校長室より

忘れるが勝ち

忘れるが勝ち

 生徒の皆さんは、物覚えが良い方ですか。私は年齢のせいか、物忘れがひどく、特に人の名前が出てこないことがよくあります。その人の顔や特徴や所属先などは忘れていないのですが、名前だけ思い出せないことがよくあります。そしてこれはどうやら私だけではなく、世の中のおばさん、おじさん達に多く見られる現象のようです。

 「思考の整理学」という著書で有名な外山滋比古さんは、残念ながら2020年に96歳で亡くなられてしまいましたが、「忘れるが勝ち」という著書もお持ちでした。この本から紹介します。

 「人間は忘れるようにできており、それが自然です。しかし学校は問題を出して答えを書かせ、それが合っているかどうかだけを評価します。教師が教えたことを生徒に忘れてもらっては困るのです。そのため多くの人が「忘れてはいけない」と思うようになりました。でもそれは大間違いです。だいたい人間は忘れるようにできており、それが自然です。世の中の人は、忘れることは困ると思っていますが、どんどん忘れて頭が空っぽになっても、病気にはなりません。頭を空っぽにしたら、優秀な頭になって新しいことをどんどん覚えられるでしょう。頭はとかくゴミが溜まりやすいのです」

 何だか、忘れるということに罪悪感を持たなくても良いのだ、という気持ちになりました。それでも、知識や語彙は多く覚えている方が役に立つことが多いですよね。ですから、どんどん忘れて、どんどん覚えていくようにしましょう。記憶を保つためには、遠くの家屋で多くの経験が必要です。