生は最高学年、そして受験生という自覚、2年生は学校の中核、そして先輩という自覚を持ち、気持ちも新たに今日を迎えていることと思います。大切なのは、思うことではなく、"Practice makes perfect." つまり思うことを実践し継続して力に変えること、自己の成長に結びつけることです。このことを強く肝に銘じてください。


ところで、唐突ですが、質問します。皆さんの夢は何ですか。


皆さんは『下町ロケット』というテレビ番組を知っていると思います。この『下町ロケット』のモデルと言われているのが植松努さんです。植松さんが社長を務めるのは北海道にある社員数20名ほどの町工場「植松電機」です。この「植松電機」は2004年からロケットの研究開発に取り組み、現在、国内外の研究者が集まる宇宙開発の拠点になっています。ロケット以外にも人工衛星の研究開発などにも取り組んでおり、無重力状態を作り出す実験装置も完成させたそうです。その植松さんですが、母親から「思いは招く」という言葉を繰り返し教えられたそうです。これは「思ったらそうなるよ」という意味で、思い続ければ必ず夢は実現するということを教えられたといいます。


植松さんは、「やったことのないことは、やれないと思い込んでいるだけ。ものづくりの基本は諦めずに続けること。諦めたりやめたりせずに考えるんだ。考えるのを決してやめちゃいけない。やめない限り、夢が潰えることはないんだから」と語っています。なるほど、その通りですね。また、植松さんは、「どうせ無理ではなく、だったらこうしたらできるかもしれないと頭を切り替えて考え続けることで道は拓ける」とも語っています。心が折れそうな時、植松さんを支えてくれたのが、ライト兄弟であったり、エジソンであったり、それらは皆、植松さんが出会った本の主人公です。その意味では、読書好きが功を奏したとも言えそうです。


さて、皆さんは、する前からできない理由をいくつも考えて「どうせ無理」と諦めていませんか。「もう無理」と勝手に限界を決めつけていませんか。楽な方に逃げていませんか。自分自身に問いかけてください。皆さんには無限の可能性があります。そして、その基盤をなす優れた能力もあります。私達は繰り返しの利かない一回性の人生を生きています。悔いのないように、「思いは招く」という言葉を心に刻んで、それぞれの夢を追い求め続けてほしいと思います。そして、一回性の人生を、世のため人のために貢献できる人間であってほしいと願っています。ちなみに、日本には古く『万葉集』の時代から言霊信仰、つまり言葉に発することそのままが実現するという考え方があります。その意味では、思いを繰り返し言葉に発して招いてほしいと思います。


今日は皆さんに、"Practice makes perfect."、「思いは招く」という言葉を伝え、今年度の皆さんの大いなる飛躍と成長、そして頑張りを期待して式辞とします。