薬品分類コード

 薬品分類コードとは、各校で保有するそれぞれの薬品に対して固有の分類コードを付与し、薬品の保管・管理の参考やコンピュータを利用した管理簿の作製に役立てようとしたのものです。この分類方法及び分類番号は全体での使用を強制するものではなく、分類構成の部分的な変更、分類コードの採用の可否は各校の判断にお任せし、ここでは簡易なコード(2桁)の例を掲載しますが、より詳細なコードを与える方法も後述しますので参考にしていただければ幸いです。

用語解説

☆この用語解説は「岩波 理化学事典 第5版」及び各社発行の化学教科書・図表・図録類をもとにしています。

1.化合物 
 化学変化によって2種またはそれ以上の元素の単体に分けることができる純粋物質をいう。あるいは、2種以上の元素の原子の化学結合によって生じた純粋物質と言ってもよい。

2.無機化合物 
 有機化合物以外の化合物、すなわち炭素を含まない化合物および簡単な炭素化合物を指す。炭素の酸化物、金属元素の炭酸塩はふつう無機化合物に含めるが、シアンの化合物、炭素の硫化物、ハロゲン化物などはどちらにも入れられることがある。

3.塩 
 (1)陽イオンと陰イオンが電荷を中和する形で生じた化合物の総称。
 (2)有機塩基と酸の付加化合物をいう。一般に酸の名に相手の化合物の名をつけてよぶ。

4.有機化合物 
 炭素の酸化物や金属の炭酸塩など少数の簡単なもの以外の全ての炭素化合物の総称。ただし、有機化合物から除く炭素化合物の範囲は必ずしも一定していない。
 炭素と水素からなる部分(炭化水素基)と他の原子または原子団からなる部分(官能基)で構成される。

5.有機金属化合物 
 各種の金属を含む有機化合物の総称であるが、一般には炭素-金属結合を持つ化合物を言う。従って金属が酸素、硫黄、窒素などと結合した種類の化合物、有機酸の塩のように金属がイオン結合によって結合している化合物は有機金属化合物とは言わない。

6.炭化水素 
 炭素と水素だけからなる化合物の総称。炭素原子の連なり方によって鎖式炭化水素と環式炭化水素とに大別される。鎖式炭化水素を脂肪族炭化水素ということもある。環式炭化水素の多くは芳香族化合物あるいは脂環式化合物に属するが、非ベンゼノイド芳香族化合物に属するものも少なくない。

炭化水素の構造と結合による分類

    鎖状分子 環状構造を含む分子
    脂肪族炭化水素 脂環式炭化水素 芳香族炭化水素

単結合

のみの分子

飽和炭化水素

アルカン

CnH2n+2(n>1)

(メタン、エタン etc)

シクロアルカン

CnH2n(n>3)

(シクロヘキサン etc)

 

二重結合

三重結合を

含む分子

不飽和炭化水素

アルケン

CnH2n(n>2)

(エチレン・プロピレン etc)

シクロアルケン

CnH2n-2(n>3)

(シクロヘキセン etc)

芳香族炭化水素

ベンゼン環(6個の炭素原子が

作る正六角形の環)を持つ

アルキン

CnH2n-2(n>2)

(アセチレン etc)

7.ハロゲン置換体 
 炭化水素中の原子をハロゲン(F、Cl、Br、I、At)に置き換えたもの。

8.官能基 
 有機化合物の分子構造の中で、一つの同族列の各同族体に共通に含まれ、その同族列に共通な反応性の原因となる原子団または結合様式。作用基ともいう。

化合物群の名 官能基など 化合物の例
アルコール ヒドロキシル基( -OH )

メタノール

エタノール

エーテル エーテル結合( -O- ) ジエチルエーテル
アルデヒド アルデヒド基( -CHO )

アセトアルデヒド

ホルムアルデヒド

ケトン カルボニル基( >CO ) アセトン
カルボン酸 カルボキシル基( -COOH )

ギ酸(蟻酸)

酢酸

安息香酸

スルホン酸 スルホ基( -SO3H ) ベンゼンスルホン酸
酸無水物 カルボン酸の無水物 無水酢酸
エステル エステル結合( -COO- )

油脂類

酢酸メチル

アミド アミド結合( -NH-CO- ) アセトアミド
ニトロ化合物 ニトロ基( -NO2 )

