校長室より

これからの指導者

これからの指導者

 アメリカの経営学者である「トマス・マローン」は、その著書「フューチャー・オブ・ワーク」で次のように述べています。

 人類世界は孤立、分散、自由に特徴づけられる狩猟採集民の世界から、中央集権的な階層社会へと向かい、いま分散的なネットワーク社会へと移行しつつある。「命令と管理」にもとづく厳格な階層制度は軍隊には向いているかもしれないが、情報ネットワーク社会には適合しない。

 これからの指導者に求められるのは「命令と管理」から「調整と育成」へと組織原理をシフトさせることである。成員に命令するのではなく、独立して動く自由で小規模なユニットをつなげ、人々の問題解決能力を育てていくのである。軍隊やインフラが消滅するわけではないから「命令と管理」のシステムが完全に消えることはない。しかし、先端産業の重心は移動していくだろう。「調整と育成」が無政府状態を意味するわけではない。指導者が紛争をおさめ、個人の才能と創造力を生かし、価値観を提示できる組織には、多様な人間が集まり、自主的な秩序が生まれるだろう。小人口世界において優れた指導者がいる首長国に臣民が集まるのと同じロジックである。

 ここまで読んでくれた皆さんの中には「これは先日亡くなられた稲盛和夫さんの『アメーバ経営』と同じなのでは?」と思った人もいると思います。私もそう思いましたから。稲盛和夫さんは、京セラやKDDIを創業し、日本航空を再生させた偉大な経営者ですが、「アメーバ経営」は6~7人の小集団(アメーバ)を組織して、目標達成を目指す経営方法です。長所も短所もあるようですが、組織が大きくなればなるほど当事者意識がなくなったり、大企業病になることが多いので、うまくはまったようです。

 もちろん私はこれらの話を、校長が学校をどのように方向付けていくのが良いのか、という話として活用しようと考えました。昭和の時代は「命令と管理」で良かったのかもしれませんが、やはりこれからは「調整と育成」の方向だと思います。方向を決めるためには、空港で孝行をしなければなりません。