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2022年11月の記事一覧

人と自然科 ひとはく連携セミナー6回目 野生動物の現状と絶滅要因について学ぶ

 10月28日(金)人と自然科1年生学校設定科目『人と自然』の授業において、今年度第6回目となる人博連携セミナーが実施されました。『人と自然』の授業では年間8回、県立人と自然の博物館を訪れ、博物館の研究員から自然や環境、動植物など専門的な講義を直接頂き、深く学ぶことができます。

 第6回目となる今回は、『野生動物の現状と絶滅要因』と題して、石田弘明研究員よりご講義をいただきました。

 

 皆さんの身の回りにはたくさんの植物が生息しています。その植物は元々海の中に生息していました。陸上は紫外線が強いため、枯死する可能性があったからです。しかし現在はオゾン層が存在し、紫外線を吸収してくれるので陸上に進出してきました。植物が上陸したのは約4億年前と言われています。

 ちなみに現在世界で名前が付けられている植物はどのくらい存在すると思いますか?答えは約27万種。その大半は被子植物です。そして今後50年間で約6万種もの植物が絶滅すると言われています。そのうち日本では何種類の植物が絶滅に瀕しているのか、日本産植物種約7000種のうち、絶滅種は32種、絶滅危惧種は1779種、準絶滅危惧種は297種と言われています。その原因は開発による生育地の破壊、里地里山における人間活動の減少、園芸目的の採集、外来節物の影響などが上げられます。

 開発による生育地の破壊(オーバーユース)が原因として、照葉樹林が0.06%以下に減少し、わずかに残っているのは人と自然科が修学旅行で訪れる西表島や屋久島などの離島や深山です。またブナ林も、紙の原料であるパルプを得るために第2次世界大戦後に伐採し激減、さらに海岸の埋め立てにより日本の海岸線の41%が人工海岸となり海浜植物の減少につながっています。

  そして人間活動の減少(アンダーユーズ)も絶滅の原因の一つです。以前は人間が里山に入り、薪や木炭、肥料を得るために活動し、持ちだしていましたが、現在は電気やガスの使用、化学肥料の使用で人間が里山に入らなくなり、明るい環境を好む植物とそれに依存する動物の減少につながりました。

 そして注目されるのはニホンジカの影響。草食性の動物でほとんどの植物の葉や樹皮、根、果実を食します。人間が里山で活動しなくなったことや天敵であったオオカミの絶滅でバランスが崩れ、食害が活発になり、植物の絶滅につながっています。

 このように野生植物の絶滅には様々な要因があることを、わかりやすく教えていただきました。石田先生興味深いお話をありがとうございました。次回は「名前で楽しむ古生物学~動物学名の基礎と兵庫県産化石での実例~』と題して、生野 賢司研究員より講義をいただく予定です。楽しみですね。