用語解説

☆この用語解説は「岩波 理化学事典 第5版」及び各社発行の化学教科書・図表・図録類をもとにしています。

1.化合物 
 化学変化によって2種またはそれ以上の元素の単体に分けることができる純粋物質をいう。あるいは、2種以上の元素の原子の化学結合によって生じた純粋物質と言ってもよい。

2.無機化合物 
 有機化合物以外の化合物、すなわち炭素を含まない化合物および簡単な炭素化合物を指す。炭素の酸化物、金属元素の炭酸塩はふつう無機化合物に含めるが、シアンの化合物、炭素の硫化物、ハロゲン化物などはどちらにも入れられることがある。

3.塩 
 (1)陽イオンと陰イオンが電荷を中和する形で生じた化合物の総称。
 (2)有機塩基と酸の付加化合物をいう。一般に酸の名に相手の化合物の名をつけてよぶ。

4.有機化合物 
 炭素の酸化物や金属の炭酸塩など少数の簡単なもの以外の全ての炭素化合物の総称。ただし、有機化合物から除く炭素化合物の範囲は必ずしも一定していない。
 炭素と水素からなる部分(炭化水素基)と他の原子または原子団からなる部分(官能基)で構成される。

5.有機金属化合物 
 各種の金属を含む有機化合物の総称であるが、一般には炭素-金属結合を持つ化合物を言う。従って金属が酸素、硫黄、窒素などと結合した種類の化合物、有機酸の塩のように金属がイオン結合によって結合している化合物は有機金属化合物とは言わない。

6.炭化水素 
 炭素と水素だけからなる化合物の総称。炭素原子の連なり方によって鎖式炭化水素と環式炭化水素とに大別される。鎖式炭化水素を脂肪族炭化水素ということもある。環式炭化水素の多くは芳香族化合物あるいは脂環式化合物に属するが、非ベンゼノイド芳香族化合物に属するものも少なくない。

炭化水素の構造と結合による分類

    鎖状分子 環状構造を含む分子
    脂肪族炭化水素 脂環式炭化水素 芳香族炭化水素

単結合

のみの分子

飽和炭化水素

アルカン

CnH2n+2(n>1)

(メタン、エタン etc)

シクロアルカン

CnH2n(n>3)

(シクロヘキサン etc)

 

二重結合

三重結合を

含む分子

不飽和炭化水素

アルケン

CnH2n(n>2)

(エチレン・プロピレン etc)

シクロアルケン

CnH2n-2(n>3)

(シクロヘキセン etc)

芳香族炭化水素

ベンゼン環(6個の炭素原子が

作る正六角形の環)を持つ

アルキン

CnH2n-2(n>2)

(アセチレン etc)

7.ハロゲン置換体 
 炭化水素中の原子をハロゲン(F、Cl、Br、I、At)に置き換えたもの。

8.官能基 
 有機化合物の分子構造の中で、一つの同族列の各同族体に共通に含まれ、その同族列に共通な反応性の原因となる原子団または結合様式。作用基ともいう。

化合物群の名 官能基など 化合物の例
アルコール ヒドロキシル基( -OH )

メタノール

エタノール

エーテル エーテル結合( -O- ) ジエチルエーテル
アルデヒド アルデヒド基( -CHO )

アセトアルデヒド

ホルムアルデヒド

ケトン カルボニル基( >CO ) アセトン
カルボン酸 カルボキシル基( -COOH )

ギ酸(蟻酸)

酢酸

安息香酸

スルホン酸 スルホ基( -SO3H ) ベンゼンスルホン酸
酸無水物 カルボン酸の無水物 無水酢酸
エステル エステル結合( -COO- )

油脂類

酢酸メチル

アミド アミド結合( -NH-CO- ) アセトアミド
ニトロ化合物 ニトロ基( -NO2 )

ニトロベンゼン

ピクリン酸

アミン アミノ基( -NH2 ) アニリン
フェノール

ベンゼン環に直接ヒドロキシル基が結合

フェノール

クレゾール

ナフトール

アミノ酸 分子中にアミノ基を持つカルボン酸

グルタミン酸

ロイシン

9.補酵素 
 助酵素、コエンザイム。低分子の有機化合物で、複合タンパク質としての酵素においての非タンパク質部分。酵素が触媒する化学反応に関与するのはこの部分である。特に水溶性ビタミンが原型となり、構造状ビタミンと関係が深いものが多い。(ATP、NAD、リポ酸、葉酸など)