校長室より

数字のマジック

数字のマジック 

 健康ドリンクか、栄養ドリンクかは忘れましたが、昔こんな宣伝文句がありました。

 「有効成分○○○、1000ミリグラム配合」

これは実は「有効成分○○○、1グラム配合」と同じことですよね。ではなぜ1グラムではなくて、1000ミリグラムを使ったのでしょうか。人間の耳には、1より1000の方が多いように聞こえるからに他なりません。私はこの数字のマジックは、限りなく詐欺に近いものがあるように思います。

 これは、ロシアがウクライナに攻めてきたから、日本を守るために「防衛費を引き上げて、GDPの2%にしよう」という話と似たところがあると思っています。これまで日本という国は、防衛費はだいたいGDPの1%程度を保ってきました。人間の耳には、1%を2%に引き上げることは、小さな金額に聞こえてしまいがちです。しかし、お金の数え方は金額と予算に対する割合で行うことが正しいと思います。

 そこで財務省のホームページより、金額と割合を見てみましょう。22年度一般会計歳出総額107兆6000億円、防衛費5兆4000億円、予算に対する割合は5.0%となります。この金額を2倍にするということは、10兆8000億円、予算に対する割合では10%になります。当然、小さな金額ではありません。

 世界では、軍事費の大きさを対GDP比で数えていることは事実です。また、日本の防衛費の数え方と、NATOの軍事費の数え方は一致していません。NATOの予算では、退役軍人年金や沿岸警備隊の経費、国連平和維持活動(PKO)拠出金等を軍事費にカウントしていますが、日本の防衛費では除外されています。これも見かけ上、防衛費を小さく見せようという忖度があるからなのかもしれません。

 ドリンクの有効成分は大きく見せよう、日本の防衛費は小さく見せよう、数字のマジックに引っかかってはいけません。数字は、冬至の日に、掃除をしながら、工事をして、法事の用事を済ませてしまいます。