校長室より

文化相対主義

文化相対主義

 今回は「人類学」の世界では有名な「文化相対主義」です。これは「全ての文化は優劣で比べるものではなく対等である、という思想のこと」で、20世紀になってからアメリカの人類学者であるフランツ・ボアズが提唱し、ルース・ベネディクト(1946年に出版された、日本文化を記述した「菊と刀」の著者)によって確立されたと言われています。

 対義語は「自文化中心主義」で「自分たちの文化を基準として、他の文化を否定したり低く評価したりする考え方」のことです。産業革命以後、ヨーロッパの国々が「帝国主義」のもと、アジアやアフリカを植民地にしていきました。これは当時の西洋人たちが「正しい知識のもと、進んでいる文化」を持っており、遅れているアジアやアフリカに対して「助けてやっているんだ」という考え方をしていたということです。

 文化相対主義の具体的な例を見てみましょう。例えば「食文化」があげられます。日本には、ご飯、みそ汁、漬物といった日本食、和食の文化があります。欧米ではパンにステーキ、ワインといったメニューがあります。中華料理や、インド料理も1つの食文化です。また食べ方も、はしを使う、ナイフやフォークを使う、手づかみで食べる等の違いがあります。自国の人から見れば、他国の文化が異様に見える場合がありますが「文化相対主義」は個々の文化に対して固有の価値を認めます。そして、序列や順位をつけません。

 こうして世界には様々な文化が存在し、それぞれの文化を認めて、グローバルな社会を作っていきましょう、という風潮があったはずなのですが、コロナ渦と、戦争によって、再び「自文化中心主義」の考え方が出てきているような気がします。宇宙から見た地球は、青く美しく、国境の線は見えません。人間が勝手に国境を決めてしまいました。文化相対主義で、総体を早退してはいけません。