校長室より

サイエンス コミュニケーション

サイエンス コミュニケーション 

 サイエンス コミュニケーション。あまり聞いたことがない言葉です。「科学に関する意思疎通」とも言うようですが、ますます良く分かりません。

 桝 太一(ます たいち)さんは、日本テレビのアナウンサーで、いろいろな報道番組の司会等をやっていましたが、2022年3月に退職して(これまで通り、いくつかのテレビ番組には出演している)同志社大学ハリス理化学研究所の専任研究所員に転出しました。その動機は「サイエンス コミュニケーションについてもっと深く考えて実践したいから」というものでした。

 桝さんは、東京大学農学部でアサリの研究を行い、修士課程を終了したバリバリの理系人間です。アナウンサーとして就職して、科学番組にも携わりましたが、テレビ局の持つ「サイエンスリテラシー」の欠如に違和感を持ったようです。

 京都大学iPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥さんも、感染症については専門外としながらも、今回のコロナ渦について、多くの発言をしてきました。その上で、次のように述べています。「科学を進歩させることも大切ですが、難しく感じる科学を一般の方にわかりやすく、かつできるだけ正確に伝える科学コミュニケーションも非常に重要です。それも研究者にとって大事な仕事の一つだと私は考えています」

 「社会の役に立つ研究や学問をするべきだ」という意見もあります。しかし例えばプロのスポーツ競技について「社会の役に立つプロのスポーツ競技をすべきだ」という意見は聞いたことがありません。サッカーでも野球でも好きな人は純粋に好きだから、面白い・感動する・成長できるから競技をしたり、応援をしたりするわけで、そういった意味で、科学も文化の一つとして広まって欲しいと思います。

 手前味噌ですが、香寺高等学校美術工芸部の皆さんと、私による「理科の散歩道」も、科学の普及に少しでも貢献できたらなと思っています。科学や医学は、苦学しながら、長く、磨くことが望まれます。