校長室より

賢い不服従

賢い不服従

 今回は「盲導犬」の話です。視覚に障がいがある方々に対して、盲導犬が役立つことがあります。この盲導犬は、どんな犬でもできるものではなく、長い期間の訓練が必要ですし、ユーザー(障がい者)の方との相性もあるようです。盲導犬は、ユーザーの命令に従って行動するようにしつけられています。そんな中「賢い(「利口な」という場合もある)不服従」というものがあります。これはユーザーの安全を守るために、あえてその命令に逆らう事です。賢い不服従ができることは盲導犬がその役割をうまく果たすために重要な能力の一つであるため、この訓練は重要な訓練の一つです。

 例えば、ユーザーがある方向に進みたいと思い、そのような命令を盲導犬に出したとき、その方向の地面に深い溝があってユーザーが転落するなどの危険が考えられる場合は、盲導犬はその命令を拒否します。また同じようにユーザーがある方向に進みたいと思い、そのような命令を盲導犬に出したとき、盲導犬自身は何の問題もなくその場所を通れたとしても、比較的低い位置に木の枝などがあって、ユーザーが頭をぶつける可能性がある場合は、やはり盲導犬はその命令を拒否します。

 さて、賢い不服従は盲導犬だけに当てはまることでしょうか。例えば「良心的兵役拒否」というものがあります。アメリカの南北戦争の時、あるキリスト教のグループが良心的兵役拒否を行ったことがあります。第二次世界大戦の時も、アメリカでは6000人ほどの人が兵役拒否しています。ドイツでは1999年に17万四千人の若者が兵役を拒否して、市民的奉仕活動に従事しています。そういうシステムが認められている訳です。第二次世界大戦の時、日本では可能だったでしょうか。また兵役に限らず、このような例は絶対にないと言えるでしょうか。

 作家の落合恵子さんは次のように書いておられました。「何かを強制されそうになったとき、私たちも自分の頭で考えて『賢い不服従』を貫くことを学びたい」不服従は、服従しないという意味で、復習をしないという意味ではありません。学習には復習が大切です。