校長室より

【校長室より】令和2年度新入生への説明会 校長講話

  ただ今入学を許可した75回生320名の新入生の皆さん、入学おめでとう。前をしっかり向いて、堂々と話を聞いている皆さんの姿を、非常に頼もしく思います。今の喜びは、皆さんの努力の結果であることに違いありませんが、ご家族をはじめ、皆さんを支え導いていただいた方々のお陰であると、感謝の気持ちを決して忘れてはなりません。
 本日は、保護者の方々にはこの場にお越しいただけませんでしたが、入学を許可され、晴れて兵庫高校生となったことをしっかりと報告してください。
 さて、本校は創立以来112年目を迎え、今日まで、文武両道を継承し、校訓の四綱領「質素剛健 自重自治 これを貫くに至誠を以てす」を重んじる教育を進めてきました。
 第1の「質素」とは、見た目の華美にまどわされず、心の豊かさを第一に、物ごとの本質をしっかりと掴み、判断、行動せよということです。
 第2の「剛健」は、心身のたくましさのことです。自分の将来を見据え、粘り強く取り組む、強い意志と頑健な身体を養い、何者にも屈せず、自分の選んだ道を歩み続けよということです。
 第3の「自重」は、自分を大切にして卑下しないことです。自分と同様他の人の人格を重んじ、謙虚であるとともに自分に自信を持ち、堂々と生きる人間に成長せよということです。
 最後の「自治」とは、「責任ある自由」のもと、自分たちのことを自らの責任において自ら運営することです。
 私は、皆さんに、四綱領の精神を基本理念とし、将来にむけて自立することは勿論のこと、「豊かな発想」と「たくましい行動力」で他者と協働しながら、世界や日本国中で活躍し、地元兵庫・神戸を支え牽引する人に成長してくれることを大いに期待します。
 そのために実践してほしいことを3つ述べます。
 1つ目は、「目的と目標」を常に意識することです。
 人生の中で大きな目的を持ち、その目的を達成するために日々の目標を立てることが重要です。登山に例えるならば、これまでも高い山を目指して、登り続けてきたかもしれませんが、これから登ろうとする山は、さらに険しく、道のない山です。兵庫高校入学のこの機会に、一旦山を下りて、さらに別の高峰を目指そうではありませんか。
 2つ目は、自ら主体的に学ぶ姿勢を持つことです。
 目的目標を達成するために、知識や技能を誰かに教えてもらえばよい、と皆さんが考えているならば、それは今すぐ改めてください。
 3つ目は、コツコツと努力し続ける「継続する力」と、「集中してやり遂げる力」を身につけることです。
 継続する力を身につけるため、目標をいくつかの小さな目標に分けて、1つひとつ達成するという考え方を是非取り入れてください。「先送り」「短気」「わがまま」などの癖が根づいてしまうと、中途半端な意思の力で断ち切ることはできません。日々できることを地道に続けて習慣化することで、少々の失敗や挫折を経験しても、くじけることのない自信を持つことができます。
 今話をした3つのことを実践し、兵庫高校の歴史に新たな歩みを刻んでください。
 現在、新型コロナウイルス肺炎が全世界中で蔓延し、人類を不安の渦に巻き込んでいます。
 「人間万事塞翁が馬」という故事のとおり、一見不運に見える出来事が、見方を変えれば実は幸運に導かれた出来事であるかもしれません。起こったことに一喜一憂せず、どう解釈するのかが、我われの人生を分けます。「この出来事は自分に何を気づかせようとしているのか」という見方があっても良いのではないでしょうか。
 明日以降、登校日を除いて、5月6日まで臨時休校となります。
 その間は、他人と自分の命を守るために、不要の外出を控え自宅で過ごしてください。毎朝の健康チェックを通じて自己の健康に留意するとともに、「1週間の記録」を活用して、日々の活動の振り返りを行いながら、学習面・体力面の基礎固めを図ると共に読書を通して、一回り大きな自分を創ってください。不安なことや、気になることがあれば、気軽に担任の先生に相談してください。
 本校では、常に生徒を中心に据え、教職員と保護者、そして同窓会である武陽会の三者が一致協力して生徒の教育に取り組んでいきます。本校での高校生活で、皆さん一人ひとりが、成長のチャンスを逃すことなく、学業や学校行事、そして部活動で互いを高め合えるよう期待しています。
 以上、75回生の入学にあたっての講話とします。

 令和2年4月8日

兵庫県立兵庫高等学校長 
    升 川 清 則