校長室より

働くということ

働くということ

 高校生の皆さんは、まだ職業に就いて働くことをしていません。「勉強することが仕事だ」とか言われたことがありませんか。皆さんのお母さん、お父さんは、働いている人がほとんどだと思います。大人たちはなぜ働くのでしょうか。収入を得るため、社会に貢献するため、自己実現を図るため、その他多くの理由があると思います。今回は働くということを考えてみます。

 ドイツの政治経済学者のマックス・ヴェーバー(1864-1920)が「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で次のように書いています。

 キリスト教には宗派があり、カトリックもあるし、プロテスタントもある。特にプロテスタントは、勤勉の精神や合理主義を重んじるので、資本主義と相性が良い。金儲けに正当性が与えられたのだが、そればかりを追求するようになってはいないか。「精神なき専門人、心情なき享楽人。この無に等しい者たちは、自分たちこそ人類がいまだかつて到達したことのない段階に到達したのだと自惚れることになるだろう」

 女性の哲学者として有名なハンナ・アーレント(1906-1975)は「人間の条件」で労働(laber)と仕事(work)を区別しています。労働は生命活動と深く結びつく営みで、仕事は何かを作ることを意味しています。例えば、病気で入院をした人は、仕事はできなくなりますが、生きるという労働に従事することになります。ですから、仕事なしに労働は成立するのですが、労働なき仕事は成立しないはずです。ところが現代では、労働の意味が見失われたまま、仕事の評価によって、人の生き方や在り方を評価するようになってきたように感じられます。本末転倒ですね。

 皆さんも、今のうちから働くこと、どんな仕事をするのか、自分は何に向いているのか、多くの事を考え始めるようにしてください。仕事は小言を言われずに、寝言を言いながら、見事にやってのける必要があります。