校長室より

フランス革命

フランス革命

 「自由・平等・友愛」を合言葉に、近代史に最大の劇的転換をもたらしたフランス革命です。この事件は人間精神の偉大な達成である一方で、数知れぬ尊い命を断頭台へと葬った暗い影を持ちます。日本では池田理代子さんの漫画と、それを原作に上演された宝塚歌劇団のミュージカル「ベルサイユのばら」でよく知られています。

 さて今回は遅塚忠躬(ちづか ただみ)さんの「フランス革命 歴史における劇薬」から考えてみましょう。遅塚忠躬(1932~2010)さんは西洋史学者で、特にフランス革命の研究家ですが、この本は1997年に出版された「岩波ジュニア新書」の仲間です。岩波ジュニア新書は特に中学生、高校生を読者として想定されたものですが、大人が読んでも十分な内容です。

 遅塚さんは、歴史を学ぶ意義として「歴史の中に生きた人間たちの、悩みと、過ちと、苦しみと、そしてその苦悩あればこその偉大さとを知って、それに共感し、感動すること」を挙げています。まず、フランス革命を歴史における劇薬ととらえ、それをいろいろと検証していきます。違った形でのフランス革命はできなかったのか、またフランス革命をイギリスのピューリタン革命・名誉革命や、日本の明治維新と比較し、相違点を明確にしていきます。フランスを変えた劇薬の正体は、偉大でもあり悲惨でもある人間たちがあげた魂の叫びであり、巨大な熱情の噴出であったと説きます。革命の中で犠牲となっていった指導者たちの、それぞれの理想が列挙され、彼らの理想が、現在の国連の世界人権宣言や、日本国憲法にも生かされていることを述べています。

 遅塚さんは、中学生、高校生の若者の時代をロダンの彫刻である「青銅時代」とし、自分の信じるところに従って生きよ、それには勇気が必要だ。歴史における劇薬であるフランス革命が、あなたに勇気を与える、と結んでいます。平易な文章の200ページの新書ですが、熱い思いが伝わる、素晴らしい内容でした。内容はないようではなくて、あるよう。