総長・校長室より
社会情報科学部訪問について(R6.8.29)
令和6年度の試行ラボ訪問の締めくくりは、8月29日(木)、社会情報科学部にお邪魔しました。
やや台風の影響のある風の吹き始めた神戸商科キャンパスに県大バスが10時前に到着したところ、藤江社会情報科学部長が直々にお出迎えくださり、情報科学研究棟K201 講義室にご案内くださいました。
最初は、川嶋宏彰教授が、大学、学部の紹介から先生のご専門の機械学習のお話や現在取り組まれている研究のお話まで分かりやすくお話しくださいました。最近、特に関心が高まるデータサイエンスですが、兵庫県立大学は神戸商大時代の昭和38年から管理科学科として取り組んできた伝統ある学問分野であるそうです。また、社会情報科学部では、情報科学の知識・技能に加えて社会的課題の背景知識もしっかりと学ぶことで、情報を適切に扱える人材を育成しているということを教えていただきました。
深層学習(ディープラーニング)の分野においては、最近ニューラルネットワークの利用が主流で3回目のブームになっているそうです。川嶋先生は、皆が注目しなかった時代からニューラルネットワークを卒業研究として扱っておられ、現在も第一人者として活躍されているそうです。最近取り組まれている研究の一例として、生物群の相互作用解析についてご紹介くださいました。魚の群れの動きを解析したモデルからつくった擬似的な魚の映像を本物の魚に提示すると、映像の影響を受けて魚群が追尾するようになるシミュレーション動画は、現実の世界とサイバー空間がつながったようで、非常に興味深いご紹介でした。
続いて東川雄哉教授のご講義でした。東川先生は、大学院を卒業後にTVのアシスタント・ディレクターをされていたという異色のご経歴をお持ちの先生で、ご専門の研究について平易な言葉で高校生が引き込まれるように興味深くお話をしてくださいました。先生のご専門の「オペレーションズ・リサーチ」は、社会の諸問題に対して数学・数理モデルを利用してちょうどよいと感じる意思決定を行う数理的手法ということだそうです。理論的であるだけではなく、実社会への応用に耐え得る理論を構築することについて研究されています。
避難場所をどこにするとよいか、誰を最初に避難させると災害までに確実に避難が完了するかといった「避難計画問題に潜む数理構造の解明」や、地図の存在しない未知の空間をどのように探索するかといった「不完全情報下での空間探索問題」等について一部分をご紹介くださいました。
例えば、無限に続く一直線の暗闇のトンネルの真ん中に1人ぼっちで置かれた状況で、どちらかにある宝物を探すという条件で、どう進むのが最適な方法なのかということについて、高校で学ぶ数式を使って最適な解決方法を表すことができるというお話もありました。高校数学で学ぶ最大値や最小値等は、数理最適化の基礎として、大学での学問につながっていくことがわかりました。
講義の後は、ラーニングコモンズにおいて、パネル展示を見学しました。学部と大学院の両方を受け持っておられる先生方ですので、専門で研究されていることについて高校生にもわかるように丁寧に説明してくださいました。
生徒からも、「情報科学の道を行くうえで、高校の勉強がベースになると知り、するべきことが明確になりました。」「自分のやりたいことについてよく分かった気がします」「今のうちにやるべき勉強が明確になった」「高校数学が大学でも直接使えると知って、もっと努力しなければと思いました。」といった感想がありました。
大学院のオープンキャンパスとして大変お忙しい中、先生方には、本当にお世話になりました。ありがとうございました。