校長室より

人間の安全保障

人間の安全保障

 5月12日の神戸新聞に、山極寿一(やまぎわ じゅいち)さんが記事を書いておられました。山極さんはゴリラの研究者として著名で、現在は総合地球環境学研究所長をされていますが、日本学術会議会長や京都大学学長もされた方です。

 記事は、20数年前に山極さんがゴリラの調査をされていたアフリカのザイール(現在はコンゴ民主共和国)に、当時国連難民高等弁務官だった緒方貞子さんが訪ねて来られた話から始まっていました。20数年前の話ですが、今のプーチン大統領に聞かせてやりたい。

 「もはや国の安全保障に頼るべき時代ではない。数々の戦争は国家元首が国の安全と政治経済的利益を確保するために決断する。犠牲になるのは民間人である。これからは国ではなく、人間の安全保障を目標にしなければならない」

 また、コンゴの内戦が長引いた理由の一つに、コンゴに眠る世界有数の地下資源があります。海外の業者は戦時下の混乱を利用して、希少鉱物を密輸するそうです。ロシアとウクライナの間にも、石油と天然ガスというエネルギーの輸送の問題が横たわっています。復帰50年を迎える沖縄県でも、第二次世界大戦当時の「日本軍」は民間人を積極的には守らなかった経緯があります。

 山極さんの投稿は次のように締めくくられていました。

「今、世界は人間の安全保障を目指して連帯すべき時なのである」

 安全を保障しないと、和尚が、化粧をして、衣装を着て、故障して、苦笑してしまいます。