校長室より
福祉ボランティア類型の学び3
「福祉用具」専門相談員講座
「福祉用具の活用方法」や「利用者にとって福祉用具はどのような効果があるのか」を主にして、西脇市の介護ショップ「赤とんぼ」から3名の専門員の方にお越し頂き、福祉用具専門員であり福祉住環境コーディネーターの資格をお持ちの 越川 行雄 様の講義を聞きました。お持ち頂いた様々な福祉用具の具体的な機能等の説明を聞き、実際に使用する体験をしました。福祉用具専門員の方には、福祉用具利用者の心身の状況や生活環境に合わせて、利用者が適切な福祉用具を選定できるように提案する役割があります。また、福祉住環境コーディネーターの方は、医療・福祉・建築についての体系的な幅広い見識の上で、高齢者や障害者の方々に対して、可能な限り自立していきいきと生活できる住環境を提案し、各種の専門家と連携しながら適切な住宅改修プランを提示します。7月16日(火)の講座では、福祉ボランティア類型2年生の「生活支援技術」、同類型3年生の「介護実習」の授業において、福祉用具に係る内容に住宅改修プランのお話も頂き、最先端の福祉技術について学びました。
電動車椅子、歩行器、ポータブルトイレ、歩行サポート手すり、介護用ベッド、移乗サポートロボット ハグ(Hug)等、様々な用具について知ることができました。
第106回全国高等学校野球選手権兵庫大会
多可高校・氷上西高校 対 山崎高校(2回戦)
第106回全国高等学校野球選手権大会兵庫大会。本校にとっての初戦は兵庫大会2回戦、淡路佐野運動公園第1野球場における7月13日(土)第2試合でした。部員数が少ないながらもここまで必死で練習し、鍛え上げてきた本校チームは、氷上西高校の1年生1名と女子マネージャー1名とともに山崎高校と対戦しました。開始前7分間のシートノックも試合の一部であるかのような緊張感の中で、選手達は放たれるゴロやフライをきちんと処理し、いいリズムの送球を繰り返してグラウンドの感触を確かめました。美しい ℓ 字の軌跡を描いたキャッチャーフライでノックを締めると、グランド整備中の束の間の休息とミーティングや準備の時間が、応援スタンドもベンチと共に戦意を高めるかのようでした。先攻の多可・氷上西は初回、先頭打者が安打で出塁しましたが、後続を断たれました。その後、2回裏までの山崎高校の得点で、苦しい展開を強いられましたが、いくつかのピンチをチーム全員ででしのぎました。その後も投手の力投と大切な場面での野手の好守備が光り、3回以降は得点を許しませんでした。1球1球のプレーに対する選手の集中が応援スタンドにも伝わり、随所で拍手や歓声が上がりメガホンを打ち鳴らす音が響きました。試合については勝ちを収めることは叶いませんでしたが、この日までチームとともに歩んできた選手一人一人の思いは、これからも途絶えることなく、いつも人生のエネルギーとして、挑戦しようとするとき、継続すべきとき、乗り越えるべきとき、飛躍するとき、そして羽ばたくときに大きな力を与えてくれることと思います。昨年秋の新チーム結成以降、秋季大会と春季大会でそれぞれで勝ちを収めて成長を続けたチームの夏が終わりました。
選手、マネージャーの皆さんお疲れ様でした。遠いところ応援に駆けつけてくださいましたたくさんの保護者やご家族の皆さん、本校OBの皆さん、大会運営に関わってくださった皆さん、応援に加わっていただいた多くの学校の関係者の皆さん、そして山崎高校と氷上西高校の選手、マネージャー、関係者の皆さん、本当にありがとうございました。
躍動する選手を見て、本校職員として誇りに思うとともに、応援してくださる皆さんの声援や拍手、そして見守っていただける眼差しが心に残りました。
1年生 進路ガイダンス
働くとは
