校長室より

【校長室より】第2学期終業式辞要旨

  おはようございます。
 今年は冬らしい寒さが続いています。
 学校近くの花壇にはクリスマスデコレーションとシクラメンの花、そして迎春の葉ボタンに季節を感じます。
 8月17日から始まった2学期も本日で終了となります。新型コロナウイルスと暑さとの戦いでした。エアコンが不調になるほどの酷暑の中で、マスクの着用を続けながらよく乗り切ってくれました。
 今年初めて全校生徒が一堂に会して開催した体育祭では、3年生ここにありと印象付けてくれました。1泊2日と計画は一部変更されたものの、入学以来の団結をさらに深めてくれた1年生の野外活動、そして、沖縄、八重山の雨も晴れも経験できた2年生の修学旅行。島田叡先輩の最期の地を訪れ、そのご功績と心に触れることができました。また、神戸高校との秋季定期戦は、「三密」の解消など、新しい生活様式に沿った形で神戸総合運動公園で行うことができました。1年生の中には、KOBE研修で神戸にある世界の最先端を目の当たりにする機会を得た生徒もありました。
 新型コロナウイルス感染症との闘いの中、従来からの行事だけではなく、今年初めて実施した様々な行事を、概ね天候にも恵まれて滞りなく実施できたことを、皆さんとともに喜び感謝したい。喜びだけではなく残念でつらく悲しい出来事もありました。様々なことを受け入れながら過ごした2学期でした。
 さて、12月15日のA紙に、陸上短距離の朝原宣治さんと前京大総長の山極寿一さん、西田哲学が専門の京大教授上原麻有子さんが話し合う記事は興味深い内容でした。私自身、西田哲学を論ずる知識を持ち合わせていませんが、日常と重なるところがあると感じたので紹介します。朝原氏が「100メートルを同時に競技する8人をチームと考えれば、レベルの高い選手と競い合うと自分も高められているかもしれない」と語れば、上原氏は、西田哲学では人間個人を「創造的要素」ととらえ、「個人はバラバラにおかれた存在ではなく有機的におかれており、ライバルから受け取ったものを自分にインプットし、そして自分の業績として力を発揮する、スプリンターはこうして好記録を出している」との考えを示されていました。敵が自分を高めるという考え方は、他の領域、今の時期であれば、いよいよ本番を迎える受験生にも当てはまるかもとの問いに、山極氏は、「受験勉強でライバルに勝つことは重要だが、一緒に競いあった相手は仲間でもある」と述べ、「学校でも、職場でも皆がライバルであり、目的に向かってタッグを組む仲間でもある、敵と味方の二元論ではなく、両方をうまく利用する『間(あいだ)』の思想が東洋哲学にある」とのことでした。「集団の中で、相互に試行錯誤し合う関係が重要で、良い方向にばかりではなく、失敗や悪いことも時にはあるが、それを受け入れて、是正しながら次の良い方向にもっていく関係性を、生きている限り営んでいかなければならないと」まとめられていました。
 兵庫高校でともに学ぶ皆さんは、仲間であり、ライバルでもあり、目指すところはそれぞれ違いますが、相互に高め合うかけがえのない存在です。学業や部活動で自己を高めることはもちろんのこと、行事を通じて、一人では決して成し遂げることができない達成感をえることや、日ごろの清掃の取組や仲間同士や先生方と自然にあいさつを交わせる気持ちの良い環境つくりを通じて、まさに人と人の「間(あいだ)」を大切にして.お互いを高め合っているのです。皆さんがともに学び、鍛えることの「ありがたさ」を感じることができれば、これほど素晴らしいことはありません。
 自分の現在地を見失しない「心ここにあらず」や「うわの空」の状態になる時もあるでしょう。その裏側にある「さみしさ」や「孤独感」をどう克服するかが鍵になります。「集中力が切れた」と思った時こそ、仲間のありがたさを感じながらも、友達やSNSに頼るのではなく、逆に意識して自分一人で動いてみましょう。勉強なら少し戻って基本問題をやってみる、部活なら基本の動きをどんどん反復練習すると集中できて、ますます成果があがり、限界を突破するチャンスが生まれます。

 もう一つできること。我われには立派な校歌をともに歌うことができます。
 今は、大きな声で高らかに歌うことは叶いませんが、マスクの中で口ずさみましょう。きっとすっきりするはずです。みんなで口ずさみ、いい気分に、幸せになりましょう。

 校内の桜も、爛漫と咲き誇る春に備えて、つぼみをしっかりと付けています。
 この年末年始は、桜のつぼみが北風の冷たさに耐えるかのように、新型コロナウイルスに備えてまいりましょう。どうか落着いて過ごし、良い年を迎えてください。
 特に3年生(73回生)の皆さん、笑顔の卒業式を、そして将来、自分が活躍する姿を思い描いて頑張りましょう。
 始業式に、元気な姿をみせてくれることを楽しみにしています。

 「その名ぞ兵庫、我が母校」

 令和2年12月24日

兵庫県立兵庫高等学校長
    升 川 清 則