校長室より

法の下の平等

法の下の平等 

 今回は法律の話です。最初から何か難しい話になりそうなので、読むのをやめてしまう人が多くなりそうですが、法律のことをほとんど知らない私でも、「それはおかしい」と思っていることを二つ取り上げます。

 一つ目は、政治家に対するお金の問題です。職務権限(いきなり難しいですが、ある出来事に対して判断を下す力をもつことです)を持つ政治家に対して、便宜を図ってもらうつもりで、ワイロを渡し、実際に便宜が図られたときに、贈収賄(ぞうしゅうわい)という罪が発生します。江戸時代の「越後屋、お前もワルよのう」から始まり、権限を持つ人にワイロを渡し、便宜を図ってもらうことは明らかに犯罪です。しかし「職務権限の有無」や「このお金はワイロではなく、政治献金である」とかいって、政治家たちは贈収賄事件から逃れてきた歴史があります。私たちから見ると、不公平感が満載です。

 もう一つは「刑法犯罪(刑法に触れる犯罪で、殺人や強盗から傷害や窃盗等を含む)」を犯したのに、逮捕されて身柄を拘束されなかったり、裁判を受けなくてすむ場合があることです。「えっ、今の日本で、そんなことがあるのか」と思う人が多いと思いますが、日本にいる外国人(もちろんほとんどがアメリカ人)で、軍隊に属している人たちがそれに当たります。日米安保条約のもとに、日米地位協定が結ばれており、アメリカ軍兵士が日本で犯罪を犯したときに、身柄を拘束して、裁判を行う権利は、基本的にはアメリカ側にあります。そしてアメリカ兵の犯罪件数が一番多いのは、日本で一番アメリカ軍の基地が集中している沖縄県です。特に1995年9月4日に起こった、アメリカ兵3人による少女暴行事件は、計画的かつ卑劣な犯行であり、さすがにこのときばかりは日本の裁判所が実刑判決を出すことで決着し、これをきっかけに地位協定の「運用の改善」は行われました。

    本来は日米地位協定を改訂して、明治時代の「治外法権」のような仕組みを正していくべきだと思われますが、これは実は大変難しい事なのです。日本とアメリカだけの問題ではないからです。アメリカは世界中に軍隊を派遣しており、その派遣国毎に地位協定を結んでいて、国によって突出した協定はありません。それはアメリカが、アメリカ兵を守ろうとしていることから出発しているからです。

 「日本は法治国家である」という言葉が、正しいとは思えない事例二つでした。法治国家を長年カウチに寝そべって放置してきたのが、アウチでした。