高等学校卒業後の進路に係る2023年度の文部科学省調査では、大学または短大進学60.0%、専門学校進学23.5%、就職9.3%、その他6.4%でした。夏季休業中の三者面談や2年生での類型希望調査を前に、「働くとは」をテーマに(株)さんぽう専任の講師をお招きして話を聞きました。
社会人として求められる人物像上位10項目は、「コミュニケーション能力が高い」「意欲的」「素直」「真面目・誠実な人柄」「明るい性格」「専門的なスキルの持ち主」「前向きな考え方」「行動力がある」「精神的に逞しい」「主体性がある」「忍耐力がある」です。働くことの意義は、人それぞれに「生活のため」「社会貢献」「自己実現」等が多いですが、どのような分野に働く場所や役割を見出すにしても、その準備のために基礎学力を身に付けて自ら行動すること、体験を重ねて自らを磨き続けることは必要不可欠です。そのために、P(計画)D(実行)C(評価)A(改善)のサイクルを理解して、うまく回すことが大切です。
高校生の進路選択における悩みは「学力の不足」「自分の適性?」「方向性?」「情報の集め方」「経済的な不安」「親との意見の相違」「進学か就職か?」等ですが、毎日の授業を大切に受けること、苦手意識のハードルを越える経験を繰り返すことを心がけてください。そして夢や希望へのチャレンジ精神を強く持ってください。
チャレンジする過程で見えていなかった道も見えてくると思います。
デートDV防止授業
対等な関係をつくるために
7月12日(金)、「デートDV防止授業」を多可町生涯学習課のご協力で、NPO法人女性と子ども支援センター「ウィメンズネット・こうべ」から講師2名の方にお越し頂いて、全校一斉に実施しました。
初めに役割劇による問題提起です。役割劇は「放課後の予定を巡っての会話」「スマホを巡る口論」「彼氏のことで同性の友人に相談」の3つのシーンを各学年から2名づつ出演した代表者が行いました。それぞれのシーンにおいて、カップルの一方が相手を支配しようとする様子が伺えました。デートDVでは相手のことを怖いと感じたら、それは既に暴力であり、殴る・蹴るといった『身体への暴力』だけでなく、束縛や監視、脅し、酷い言葉等の『心への暴力』やSNSへの嫌な書き込みやパスワードの悪用等の『インターネットを使った暴力』、さらに『経済的暴力』や『性的暴力』があります。異性と交際経験のある10代のうち、女性43.8%、男性26.7%が何等かのDVを受けた経験があると答えています。デートDVの要因として「ジェンダー・バイアス」があります。これは、男女の役割について固定的な観念を持つことで、社会の女性に対する評価や待遇が差別的であることや社会的・経済的実態に係る思い込みや偏見等を指します。この話の中で、「女性らしさ? 男性らしさ?」に係る自分たちの感覚について4人ほどのグループで意見を交換しました。「強い」「優しい」「かわいらしい」等の発言がありましたが、DVの背景にある男女格差は、世界経済フォーラムが発表する『ジェンダーギャップ指数2024』で国際的に比較されています。『政治・経済・教育・健康の4部門』について、男女間にどれだけの格差が存在しているかを分析して国ごとにスコア化し、それを元にして、ジェンダー平等達成度に順位をつけたものです。これによると日本は4部門総合で118位(146ヶ国中)で、昨年度(125位)に比べてわずかに前進しましたが、達成度が高いとは言えません。上位は、1位アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェーで北欧諸国が占めています。後半の時間での役割劇は、前半と同じシチュエーションで行われましたが、今度は互いに対等で望ましい関係にある会話が繰り広げられ、劇後の出演者へのインタビューでも心地よさが伝わってきました。
