校長室より

おいあくま

おいあくま 

 色々なことが、うまくいかないことがあります。いやむしろ、うまくいくことの方が珍しいのかもしれません。うまくいかないと、自分の気持ちの持ちようまで、悪くなってしまうことがあります。さて、そんなときにどうすれば良いのでしょうか。

 「おいあくま」で考えてみましょう。この言葉の出所は、旧住友銀行の元頭取であった堀田庄三さんであると言われていますが、プロ野球の元阪急ブレーブスで、世界の盗塁王と言われ、現在は野球解説者の福本豊さんが、先輩に教わったとも言われています。

お おこるな 怒るな

い いばるな 威張るな

あ あせるな 焦るな

く くさるな 腐るな

ま まような 迷うな  ま は まけるな 負けるな という説もあります。

 どうですか。確かに「おこらず、いばらず、あせらず、くさらず、まよわず」物事に対応できれば、うまくいくような気がします。しかしそういう精神状態を保ち続けることは、とても大変だと思います。逆に「おこり、いばり、あせり、くさり、まよう」ばかり行っている先生(校長、上司)がいたら、その生徒(先生、部下)は、とても大変で「こんなんで、やってられるかい」とちゃぶ台をひっくり返したい気分になると思います。

 関連があると思うので、夏目漱石の「草枕」の冒頭を書いてみます。「智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい」

 「よく頭を使ってうまく立ち回ろうとすると、『せこい』『ずるい』『要領が良いだけ』と言われてしまうし、感情に流されてしまうと反対にだまされたり、関わるべきでないことに関わってしまったりして損をしてしまう。じゃあ自分は自分らしく生きようと、好きなことを主張すると、人からひんしゅくを買うばかりになってしまう。私たちの住む人の世は窮屈で住みにくい」

 明治時代の文豪、夏目漱石でも悩んでいました。現代に生きる私たちが悩むのも無理はありません。悩んだときは「おいあくま」を思い出しましょう。実際には、昼間の幕間には、悪魔にもヒグマにも会いたくはありません。