【校長室の窓】 3学期始業式 式辞

読書のすすめ                       

校長  小田 昌史 

 皆さんは、どのくらい本を読んでいますか。2学期に実施した生活実態調査によると「一か月に何冊の本を読みますか」という問いに対して回答者の63%の人が「全く読まない」と答えていました。今の高校生の忙しさやスマートフォン等の普及などからある程度予測してはいましたが、これほどとは思っていませんでした。時代の変化と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、感性豊かな10代の貴重な時期に読書の楽しみを味わわずに過ごすのはとても残念なことだと思っています。

 私自身も高校時代にあまり本を読んでなかったことを後悔していますが、それでも高校生の時に何回も繰り返し読んだ本で今も心に残っている小説があります。それはジョルジュサンドというフランスの作家の「愛の妖精」という小説です。双子の兄弟と少女との恋の物語なのですが、それまでそういう小説を読んだことがなかった私は双子の兄弟に感情移入してドキドキしながら夢中で読んだことを覚えています。読書の大きな楽しみは、登場人物の生き方を通して様々な人の考え方や生き方を学ぶことができることではないかと思います。この作品が発表されたのは19世紀半ば頃です。二百年近く前にフランスの田舎を舞台に書かれた作品が日本人の私たちが読んでも共感できるということはすごいことだと改めて感じます。時代や国が違っていても人間の基本的な感情に大きな違いはないということなのだと思います。今はスマホやタブレットで書籍を読むこともでき、また世界中の最新情報を手に入れることもできますが、紙の本ならではの良さもあるのではないかと思っています。私が機器の操作に慣れていないだけかもしれませんが、振り返って再確認したい箇所をパラパラとページをめくって見直したり、お気に入りの本として何回も読み返したりするには紙の本のほうが扱いやすく、その分深い理解にもつながるのではないかと思います。

 1冊の本との出会いで人生が変わるということもあります。皆さんには、何回も読み返すような心に残る大切な本はありますか。実際に人生を変えるような本に出会うことは稀かもしれませんが、多くの読書を通して徐々に人生が変わっていくということはあるのではないかと思っています。それは読書をすることによって知識や教養、読解力がつくだけでなく、論理的な思考力や集中力、想像力や表現力、コミュニケーション能力などの向上も期待できるからです。私たちが、人とコミュニケーションをとるときの手段は、会話であったり、メールであったりと必ず言語を使います。頭の中で何かを考えるにしても言語を使って考えています。生きていく上で必要な力の多くはそのベースに言語力があるということです。その言語力をつけるためには、多くの洗練された文章や言葉に触れるしかありません。正しい言葉の使い方、美しい言い回しや表現を知らないことには自分で使うことはできません。こうした語彙力を増やすために読書は極めて有効です。今の皆さんは、なんでも吸収できる柔軟な感性を持っています。だからこそ今の時間を大切にしてほしいのです。今の時間が有効に使えているかを常に意識してください。時間がもったいないと思ったときには読書をしてみてはどうですか。そんなときに読む本を常に手元に用意しておいてみてはどうでしょうか。きっと人生が豊かになると思いますよ。