デートDVに遭遇したとき、絶対に一人で悩まずに、SOSを発信して信頼できる人に相談してください。どんな場合でも暴力以外に解決できる方法があります。心を決めたら幸せな人生を築くことができます。友人から相談を受けたら、ゆっくり聞いてあげてください。あなたは悪くないこと、自分を大切にすることを強く伝えてください。そして、大人に相談してください。また、相談できる機関がたくさんあることを知っておいてください。
どんなに傷ついても、人には必ず回復する力があります。あなたの知識や一言が誰かを助けるきっかけになるのです。
生き方講演会 ~歴史の上に立って未来を考える~
『多可』の歴史と文化 多可が育んできたこと
「生き方講演会」は、講師の方のご経験や知見をもとにしたお話しから、生き方を考える機会として毎年実施しています。本年は、那珂ふれあい館長 安平勝利 先生に講師としてお越し頂きました。那珂ふれあい館は、東山古墳群や町内の出土品の展示、多可町文化財調査や研究及び啓発が行われており、地域研究と歴史学習の拠点です。
「多可高校の場所は、多可町の中で最も良い所なんです。しかも、多可の始まりの場所なんです。」この言葉から講演が始まりました。※ 写真は本館3階(海抜約145m)から南を撮影したものです。平野部(海抜約108m)を見渡せます。
多可は、日本独自の文化に大きな影響を与えた『山田錦』『敬老の日』『杉原紙』の3つの文化発祥の地です。山田錦は日本酒という和食文化に大きな影響を与え、八千代区野間谷から広がった敬老の精神が全国で継承され、和紙を代表する紙の一つである杉原紙は紙文化に大きな影響を与えました。近代前半までの多可郡は今の西脇市全部と神河町の一部を含んでいましたから、今回の話の『多可』は今の多可郡と西脇市全般を指しています。奈良時代の地誌『播磨國風土記』には、多可の由来となった巨人伝説の記述があります。「昔、巨人がいて、常に背をかがめて歩いていた。南の海から北の海へ、東から西へと巡り歩いているうちに、この地にたどりついた。巨人は『他の所は低いので、ずっと背をかがめていなければならなかった。でも、ここは高いので背が伸ばせる。ああ、高いなあ』と言った」多可高校周辺の東山古墳群は、6~7世紀に築かれました。12基の古墳のうち1号墳は石室が12.5mもあり県内最大級です。また、12号墳からは珍しい陶棺が出土しました。このような東山古墳群は、大陸から伝わった当時の最新土木技術でつくられ、最新の副葬品が納められています。この事実は、中央政権と関係が深いリーダーの存在を示唆しています。東山古墳群を築いた人々は、後に役所の建設や、政治的運営の中心を担い、多可郡の基礎をつくりました。まさに、本校の位置は、多可の始まりの地で、多可がスタートする所として当時の人が選んだ最も良い場所なのです。多可は長い歴史の中で、今も継承される『杉原紙』や『山田錦』、お年寄りを大切にし、敬意を払うとともにその知識や経験を活かした村づくりをする『敬老の心』を育みました。また、但馬国、丹波国、播磨国に接してまたがる多可は、隣接する地域の文化を融合して新しいものを生み出せる地であったのです。これらのことは、独特の気候風土と併せて、長い歴史の中で多可の人々の気質、アイデンティティの形成に影響してきました。
歴史は、古(いにしえ)から連続した出来事や人々の営みの積み重ねであって、現代の生活と無関係の遠い昔話や物語ではありません。各地ごとに、異なる歴史の積み重ねで築かれた文化がその地の気候風土や生活環境と相まって、現代に暮らす人々の感性やものの見方、考え方に影響を及ぼすことも少なくないでしょう。言い換えれば、生まれて過ごす土地や環境が違えば、少し異なる考え方や見方になることは避けにくいのかも知れません。しかし、互いに受け入れ融合することで新しく素晴らしいことが、さらに育まれるのではないでしょうか。
「歴史の上に立って未来を考える」ことで「よりよい方向性が見える」 ことを忘れないでおいて欲しいと思います。