総長・校長室より

総長・校長室より

「成功は努力の結晶」難を乗り越えてこそ光あり(附属中学校「冬休みのしおり」より」)(R3.12.21)

 令和3年も残りわずかとなりました。今年も、新型コロナウイルスに影響された1年が終わろうとしていますが、年末年始の貴重な時間を含めて、しっかり考えて冬休みを過ごして欲しい。

ーーーーおまえは苦労がしたいのか~江州(ごうしゅう)商人の心意気~ーーー

 昔、呉服物(和装用の織物類・衣類)をになって、いつも碓氷峠(群馬県と長野県の境にあり大変険しい峠として知られる)を歩いて越えていた二人の商人がいた。一人があるとき、さぞ疲れたように、道端の石に腰をおろす。

 「疲れたではないか、一休みしよう。この峠が、もう少し低かったら楽に越えられて、うんともうけられるのになァ。おまえ、そうは思わんか。」うらめしそうに、高い峠を見上げた。

 「オレはそうは思わない。それどころか、この峠が、もっともっと高くて、険しかったらいいと思っている。」そう答えたのは、連れの江州(近江国で今の滋賀県出身)商人である。

 先の商人は、「どうしてだ。おまえは苦労がしたいのか。おかしなやつだ。」と苦笑いした。

 「そうじゃないか。この峠が楽に越されたら、だれでも越して商売するから、あまりもうからないのだ。この峠が、もっと高くて険しければ、だれも、この峠を越えて商いをする者がいなくなる。それを越していけば、商売は大繁盛するのだ。」

 江州商人で成功した人が多いと言われる。(江州商人は、すばやく商機をつかみ、合理的で忍耐強いと言われる。)さすがに生き馬の目を抜く(すばしこく抜け目なく油断がならないことの例え)といわれる、江州商人の気迫ではないか。

 成功は努力の結晶である。楽にえられるものは、貧と恥のみである。難の難 乗り越えてこそ 光あり

 この話を聞いて、どう思うでしょうか。人間誰しも、無駄な「苦労はしたくない」と思うでしょうが、努力の結晶が「成功」となれば、努力を頑張る意味があります。

 楽して大きな結果が得られるのであれば、楽したいものですが、楽してえられるものは「貧と恥」と言われる。「貧」も「恥」も避けたいものです。

 人の行く ウラに道あり 花の山

という、言葉もあります。この言葉は、人と同じ道を歩いていれば失敗はしなくても、他の人が見られない素晴らしい「花の山」の発見はできない。人がしない苦労をして、別の道を歩んでこそ他の人が発見できない素晴らしい「花の山」を見つけることができる。という意味です。

 人よりも時間を惜しんで努力する。人よりも一歩でも半歩でも努力を忘れない。人が遊んでいても自分は目標のために頑張る。そんな気持ちが、いかに大切かと言うことです。努力が報われることになります。「難の難」を乗り越えるには、体力も精神力も忍耐も必要です。乗り越えてこそ「光あり」で、「花の山」を発見できる生徒であって欲しい。

 冬休みは、日頃から自分の行動は「努力」を惜しまずにしているか、先を考えずに身近な結果ばかり求めていないか、本当に目標を定めて全力を出し切っているか、自分の日頃の行動や、この1年間の行動を振り返る機会にして欲しいと思います。また、新しい1年の目標をしっかりと決めて欲しい。「一年の計は、元旦にあり」と言われますから、1年間の計画、1年間の目標は、新年初めの元日の朝である元旦にしっかりと、心に刻んで欲しい。

 昨年よりも一歩でも半歩でも前進し、「今年の目標は〇〇する!」「今年こそは●●を実現する!」と。コロナ渦の中で様々な行動が制限されても、皆さんは、「今しかできないこと、今だからできること」を頑張ってきたのですから。勉強だけでなく、年末年始の大掃除など、日頃はできない家族の手伝いやボランティアなども、是非やってください。しなければわからない大きな発見があるはずです。

 苦しいときも「附属中学校に入学したからこそ頑張れた」というものを持って欲しい。校訓「創進」を忘れず、感謝の気持ちを忘れず、附属中学校の皆さんが、新たな気持ちで新年をスタートし、令和3年よりも素晴らしい令和4年となるよう、心から願っています。

                                          校長 小倉 裕史