ニトロベンゼン

ピクリン酸

アミン アミノ基( -NH2 ) アニリン
フェノール

ベンゼン環に直接ヒドロキシル基が結合

フェノール

クレゾール

ナフトール

アミノ酸 分子中にアミノ基を持つカルボン酸

グルタミン酸

ロイシン

9.補酵素 
 助酵素、コエンザイム。低分子の有機化合物で、複合タンパク質としての酵素においての非タンパク質部分。酵素が触媒する化学反応に関与するのはこの部分である。特に水溶性ビタミンが原型となり、構造状ビタミンと関係が深いものが多い。(ATP、NAD、リポ酸、葉酸など)

分類コードの構成

薬品分類コードの構成(2桁の例) 

 1桁目  2桁目 
無機化合物 酸化物
硫化物
塩化物
硫酸塩
硝酸塩
炭酸塩
ハロゲン化物
無機物一般
アルカリ(水酸化物)
無機酸
単体 金属で構成
非金属で構成
有機化合物 炭化水素
アルコール・エーテル
アルデヒド・ケトン
カルボン酸・スルホン酸・酸無水物
エステル・油脂
アミン・アミド・アゾ
フェノール
天然高分子
合成高分子
その他
染色液・色素・指示薬など  
その他  

 

薬品分類コード(3桁)の構成例 

 

1行目 2行目 3行目

無機化合物

有機酸の塩

(有機酸と金属の化合物)

化合物の陽性成分の原子番号(化学式の先頭の元素の原子番号)

 ・酸は中心元素で分類

 ・アンモニアは独立した番号90を与える

 ・ランタノイド(※1)はすべて57に分類

 ・アクチノイド(※2)はすべて89に分類

 ・原子番号104以降はすべて91

 ・いずれが一つに分類しがたいものは92

単体

原子番号

 ・ランタノイド(※1)はすべて57に分類

 ・アクチノイド(※2)はすべて89に分類

 ・原子番号104以降はすべて91

 ・いずれか一つに分類しがたいものは92

有機化合物 鎖式(脂肪族)・脂環式炭化水素 アルカン
アルケン
アルキン
シクロアルカン
シクロアルケン
ハロゲン置換体
石油・天然ガス
その他
官能基を持つ鎖式(脂肪族)・脂環式炭化水素 アルコール・エーテル
アルデヒド・ケトン

カルボン酸・スルホン酸類

(酸無水物も含む)

エステル・アミド
ニトロ化合物・アミン
その他
芳香族炭化水素 アルコール・エーテル
アルデヒド・ケトン

 カルボン酸・スルホン酸

(酸無水物を含む)

エステル・アミド
ニトロ化合物・アミン
ハロゲン置換体
フェノール
炭化水素
その他
天然高分子 糖類(炭水化物)
アミノ酸・タンパク質
酵素
ホルモン
ビタミン・補酵素
天然ゴム
無機高分子
その他
合成高分子 合成繊維
合成樹脂
合成ゴム
その他
その他   3桁目はすべて0

染色液・色素・指示薬等

50音をもとにした分類番号

 

 
01 11 21 31 41 51 61 71 81 91 00
02 12 22 32 42 52 62 72 82 92  
03 13 23 33 43 53 63 73 83 93  
04 14 24 34 44 54 64 74 84 94  
05 15 25 35 45 55 65 75 85 95  

〇 複数の異名がある場合は各校でいずれか一つを選ぶ

その他

(※1)原子番号57~71 ランタン~ルテチウムまでの元素

(※2)原子番号89~103 アクチニウム~ローレンシウムの元素

 

(6~7桁以上)薬品分類コード付与方法の例 

 基本分類コードは6桁、1容器ごとに番号を振る場合は7桁目以降を使用する。
  ・1~3桁目・・・「その薬品がどんなものか」で分類
  ・4・5桁目・・・(3桁に分類した後での)薬品の50音順の通し番号
  ・6桁目・・・・・同じ薬品の形状の違いで分類
 原則として3桁目までは学校間で共通、4桁目以降は各校の使用実態により任意の番号を与える。ただし、同一学校中で1種類の薬品に付与するコードは1つだけとする。
 各校による使用方法の違い(コンピュータの使用、不使用を含め)に応じ、4桁目以降、7桁目以降を別項目でデータ処理したり、1~3桁目のみを使用したりすることもできる。
*各校の使用実態により下記のような変更方法もある
 ・有機化合物(1桁目=3)を染色液(4)やその他(5)と同じ50音による分類で分ける。
 ・有機酸の塩類を1でなく有機化合物(3)に入れる。(この場合3桁目にそれぞれ1項目増やし、326と339をあてる。)
 ・金属を含む多原子イオンの化合物を実体に合わせ原則(化学式の先頭の元素)以外の方法 で分類する。(Mn-KMnO4 Fe-K3[Fe(CN)]6 Cr-K2CrO4、(NH4)2CrO7など)