塔陵健児のひとりごと

2026年3月の記事一覧

靴箱の星

卒業式のあと。
校舎に残ったのは、静けさと、靴箱の中の数足の靴。
そして、置き去りにされた花束ひとつ。

祝福だったはずの花。
想いが込められていたはずの花。
でも今は、誰にも見られず、誰にも呼ばれない。

地球には「付喪神(つくもがみ)」という考え方がある。
長く使われたものには魂が宿るという思想。
モノは、ただの物質ではなく、記憶を抱える存在になる。

靴と花を見ていると、ふと思う。
いつか自分も、
誰かの記憶の片隅に置き去りにされる存在になるのだろうか、と。
忘れられることへの、ほんの一抹の不安。

でも地球人は言う。
「ものを大切にしよう」と。

それはきっと、
モノの話ではなく、
想いの話で、
時間の話で、
人の話なのだ。

大切にするということは、
使うことではなく、
忘れないことなのかもしれない。

――地球は、やっぱり、やさしい星だ。